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エルドリン王国編
152 最後のエルフ村
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そんなこんなで旅は順調に進み、途中でいくつかの村に立ち寄りながらも、私たちはようやく辺境村へとたどり着いた。
「おかえり、主様には会えたかい?」
まるで家族のように迎えてくれる温かいおばばの声に、ホッと心が安らぐ。実家に帰ったような安心感。この村に
いたのはたった一晩だったというのに、この安心感はなんだろう……。
「はい、無事にお会いすることができました。ルーフェとジェイドをつけてくれたこと、感謝します」
「二人は役に立ったかね?」
「それはもう!随分と助けてもらいました」
「そうかい、そうかい。それはよかった」
道中、ずっと道案内をしてくれていたルーフェさん。動物たちの縄張りを避けたり、通りやすい道を探してくれたり。彼がいなければ私たちの旅はもっと長いものになっていただろう。村に立ち寄ったときも、村人との仲介を円滑に進めてくれて、すごく助かった。心から感謝を伝えたい。
そしてジェイドさん。最初に虫除けの香をくれたことには本当に、ほんとうに感謝している。私たちにとっては未知の魔物の倒し方を教えてくれたり、食料調達には一役買ってくれた。道中で大きなトラブルが起きなかったのは彼のおかげだろう。おかげで私たちは怪我一つしていない。
ルーフェさんは帰ってそうそう、ニンフェさんのところに顔を出しに行き、ジェイドさんはこれからの旅に向けて自宅の荷物整理に行ってしまったため、二人ともこの場にはいない。直接感謝を伝えるのはもう少し後になりそうだ。
今日はまた、この村で一晩お世話になる。エルフの村での、最後の滞在だ。
以前使わせてもらった空き家を、また貸してもらえることになった。懐かしさを覚えるその場所でゆったりと体を休め、明日からの帰路に備える。我が家まで目前に迫り、なんだかドキドキしてきた。
「みなさーん、お久しぶりですー」
コンコン、と扉をノックされるのと同時に聞こえてきた、おっとり穏やかな声。
玄関を開ければそこにいたのは、予想通りニンファさんだ。
「あらチナちゃん。お久しぶりね」
「おひさしぶりです、ニンファさん!ながくルーフェさんをおかりしちゃってごめんなさい」
「あら、いいのよ。皆さんが無事に帰ってきてくれたのだから。ところで、お腹は空いているかしら?」
「はい、ペコペコです!」
「それは良かった!今晩は宴にしましょうっておばばが。皆が無事に帰ってきてくれて嬉しいのね。張り切ってご馳走を作ったから、是非たくさん食べてくれると嬉しいわ」
どうやら宴のお誘いだったらしい。いつもいつも、ありがたいことだ。
ほわほわとした笑顔を浮かべるニンファさんに癒やされる。そういえば、ニンファさんはリュールさんと兄妹だと聞いたような?改めて見てみると、本当に醸し出す雰囲気がそっくりだ。なんだか落ち着く……。二人はもう、会ったのだろうか?
そんな疑問を浮かべた瞬間、後ろの扉が開き、誰かがリビングに入ってきた。
「おや、ニンフェじゃないか。久しぶりだねぇ」
その声は、たった今、私が思い浮かべていた人物であるリュールさんのものだった。そう言えば、リュールさんとシェーラさんもここに泊まるんだった、と思い出す。ディルクさんはジェイルさんのところでお世話になるそうだ。意外と仲良しなのである。
「兄さん!ルーフェから聞いていたけど、本当に来ていたのね……、何年ぶりかしら?」
「前に会ったのはジュノが生まれたころだったんじゃないかなぁ?」
「あら、そんなに前だった?時が経つのは早いのね」
ジュノというのは、確かニンファさんのお孫さんだったと記憶している。見た目は私と同じくらいで、年は二十歳くらいだっただろうか?つまり、二人だ会うのは約二十年ぶり……。
エルフって本当に時間にルーズだなぁ、と実感した瞬間だった。
ニンファさんは、私たちを呼びに来たのを忘れたかのように、リュールさんとの会話に花を咲かせる。積もる話がたくさんあるのだろう。孫の成長から、最近の仕事の調子まで。まったりとしながらもポンポンと変わっていく話題に、独特なペースで話す二人だなぁ、と不思議な感覚を抱いた。
柔らかな声の二人の会話に耳を傾けていれば、まるでそこだけ時間がゆっくりと流れているかのような錯覚を覚える。が、実際そんなことはなく、時間は着々と進んでいるのだ。
どれくらい時間が経ったのか、玄関扉を開いたまま、まったり和んでしまった私たち三人を現実に引き戻したのはルーフェさんだった。
ニンファさんの後ろから顔を出したルーフェさんは、そこにリュールさんがいるのを見て何かを察したかのように呆れ顔を浮かべる。
「遅いと思って来てみれば、また二人の世界に入っていたんですね……」
どうやらこれは、いつものことだったらしい。
「あらいけない。うっかりしていたわ」
そう言ってニンファさんは珍しく焦った様子で、いつもよりほんの少し急ぎ足で帰っていく。先に戻って準備を手伝うそうだ。
その後姿を眺めていたルーフェさんは、ニンファさんが何かにつまずいたのを見た瞬間、目の前から消えた。気づけばニンファさんの隣にいて、その肩を支えている。
なんという瞬発力。もはや瞬間移動をも言えるその機敏な動きに、これが愛のなせる技か……と感心する他無い。
二人寄り添って歩いていく後ろ姿を見送って、私とリュールさんは各部屋で休んでいるみんなを呼びに行った。
盛大に開かれた宴は、終始に賑やかに過ぎていった。
リュールさんやシェーラさん、ディルクさんも久しぶりに会う知り合いがいたらしく、楽しそうに自分たちの時間を過ごしている。
私はもっぱら、しばらくは食べ納めになるであろうエルフ食の味を噛み締めながら、近くにいたお姉さん方にレシピをねだっていた。優しいお姉さん方は、わざわざ紙にレシピを書き起こしてくれる。ありがたくそれを受け取り、また来てねという声に力強く頷いた。
酔っ払わない程度にお酒を楽しむ大人たち。明日のことも考えて少しセーブしているらしい。
その横で豪快に酒瓶を傾けるおばばは、気持ちの良いほどの飲みっぷりだ。次第に大きくなっていく声と、真っ赤な顔。宴の終盤には、大きないびきをかいて眠りこけてしまった。
おばばが眠ってしまったことでお開きの雰囲気が広がる。
私たちも、こんなに良くしてもらったエルフの皆に感謝を伝え、その晩は楽しい気持ちのまま眠りについた。
翌朝、昨晩のことはなんともないという顔でおばばが見送りに出てくる。
「元気でやるんだよ」
一人ひとりの顔を見回してそう伝えてくるおばばの力強い声に、少し泣きそうになりながらも、私たちは出発した。
旅の仲間の一人、ルーフェさんとはここでお別れということで、ほんのりしんみりとした空気が漂う。たった一人いなくなるだけで、随分とさみしくなるものだ。
案内役のルーフェさんがいなくなったこと、そして、ここから先はエルフの皆も行ったことのない場所だということで、案内役はコタローへと戻ってきた。久しぶりの活躍の場に、ふんすと張り切っている。
「さあ皆!おいらに続けー!」
胸を張って先頭を歩くコタロー。しかしその歩幅は体のサイズに合わせて小さく、大人たちからは小さな子を微笑ましく見守るような空気が漂っていた。
数日、野宿をしながらも歩みを進め、次第に植生がエルドリン王国特有のものからアストロ王国らしいものへと変わっていく。私たちからすれば、ようやく見慣れた景色になってきた、ということだ。
来る時は、この植生の移り変わりに大興奮していたのは私だが、今度はリュールさんたちが大興奮である。
「おお!なんですか、この植物は!初めてみましたよ!」
「土の質も変わっているような気がするぞ……。こんなにも違いが出るものなのか」
「魔物は?!この地にはどんな魔物がいるのかな!」
「未知の生物との戦闘……。腕がなるぜ」
上から、リュールさん、ディルクさん、シェーラさん、ジェイドさんの言葉だ。
植物や環境に興味をもつ二人と、魔物や動物に興味をもつ二人。見事に別れた。
しかし四人とも、興奮気味に周囲を見回しながらも団体行動を崩すようなことは一切しない。我が道を行くコタローをしっかりと視界の端に捉え、突飛な行動にも素早く対応する。どこか浮足立っている様子を見せながらも、冷静さはきちんと保っているようだ。
と、そこで、シェーラさんとジェイドさんの願いに引き寄せられたように魔物が現れる。
やってきたのはオオカミの魔物、ガルフスだ。全部で四匹。牙をむき出しにしてガルガル唸りながら近づいてくる。
「ほう、これが動物型の魔物。いいねぇ、滾る」
「ジェイド、右の二匹は私がやるから手を出さないでね!」
「お前こそ、俺の獲物に手を出したら容赦しないぜ」
その言葉と同時に、二人は勢い良く飛びかかる。
これまで見てきたのとは比べ物にならないほど好戦的な様子に、まさかここまで戦闘狂だったとは……と少し驚いた。
二人の戦闘スタイルは主に近接物理攻撃だ。ジェイドさんは両手にはめた金属製のガントレットで格闘。シェーラさんは自分の身長より少し長い槍での攻撃。
剣で切りつけるのとは違い、殴りつけたり突き刺したり、倒した敵の姿はなかなかにグロテスクな状態になることもあるが、二人とも戦闘に長けているだけあってあっという間に片付けてしまう。
「普通の動物とは違い、やはり魔物は好戦的だな」
ガントレットについた血を振り払いながら、ジェイドさんは楽しそうに言う。
「あれほどまでに殺意を向けられたのは久しぶり!やっぱりスリルがある方が楽しいわ」
言っていることは物騒なのに、心底楽しそうなシェーラさんが恐ろしい。
エルドリン王国に出現する魔物はほとんどが虫魔物なうえ、虫避けの香を持っておけばほとんど寄ってくることもないので魔物と戦うのは久しぶりだったようだ。虫魔物は食料にもならないし、たまに数を減らすために狩る程度らしい。
どこかスッキリした様子の二人に、さっさと倒した魔物を回収してしまったアルトさんが先へ進むよう促す。
戦う気満々だった二人に獲物を譲ったコタローは、我関せずと一匹先に進んでいた。
「おかえり、主様には会えたかい?」
まるで家族のように迎えてくれる温かいおばばの声に、ホッと心が安らぐ。実家に帰ったような安心感。この村に
いたのはたった一晩だったというのに、この安心感はなんだろう……。
「はい、無事にお会いすることができました。ルーフェとジェイドをつけてくれたこと、感謝します」
「二人は役に立ったかね?」
「それはもう!随分と助けてもらいました」
「そうかい、そうかい。それはよかった」
道中、ずっと道案内をしてくれていたルーフェさん。動物たちの縄張りを避けたり、通りやすい道を探してくれたり。彼がいなければ私たちの旅はもっと長いものになっていただろう。村に立ち寄ったときも、村人との仲介を円滑に進めてくれて、すごく助かった。心から感謝を伝えたい。
そしてジェイドさん。最初に虫除けの香をくれたことには本当に、ほんとうに感謝している。私たちにとっては未知の魔物の倒し方を教えてくれたり、食料調達には一役買ってくれた。道中で大きなトラブルが起きなかったのは彼のおかげだろう。おかげで私たちは怪我一つしていない。
ルーフェさんは帰ってそうそう、ニンフェさんのところに顔を出しに行き、ジェイドさんはこれからの旅に向けて自宅の荷物整理に行ってしまったため、二人ともこの場にはいない。直接感謝を伝えるのはもう少し後になりそうだ。
今日はまた、この村で一晩お世話になる。エルフの村での、最後の滞在だ。
以前使わせてもらった空き家を、また貸してもらえることになった。懐かしさを覚えるその場所でゆったりと体を休め、明日からの帰路に備える。我が家まで目前に迫り、なんだかドキドキしてきた。
「みなさーん、お久しぶりですー」
コンコン、と扉をノックされるのと同時に聞こえてきた、おっとり穏やかな声。
玄関を開ければそこにいたのは、予想通りニンファさんだ。
「あらチナちゃん。お久しぶりね」
「おひさしぶりです、ニンファさん!ながくルーフェさんをおかりしちゃってごめんなさい」
「あら、いいのよ。皆さんが無事に帰ってきてくれたのだから。ところで、お腹は空いているかしら?」
「はい、ペコペコです!」
「それは良かった!今晩は宴にしましょうっておばばが。皆が無事に帰ってきてくれて嬉しいのね。張り切ってご馳走を作ったから、是非たくさん食べてくれると嬉しいわ」
どうやら宴のお誘いだったらしい。いつもいつも、ありがたいことだ。
ほわほわとした笑顔を浮かべるニンファさんに癒やされる。そういえば、ニンファさんはリュールさんと兄妹だと聞いたような?改めて見てみると、本当に醸し出す雰囲気がそっくりだ。なんだか落ち着く……。二人はもう、会ったのだろうか?
そんな疑問を浮かべた瞬間、後ろの扉が開き、誰かがリビングに入ってきた。
「おや、ニンフェじゃないか。久しぶりだねぇ」
その声は、たった今、私が思い浮かべていた人物であるリュールさんのものだった。そう言えば、リュールさんとシェーラさんもここに泊まるんだった、と思い出す。ディルクさんはジェイルさんのところでお世話になるそうだ。意外と仲良しなのである。
「兄さん!ルーフェから聞いていたけど、本当に来ていたのね……、何年ぶりかしら?」
「前に会ったのはジュノが生まれたころだったんじゃないかなぁ?」
「あら、そんなに前だった?時が経つのは早いのね」
ジュノというのは、確かニンファさんのお孫さんだったと記憶している。見た目は私と同じくらいで、年は二十歳くらいだっただろうか?つまり、二人だ会うのは約二十年ぶり……。
エルフって本当に時間にルーズだなぁ、と実感した瞬間だった。
ニンファさんは、私たちを呼びに来たのを忘れたかのように、リュールさんとの会話に花を咲かせる。積もる話がたくさんあるのだろう。孫の成長から、最近の仕事の調子まで。まったりとしながらもポンポンと変わっていく話題に、独特なペースで話す二人だなぁ、と不思議な感覚を抱いた。
柔らかな声の二人の会話に耳を傾けていれば、まるでそこだけ時間がゆっくりと流れているかのような錯覚を覚える。が、実際そんなことはなく、時間は着々と進んでいるのだ。
どれくらい時間が経ったのか、玄関扉を開いたまま、まったり和んでしまった私たち三人を現実に引き戻したのはルーフェさんだった。
ニンファさんの後ろから顔を出したルーフェさんは、そこにリュールさんがいるのを見て何かを察したかのように呆れ顔を浮かべる。
「遅いと思って来てみれば、また二人の世界に入っていたんですね……」
どうやらこれは、いつものことだったらしい。
「あらいけない。うっかりしていたわ」
そう言ってニンファさんは珍しく焦った様子で、いつもよりほんの少し急ぎ足で帰っていく。先に戻って準備を手伝うそうだ。
その後姿を眺めていたルーフェさんは、ニンファさんが何かにつまずいたのを見た瞬間、目の前から消えた。気づけばニンファさんの隣にいて、その肩を支えている。
なんという瞬発力。もはや瞬間移動をも言えるその機敏な動きに、これが愛のなせる技か……と感心する他無い。
二人寄り添って歩いていく後ろ姿を見送って、私とリュールさんは各部屋で休んでいるみんなを呼びに行った。
盛大に開かれた宴は、終始に賑やかに過ぎていった。
リュールさんやシェーラさん、ディルクさんも久しぶりに会う知り合いがいたらしく、楽しそうに自分たちの時間を過ごしている。
私はもっぱら、しばらくは食べ納めになるであろうエルフ食の味を噛み締めながら、近くにいたお姉さん方にレシピをねだっていた。優しいお姉さん方は、わざわざ紙にレシピを書き起こしてくれる。ありがたくそれを受け取り、また来てねという声に力強く頷いた。
酔っ払わない程度にお酒を楽しむ大人たち。明日のことも考えて少しセーブしているらしい。
その横で豪快に酒瓶を傾けるおばばは、気持ちの良いほどの飲みっぷりだ。次第に大きくなっていく声と、真っ赤な顔。宴の終盤には、大きないびきをかいて眠りこけてしまった。
おばばが眠ってしまったことでお開きの雰囲気が広がる。
私たちも、こんなに良くしてもらったエルフの皆に感謝を伝え、その晩は楽しい気持ちのまま眠りについた。
翌朝、昨晩のことはなんともないという顔でおばばが見送りに出てくる。
「元気でやるんだよ」
一人ひとりの顔を見回してそう伝えてくるおばばの力強い声に、少し泣きそうになりながらも、私たちは出発した。
旅の仲間の一人、ルーフェさんとはここでお別れということで、ほんのりしんみりとした空気が漂う。たった一人いなくなるだけで、随分とさみしくなるものだ。
案内役のルーフェさんがいなくなったこと、そして、ここから先はエルフの皆も行ったことのない場所だということで、案内役はコタローへと戻ってきた。久しぶりの活躍の場に、ふんすと張り切っている。
「さあ皆!おいらに続けー!」
胸を張って先頭を歩くコタロー。しかしその歩幅は体のサイズに合わせて小さく、大人たちからは小さな子を微笑ましく見守るような空気が漂っていた。
数日、野宿をしながらも歩みを進め、次第に植生がエルドリン王国特有のものからアストロ王国らしいものへと変わっていく。私たちからすれば、ようやく見慣れた景色になってきた、ということだ。
来る時は、この植生の移り変わりに大興奮していたのは私だが、今度はリュールさんたちが大興奮である。
「おお!なんですか、この植物は!初めてみましたよ!」
「土の質も変わっているような気がするぞ……。こんなにも違いが出るものなのか」
「魔物は?!この地にはどんな魔物がいるのかな!」
「未知の生物との戦闘……。腕がなるぜ」
上から、リュールさん、ディルクさん、シェーラさん、ジェイドさんの言葉だ。
植物や環境に興味をもつ二人と、魔物や動物に興味をもつ二人。見事に別れた。
しかし四人とも、興奮気味に周囲を見回しながらも団体行動を崩すようなことは一切しない。我が道を行くコタローをしっかりと視界の端に捉え、突飛な行動にも素早く対応する。どこか浮足立っている様子を見せながらも、冷静さはきちんと保っているようだ。
と、そこで、シェーラさんとジェイドさんの願いに引き寄せられたように魔物が現れる。
やってきたのはオオカミの魔物、ガルフスだ。全部で四匹。牙をむき出しにしてガルガル唸りながら近づいてくる。
「ほう、これが動物型の魔物。いいねぇ、滾る」
「ジェイド、右の二匹は私がやるから手を出さないでね!」
「お前こそ、俺の獲物に手を出したら容赦しないぜ」
その言葉と同時に、二人は勢い良く飛びかかる。
これまで見てきたのとは比べ物にならないほど好戦的な様子に、まさかここまで戦闘狂だったとは……と少し驚いた。
二人の戦闘スタイルは主に近接物理攻撃だ。ジェイドさんは両手にはめた金属製のガントレットで格闘。シェーラさんは自分の身長より少し長い槍での攻撃。
剣で切りつけるのとは違い、殴りつけたり突き刺したり、倒した敵の姿はなかなかにグロテスクな状態になることもあるが、二人とも戦闘に長けているだけあってあっという間に片付けてしまう。
「普通の動物とは違い、やはり魔物は好戦的だな」
ガントレットについた血を振り払いながら、ジェイドさんは楽しそうに言う。
「あれほどまでに殺意を向けられたのは久しぶり!やっぱりスリルがある方が楽しいわ」
言っていることは物騒なのに、心底楽しそうなシェーラさんが恐ろしい。
エルドリン王国に出現する魔物はほとんどが虫魔物なうえ、虫避けの香を持っておけばほとんど寄ってくることもないので魔物と戦うのは久しぶりだったようだ。虫魔物は食料にもならないし、たまに数を減らすために狩る程度らしい。
どこかスッキリした様子の二人に、さっさと倒した魔物を回収してしまったアルトさんが先へ進むよう促す。
戦う気満々だった二人に獲物を譲ったコタローは、我関せずと一匹先に進んでいた。
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