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"想い" ×××
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夕闇が漆黒に変わる頃、神社の中では2つの影が震えていた。金色の糸に縋るように抱き締めるのは、榊原 羅樹だ。幼い頃から隣にいた夕音が目の前でいなくなる、そんな突拍子もない出来事を目撃してから何の制御も出来なくなっていた。誰かに話したら見間違いだと笑われるだろう。夢見がちだと揶揄されるかもしれない。けれど羅樹はこれが夢ではないことを、何となく察していた。幼い頃にも見た、風に攫われる夕音の姿。泣き叫ぶ声が表に出るか心にしまっておけるか、それくらいの変化しかない。昔と変わらず、夕音を想う気持ちは誰よりも強かった。失うことを恐れ、遠ざかることに恐怖する。それなのに、一度夕音の笑顔を見れば、心の底から安心したように笑う。夕音の視線が他のものに取られていたら怯えるくせに、それを受け入れようと葛藤する。
これだからヒトは面白い。
私はヒトの物語を楽しむ趣味はないが、こちらの世の管理者として関わる程度なら、それを見聞きするくらいなら許されるだろう。誰に許されるのかは、私にもわからないけれど。
『恋音』
鈴を転がすような音がする。金属の擦れるような音がして、一瞬で目の前に恋音が現れた。今この神社内には結界を張っているし、あれ程強く結び付いている恋音も夕音と離れることが可能なのだろう。先程、私が2人に分離するように告げた際も可能だったから。
跪く恋音に、少しだけ言葉を貸す。まるで独り言のように、呼んだことさえ忘れたかのように、障子の外の2人を眺めながらゆっくりと告げる。
『"好き"という気持ちは不思議ですねぇ』
何の脈絡もなく話し出した私に、恋音の頭に疑問符が浮かんでいるのが見える。私はそちらに気を取られていないふりをしながら、くすくすと笑って地平線の宵闇を眺めた。
『色々な形があって』
恋や愛、愛の中にも親愛や友愛、様々な形を持ち得る。
『離れたり近付いたりして』
葛藤して、適切な距離を探す。
『それでも絶対に結びは解けなくて』
それでも、完全に断ち切ることなんて出来なくて。
『苦しくて、もがいて、ちょうど良いところを探すために躍起になって』
何しても絡め取られる想いが苦しくない場所を探して。
『心と頭が分離しても抗えないのですから』
理性と本音のせめぎ合いすらも、強すぎる想いには止められないから。
これだけヒントを与えれば、きっと恋音も気付くだろう。まだ混乱しているみたいだけど、最後に一押しすれば彼女は理解する筈。これは夕音と羅樹だけの話ではない。恋音だって本当は結び付いているのに、それを必死に引き離そうとしているのだから。
『本当に傍に居なくても良いのなら、"待って"なんて言葉は出て来ないんですよ』
私の言葉に、恋音はハッとしたようだった。その様子ではまだ自分のことには気付いていないようだけど、そこまで手は貸さない。私はこの世の管理者で、全てを記録する為に存在するのだから。
『私に近いとは、厄介ですねぇ』
私、否守と呼ばれる何かは、そう呟くしかなかった。
これだからヒトは面白い。
私はヒトの物語を楽しむ趣味はないが、こちらの世の管理者として関わる程度なら、それを見聞きするくらいなら許されるだろう。誰に許されるのかは、私にもわからないけれど。
『恋音』
鈴を転がすような音がする。金属の擦れるような音がして、一瞬で目の前に恋音が現れた。今この神社内には結界を張っているし、あれ程強く結び付いている恋音も夕音と離れることが可能なのだろう。先程、私が2人に分離するように告げた際も可能だったから。
跪く恋音に、少しだけ言葉を貸す。まるで独り言のように、呼んだことさえ忘れたかのように、障子の外の2人を眺めながらゆっくりと告げる。
『"好き"という気持ちは不思議ですねぇ』
何の脈絡もなく話し出した私に、恋音の頭に疑問符が浮かんでいるのが見える。私はそちらに気を取られていないふりをしながら、くすくすと笑って地平線の宵闇を眺めた。
『色々な形があって』
恋や愛、愛の中にも親愛や友愛、様々な形を持ち得る。
『離れたり近付いたりして』
葛藤して、適切な距離を探す。
『それでも絶対に結びは解けなくて』
それでも、完全に断ち切ることなんて出来なくて。
『苦しくて、もがいて、ちょうど良いところを探すために躍起になって』
何しても絡め取られる想いが苦しくない場所を探して。
『心と頭が分離しても抗えないのですから』
理性と本音のせめぎ合いすらも、強すぎる想いには止められないから。
これだけヒントを与えれば、きっと恋音も気付くだろう。まだ混乱しているみたいだけど、最後に一押しすれば彼女は理解する筈。これは夕音と羅樹だけの話ではない。恋音だって本当は結び付いているのに、それを必死に引き離そうとしているのだから。
『本当に傍に居なくても良いのなら、"待って"なんて言葉は出て来ないんですよ』
私の言葉に、恋音はハッとしたようだった。その様子ではまだ自分のことには気付いていないようだけど、そこまで手は貸さない。私はこの世の管理者で、全てを記録する為に存在するのだから。
『私に近いとは、厄介ですねぇ』
私、否守と呼ばれる何かは、そう呟くしかなかった。
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