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00.あの人達は今! 予定が狂った人達
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朝の8時過ぎ⋯⋯。
サブリナが慌てて寮の部屋を飛び出し、階段を駆け下りてロクサーナの部屋を覗いた後、セシルの部屋のドアを何度も叩いた。
ドンドン⋯⋯ドンドンドン!
着替えの途中らしいセシルがムッとした顔で顔を出した。
「どした? まだ準備できてないんだけど」
「呑気にしてる場合じゃないのよ! ロクサーナが⋯⋯魔鳥が⋯⋯手紙って」
「待って待って! ゆっくり話してよ、意味がわかんない」
床に散らばった私服や空箱を足で避け、ソファの上の小説や鞄を勉強机の上に移動したセシルが、サブリナに座るよう声をかけた。
「⋯⋯部屋、こんなだったかしら。随分と汚くなってるわ」
「仕方ないじゃん、忙しいんだもん。サブリナみたいにメイドがいるわけじゃないんだから、部屋の片付けなんてしてる暇ないよ」
「⋯⋯そうよね。最近はお付き合いが忙しいもの」
「週に何回かメイド貸してくれる?」
「それは無理よ! 私だって忙しいんだもの。それよりも、魔鳥が来たの。でね、ロクサーナが学園を辞めるんですって」
「ええっ! ダメよ、そんなの認められない。なんでそんな事になったの!? いつから? いつ帰るの?」
「部屋を覗いたけどロクサーナはもう出てったみたいよ。帰ってくる予定もなさそう。
急な仕事が入ったから、セシル達や学園に連絡しておくようにって」
「もうすぐ試験なのに、どうすんのよ!」
「私だって来週提出予定の課題を頼むつもりで⋯⋯」
試験用にロクサーナのノートを狙っていたセシルと、課題をロクサーナに丸投げするつもりで、週末にびっしりと予定を入れているサブリナ。
「仕事だなんで酷くない? 聖女だって言うけどさ、ロクサーナが何の仕事したとか聞いた事ないもん」
「私は魔法士だから知らないのかと思ってた。聖女見習いのセシルも知らないなんて思わなかったわ」
「打ち合わせでは見かけたとか言う人がたまにいるけど、一緒に仕事した人はいないって絶対おかしいでしょ!? 仕事じゃなくて逃げ出したんじゃない?」
「どう言う事?」
「そっか、サブリナの部屋は3階だから知らないんだ。寮監が口外禁止って言ってたんだけど昨夜⋯⋯」
ロクサーナの部屋を調べた時、数人の生徒が部屋から出てきたが『問題は起きていない、ロクサーナの勘違い』だと全ての部屋にわざわざ連絡がきた。
「なんて事なの! ロクサーナは勘違いで騒いで騎士団まで呼んだのね」
「王宮女官まで駆り出されたんですって」
「それは恥ずかしくて顔を出せなくなって当然だわ。こう言っては申し訳ないけど、ロクサーナの部屋に盗みに入るなんてありえないと思うわ」
「だよね、アクセサリーとかも安物ばっかりだったし。あっ、異空間収納のポーチは欲しかったけどね」
ロクサーナの異空間収納は、たまたま手に入れたアーティファクトだと聞いているセシルは、何度か売って欲しいと頼んで断られている。
「お金ならいくらでも払う。父さんが出してくれるからって言ったし、足りなかったら毎月の給料から払うからって頼んだのにね。
アレがあるから魔導具とか薬とかの転売で儲けてるんだよ。聖女の仕事なんてしないで、畑で土まみれになってるし」
「しょっちゅういなくなるとか、年寄りの庭師と遊んでるって言うのはよく聞くわ」
教会の裏にある広大な畑では、一部の野菜と薬草を育てている。
トラウザーズ姿のロクサーナが畑の中にしゃがみ込んでいる姿や、庭師と何やらヒソヒソと話しているのを見た者は多い。
「理由はともかく、魔鳥が来たんなら手紙でチクってやるから。んで、今は学園に行くしかないから準備するね」
登園したサブリナ達は担任に事情を報告。
「詳しい事は聞いてないのですが、手紙で連絡が来るようです」
「分かった、入学してからずっとバーラムは揉め事ばかり起こしてたし、仕事をしている方が合っているのかもな。学園長には俺から連絡しておこう」
午前の授業が終わった教室で、サブリナ達はレベッカに声をかけた。
「レベッカ、ちょっといいかしら」
「(ギクッ! まさか昨日のことがもうバレた!?)ロ、ロクサーナがいないなんて珍しいじゃない。何か用?」
アーノルド王子は今日も休んでいるが、レベッカの隣にはビクトールとトーマスが侍っている。
「ロクサーナが学園を辞めるんですって。急な仕事が入ったからって、今朝魔鳥がきたの」
「⋯⋯そうなの?(てことは気付かないでいなくなったって事?)仕事なら仕方ないけど~、寂しくなるわね~」
(昨日のうちにアレをもらっといて大正解じゃん! アタシってばやっぱり守られてるわ。次の神託で『女神の愛し子』とかって言われちゃうかも~。
大体、お父様やお母様も言ってたけど⋯⋯アタシが魔法士見習いとかありえないもんね。多分次は光属性が追加されて、エリアヒールとかリザレクションとかをパパって覚えるんだと思う。
あっ、全属性が出たらどうしよう。その時は、今までアタシの事をバカにした奴らを、全部まとめて懲罰房に入れちゃおっかな~。
んで、ロクサーナだけはそこから出さないで、ずーっと土下座させとくの)
ニマニマと妄想を膨らませるレベッカが満面の笑みを浮かべた。
「もういいかなぁ。見てわかると思うけど、ビクトールとトーマスを待たせてるの」
「え、ええ。時間をとってしまってごめんなさいね」
「気にしないでね。そうだ、今度昼食に誘ってあげるわ。今まではロクサーナがいたから⋯⋯ロクサーナのそばに行くと虐められちゃうから誘えなかったけど、これからは2人を誘えるようになるもんね。
カフェテリアの2階の特別室⋯⋯知ってる? みんなのと違って王宮並みの料理がコースで出てくるの~。
一緒に留学してきた仲間だもの、一度くらい味合わせてあげるわね」
本人だけは上機嫌で、上から目線のお誘いをしたレベッカは、サブリナ達の返事も待たずビクトールとトーマスの腕に手を添えて教室を出て行った。
レベッカの笑顔を見て鼻の下を伸ばしながら、チラチラとサブリナ達の方を振り返るビクトールとトーマス。
「なんか感じ悪い。レベッカは昔からあんな子だけど、ビクトールに予備扱いされてるみたいでムカつく」
「私も同感だわ。私には花束付きのくだらない詩を捧げてくるくせに、レベッカには宝石やドレスをセットで詩を贈ってるのよ。もう少しマシな方を探した方が良さそう。
トーマスなんかと結婚しなくても、いくらでもお相手はいるんだもの」
「サブリナは超絶美少女の魔法士だもん。その気になるだけで、世界中の男達が結婚を申し込むよ」
「セシルだって、見習いとは言っても聖女だもの。希少価値が高くて天使みたいに可愛くて引くて数多だわ。
もう少しで聖女ランクになるんでしょ? そうなったら大騒ぎ間違いなしだわ」
お互いに褒め合う2人だが、内心では自分達が何故ダンゼリアム王国の留学生に選ばれたのか知っている。
聖王国に所属する多くの魔法士や聖女の中から自分達が選ばれたのは、年齢だけが理由ではないと。
ここ数年、魔力の減少や上位魔法が使えなくなる現象は、聖王国でも少しずつ出はじめている。
サブリナはすでに上位魔法と中級魔法の一部が使えなくなっていて、セシルは使える魔法が増えないだけでなく、魔力が激減し続けている。
このまま魔法士や聖女見習いとして登録していれば、肩身の狭い思いをする2人への救済措置でもあるのだが、本人達にその優しさは伝わっていない。
(国には知られてないと思っていたのに、なんとかしなくちゃ。国に戻っても⋯⋯)
(国にバレてるなら、王子を誑かせばって思ってたのに。誰か捕まえて婚約して⋯⋯)
サブリナが慌てて寮の部屋を飛び出し、階段を駆け下りてロクサーナの部屋を覗いた後、セシルの部屋のドアを何度も叩いた。
ドンドン⋯⋯ドンドンドン!
着替えの途中らしいセシルがムッとした顔で顔を出した。
「どした? まだ準備できてないんだけど」
「呑気にしてる場合じゃないのよ! ロクサーナが⋯⋯魔鳥が⋯⋯手紙って」
「待って待って! ゆっくり話してよ、意味がわかんない」
床に散らばった私服や空箱を足で避け、ソファの上の小説や鞄を勉強机の上に移動したセシルが、サブリナに座るよう声をかけた。
「⋯⋯部屋、こんなだったかしら。随分と汚くなってるわ」
「仕方ないじゃん、忙しいんだもん。サブリナみたいにメイドがいるわけじゃないんだから、部屋の片付けなんてしてる暇ないよ」
「⋯⋯そうよね。最近はお付き合いが忙しいもの」
「週に何回かメイド貸してくれる?」
「それは無理よ! 私だって忙しいんだもの。それよりも、魔鳥が来たの。でね、ロクサーナが学園を辞めるんですって」
「ええっ! ダメよ、そんなの認められない。なんでそんな事になったの!? いつから? いつ帰るの?」
「部屋を覗いたけどロクサーナはもう出てったみたいよ。帰ってくる予定もなさそう。
急な仕事が入ったから、セシル達や学園に連絡しておくようにって」
「もうすぐ試験なのに、どうすんのよ!」
「私だって来週提出予定の課題を頼むつもりで⋯⋯」
試験用にロクサーナのノートを狙っていたセシルと、課題をロクサーナに丸投げするつもりで、週末にびっしりと予定を入れているサブリナ。
「仕事だなんで酷くない? 聖女だって言うけどさ、ロクサーナが何の仕事したとか聞いた事ないもん」
「私は魔法士だから知らないのかと思ってた。聖女見習いのセシルも知らないなんて思わなかったわ」
「打ち合わせでは見かけたとか言う人がたまにいるけど、一緒に仕事した人はいないって絶対おかしいでしょ!? 仕事じゃなくて逃げ出したんじゃない?」
「どう言う事?」
「そっか、サブリナの部屋は3階だから知らないんだ。寮監が口外禁止って言ってたんだけど昨夜⋯⋯」
ロクサーナの部屋を調べた時、数人の生徒が部屋から出てきたが『問題は起きていない、ロクサーナの勘違い』だと全ての部屋にわざわざ連絡がきた。
「なんて事なの! ロクサーナは勘違いで騒いで騎士団まで呼んだのね」
「王宮女官まで駆り出されたんですって」
「それは恥ずかしくて顔を出せなくなって当然だわ。こう言っては申し訳ないけど、ロクサーナの部屋に盗みに入るなんてありえないと思うわ」
「だよね、アクセサリーとかも安物ばっかりだったし。あっ、異空間収納のポーチは欲しかったけどね」
ロクサーナの異空間収納は、たまたま手に入れたアーティファクトだと聞いているセシルは、何度か売って欲しいと頼んで断られている。
「お金ならいくらでも払う。父さんが出してくれるからって言ったし、足りなかったら毎月の給料から払うからって頼んだのにね。
アレがあるから魔導具とか薬とかの転売で儲けてるんだよ。聖女の仕事なんてしないで、畑で土まみれになってるし」
「しょっちゅういなくなるとか、年寄りの庭師と遊んでるって言うのはよく聞くわ」
教会の裏にある広大な畑では、一部の野菜と薬草を育てている。
トラウザーズ姿のロクサーナが畑の中にしゃがみ込んでいる姿や、庭師と何やらヒソヒソと話しているのを見た者は多い。
「理由はともかく、魔鳥が来たんなら手紙でチクってやるから。んで、今は学園に行くしかないから準備するね」
登園したサブリナ達は担任に事情を報告。
「詳しい事は聞いてないのですが、手紙で連絡が来るようです」
「分かった、入学してからずっとバーラムは揉め事ばかり起こしてたし、仕事をしている方が合っているのかもな。学園長には俺から連絡しておこう」
午前の授業が終わった教室で、サブリナ達はレベッカに声をかけた。
「レベッカ、ちょっといいかしら」
「(ギクッ! まさか昨日のことがもうバレた!?)ロ、ロクサーナがいないなんて珍しいじゃない。何か用?」
アーノルド王子は今日も休んでいるが、レベッカの隣にはビクトールとトーマスが侍っている。
「ロクサーナが学園を辞めるんですって。急な仕事が入ったからって、今朝魔鳥がきたの」
「⋯⋯そうなの?(てことは気付かないでいなくなったって事?)仕事なら仕方ないけど~、寂しくなるわね~」
(昨日のうちにアレをもらっといて大正解じゃん! アタシってばやっぱり守られてるわ。次の神託で『女神の愛し子』とかって言われちゃうかも~。
大体、お父様やお母様も言ってたけど⋯⋯アタシが魔法士見習いとかありえないもんね。多分次は光属性が追加されて、エリアヒールとかリザレクションとかをパパって覚えるんだと思う。
あっ、全属性が出たらどうしよう。その時は、今までアタシの事をバカにした奴らを、全部まとめて懲罰房に入れちゃおっかな~。
んで、ロクサーナだけはそこから出さないで、ずーっと土下座させとくの)
ニマニマと妄想を膨らませるレベッカが満面の笑みを浮かべた。
「もういいかなぁ。見てわかると思うけど、ビクトールとトーマスを待たせてるの」
「え、ええ。時間をとってしまってごめんなさいね」
「気にしないでね。そうだ、今度昼食に誘ってあげるわ。今まではロクサーナがいたから⋯⋯ロクサーナのそばに行くと虐められちゃうから誘えなかったけど、これからは2人を誘えるようになるもんね。
カフェテリアの2階の特別室⋯⋯知ってる? みんなのと違って王宮並みの料理がコースで出てくるの~。
一緒に留学してきた仲間だもの、一度くらい味合わせてあげるわね」
本人だけは上機嫌で、上から目線のお誘いをしたレベッカは、サブリナ達の返事も待たずビクトールとトーマスの腕に手を添えて教室を出て行った。
レベッカの笑顔を見て鼻の下を伸ばしながら、チラチラとサブリナ達の方を振り返るビクトールとトーマス。
「なんか感じ悪い。レベッカは昔からあんな子だけど、ビクトールに予備扱いされてるみたいでムカつく」
「私も同感だわ。私には花束付きのくだらない詩を捧げてくるくせに、レベッカには宝石やドレスをセットで詩を贈ってるのよ。もう少しマシな方を探した方が良さそう。
トーマスなんかと結婚しなくても、いくらでもお相手はいるんだもの」
「サブリナは超絶美少女の魔法士だもん。その気になるだけで、世界中の男達が結婚を申し込むよ」
「セシルだって、見習いとは言っても聖女だもの。希少価値が高くて天使みたいに可愛くて引くて数多だわ。
もう少しで聖女ランクになるんでしょ? そうなったら大騒ぎ間違いなしだわ」
お互いに褒め合う2人だが、内心では自分達が何故ダンゼリアム王国の留学生に選ばれたのか知っている。
聖王国に所属する多くの魔法士や聖女の中から自分達が選ばれたのは、年齢だけが理由ではないと。
ここ数年、魔力の減少や上位魔法が使えなくなる現象は、聖王国でも少しずつ出はじめている。
サブリナはすでに上位魔法と中級魔法の一部が使えなくなっていて、セシルは使える魔法が増えないだけでなく、魔力が激減し続けている。
このまま魔法士や聖女見習いとして登録していれば、肩身の狭い思いをする2人への救済措置でもあるのだが、本人達にその優しさは伝わっていない。
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