終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん

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朝、まだ陽が昇りきらないうちに目を覚ますと、すでに佐川は管理室で仕事を始めていた。

「おう、起きたか」

振り返った佐川は、片手にコーヒーを持ち、機械のモニターをじっと見ていた。

「管理人って、朝早いんですね」

安田が欠伸を噛み殺しながら呟く。

「まぁな。設備はずっと動いとるからな、定期的に様子を見んといかん」

佐川は、いくつかの数字が並ぶモニターを指差す。

「これは水位計。今のところ問題ないが、天気によっちゃ調整が必要だな」

「そんなことまで管理してるんですね」

「当たり前だろう。ダムが決壊したら、下流の町がえらいことになる」

佐川は深く息をつき、次のモニターを示した。

「こっちが発電機の管理画面だ。まだ動いとるが、燃料は限られとる。無駄遣いはできん」

「結構シビアですね」

安田が画面を覗き込む。

「そういうもんだよ。今までは当たり前のように使えてた電気も、水も、燃料も、いまじゃ貴重な資源だ。大事にせんとな」

佐川はモニターを眺めながら、俺たちに簡単な作業を指示した。

「まずは施設の点検を頼む。水路に詰まりがないか、外壁に異常がないか見てきてくれ」

「了解」

俺と安田は管理施設の外へ出て、建物の周囲を見回ることにした。

外壁は頑丈そうで、特にひび割れや崩れかけた部分は見当たらない。ダムの水面は静かに揺れ、朝日に照らされていた。

「こういう仕事してると、なんか普通に働いてるみたいだな」

安田がぼそっと言う。

「まぁ、俺たちはまだ『生きるため』に動いてる段階だろ。食料も補給しなきゃならないし、防御も強化しなきゃならない。平和な労働とは違うよ」

「……それもそうか」

施設の外周をひと回りして戻ると、佐川は少しホッとしたような顔をした。

「異常なし、か」

「はい。壁も問題なし、水路も詰まりはなさそうです」

「なら、次はバリケードだな。いざってときに備えとかなきゃな」

佐川は腕を組みながら続ける。

「ダムの入り口はしっかり閉まるけど、問題は周囲の侵入経路だな。ゾンビは水の流れには乗れんだろうが、人間が襲ってくる可能性はある」

「確かに……物資があるとわかれば、奪いに来るやつもいるかもしれませんね」

「そういうこった。だから入り口付近にバリケードを作って、監視体制も考えておこう」

俺たちは使えそうな資材を集め、即席のバリケード作りを始めた。

金属の支柱を組み、丈夫そうな板や金網を固定していく。短時間でできる範囲とはいえ、それなりに侵入を防げそうな仕上がりになった。

「これなら、最低限の防御はできそうだな」

安田が汗を拭いながら言う。

「まぁ、完璧にはできんが、ないよりはマシだな」

佐川が頷いた。

「このダムは、しばらく俺たちの拠点になる。できることは一つずつやっていくしかないな」

俺は、静かなダムの水面を見つめながら、そう思った。
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