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4月10日 図書室の窓
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昨日、由芽さんと小野くんに何かあった筈なのだが今日は全くそんな様子を見せずに話していた。
昨日と全く変わらないことに首を傾げ、考えていたらいつの間にか昼休みになっていた。お弁当を食べ終わった由芽さんはさっと立ち上がった。
「私、ちょっと図書室行ってくるね」
「はーい、いってらっしゃい」
由芽さんは休み時間に教室にいないことが多い。情報収集に行くときは誰も追いつけないほどの猛スピードでどこかへ行くことがある。しかし、今日は私達に話しかけてからだったので情報収集では無いみたいだ。
図書室。そういえば昨日、二人が委員会をしていたのも図書室だった。ふと教室を見回すと小野くんもいない。もしかして、と思って私も後を追いかけた。なんとなく恋使の姿で図書室へ入った。すると、小野くんと由芽さんが委員会の仕事をしていた。どうやら、昨日の仕事がまだ残っていたらしい。何かを熱心に書き続ける小野くんの向かいに由芽さんが座り、仕事を半分とってやり始める。私と二人しかいない図書室に、時計の進む音とシャーペンの音のみが響く。
十分くらい経った頃、由芽さんが「んー」っと声を出しながら背伸びをした。小野くんも「やっと終わった…」と呟いて机に突っ伏している。由芽さんは開いた窓に近寄り、青く染まった空を見上げている。瞳が太陽の光を反射して輝いた。小野くんも由芽さんの近くに来た。そして小さい本棚の上に組んだ腕を乗せ、同じように空を見つめた。カーテンがふわりと二人を包んだ。
本当だ、二人は”晴れ”だ。
微笑ましくて、ついつい笑顔になってしまう。すると私の周りから小さな白い花が咲き始めた。私は驚いたが、その小さな花たちは風に舞い由芽さんたちの周りで踊った。由芽さんの手の平に一つ、花が乗った。その瞬間、脳裏にある言葉が浮かんだ。
アジアンタム。花言葉は繊細、日陰者。
それは由芽さんの少し曲がった処世術と、心の奥の優しいところを表しているようだった。
もう一つ、白い花弁が舞った。真ん中の小さな黄色を囲むように咲いた、蝶に似た花。それは胡蝶蘭だった。花言葉は清純、変わらぬ愛。小野くんの一途な想いを表しているようだった。
私はそっと図書室を出た。あの二人に何があったのかはわからないが、”晴れ”ならば水を差すことも無い。稲荷様に報告するのが楽しみだった。そして、何故花が溢れて来たのか知りたくなった。
考えをいくつかにまとめながら人間に姿を戻し、うきうきと教室へ帰った。
昨日と全く変わらないことに首を傾げ、考えていたらいつの間にか昼休みになっていた。お弁当を食べ終わった由芽さんはさっと立ち上がった。
「私、ちょっと図書室行ってくるね」
「はーい、いってらっしゃい」
由芽さんは休み時間に教室にいないことが多い。情報収集に行くときは誰も追いつけないほどの猛スピードでどこかへ行くことがある。しかし、今日は私達に話しかけてからだったので情報収集では無いみたいだ。
図書室。そういえば昨日、二人が委員会をしていたのも図書室だった。ふと教室を見回すと小野くんもいない。もしかして、と思って私も後を追いかけた。なんとなく恋使の姿で図書室へ入った。すると、小野くんと由芽さんが委員会の仕事をしていた。どうやら、昨日の仕事がまだ残っていたらしい。何かを熱心に書き続ける小野くんの向かいに由芽さんが座り、仕事を半分とってやり始める。私と二人しかいない図書室に、時計の進む音とシャーペンの音のみが響く。
十分くらい経った頃、由芽さんが「んー」っと声を出しながら背伸びをした。小野くんも「やっと終わった…」と呟いて机に突っ伏している。由芽さんは開いた窓に近寄り、青く染まった空を見上げている。瞳が太陽の光を反射して輝いた。小野くんも由芽さんの近くに来た。そして小さい本棚の上に組んだ腕を乗せ、同じように空を見つめた。カーテンがふわりと二人を包んだ。
本当だ、二人は”晴れ”だ。
微笑ましくて、ついつい笑顔になってしまう。すると私の周りから小さな白い花が咲き始めた。私は驚いたが、その小さな花たちは風に舞い由芽さんたちの周りで踊った。由芽さんの手の平に一つ、花が乗った。その瞬間、脳裏にある言葉が浮かんだ。
アジアンタム。花言葉は繊細、日陰者。
それは由芽さんの少し曲がった処世術と、心の奥の優しいところを表しているようだった。
もう一つ、白い花弁が舞った。真ん中の小さな黄色を囲むように咲いた、蝶に似た花。それは胡蝶蘭だった。花言葉は清純、変わらぬ愛。小野くんの一途な想いを表しているようだった。
私はそっと図書室を出た。あの二人に何があったのかはわからないが、”晴れ”ならば水を差すことも無い。稲荷様に報告するのが楽しみだった。そして、何故花が溢れて来たのか知りたくなった。
考えをいくつかにまとめながら人間に姿を戻し、うきうきと教室へ帰った。
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