神様自学

天ノ谷 霙

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3月16日 夢

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「っはぁ!!」
大量の息を吐いて飛び起きる。ドクドクと鼓動の動きが1往復すら焦れているかのように速まり、布団を掴んだ手が震える。肩が上下する度にくらくらしている脳に酸素が巡る感覚がして、私はゆっくりと辺りを見回した。なんて事のない、いつも通りの私の部屋。机の上に置かれた時計は、デジタルな様式で朝の7時前を指している。あともう少しすれば枕元に置いてある携帯が震え、目覚ましの音を鳴らすだろう。
そんな冷静な思考は、その直前に見た記憶から逃れるように忙しなく流れていく。頭が痛いわけでも喉が苦しいわけでもない。ただ何かが張り付いたかのように身体中がだるくて、それは恐らく今見たものによる冷や汗が皮膚を覆っているせいだろうと感じる。何処か他人事のように、現実から逃げる。混乱と困惑が頭の中を覆って、吐きそうになる。
何の、夢だったのか。
「…っは、…っはぁ…っ」
上手く息が吸えなくて、胸元を押さえて呼吸に集中する。膨らみと凹みを繰り返す胸がその体温を手に伝えて来て、私はやっと地面に足がついたような気がした。
「…おかしいな、こんな夢…」
時折こんな状態になることはあった。朝起きたら身体中が汗びっしょりで、息も荒く心臓が騒がしい。けれどそんな時は決まって直前の夢の記憶なんてなくて。だからこんなにもはっきりと覚えている珍しさに、酷く心がざわついた。
ふらつく足を叱咤してベッドに腰掛ける姿勢になると、目覚ましを止める。全身鏡の前で顔色を確認すればやはり真っ青で、こんな状態では母に心配をかけてしまうなと自嘲した。
幸い、早めに目が覚めたので時間はある。少しだけここで支度するなりして、顔色が戻るのを待とう。そうして時間潰しのために今日の支度を再確認し、忘れ物がないか一つ一つ見ていく。時々夢がフラッシュバックするけれど、私は首を横に振って脳裏から剥がそうと必死になった。忘れたい記憶ほど張り付くものだけど、見えないふりをして私は部屋を出る。朝ご飯を食べて、着替えて、羅樹のところに確認しに行って、登校する。羅樹は、本人曰く元気だが大事を取ってお休みすることにしたらしい。今日はお父さんも家にいるそうで、嬉しそうにしていた。私は安堵のため息を吐いて、羅樹に行って来ますの挨拶をする。その瞬間少し不安そうな顔を浮かべていたけれど、今話せることではないと無意識に笑顔を取り繕っていた。
1人で歩く通学路は久しぶりな気がして、何だか目の奥が熱くなってくる。学校に行く途中で見えた神社に暗い雰囲気を感じて、入ろうと動いた足がいつの間にか離れるように動いていた。
私は稲荷様のいる霜月神社から、逃げるように走り出していた。
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