94 / 812
あの夢と記憶 香
しおりを挟む
俺は小さい頃、近くに住んでいた女の子と仲が良かった。その子は幼稚園の時に引っ越していった。名前も顔も、微かにしか覚えていない。けれど、またいつか会えたら良いなぁ…って、思っていた。
小学校、中学校とたくさんの出会いをして恋もした。仲の良い友達も出来た。今は高校の友達とよく一緒にいるけれど、何か変な感じがした。その変な感じが、ある日夢となって現れた。
『…え、か……くん…、み…は、と…いっ…うの…』
遠くてよく聞こえない。長い茶色がかった黒髪が印象的な女の子。ところどころ、赤茶色も混ざっている。ふわふわとした感覚が、俺を襲う。
なんて言ったの?
俺は口を動かしたが、声となっては現れなかった。くらくらとしてきて、やけに暑い気がした。夏場の脱水症状みたいな感覚。
『ばいばい』
その言葉ははっきり聞こえたのに、その後に続いた言葉は聞こえなかった。
ドタァアン!!
大きな音がした。目を開けると目の前には自分の足と天井があって、背中が急角度で支えられていた。
「どうしたの!?」
母さんが慌ててエプロンと髪を乱しながら俺の部屋にノックもせず入ってきた。そして、俺を見て言葉も出ないようだった。呆れているようだ。
それもそのはず、俺はベッドから滑り落ちていて、毛布は体に巻き付いた状態だった。
「……」
母さんは何も言わずにドアを閉め、朝食作りに戻って行った。
「いっ…たぁ…」
朝から醜態を見せてしまった、と思いながら時計を確認する。時刻は5時2分を指していた。いつもより遅い起床に、思わず溜め息が出る。あの不確かな夢を見ると時間を過ぎてしまうのだ。そんな朝だった。俺は階段を降りて、用意された朝食を食べる。いつも通り安心する、美味しい味だが、母さんにはそんなこと言わない。恥ずかしいし。そういえば潮賀くんとか言う人は母親にも敬意を払い、敬語らしい。同級生にも敬語で、癖らしい。俺はちょっと苦手かな。とはいえ隣のクラスだから体育は同じだし、たまに関わるのでもう少し話して見ないとな、と思いながら牛乳を飲む。最近は嫌いな人も増えているみたいだが、爽やかな朝の味がする。
朝食を終え、身支度を済ませると母さんも準備を始める。俺の家は共働きで、父さんは単身赴任をしているので1ヶ月に1度くらいしか会わない。両親は仲がとても良いので、その1ヶ月に1度の帰りの内、2、3回に1回は2人で外に出かける。俺は別に構わないのだが、たくさん土産を買ってくるので、消費するのが大変になる。
なんて色々考えながら、俺は玄関の扉を開けた。
小学校、中学校とたくさんの出会いをして恋もした。仲の良い友達も出来た。今は高校の友達とよく一緒にいるけれど、何か変な感じがした。その変な感じが、ある日夢となって現れた。
『…え、か……くん…、み…は、と…いっ…うの…』
遠くてよく聞こえない。長い茶色がかった黒髪が印象的な女の子。ところどころ、赤茶色も混ざっている。ふわふわとした感覚が、俺を襲う。
なんて言ったの?
俺は口を動かしたが、声となっては現れなかった。くらくらとしてきて、やけに暑い気がした。夏場の脱水症状みたいな感覚。
『ばいばい』
その言葉ははっきり聞こえたのに、その後に続いた言葉は聞こえなかった。
ドタァアン!!
大きな音がした。目を開けると目の前には自分の足と天井があって、背中が急角度で支えられていた。
「どうしたの!?」
母さんが慌ててエプロンと髪を乱しながら俺の部屋にノックもせず入ってきた。そして、俺を見て言葉も出ないようだった。呆れているようだ。
それもそのはず、俺はベッドから滑り落ちていて、毛布は体に巻き付いた状態だった。
「……」
母さんは何も言わずにドアを閉め、朝食作りに戻って行った。
「いっ…たぁ…」
朝から醜態を見せてしまった、と思いながら時計を確認する。時刻は5時2分を指していた。いつもより遅い起床に、思わず溜め息が出る。あの不確かな夢を見ると時間を過ぎてしまうのだ。そんな朝だった。俺は階段を降りて、用意された朝食を食べる。いつも通り安心する、美味しい味だが、母さんにはそんなこと言わない。恥ずかしいし。そういえば潮賀くんとか言う人は母親にも敬意を払い、敬語らしい。同級生にも敬語で、癖らしい。俺はちょっと苦手かな。とはいえ隣のクラスだから体育は同じだし、たまに関わるのでもう少し話して見ないとな、と思いながら牛乳を飲む。最近は嫌いな人も増えているみたいだが、爽やかな朝の味がする。
朝食を終え、身支度を済ませると母さんも準備を始める。俺の家は共働きで、父さんは単身赴任をしているので1ヶ月に1度くらいしか会わない。両親は仲がとても良いので、その1ヶ月に1度の帰りの内、2、3回に1回は2人で外に出かける。俺は別に構わないのだが、たくさん土産を買ってくるので、消費するのが大変になる。
なんて色々考えながら、俺は玄関の扉を開けた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる