【完結】期間限定聖女ですから、婚約なんて致しません

との

文字の大きさ
54 / 126

00.あの人達は今! すごく忙しいみたいですね

しおりを挟む
 リューズベイで行う『諸魂の日』に参加する貴族達は大急ぎで準備をはじめ、学園生達もその話題で持ちきりだった。

「お聞きになられました?」

「ええ、もちろんですわ。私も参加しますもの」

「私もですわ。領主館でパーティーがあるのでしょう? ドレスを大急ぎで仕立ててますの」



 サブリナとセシルももちろん参加する予定で急いでドレスを仕立て、アクセサリーを取り寄せているが⋯⋯。

「聖女の祈りってどうやるつもりなんだろ」

「それらしいポーズで祈りを捧げる⋯⋯とかじゃないかしら」

「バレたら⋯⋯私達にとばっちりなんてこないよね?」

「大丈夫じゃないかしら。奇跡を見せるのではなくて祈りなら誤魔化せるでしょう? レベッカの演技力は完璧だもの」






 正装した騎士団が護衛する聖女や王族の馬車がリューズベイの街につき、大勢の民衆が街道の周囲を埋め尽くした。王家の紋が描かれた旗を振り、花が舞い散る。

 手を振るレベッカと並んで座るアーノルド王子は満面の笑みを浮かべ、国王と王妃の乗る馬車が続く。

 ピカピカに磨き上げられた領主館に馬車が到着し、待ち構えていた領主が出迎えた。

「リューズベイへ、ようこそおいでくださいました。領民一同、聖女様と王家の方々のお越しを心よりお待ち申しておりました」

 領主館では王族と並んだ席にすわり、すでに王子の婚約者として扱われた。聖女や王族に献上された大量の品々が並べられ、領主自ら一つずつ説明をしていく。

「こちらは海の向こうの国、アースガルズから取り寄せた品で⋯⋯」

「これは北の森で取れた最大級の⋯⋯」

(ふふん、私への献上品が一番多いじゃない)

 悔しそうな顔の王妃とイライザを横目に見ながら、レベッカは満面の笑みを浮かべた。



 リューズベイでの歓待に気を良くしたレベッカは、翌日の夕闇が辺りを染める頃⋯⋯新しいローブを纏い、領主館のバルコニーで両手を広げて空を見上げた。

「わたくしは女神の愛し子にして聖女レベッカ・マックバーン! リューズベイの民に女神の祝福を!」

 カチリ⋯⋯。

 レベッカの周りが光り輝き、辺りを明るく照らしていく。幻想的な光はバルコニーの下まで溢れ、民衆の声が大きくなった。

「おお! 光がぁぁ」

 夕闇の中でキラキラと星を散りばめたような白いローブが、鮮やかに煌びやかに浮かび上がった。

「おお、聖女様ぁぁ!」

「聖女様、バンザーイ!!」


「皆の者、よく聞くがいい。神に愛されし我が国は永遠なり。第16代ダンゼリアム国王シュルツの元に、末代までの栄華を誓う」

「国王陛下、ばんざーい!」



 その後領主館では王族と聖女の歓迎パーティーが華やかに催された。

 パーティーのはじまりにアーノルド王子とレベッカがダンスを踊り、続いて高位貴族達も踊りはじめる。

「聖女様、是非こちらをお試しください」

「よろしければダンスのお相手を」

「聖女様の美しさに比べれば、光の精霊でさえ霞んで見えるでしょう」



 レベッカが意図した通りにドレスは輝き、国一番の美貌と言われていたイライザでさえ影が薄く見える。

(やっぱり私が一番ね。さっきの祈りも上手くいったし⋯⋯)

「あの⋯⋯聖女様⋯⋯」

「なんだ、貴様は! 勝手に聖女に話しかけるなど無礼であろう」

 レベッカを背に隠したアーノルド王子がレオンを睨みつけた。

「待って待って! あなたはどなた?」

 この国で見たこともないほどのイケメンにレベッカの目が輝いた。

(ええ~! この国にもこんなかっこいい人がいたの!? 護衛騎士にしてあげたロバートなんて鼻◯そじゃん)

「お初にお目にかかります。キングスレイ王国のカートレット侯爵家嫡男レオンと申します。この国には一介の冒険者として参っております」

「まあ! 侯爵家の方が冒険者なんかをしてるの?」

「はい、見聞を広めたいと愚考いたしまして、各地を回っている次第です」

「そうなのね、それは凄く素敵な事だわ! ねえ、少し向こうでお話ししませんか? キングスレイ王国の事を聞きたいの。アーノルド、いいでしょ?」

 ブツブツと文句を言っていたが、チャンス到来だと気付いた令嬢が、アーノルドに声をかけた。

「アーノルド王子殿下、ぜひわたくしと踊っていただけませんかしら?」

「え、あぁ、いいとも」

 渋々離れて行くアーノルドを無視して、レベッカはレオンの腕に手を絡ませた。

「ここは少し人が多すぎて⋯⋯テラスに行きましょう。レオンとはゆっくりお話ししたいわ」



 少し肌寒い風が吹き身を寄せて来たレベッカの肩に、レオンは脱いだ上着を着せ掛けた。

「海風は身体に悪いと言います。大切な御身ですから」

(うわ~、顔だけじゃなくて行動までイケメン⋯⋯侯爵家嫡男だっけ。この顔ならアーノルドよりよっぽど王子らしいじゃん。
う~ん、でもでも侯爵夫人より王妃の方が⋯⋯ううっ、残念! 結婚はしてあげられないけど、護衛愛人にはしてあげるわ! うん、キープしてあげるからね)



 そっとレオンの胸に手を置いて見上げたレベッカの目が輝いている。

「もしかして⋯⋯リューズベイに来るように神託がおりたのは、レオンに会うためだったのかも。そんな気がするのは私だけ?」

「俺⋯⋯私も同じことを考えていました⋯⋯あの⋯⋯11年前に、馬車の事故で怪我をした少年をお救いになられた事はありませんか?」

「馬車の事故?」

「その少年は聖王国の聖女様に命を救われたのです」

(なにそれ⋯⋯めちゃめちゃ美談っぽい⋯⋯どっかの聖女の話? 聞いたことないけど)

「その少年ってレオンの事?」

「⋯⋯はい、覚えておられませんか?」

「あ、もちろん⋯⋯もちろん覚えてます。元気になって良かったです!」

(なんかよく分かんないけど⋯⋯これって使えそうじゃん。生命を助けられたイケメンと助けた聖女なんて⋯⋯物語のヒロインだよ! こんな魚臭い田舎町でロマンスなんて⋯⋯私ってばホントに女神の愛し子ってやつかも~)

「ずっとお礼を言えなくて⋯⋯お会いできて光栄です。あの時はありがとうございました」

「聖女だもん、当然のことをしただけだからね」

 レオンの大きな手がレベッカの手を優しく握りしめた。

「やっぱり⋯⋯これが運命だった」

(ふふふっ! 何をやっても上手くいくって感じ。聖女になって崇められて、今度は生命を救ってもらったって言ってイケメンが⋯⋯女神の愛し子、確定だよ!)

「これからもずっとずーっと、仲良くしてくれたら嬉しいな」

「も、もちろんです。ぜひ」



 こうして、すっかり騙されたレオンは王都へ帰った後もレベッカと会い、食事や買い物に行くようになった。

「でね、聖女だからスタンピードの時とかリューズベイの魔物の時とか、じっとしてるわけにいかないんだよね。学園の勉強もあるし、聖女って大変なの~。
スタンピードとか魔物なんてなくなっちゃえば楽なんだけどね~」

 スタンピードなら起きる前にダンジョンの魔物を討伐してしまえばいい。と、レオンが考えはじめるのにそれほど時間はかからなかった。

 全ては『聖女様』の御身を守る為に。



 ロクサーナとの契約魔法でスタンピードの原因については話せないが、契約の穴を抜ければ話せる部分がないわけではない。

「詳しくは話せないんだけど⋯⋯スタンピードの事は俺に任せてくれないか? レベッカの為に俺がなんとかしてみせるから(ジルが置いた結界の魔導具の場所は分かってるし、魔物の種類も⋯⋯何人か連れて行けばダンジョンを攻略できるはず)」

「ホント? さすがレオン! 相談して良かった~。スタンピードの場に立ち会えって陛下に言われて悩んでたんだ~。聖女をそんな危険なとこに連れてくなんて信じらんないでしょ!? レオン、だーいすき」

「もし、もし俺がスタンピードを終わらせたら、王子ではなく俺を選んで欲しい」

「うん、レオンならあたしのこと守ってくれるもんね。ねえ、だから⋯⋯今日もいつもの部屋で⋯⋯いっぱい愛して」

しおりを挟む
感想 78

あなたにおすすめの小説

奪われる人生とはお別れします 婚約破棄の後は幸せな日々が待っていました

水空 葵
恋愛
婚約者だった王太子殿下は、最近聖女様にかかりっきりで私には見向きもしない。 それなのに妃教育と称して仕事を押し付けてくる。 しまいには建国パーティーの時に婚約解消を突き付けられてしまった。 王太子殿下、それから私の両親。今まで尽くしてきたのに、裏切るなんて許せません。 でも、これ以上奪われるのは嫌なので、さっさとお別れしましょう。 ◇2024/2/5 HOTランキング1位に掲載されました。 ◇第17回 恋愛小説大賞で6位&奨励賞を頂きました。 ◇レジーナブックスより書籍発売中です! 本当にありがとうございます!

妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。

バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。 瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。 そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。 その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。 そして……。 本編全79話 番外編全34話 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

聖女は記憶と共に姿を消した~婚約破棄を告げられた時、王国の運命が決まった~

キョウキョウ
恋愛
ある日、婚約相手のエリック王子から呼び出された聖女ノエラ。 パーティーが行われている会場の中央、貴族たちが注目する場所に立たされたノエラは、エリック王子から突然、婚約を破棄されてしまう。 最近、冷たい態度が続いていたとはいえ、公の場での宣言にノエラは言葉を失った。 さらにエリック王子は、ノエラが聖女には相応しくないと告げた後、一緒に居た美しい女神官エリーゼを真の聖女にすると宣言してしまう。彼女こそが本当の聖女であると言って、ノエラのことを偽物扱いする。 その瞬間、ノエラの心に浮かんだのは、万が一の時のために準備していた計画だった。 王国から、聖女ノエラに関する記憶を全て消し去るという計画を、今こそ実行に移す時だと決意した。 こうして聖女ノエラは人々の記憶から消え去り、ただのノエラとして新たな一歩を踏み出すのだった。 ※過去に使用した設定や展開などを再利用しています。 ※カクヨムにも掲載中です。

辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~

紫月 由良
恋愛
 辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。  魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。   ※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています

二度目の人生は離脱を目指します

橋本彩里(Ayari)
恋愛
エレナは一度死に戻り、二度目の人生を生きることになった。 一度目は親友のマリアンヌにあらゆるものを奪われ、はめられた人生。 今回は関わらずにいこうと、マリアンヌとの初めての顔合わせで倒れたのを機に病弱と偽り王都から身を遠ざけることにする。 人生二度目だから自身が快適に過ごすために、マリアンヌと距離を取りながらあちこちに顔を出していたら、なぜかマリアンヌの取り巻き男性、死に戻り前は髪色で呼んでいた五人、特に黒いのがしつこっ、……男たちが懐いてきて。 一度目の人生は何が起っていたのか。 今度こそ平穏にいきたいエレナだがいつの間にか渦中に巻き込まれ――。

婚約辞退いたします。だってこの国、沈みますもの

鍛高譚
恋愛
「婚約はお断りいたします――この国は近い将来、崩壊しますので」 そう言い放ったのは、社交界でも目立たない子爵令嬢、マリン・アクアリウム。 ある日、とある舞踏会に突如現れた王太子ガイア殿下。 誰もが驚く中、なんと彼はマリンに婚約を申し出る。 周囲は騒然。「子爵令嬢が王太子妃!?」「断る理由などないはず!」 ――だが、彼女は断った。「この国は、もうすぐ滅びます」――と。 そんな不吉な言葉を口にしたことで、彼女は“狂言癖のある嘘つき令嬢”と噂され、 家族にさえ見放され、ついには国外追放の身に。 だが、彼女の予言は本物だった―― 数年後、王国に未曾有の大災厄が迫る。 国土が崩れ、海に沈む都市。人々が絶望する中、思い出されるのは、 あの舞踏会でただひとり“滅び”を告げた少女の名。 「彼女なら、この国を救えるかもしれない……」 皮肉にも“追放令嬢”マリンは、再び王都に呼び戻され、 滅びゆく国で最後の希望として担ぎ上げられる。 信じてもらえなかった過去。 それでも人々の命を守ろうと奔走するマリン。 そして、王子ガイアが差し伸べた、あの日と変わらぬ手。 ――たとえ国が滅んでも、あなたとともに歩んでいきたい。

【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜

ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。 しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。 生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。 それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。 幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。 「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」 初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。 そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。 これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。 これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。 ☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャらら森山
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

処理中です...