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9.作戦会議 ②
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リリアーナの執務室に集合している四人組とエリオット。
エリオットは昨夜あまり寝ていないのか、目の下にうっすらとクマが出来ている。
今日も平民ルックのエリオットと、初対面のマチルダ&ミリアは挨拶を交わしたが、三人とも全然緊張してない様子にリリアーナはホッとしていた。
「そりゃ、はじまりがマカロンとアップルパイだもん。緊張する暇なかったわ」
と、マチルダに突っ込まれて苦笑いした。
「まずはエリオットの計画を聞かせて。勿論私達が聞いて構わない範囲でね。
それから私達に出来る事とか、やれる事を話し合いましょう」
エリオットは横に座っているシエナをチラッと見た後、背筋を伸ばして話しはじめた。
「ドントジー侯爵家は採掘された銀の一部を横領しているんだ。首謀者は父上だが、母上も知っていて積極的に後押ししている。
俺は父上の執務室から裏帳簿を盗み出し、貴族院へ告発する」
貴族院は現在、“重罪を告発された貴族を裁く権利” を持つ最高裁判所としての機能を有している。
各領地で採掘された鉱物や農産物の隠匿は、貴族の犯罪の中でも特に重罪とされており爵位剥奪のだけでなく極刑となる場合も多い。
エリオットが両親の告発を決めたのは、苦渋の決断だった。
「今の貴族院議長はジョン・マーシャル公爵、だけど俺では会ってもらう為の伝手がないんだ。
父上達にバレない様うまく立ち回らないといけない上に、投資家の問題があるからあまり時間がかけたくない」
「投資についても出来る範囲で教えて貰える? その後で私もお父様から聞いた話を伝えるわ」
「ありがとう、カートレット伯爵の情報は凄く助かるよ。
えっと、父上はある投資会社と組んで海上貿易に手を出そうとしてる。
だけどうちには投資できる資金がない・・。
で、その会社から知り合いを紹介してくれって言われた。
手数料は儲けの20%。
地中海は穏やかで海難事故は殆どないからと言って知り合いに声をかけまくってる」
「確かに地中海は内海で比較的穏やかだとは言うけど、海難事故が殆どないっていうのはどうなのかしら。
それに紹介だけで儲けの20%は怪しすぎるんじゃない?」
「奴らは初めての取引だから、今回だけ特別だって言ってるんだ。
胡散臭すぎるっていくら言っても聞かない上に、母上までお茶会なんかで声をかけはじめてる。
私は祖父からの遺言で領地を譲られてるんだけど、それを担保に金を借りて欲しいって言われて、しつこくゴネてみたら母上が白状した」
「それで修道士?」
「まあね、他に時間を稼ぐ方法が思いつかなくて」
「私からも報告があるの」と、シエナが話しはじめた。
「お父様にエリオット様との事や、ドントジー侯爵家の事を話したの。
エリオット様との事はなんとかお許しを頂いたんだけど、侯爵家の問題が落ち着いたらって言う条件付き。
それから、ストレンジ侯爵家がドントジー侯爵家と仲が悪いのは有名だから手は出せないって」
「確かに・・変な誤解をされかねないものね。その点、うちならまだ大丈夫ね。お父様も凄く心配しておられるし」
「リリアーナ、ルーカスの事で迷惑を掛けているのにこんな事頼める筋じゃないんだけど・・」
「やだ、そう言うのは辞めて。将来の義兄ではなくなりそうだけど、代わりに友達の旦那様になるんだもの」
「あっ」と小さな声がして、シエナが真っ赤になって俯いた。エリオットがその顔を下から覗き込んで笑っている。
その様子を見ると声をかけるのもなんだかなぁ・・と、気付かない振りで一斉にお菓子に手を伸ばした三人だった。
「さて、私からの話は・・ジョン・マーシャル公爵への伝手は何とかなると思う。
内密に進めるためにはお父様にお願いするよりも、お母様から奥様のフローレンス様に連絡を取って頂いた方が良いと思うから、明日にでもお話ししてみるわ。
投資会社なんだけどね、お父様の調査ではトンネル会社の可能性があるけど、大元までは辿り切れてないって。
一応見張りを付けて監視はしてるけど、あまりのんびりはしてられないだろうって仰ってたわ」
「裏帳簿は見つけたんだ。いつから誰とどの位の量を取引していたのか、帳簿を付き合わせて正確な数値を調べてる・・もう暫くかかるかも」
「取引先については分かったの?」
「名前と所在地はなんとか」
「あの・・一つ疑問なんだけど、何故おじ様だったのかしら?」
エリオットは昨夜あまり寝ていないのか、目の下にうっすらとクマが出来ている。
今日も平民ルックのエリオットと、初対面のマチルダ&ミリアは挨拶を交わしたが、三人とも全然緊張してない様子にリリアーナはホッとしていた。
「そりゃ、はじまりがマカロンとアップルパイだもん。緊張する暇なかったわ」
と、マチルダに突っ込まれて苦笑いした。
「まずはエリオットの計画を聞かせて。勿論私達が聞いて構わない範囲でね。
それから私達に出来る事とか、やれる事を話し合いましょう」
エリオットは横に座っているシエナをチラッと見た後、背筋を伸ばして話しはじめた。
「ドントジー侯爵家は採掘された銀の一部を横領しているんだ。首謀者は父上だが、母上も知っていて積極的に後押ししている。
俺は父上の執務室から裏帳簿を盗み出し、貴族院へ告発する」
貴族院は現在、“重罪を告発された貴族を裁く権利” を持つ最高裁判所としての機能を有している。
各領地で採掘された鉱物や農産物の隠匿は、貴族の犯罪の中でも特に重罪とされており爵位剥奪のだけでなく極刑となる場合も多い。
エリオットが両親の告発を決めたのは、苦渋の決断だった。
「今の貴族院議長はジョン・マーシャル公爵、だけど俺では会ってもらう為の伝手がないんだ。
父上達にバレない様うまく立ち回らないといけない上に、投資家の問題があるからあまり時間がかけたくない」
「投資についても出来る範囲で教えて貰える? その後で私もお父様から聞いた話を伝えるわ」
「ありがとう、カートレット伯爵の情報は凄く助かるよ。
えっと、父上はある投資会社と組んで海上貿易に手を出そうとしてる。
だけどうちには投資できる資金がない・・。
で、その会社から知り合いを紹介してくれって言われた。
手数料は儲けの20%。
地中海は穏やかで海難事故は殆どないからと言って知り合いに声をかけまくってる」
「確かに地中海は内海で比較的穏やかだとは言うけど、海難事故が殆どないっていうのはどうなのかしら。
それに紹介だけで儲けの20%は怪しすぎるんじゃない?」
「奴らは初めての取引だから、今回だけ特別だって言ってるんだ。
胡散臭すぎるっていくら言っても聞かない上に、母上までお茶会なんかで声をかけはじめてる。
私は祖父からの遺言で領地を譲られてるんだけど、それを担保に金を借りて欲しいって言われて、しつこくゴネてみたら母上が白状した」
「それで修道士?」
「まあね、他に時間を稼ぐ方法が思いつかなくて」
「私からも報告があるの」と、シエナが話しはじめた。
「お父様にエリオット様との事や、ドントジー侯爵家の事を話したの。
エリオット様との事はなんとかお許しを頂いたんだけど、侯爵家の問題が落ち着いたらって言う条件付き。
それから、ストレンジ侯爵家がドントジー侯爵家と仲が悪いのは有名だから手は出せないって」
「確かに・・変な誤解をされかねないものね。その点、うちならまだ大丈夫ね。お父様も凄く心配しておられるし」
「リリアーナ、ルーカスの事で迷惑を掛けているのにこんな事頼める筋じゃないんだけど・・」
「やだ、そう言うのは辞めて。将来の義兄ではなくなりそうだけど、代わりに友達の旦那様になるんだもの」
「あっ」と小さな声がして、シエナが真っ赤になって俯いた。エリオットがその顔を下から覗き込んで笑っている。
その様子を見ると声をかけるのもなんだかなぁ・・と、気付かない振りで一斉にお菓子に手を伸ばした三人だった。
「さて、私からの話は・・ジョン・マーシャル公爵への伝手は何とかなると思う。
内密に進めるためにはお父様にお願いするよりも、お母様から奥様のフローレンス様に連絡を取って頂いた方が良いと思うから、明日にでもお話ししてみるわ。
投資会社なんだけどね、お父様の調査ではトンネル会社の可能性があるけど、大元までは辿り切れてないって。
一応見張りを付けて監視はしてるけど、あまりのんびりはしてられないだろうって仰ってたわ」
「裏帳簿は見つけたんだ。いつから誰とどの位の量を取引していたのか、帳簿を付き合わせて正確な数値を調べてる・・もう暫くかかるかも」
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