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3月4日 僅かな変化
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怠い体を起こしながら、学校の支度を始める。昨日は稲荷様と恋音が互いの本心を曝け出し、長いことすれ違っていた関係がやっと元に戻った。背伸びをして、頬をぺちぺちと叩いて気合いを入れる。
昨日力を使ったことで、少し体調が優れない。けれど私も進まないといけないから、どうせ明日も休みだしと登校の準備を進める。
玄関を出ると、ちょうど同時に羅樹が家から出て来るのが見えた。待ち合わせの時間、5分前だ。羅樹は私を見つけると、ぱっと顔を輝かせて忠犬のように私の元に駆け寄って来る。
「おはよう、羅樹」
「おはよう!」
ぱたぱたと動く耳と尻尾が見える気がする。以前までなら過保護だの、誰にでも懐くんだろうだの、現状を素直に認められない私が心の中で悪態をついていたところだが、今日はそのまま受け取ることが出来た。
羅樹はきっと、今日も私が隣に"いる"ことが嬉しいんだ。
恋音達との会話の中で見つけた答え。羅樹の重く苦しい本音。羅樹自身も自覚しているか曖昧な、その譲歩に隠された本当の言葉。恋使はそれを拾い上げるのが役目だから、気付いてしまった。
ううん、やっと気付けた。
「羅樹」
「うん?なぁに?」
「…ううん、何でもない」
「えぇ?」
呼び掛ければ、ホッとしたように笑う。それが羅樹のどんな感情を表しているのか、今ならわかる。私が誤魔化すように笑うと、首を傾げた後無邪気に笑って今話題になっているものの話をし始めた。楽しそうに話をする羅樹を見ていると、あっという間に学校へと着いていた。
「おはよ~」
「はよーっす」
「おはよう」
個性的な挨拶が飛び交う中、私はさっさと荷物を自分の机に置く。ほとんど授業らしい授業はないので、取り出すものも少ない。誰かに話しかけに行こうかと教室を見回したところで、北原くんを見つけてドキッとした。一瞬で一昨日見た光景が蘇る。
爽が北原くんにキスをしたように見えた、あの一瞬の出来事。
北原くんはいつも通りで、昨日家のカフェが大繁盛だったと喜ぶ潮賀くんの話を聞いている。亜美は眞里阿と楽しそうに話をしているし、何かあったなら絶対に知っている筈の由芽も気にする様子はない。
「あ、いた!夕音ー!」
「わ、霙?」
きょろきょろと辺りを見回していたのを不審がられていないかと戸惑っていると、霙はそのまま私の元へ駆け寄って来て、いつも通りの笑顔を向けてくれた。
「今月末に演劇部の発表があるんだけどさ、なるべく観客いっぱいにしたいから個人でも誘えって言われてるんだよね。多分後でプリントが配られると思うけど、もし良ければ来て!」
そういえば校舎のあちこちに貼り出されていた。私は頬を緩めて頷く。
「うん、行く。楽しみにしてるね」
「ありがとう!任せて、最高の劇にしてみせるから!」
それだけ言うと、霙はすぐに別の子を誘いに行った。文化祭で見た劇はとても引き込まれるものだったから、とても楽しみだ。
羅樹を誘って、一緒に行ってみようかな。
過った考えに、我ながら良い考えだと頷く。後で予定を確認しよう、と心の端に書き留めた。
昨日力を使ったことで、少し体調が優れない。けれど私も進まないといけないから、どうせ明日も休みだしと登校の準備を進める。
玄関を出ると、ちょうど同時に羅樹が家から出て来るのが見えた。待ち合わせの時間、5分前だ。羅樹は私を見つけると、ぱっと顔を輝かせて忠犬のように私の元に駆け寄って来る。
「おはよう、羅樹」
「おはよう!」
ぱたぱたと動く耳と尻尾が見える気がする。以前までなら過保護だの、誰にでも懐くんだろうだの、現状を素直に認められない私が心の中で悪態をついていたところだが、今日はそのまま受け取ることが出来た。
羅樹はきっと、今日も私が隣に"いる"ことが嬉しいんだ。
恋音達との会話の中で見つけた答え。羅樹の重く苦しい本音。羅樹自身も自覚しているか曖昧な、その譲歩に隠された本当の言葉。恋使はそれを拾い上げるのが役目だから、気付いてしまった。
ううん、やっと気付けた。
「羅樹」
「うん?なぁに?」
「…ううん、何でもない」
「えぇ?」
呼び掛ければ、ホッとしたように笑う。それが羅樹のどんな感情を表しているのか、今ならわかる。私が誤魔化すように笑うと、首を傾げた後無邪気に笑って今話題になっているものの話をし始めた。楽しそうに話をする羅樹を見ていると、あっという間に学校へと着いていた。
「おはよ~」
「はよーっす」
「おはよう」
個性的な挨拶が飛び交う中、私はさっさと荷物を自分の机に置く。ほとんど授業らしい授業はないので、取り出すものも少ない。誰かに話しかけに行こうかと教室を見回したところで、北原くんを見つけてドキッとした。一瞬で一昨日見た光景が蘇る。
爽が北原くんにキスをしたように見えた、あの一瞬の出来事。
北原くんはいつも通りで、昨日家のカフェが大繁盛だったと喜ぶ潮賀くんの話を聞いている。亜美は眞里阿と楽しそうに話をしているし、何かあったなら絶対に知っている筈の由芽も気にする様子はない。
「あ、いた!夕音ー!」
「わ、霙?」
きょろきょろと辺りを見回していたのを不審がられていないかと戸惑っていると、霙はそのまま私の元へ駆け寄って来て、いつも通りの笑顔を向けてくれた。
「今月末に演劇部の発表があるんだけどさ、なるべく観客いっぱいにしたいから個人でも誘えって言われてるんだよね。多分後でプリントが配られると思うけど、もし良ければ来て!」
そういえば校舎のあちこちに貼り出されていた。私は頬を緩めて頷く。
「うん、行く。楽しみにしてるね」
「ありがとう!任せて、最高の劇にしてみせるから!」
それだけ言うと、霙はすぐに別の子を誘いに行った。文化祭で見た劇はとても引き込まれるものだったから、とても楽しみだ。
羅樹を誘って、一緒に行ってみようかな。
過った考えに、我ながら良い考えだと頷く。後で予定を確認しよう、と心の端に書き留めた。
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