神様自学

天ノ谷 霙

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3月24日 不安要素

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虹様が私に色々と聞いて来たので、いくつか許可を出した。契約に近いそれが効力を持ったのか確認するため、虹様も私の中に戻る。外見上は私と羅樹のみになり、その状態で私は声に出さず虹様に問い掛ける。

『聞こえております。私の声も届いておりますか?』

はい。大丈夫です。

『良かった、これで緊急時の連絡も出来ますね』

結んだのは、声以外の手段で思考を共有する自由。思考を覗くというより、心を媒介手段とした会話だ。相手を想定した問い掛けがノック代わりとなり、繋ぐことが出来る。これは虹様の管轄である"気"の流れを用いたものらしい。

『では少し、視界をお借し致します』

先程の羅樹と同じように、視界を共有する。向かいに座っている羅樹の目が瞬いたので、恐らく私の瞳の色も一瞬変化したのかもしれない。虹様の瞳の色は赤の為、ほぼ変化はなかったかもしれないが。
瞬きをすれば、視界が変化する。見覚えのある景色。ヒトならざるモノの浮遊する空間。羅樹の中にあるリーロの気配も、私の中にいる虹様の気配も把握出来る。体の奥に力が巡って、本来の元気を取り戻したような気分だ。指先まで神経が張り詰めたように感覚がはっきりしている。流れを失って溶け込んでいたそれが、また動き方を思い出して泳ぎ始めたようだ。

『…夕音様…?』

ううん、なんでもない。視界、変わったよ。

『それは良かった。私も、リーロの気配を正確に把握することが出来ております。万が一逸れたり他の神に邪魔されても、繋ぐことが出来ます』

「繋ぐ…?」
思わず声に出してしまった。虹様が疑問符を浮かべているのが分かるが、私は再び問い掛ける。

その繋がりは、誰かに断ち切られたり邪魔されたりしないのですか?

『基本的には出来ません。お互いが契約を切らない限り。ですが最上位のお方がどうにか出来る可能性は否定出来ませんし、例外として"えにしの神"ならば断ち切るくらい造作ないでしょう』

つまりは、縁の神が我々の敵対勢力になった場合、羅樹の居場所が分からなくなる恐れがあるということだ。

先に、その縁の神様の元へ行けませんか?

『え?』

不安は先に潰しておくに限ります。味方につけてしまえば、それによるアクシデントは防げるでしょう?

『そう、ですね』

虹様の返事は芳しくなかった。理由は、その当人である縁の神様はえらく活発な性格で、一つの場所に留まることは少ないとのことだった。使つかいなら捕まえられるかもしれないが、2柱いる内の片方は、最上位の片方、否守いなもり様ではない方との連絡役だという。その為、会える可能性は限りなく低い。もう片方は縁の神様の仕事を引き受けたり繋いだり渡したりと、事務職のようなことをしているから忙しい可能性があるとのことで、会うことはかなり難しいとのことだった。代わりに、そんな性格だからこそ片方の陣営に肩入れして言い分も聞かずに一方的に縁を切るようなこともしないだろうとのことだった。
少しの不安を残しながらも、そのまま稲荷様の元へ行く方が良いとの結論になった。
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