神様自学

天ノ谷 霙

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4月10日 神社

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私は恋使の姿で稲荷様の前に座っていた。
「…それで、二人は”晴れ”だったと感じたのか」
「はい。あ、そういえば”晴れ”だと感じた時、たくさんの白い花が咲き始めたんです。あれってどうして咲いたのかわかりますか?」
私が真剣に聞くと、稲荷様は目を丸くした後ふっと微笑んだ。
「ならば”快晴”で間違い無いようだな」
「快、晴…?」
「あぁ。言い換えると、二人は恋仲で間違い無いようだ。その花はお主の心が最も強く反応した時や、二人が”快晴”…つまり恋仲になった時に咲くものだ」
「あ、じゃあ二人はもう恋人同士ってことですね」
「うむ。何の花が咲いたのじゃ?」
「あ、えぇと、アジアンタム…と胡蝶蘭です」
私はあの時咲いた二つの白い花を思い出しながら話す。ふわふわと風に乗り、二人を囲むように舞い踊る。
「そうか。どんな言葉が浮かんだか、覚えているか?」
「はいっ!アジアンタムが繊細、日陰者です。胡蝶蘭が清純、変わらぬ愛です」
花が咲いたと同時に浮かんだ言葉。一生忘れないかのように脳裏に刻まれている言葉。
「数多い花と花言葉の中からそれらが選ばれたのか」
「選ばれた…?」
稲荷様の言い方に何か引っかかる。思わず聞き返すと、稲荷様は微笑んで疑問に答えてくれた。
「アジアンタムには天真爛漫、無垢、無邪気などもある。胡蝶蘭には純粋な愛、幸運が飛んでくるなどもある。しかしその言葉が選ばれたということはその言葉が相応しかったのだろう。花は相手を表すようなものが咲く」
「そ、そうなのですか」
確かに、花言葉や花の雰囲気が二人に合う、美しくも可愛らしい花々だった。花は好きなので、見たことがない花でも相手の雰囲気に合えば見ることが出来るのが少し楽しみになった。
稲荷様はすっと立ち上がり、外を見つめた。
「…夕音」
くるっと振り返り、私の頬を撫でる。
「い、稲荷様?」
少し恥ずかしい。しかし稲荷様の瞳が潤んでいるのに気付き、私は息を呑む。
「…これからも倒れたりするかもしれぬ。それでも続けてくれるか…?」
「…はい」
私はすぐに返事を返した。
私はもう決めていたから。自分に出来るならばやりたいと、やりぬこうと決めていたから。
稲荷様は私の返事の早さに驚き、微笑んだ。
「…そうか、ありがとう」
稲荷様はぐっと涙を拭い、もう一度笑った。
「じゃあ、私そろそろ…」
「あ、待て。もう一つ伝えることがある」
「え?」
鞄を肩にかけ、立ち上がった私を呼び止めて、稲荷様は話し出す。
「誰かが実る度に来なくても良い。夕音の見た恋情や愛情などは、わたしにも伝わるようになっておる」
「あ、わかりました。でも…」
私は手を重ねて稲荷様を見つめる。そして、にっと笑った。
「また来ても良いですか?」
稲荷様は、一瞬びっくりしたようだったがすぐに笑って
「あぁ!」
と言った。
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