神様自学

天ノ谷 霙

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1月20日 心配性の幼馴染

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「夕音」
ふと呼ばれて振り向くと、声の主は羅樹だった。目の腫れはとっくに引いているが、それでも私に接する度に心配そうな顔を浮かべる。
「羅樹、どうした…」
「体調は悪くない?何処か怪我とかしてない?痛いとか変だなって感じるところはない?疲れてたりしない?ちゃんとご飯食べた?睡眠は十分に取ってる?」
言い終わる前に、捲し立てるような問いの雨が降り注いだ。私は見慣れたその姿に溜め息を1つ吐いて、羅樹の眉間を小突いた。
「大丈夫だよ。あの時が特殊だっただけで私は健康体そのもの。体が弱いわけじゃないんだから、そんな心配しないの」
このやり取りは、私が学校に復帰してから毎日行われている。しかも別クラスということも手伝って廊下で捕まることが多いため、かなり目立つ。会話内容に微笑ましげに笑う同級生の目線が、かなり気恥ずかしかった。
私の言葉に毎日何か言い返そうと口を開き、視線を彷徨わせた後で頷く羅樹。そんなにも心配を掛けたのか、と罪悪感に苛まれる。
まぁ実際命の危機に瀕したことがあるわけで、その辺りは隠しているとはいえ自分のことを顧みなさすぎたので、反省すべきなのは自分ということも理解している。
「…うん、今日は僕、一緒に帰れるから」
「え?…あぁ、分かった。待ってる」
「うん!」
あれからというもの、羅樹は時間があれば登下校を共にすることに、まるで義務のように積極的である。かつての私のように避けられないのは嬉しいことだが、付き合ってもない男女が朝から夕方まで一緒というのは異例だと理解している。特に私達は羅樹のお父さんの仕事の都合により、たまに晩ご飯まで一緒だ。家が近いとはいえ、幼馴染の距離ではない。
そもそも今の羅樹にとっては、目を離すと体調不良で入院する可能性のある危なっかしい子、程度だろう。恋愛感情を向けられていない自覚はある。だから甘えちゃいけない。私はこの関係をきちんと終わりにしなければならない。そう思って最初の方は、自分がいかに健康かをアピールして突っぱねていたが、珍しく羅樹が折れてくれなかった。今にも泣きそうな顔で首を横に振り続ける姿は、今思い出しても胸が痛い。2度3度と往生際悪く、家だけでなく学校でも説明を行ったが、見兼ねた由芽や竜夜くんに私が譲歩するよう促された。他のクラスメイトも完全同意の姿勢だったため、無駄な抵抗だともう諦めている。
「1度置いて帰ろうかな…」
「そんなことしたら榊原くん、休み時間ごとにうちのクラスに来そうだよね」
「わっ!?紗奈!?」
「そうね。今は時間ある日だけだけど、何としてでも一緒に帰るように手を回し始めそうだわ」
「利羽まで!?」
私が怪訝そうな顔をすると、ペシッと後ろからファイルで頭を叩かれた。振り返ると由芽が呆れ顔を浮かべている。
「次移動教室だよ、夕音。早く準備して来なさい。私達が夕音を置いて行くわよ」
「え!?ちょ、ちょっと待って!」
慌ただしく次の時間の準備に取り掛かった私には、3人の会話は聞こえて来なかった。

「まぁもう既に根回しされてるんだけどね」
「夕音の体調の変化に気を付けてほしいってやつ?まぁ確かに頼まれたねー」
「あんなに必死な榊原くん、初めて見たわよね」
土下座でもしようという勢いで告げられたかつてのお願いを思い出し、3人は同様に苦笑いした。
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