40 / 145
第三章 ロケットスタート
13.お買い上げ、ありがとうございま〜す
しおりを挟む
「あ~、そう言うこと。ようやく契約書の謎が解けたわ」
「やっぱり分かる人には分かるよね~。純利益って言っているラッセルに全利益って書かれた契約書を見せても、シモンの威力にやられて斜め読みしかしてなかったんだよ。後で気が付いてもぽやっと君のうっかりミスだとか思ってそう」
「ラッセルの言ってる事は話半分に聞いて、全利益で契約してこいって言ったのはミリーじゃん。俺の考えで動いていいなら純利益なんてダメだってちゃんと話し合ってたに決まってるだろ!?」
意見の相違があってもミリーが無視しろと言った理由は⋯⋯。
「だってぇ、シモンをね~、舐め腐ったままでいて欲しかったんだ~。言い間違えてるよ~、大切な契約書にうっかりミスしてるよ~ってね。そんなヘマをするお間抜けちゃんだって思っといてくれたら後が楽なんだもん」
「ままって⋯⋯舐め腐ったままって⋯⋯酷いよ、俺頑張って来たのに⋯⋯知らない人、苦手なのに⋯⋯馬車酔い、酷いのにぃぃ⋯⋯」
ソファに倒れ込んだシモンの前にイリナがそっとクッキーを差し出した。
お子ちゃまか! とツッコミかけたレオンがイリナに睨まれて口を閉ざしたのは賢明な判断だっただろう。
「白皙の美少年⋯⋯少年から青年に変わりゆく危うさ⋯⋯性別を超えた美貌が醸し出す憂い⋯⋯不安な思いから漂い出す頼りなさ。そんなすっごいのを見せつけられて、気もそぞろになっちゃったんだねぇ。大切な契約の場で、そりゃダメだよねぇ。大人なのに何やってんだか、やれやれ」
「ダメだよじゃねぇよ。完全に騙しにかかってんじゃねえか!」
「え~! シモンにあんな仕草しろとか、こんな態度を見せつけろとか言ってないのに? たまったまシモンが緊張して、たまったまラッセルがすけべ心を出して、書類をちゃ~んと読むより妄想とかしてただけじゃん。私は何も指示してませ~ん」
俺で妄想⋯⋯呟いたシモンがソファから崩れ落ちた。
「銭ゲバもここまでくると恐怖で毛が逆立つぜ」
「そ、そうね。幼児なのに考えがちょっとエゲツない気がしてきたわ」
「お願い、悪魔から俺を解放して⋯⋯」
「別に犯罪をしようとしてるわけじゃないのに⋯⋯熊達が酷すぎる。これって幼児に対する心的暴行で通報とか出来ないの?
契約書には堂々と『全利益』って記載して、言葉でも『全利益』って言って⋯⋯ほら、こっちは間違った事してないじゃん。相手の心情とか身体的変化とかがその時どういう状態になるかなんて知らないも~ん。
あとは~、正式な契約書に則った取引をしようとしてるだけだよ? 山越えしてる証拠やら裏帳簿やらをたまたま見つけるだけだもん。通りがかりに見つけるとか偶然拾うとかで。ちゃ~んと契約書通りの取引をしようねって言うだけだよ? 『約束は守らなくちゃダメだって学校で習わなかった?』って聞くだけ。ほら、やっぱ良い子じゃん」
「ラッセルが密売してる確証とか証拠でもあんのか?」
「ん~と⋯⋯ないよ?」
「んじゃ、山越えの証拠とかは?」
「それもない」
「チビすけ、10年間雀の涙くらいしか受け取れねえ可能性もあるって分かってるよな」
「分かってないね。だって山越えで密輸してなきゃ数字がおかしいんだもん。ラッセル領と山を挟んだ帝国側にある領地は農業に適した土地じゃなくて酪農中心なんだ。育ててるのは馬・牛・豚・ロバがメインだけど騾馬もいる。その中で騾馬だけは出荷した記録がないんだ。
それなのにかなりの量の農作物を出荷してる」
「あのなぁ、そいつは状況証拠にさえならん、ただの仮説ってやつだ。確かにチビすけの話は筋が通ってる。だが、相手を追い詰めるには『山越えしてる証拠や裏帳簿』が絶対に必要になる」
「うん、だから頑張ってね」
「⋯⋯⋯⋯は?」
「熊ってば脳みそ枯れちゃった? やっぱり本当に筋肉が詰まってるとかかな⋯⋯ってなると役に立たないかも。う~ん、それは大問題だよぉ」
「何が言いたいんだ?」
「覚えてないの?」
【集まった証拠くらいいくらでも好きにさせてあげるからさ⋯⋯勿論、報酬次第だけどね】
「うちの商会は情報を売ってるの。お買い上げありがとうございました~」
両手を揃えてペコリと頭を下げたミリーがちろっと顔を上げると、怒髪天を衝いたレオンがふうふうと荒い息を吐きながら睨みつけていた。
「イリスゥ、熊が怒ってる~。初めにちゃんと言っといたのに、忘れてたのかなぁ。でもねぇ、しつこく教えて欲しがったのは熊だし⋯⋯もしかしてこの国のお貴族様って、情報はただで手に入るって思ってる? ここまで調べるの結構大変だったから、それを知りたいのならそれなりの報酬が発生するのは当然だと思うんだけどなぁ。国交がないからさぁ、帝国の情報を集めるのは特に大変だったんだよ?」
「分かった。他にも知ってる事とか証拠集めに有益な話を見つけたら教えてくれ。もちろん対価は払う。ついでに教えて欲しいんだが、チビす⋯⋯お前のその知識はどこから仕入れた? 本とか言うなよ。そこまでの情報がわかる本なんてねえからな。お前の言ってた保険だの騾馬だの⋯⋯ギルドの行く末なんか、まるで見てきたみたいに話してたしな」
「⋯⋯それは教えられないな~。その情報に見合う対価を熊は持ってないから。イリスもシモンもね」
「やっぱり分かる人には分かるよね~。純利益って言っているラッセルに全利益って書かれた契約書を見せても、シモンの威力にやられて斜め読みしかしてなかったんだよ。後で気が付いてもぽやっと君のうっかりミスだとか思ってそう」
「ラッセルの言ってる事は話半分に聞いて、全利益で契約してこいって言ったのはミリーじゃん。俺の考えで動いていいなら純利益なんてダメだってちゃんと話し合ってたに決まってるだろ!?」
意見の相違があってもミリーが無視しろと言った理由は⋯⋯。
「だってぇ、シモンをね~、舐め腐ったままでいて欲しかったんだ~。言い間違えてるよ~、大切な契約書にうっかりミスしてるよ~ってね。そんなヘマをするお間抜けちゃんだって思っといてくれたら後が楽なんだもん」
「ままって⋯⋯舐め腐ったままって⋯⋯酷いよ、俺頑張って来たのに⋯⋯知らない人、苦手なのに⋯⋯馬車酔い、酷いのにぃぃ⋯⋯」
ソファに倒れ込んだシモンの前にイリナがそっとクッキーを差し出した。
お子ちゃまか! とツッコミかけたレオンがイリナに睨まれて口を閉ざしたのは賢明な判断だっただろう。
「白皙の美少年⋯⋯少年から青年に変わりゆく危うさ⋯⋯性別を超えた美貌が醸し出す憂い⋯⋯不安な思いから漂い出す頼りなさ。そんなすっごいのを見せつけられて、気もそぞろになっちゃったんだねぇ。大切な契約の場で、そりゃダメだよねぇ。大人なのに何やってんだか、やれやれ」
「ダメだよじゃねぇよ。完全に騙しにかかってんじゃねえか!」
「え~! シモンにあんな仕草しろとか、こんな態度を見せつけろとか言ってないのに? たまったまシモンが緊張して、たまったまラッセルがすけべ心を出して、書類をちゃ~んと読むより妄想とかしてただけじゃん。私は何も指示してませ~ん」
俺で妄想⋯⋯呟いたシモンがソファから崩れ落ちた。
「銭ゲバもここまでくると恐怖で毛が逆立つぜ」
「そ、そうね。幼児なのに考えがちょっとエゲツない気がしてきたわ」
「お願い、悪魔から俺を解放して⋯⋯」
「別に犯罪をしようとしてるわけじゃないのに⋯⋯熊達が酷すぎる。これって幼児に対する心的暴行で通報とか出来ないの?
契約書には堂々と『全利益』って記載して、言葉でも『全利益』って言って⋯⋯ほら、こっちは間違った事してないじゃん。相手の心情とか身体的変化とかがその時どういう状態になるかなんて知らないも~ん。
あとは~、正式な契約書に則った取引をしようとしてるだけだよ? 山越えしてる証拠やら裏帳簿やらをたまたま見つけるだけだもん。通りがかりに見つけるとか偶然拾うとかで。ちゃ~んと契約書通りの取引をしようねって言うだけだよ? 『約束は守らなくちゃダメだって学校で習わなかった?』って聞くだけ。ほら、やっぱ良い子じゃん」
「ラッセルが密売してる確証とか証拠でもあんのか?」
「ん~と⋯⋯ないよ?」
「んじゃ、山越えの証拠とかは?」
「それもない」
「チビすけ、10年間雀の涙くらいしか受け取れねえ可能性もあるって分かってるよな」
「分かってないね。だって山越えで密輸してなきゃ数字がおかしいんだもん。ラッセル領と山を挟んだ帝国側にある領地は農業に適した土地じゃなくて酪農中心なんだ。育ててるのは馬・牛・豚・ロバがメインだけど騾馬もいる。その中で騾馬だけは出荷した記録がないんだ。
それなのにかなりの量の農作物を出荷してる」
「あのなぁ、そいつは状況証拠にさえならん、ただの仮説ってやつだ。確かにチビすけの話は筋が通ってる。だが、相手を追い詰めるには『山越えしてる証拠や裏帳簿』が絶対に必要になる」
「うん、だから頑張ってね」
「⋯⋯⋯⋯は?」
「熊ってば脳みそ枯れちゃった? やっぱり本当に筋肉が詰まってるとかかな⋯⋯ってなると役に立たないかも。う~ん、それは大問題だよぉ」
「何が言いたいんだ?」
「覚えてないの?」
【集まった証拠くらいいくらでも好きにさせてあげるからさ⋯⋯勿論、報酬次第だけどね】
「うちの商会は情報を売ってるの。お買い上げありがとうございました~」
両手を揃えてペコリと頭を下げたミリーがちろっと顔を上げると、怒髪天を衝いたレオンがふうふうと荒い息を吐きながら睨みつけていた。
「イリスゥ、熊が怒ってる~。初めにちゃんと言っといたのに、忘れてたのかなぁ。でもねぇ、しつこく教えて欲しがったのは熊だし⋯⋯もしかしてこの国のお貴族様って、情報はただで手に入るって思ってる? ここまで調べるの結構大変だったから、それを知りたいのならそれなりの報酬が発生するのは当然だと思うんだけどなぁ。国交がないからさぁ、帝国の情報を集めるのは特に大変だったんだよ?」
「分かった。他にも知ってる事とか証拠集めに有益な話を見つけたら教えてくれ。もちろん対価は払う。ついでに教えて欲しいんだが、チビす⋯⋯お前のその知識はどこから仕入れた? 本とか言うなよ。そこまでの情報がわかる本なんてねえからな。お前の言ってた保険だの騾馬だの⋯⋯ギルドの行く末なんか、まるで見てきたみたいに話してたしな」
「⋯⋯それは教えられないな~。その情報に見合う対価を熊は持ってないから。イリスもシモンもね」
636
あなたにおすすめの小説
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
『外見しか見なかったあなたへ。私はもう、選ぶ側です』
鷹 綾
恋愛
「お前のようなガキは嫌いだ」
幼く見える容姿を理由に、婚約者ライオネルから一方的に婚約を破棄された
公爵令嬢シルフィーネ・エルフィンベルク。
その夜、嫉妬に狂った伯爵令嬢に突き落とされ、
彼女は一年もの間、意識不明の重体に陥る――。
目を覚ました彼女は、大人びた美貌を手に入れていた。
だが、中身は何ひとつ変わっていない。
にもかかわらず、
かつて彼女を「幼すぎる」と切り捨てた元婚約者は態度を一変させ、
「やり直したい」とすり寄ってくる。
「見かけが変わっても、中身は同じです。
それでもあなたは、私の外見しか見ていなかったのですね?」
静かにそう告げ、シルフィーネは過去を見限る。
やがて彼女に興味を示したのは、
隣国ノルディアの王太子エドワルド。
彼が見ていたのは、美貌ではなく――
対話し、考え、異論を述べる彼女の“在り方”だった。
これは、
外見で価値を決められた令嬢が、
「選ばれる人生」をやめ、
自分の意思で未来を選び直す物語。
静かなざまぁと、
対等な関係から始まる大人の恋。
そして――
自分の人生を、自分の言葉で生きるための物語。
---
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
兄のお嫁さんに嫌がらせをされるので、全てを暴露しようと思います
きんもくせい
恋愛
リルベール侯爵家に嫁いできた子爵令嬢、ナタリーは、最初は純朴そうな少女だった。積極的に雑事をこなし、兄と仲睦まじく話す彼女は、徐々に家族に受け入れられ、気に入られていく。しかし、主人公のソフィアに対しては冷たく、嫌がらせばかりをしてくる。初めは些細なものだったが、それらのいじめは日々悪化していき、痺れを切らしたソフィアは、両家の食事会で……
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪
山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。
「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」
そうですか…。
私は離婚届にサインをする。
私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。
使用人が出掛けるのを確認してから
「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」
家の全仕事を請け負っていた私ですが「無能はいらない!」と追放されました。
水垣するめ
恋愛
主人公のミア・スコットは幼い頃から家の仕事をさせられていた。
兄と妹が優秀すぎたため、ミアは「無能」とレッテルが貼られていた。
しかし幼い頃から仕事を行ってきたミアは仕事の腕が鍛えられ、とても優秀になっていた。
それは公爵家の仕事を一人で回せるくらいに。
だが最初からミアを見下している両親や兄と妹はそれには気づかない。
そしてある日、とうとうミアを家から追い出してしまう。
自由になったミアは人生を謳歌し始める。
それと対象的に、ミアを追放したスコット家は仕事が回らなくなり没落していく……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる