【完結】期間限定聖女ですから、婚約なんて致しません

との

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96.大人達はこれから大変そうですが

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「⋯⋯強烈すぎるけど、ミュウ達が嫌な思いを我慢してくれてたってことだね。ごめんね、んでありがとう」

「神と精霊の怒りだからね、人間の考える罰とはレベルも内容も違うのは当然の事だと思う」

「でも、こいつらどうすんだ? このままってわけにはいかねえだろ」

「コイツらは自業自得ってやつだけどね、町に飛び出したらコレを見る領民達がいるわけでしょ。それは可哀想だわ」

「⋯⋯じゃあ、聖王国の山に結界を張って放り込もうかな。見た目はアレだけど人に危害を加える力はないから、結界の中ならいいかも」

 レベッカ達の教育を失敗したのは聖王国とも言える。レベッカ達の罪が許されるまで、責任を持って結界の管理をするくらいは当然だろう。領主やスミス・デニスはそのオマケと言うことで。



「ジルベルトとあたしが男娼に選ばれてたなんて、ほんっと失礼しちゃう」

「お、俺の女房とガキも、狙われてた⋯⋯」

「俺の奥さんもだぜ~、いくら腕っぷしが強いって言っても、コイツらに捕まってたら、何をされてたか⋯⋯はっ! まさか俺の奥さん、もう捕まってるとかないよな!?」

【心配ないよぉ、ピッピ見てきたもんね~。すっご~い綺麗な人だったの~。カーニスの臭いがしたからぁ、すぐ分かったの~】

 妻のフェーリスが冒険に出る時は必ず、カーニスが使い込んだシャツを着せるらしい。

「「「変態! キモい」」」

「煩え! 冒険者なんて男ばっかじゃねえか。んだから、魔除けみてえなもんで⋯⋯ゴニョゴニョ⋯⋯フェーリスは昔っからモテるから、心配で仕方ねえんだよ!」

「カーニスが心配する気持ちは分かるわ。 フェーリスってば男を寄せ付けるフェロモンでも出てんじゃないかって感じだったものねえ」

 ガッチリ体型でおっさん顔のカーニスとの結婚が決まった時には、かなりの人数に闇討ちされそうになったらしい。

 終日誰かしらに追いかけられ、魔導具や武器で攻撃され罠を仕掛けられる。見かねたウルサが護衛に立候補するほどの騒ぎになった。

 結婚式では『葬式か?』『敵襲か?』と騒がれるほど、大号泣する町の男達と弓や剣を構える冒険者達が周りを取り囲んだ。




【ロクサーナ、どっちを先にするの?】

「えーっと、この人達は取り敢えず牢に放り込んでおいて、山に行こうかな。聖王国へ送りつけるのは、色々確認が終わってからだもんね」

 まだ何かあるのかと首を傾げたウルサ達は、説明したら着いてきそうな予感がする。

「ここからは別件だから、ウルサ達は領地の方をお願い。ジルベルト司祭は聖王国への連絡とか色々あるし」

 運がいいのか悪いのか⋯⋯目の前にいる大量の領兵が事件の証人になる。神や精霊の怒りについて説明するのは、ジルベルトが適任だろう。

「聖王国との連絡は確かに必要だが⋯⋯頼むから、絶対に無理だけはしないでくれよ」

「はい」

「ロクサーナの『はい』は怪しいんだよな~」



 キリングの話からすると、シーサーペントの討伐に来た聖王国の魔法士が、奴隷として拉致されているのは間違いないだろう。

「聖王国に連絡してメンバー表の確認と、救出の準備をはじめてもらわないと。まさかシーサーペントの件に、奴隷売買が関わっていたとは⋯⋯」

 教会に勤務する司祭としても人としても、後回しにはできない。

(本当はサーナの方についていきたいんだがな)



 裏山の幻術が壊せるか試しに行く予定のロクサーナとミュウ達は、レベッカ達を牢に転移させた後で、山に向けて転移して行った。

「ちびすけは姿を消したり、どっかに飛んでったり⋯⋯なんか凄すぎないか? 以前、パッと船を出したしなあ」

「今頃驚くとか、グラントは呑気だよな~」

 ジルベルト達はリューズべイの重要人物を集めて会議の準備をする事に決めた。

 領主が消えた事の報告もあるが、1番の問題はニール・スミスの扱いだろう。オルフェーヌ王国のオラール貿易会社への連絡をどうするのか話し合わなければならない。

「大勢の目撃者の前で神とか精霊の神罰が下ったんだから、とやかく言えねえだろ? 文句があるってんなら、スミス・キメラを船に放り込んでやりゃいいんじゃね?」

「領主館の中は取り敢えず私が⋯⋯」

「商人ギルドに行ってくる」

「じゃあ、俺は漁業ギルドだな。オラール商会の商船を逃がさないようにしねえと」

「あたしとアンセルは手分けして各村の村長に⋯⋯」




 ジルベルト達が打ち合わせをしている時、ロクサーナは一人で山の頂上にいた。

「結界もないのに、キメラ達が山から出ないのってなんでだろう」

【精霊や人は山から出るのを恐れてる。生きている人間が一番恐ろしいからね】

 異質だと感じただけで敵認定し、気に入らないと思えば適当な理由をでっち上げてでも排除しようとする。非力な人間達は仲間を集め徒党を組んで、殺戮と略奪を繰り返す。

『一人の殺害は犯罪者を生み、百万の殺害は英雄を生む。数が殺人を神聖化する』

『百人の死は悲劇だが百万人の死は統計だ』

 これらの言葉はどんな意味を持つのか。婉曲な批判か、開き直りか⋯⋯。人間は社会的動物であると言いつつ、人間の天敵は人間であるとも言う。

「魔物を殺しまくる私はどうなんだろう。(正しいのか間違ってるのか)人も魔物も同じ生命なんだよね⋯⋯」

【今は幻術だよ】

「そうだね、疑問はちょっと置いといて⋯⋯『キルケーの幻術』かあ。ピークスの妻にかけられているのか、山にかけられてるのかも分かんないままじゃ、何も話が進まないもんね」

 ロクサーナは両頬をパンっと叩いて、仁王立ちした。

「キルケー、あんたの幻術なんてギッタギタにしてやるから見てやがれぇぇぇ!」

 魔力を乗せたロクサーナの怒鳴り声が山に響き渡り、魔物に姿を変えられた人や精霊が動きを止めた。



「ん? 怯えてる⋯⋯なんで?」

【元精霊って言っても、長い間魔物の姿になってるからね、強力な魔力にはビビるよ】

【精霊としての力はなくなってるから、抵抗する方法がないって知ってるんだよ】

 ミュウとウルウルの説明で、また一つロクサーナの心に疑問が浮上した。人と違って精霊達はキメラ化が解けても問題ないと思っていたが、力のなくなった精霊達が元の姿に戻ったら⋯⋯一体どうなるのだろう。

「クロちゃん、ここにいる精霊や人のキメラ化が解けたらどうなるの?」

【力を失った精霊は存在そのものが消え、人は一気に身体が老化し寿命を迎える】

「うーん、キメラのままが良いのか元の姿に戻りたいのか、個別に聞かないとダメそう⋯⋯意思の疎通って出来る?」

【キメラ化が解けた直後なら出来る可能性はあるな】

「むむ、直後となるとどうしたいか聞いても、考える余裕がなさそう。例えばなんだけど、キメラ化した精霊達の時間を戻すことって出来る?」



 キルケーに頼んでもキメラ化を解く気になるとは思えないが、今のところこれといった方法が見つかっていない。それなら時間を戻せば⋯⋯と、脳筋よりの考えに至ったが。

【できなくはない。流石に一度に全員は無理だが、時間をかければ出来るはず】

「そうか⋯⋯キメラ化した魔法を解くんじゃなくて、時間を戻すなら精霊は戻せる。時間を戻したなら精霊としての力も元通り。
人と違って精霊にはその方法が使えると。ふむふむ」

 人の場合⋯⋯下手をすると数千年前の人かもしれないし、数百年前の人でも言葉が通じない可能性が高い。この世界に順応し生きていく事は難しい気がする。



 話をしながら山の中を念入りに索敵していたロクサーナが、ごく小さな違和感のある場所を見つけた。

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