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第八章 いざ、決戦!

20.テオドールをタコ殴りしたらなんか出るかな?

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「信じられないわ!」

「ユーフェミア様があんな事を仰るなんて」

「平民はゴミカスって酷すぎる」

「あ、あの⋯⋯あ、あ、違うの。今のはえっと、本気じゃなくて。ギルバート様なら分かってくださるでしょう? ねえ、お願い、誰か⋯⋯そうだわ! テオドール様ならわたくしの言いたかった事を、分かってくださいますわよね」

「いや、平民相手でもゴミカスなどと言う輩は帝国にはいないよ」

「そんな⋯⋯ただの言い間違いですのに。本当は別の⋯⋯別の事を言おうとしておりましたの。でも、でも、コンプトンがあまりにも不敬で⋯⋯皆様もお聞きになられたでしょう? コンプトンがわたくしに酷いことを言ったのを」

 声を抑えたミリーの『嘘つき』発言を会場中が聞いていると思っているユーフェミア。

(甘いな~! 聞こえないように言ったに決まってるじゃん。小声の低音は響きにくいんだよ)

「ミッドランド侯爵令嬢は嘘がお好きなのかもしれませんね。私がテオドール皇子殿下に付き纏っていると、クラスメイトの前で堂々とおっしゃられましたし」

「それは本当の事だわ! 隠しても無駄よ、全部知ってるんだから」

「単なる妄想に聞こえますが、証拠はございますか?」

「⋯⋯は? 証拠だなんて大袈裟な。わたくしが言っているのに、証拠なんて必要ないわ」


「証拠のない決めつけを信じる方はおられないと思い⋯⋯あ~、おられました。ミッドランド侯爵令嬢と同じ時にイライザ・ゲインズ侯爵令嬢とニール・オブライアン伯爵令息を筆頭に、Cクラスの数名の方がミッドランド侯爵令嬢の言葉に同意しておられました。その方々にも証拠の提出をお願いしなくてはなりませんね。
全員のお名前は控えてありますので、自己申告でも構いませんがこちらからもご連絡させていただきます。
イライザ・ゲインズ侯爵令嬢とそのお友達の方々は、私がクラスメイトやギルバート王子殿下を蔑んだと仰っておられましたから、その証拠も提示して下さいませ」

 突然話の流れが変わって驚いたクラスメイトは顔を見合わせた。

「わたくし達だけを悪者にしないで! 学園中のみんながそう言ってるじゃない!!」

 イライザが立ち上がってミリーを指差した。

「みんなとは? 例えば、ゲインズ侯爵令嬢がメイ・ターナー子爵令嬢を使って私の情報を流しておられる2学年の公爵令嬢とか?」

「そ、そうよ! コンプトンが皇子殿下に迷惑をかけてるからお仕置きしてって頼んだら、キャロリーヌ様は同じ事を思ってたって。だから懲らしめて上げるっておっしゃって⋯⋯あっ!」

「2年生のキャロリーヌ・フォックス公爵令嬢の事ですか? イジメの現場でいつも笑いながら仲間に指示を出しておられたのを覚えております。
他にも同じ事を言ってこられた方はたくさんおられますけど」


「ギルバート王子殿下もそう仰ってたもの。不正したくせに満点少女だと嘘をついて調子に乗ってるって」

「それは俺が間違ってたんだ。ミッドランド侯爵令嬢から何度も『コンプトンの不正』を事細かに聞いていて、調べもせず鵜呑みにしてたんだ。
コンプトンさんには中間試験の結果が出た日に謝罪したが、君達に『俺が間違っていた』と伝えなかった。それも俺のミスだ」

 流石にギルバートの言葉を否定する勇気のある者はいなかった。



「私が一国の皇子殿下に付き纏い、自国の王子殿下を蔑み、クラスメイトをバカにしていたとおっしゃられた方は全員この会場におられます。
まだ名前が出ておられない方も全てリストアップしておりますので、どうか証拠のご準備をお願いします」

「⋯⋯どういう意味よ」

 ユーフェミア以外で一番初めに名前が出たイライザが不安そうに問いかけてきた。

「授業態度が加点減点の対象であるなら、あの時の授業の内容をチェックしている可能性があります。ミッドランド侯爵令嬢は正規の職員ではありませんから、学園の教職員が確認しておられたはず。
それにこの学園にはテオドール皇子殿下とギルバート王子殿下が在籍しておられますから、なんの対策も取っていないとは思えません。
バレないようにやっておられたつもりでしょうが、学園では全ての時間を調査し記録しているかもしれませんね」

「学園に知られてるって⋯⋯マズいよ」

「まさか、王家も調査してたり?」

「いや、全部コンプトンの想像⋯⋯妄想だよ」

 生徒達の間に不安の種が撒かれ、ミリーをイジメていた者達は恐怖で顔を引き攣らせた。

「因みに、私は今までにあったイジメの記録をとっています。3年生から1年生まで、驚くほど多くの方から繰り返された⋯⋯暴言と暴力、私物の破壊と盗難。それらについていつ誰が何をしたのか、その時目撃していたのが誰なのか。
指示を出した方、実行した方、見ていたのに傍観していた方、彼等の行動をわざと煽った方。全員が共犯です」

「どうしよう、そんな!」

「わ、わたし⋯⋯」



「コンプトンは平民だぞ! しかも貧乏人の奨学生にそんな事が出来るもんか!」

 ムキになって叫んだのは2年生の男子生徒。

「イジメの目撃者なら私が⋯⋯帝国の第三皇子として証言しよう。大勢の生徒から被害を受けているコンプトンさんを見て心を痛めていたので、帝国から連れてきた者に全ての記録を取らせたんだ。
モラヴィアス王国の王立学園はなんて野蛮なんだろうと驚き、未来あるはずの貴族子女の行動を諌めない学園長や教職員に呆れもした。
コンプトンさんが望むなら、私が持っている記録を全て渡しても構わないよ」

 親切心を全面に出したテオドールが右手を胸に当てた。

「遠慮しておきます⋯⋯と言いたいところですが、いただきます。帝国の調査結果ならこの国の方々も納得なさるでしょう。
学園中がイジメをはじめるように、イジメがより酷くなるように、わざと行動しておられたテオドール皇子殿下からの謝罪として受け取らせていただきます」

「私が? 私は別に何もしてないよ」

「私に付き纏ったのはわざとですよね。テオドール皇子殿下は私に関心があるフリをして付き纏い、周りの生徒達の悪感情を煽り続けておられましたから。
テオドール皇子殿下が平民に関心を寄せているように振る舞い続けた。ミッドランド侯爵令嬢が身の程知らずな平民だと社交界と学園に広めた。ギルバート王子殿下がミッドランド侯爵令嬢の言葉を信じて嘘の情報を話し続けた。元凶はこの3人です。
テオドール皇子殿下のくだらないお遊びに巻き込むのはおやめください。とても忙しくしておりますので」

「そんなつもりでは⋯⋯平民を入学させないと決めた議会の思惑を跳ね除けて、満点をとって入学したコンプトンさんが気になっただけで、他意はなかったんだ。それがイジメを誘発するとは思いもせず⋯⋯」

「帝国の天才皇子が? 百歩譲ってそのお言葉が本当だとしましょう。であれば、皇子殿下は傲慢で短絡的で独りよがりで先の見えないお子ちゃまなのでしょうね」

「不敬だぞ! 其奴を捕まえろ!!」

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