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2月9日 噂の元凶
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あれから犯人は大人しかった。どうやら何も言わず黙りを貫き、噂の原因は自分と明の間で相違があったということにしたらしい。普段の様子は知らないが、多少のおっちょこちょいや話せて浮かれてしまった等の反省で済むのだろう。長期的に見れば賢いやり方だ。面白みのない噂の原因はすぐに噂を鎮火してくれるから。
1週間近く経ち、安心し始めた頃。明の噂が少しずつ落ち着きを取り戻し始めた頃のことだった。明とバレンタインのことで話をするため、一緒に帰れないかと昨日誘っておいた。羅樹には説明出来ないので、適当に誤魔化して先に帰って貰うよう昼休みに話しておいた。帰り支度を終えて明の方を向くと、陰鬱な表情で下を向いているのが見えた。
あの勇気を出した日から、明は少しずつ自分の意見を言えるようになっていた。時間は掛かるけれど、こちらが待てばしっかりと言葉を話せるようになった。多少は感情を見せるようになってくれていた。努力の途中で、まだ分かりやすく見せるのは難しいようだが、それでも多少仲が良ければ解釈出来る程度には回復していた。
そんな明が表情を消し、俯いている。何かあったのだろうか。とりあえず約束は終えているので明の方へ向かうと、明は慌てた様子で首を横に振った。
「ごめん、今日一緒に帰れない…」
「え?どうかしたの?」
「ちょっと、呼び出されて…」
「あぁ。いいよ、待ってる」
先週あんなことがあったばかりなのだ。告白の呼び出しなど恐怖でしかないだろう。それでも答えに行く明は律儀というか真面目というか、そこがモテる理由なのかもしれないなと思った。
明は私の返事に困ったようにすると、ふるふると首を横に振る。
「ううん、先に帰って」
「…そ、そう?」
頑なに譲らなかったので、表面上は了承を伝えた。何となくそれ以上踏み込めず、先に帰ったふりをする。そして人気のない場所で"恋使"に姿を変えると、しばらくして出て来た明の後を追った。普通に考えれば私はただの野次馬でしかない。邪魔者であるが、なんとなく本能が危険だと示していた。そしてついて行くと、これまた人気のない場所に明は呼び出されていた。大声を出しても他の人にバレにくいような場所。放課後に人が来にくい場所。どんどん不安が過ぎっていく。
「…あの」
明の前には、見覚えのない男の子がいる。呼び出した人だろうか、と考えると、彼は急にその口角を歪に上げた。
「どうして否定したの?」
最初は何のことか分からなかった。けれど、これは告白ではないことがわかる。明の態度や、目の前の彼の細められた瞳の奥から憎悪の感情が読み取れること、たくさんの手掛かりから事実に行きついてしまう。
もしかして、この人が、先週の噂の犯人?
心臓が大きく脈打つ。冷や汗が止まらない。人気はない。今更誰かを呼んできても、その間に事が起これば私には何も出来ない。どうすべきかと戸惑っていると、男が口を開いた。
「せっかくさぁ、チャンスあげたのに」
チャンス?
何の話だ、と男の顔を見る。酷く歪んだ笑顔が気味悪く貼り付けられていた。
「どうして否定したの?」
じりっと1歩、明に歩を進める。明は恐怖に負けじと勇気を奮う。
「だって、付き合ってない、から!」
噂を否定した時と同じ、はっきりとした声だった。
1週間近く経ち、安心し始めた頃。明の噂が少しずつ落ち着きを取り戻し始めた頃のことだった。明とバレンタインのことで話をするため、一緒に帰れないかと昨日誘っておいた。羅樹には説明出来ないので、適当に誤魔化して先に帰って貰うよう昼休みに話しておいた。帰り支度を終えて明の方を向くと、陰鬱な表情で下を向いているのが見えた。
あの勇気を出した日から、明は少しずつ自分の意見を言えるようになっていた。時間は掛かるけれど、こちらが待てばしっかりと言葉を話せるようになった。多少は感情を見せるようになってくれていた。努力の途中で、まだ分かりやすく見せるのは難しいようだが、それでも多少仲が良ければ解釈出来る程度には回復していた。
そんな明が表情を消し、俯いている。何かあったのだろうか。とりあえず約束は終えているので明の方へ向かうと、明は慌てた様子で首を横に振った。
「ごめん、今日一緒に帰れない…」
「え?どうかしたの?」
「ちょっと、呼び出されて…」
「あぁ。いいよ、待ってる」
先週あんなことがあったばかりなのだ。告白の呼び出しなど恐怖でしかないだろう。それでも答えに行く明は律儀というか真面目というか、そこがモテる理由なのかもしれないなと思った。
明は私の返事に困ったようにすると、ふるふると首を横に振る。
「ううん、先に帰って」
「…そ、そう?」
頑なに譲らなかったので、表面上は了承を伝えた。何となくそれ以上踏み込めず、先に帰ったふりをする。そして人気のない場所で"恋使"に姿を変えると、しばらくして出て来た明の後を追った。普通に考えれば私はただの野次馬でしかない。邪魔者であるが、なんとなく本能が危険だと示していた。そしてついて行くと、これまた人気のない場所に明は呼び出されていた。大声を出しても他の人にバレにくいような場所。放課後に人が来にくい場所。どんどん不安が過ぎっていく。
「…あの」
明の前には、見覚えのない男の子がいる。呼び出した人だろうか、と考えると、彼は急にその口角を歪に上げた。
「どうして否定したの?」
最初は何のことか分からなかった。けれど、これは告白ではないことがわかる。明の態度や、目の前の彼の細められた瞳の奥から憎悪の感情が読み取れること、たくさんの手掛かりから事実に行きついてしまう。
もしかして、この人が、先週の噂の犯人?
心臓が大きく脈打つ。冷や汗が止まらない。人気はない。今更誰かを呼んできても、その間に事が起これば私には何も出来ない。どうすべきかと戸惑っていると、男が口を開いた。
「せっかくさぁ、チャンスあげたのに」
チャンス?
何の話だ、と男の顔を見る。酷く歪んだ笑顔が気味悪く貼り付けられていた。
「どうして否定したの?」
じりっと1歩、明に歩を進める。明は恐怖に負けじと勇気を奮う。
「だって、付き合ってない、から!」
噂を否定した時と同じ、はっきりとした声だった。
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