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第四章 ご利用は計画的に

06.爽やかに暴言を吐きまくる

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 これほどまでに身元を隠したい人物が誰なのか⋯⋯幼い子供を利用して存在を隠蔽しているのはギルドや公爵家に対して二心を抱いているからと考えれば納得がいくと公爵達は考えていた。

 公爵家の面々は騙されているかもしれないレオンへの心配と、少し知恵が足りないらしい可哀想なミリーへの不憫さに心を痛め⋯⋯。

「こんな小さな子供を利用するなんて酷い話ですわ」

「良い顔をして近付き最もらしい言葉で信用を勝ち取り、自分に都合の良い結果に向けて舵を切らせるのは詐欺師や悪党の常套手段なんだ。少し足りな⋯⋯成長の遅い子供を騙すなど造作もない事だからね」

「いい加減にして下さい! ミリーの頭は年齢以上にしっかりしています。しっかりし過ぎなくらいだ! とにかく今は何も聞かずその口を閉じて下さい⋯⋯ミリーをこれ以上刺激するのはマズいんだ」


「本来であれば、レオンはギルド長になるには若すぎるし経験が足りないのも承知の上での登用だったんだ。それを利用しようとする輩がいてもおかしくないと分かっていたのに⋯⋯イリス様がおられれば大丈夫だと安心していたが、誰か補佐をつけるべきだったな」

 レオンの言葉を無視して公爵達の話が進んでいった。

「では暫くの間、私か弟のディー⋯⋯」

「はぁ、本当にくだらない方々ですわねぇ」


「ヤバい⋯⋯チビすけ、頼むから落ち着い⋯⋯」

「大の大人が愚にもつかないことをぐじぐじと⋯⋯まともにきいてたら耳が腐りそうだわ。
人の話を聞く耳を持たない、肩書きだけのボンクラ様方にすこ~し、お話しさせていただいてもよろしいでしょうか?」

「⋯⋯ミ、ミリー? ええっ!? その話し方は⋯⋯」

「チビすけ、もう十分だろ。そろそ⋯⋯」

「十分? 始めたばっかじゃん。言いたい放題言うのを黙って聞いてあげたんだから、今度はヒグマ親父達がお口チャックで話を聞く番じゃん」

「おくちちゃっくって?」

「え? あー、それは気にしないで。とーにーかーくー、今は私のターンだって事!」

「お前の前にいるのは公爵夫妻なんだぞ! 普段みたいな口調で暴言吐いたら、無礼打ちにされっちまう!」

「えーえー! やりたきゃやれば!? こちとら身分を傘にきたおっさんやおばさんにはうんざりしてるんだっつうの! これでも一応『親熊と眷属』だと思うから敬語使ってやってんだから、熊に文句言われる筋合いないっての!」

「親熊⋯⋯私達の事か?」

「おばさんって⋯⋯」

「眷属って言われた⋯⋯」




「レオン様をギルド長に選任なさったのは公爵閣下でしたのに、今になって若くて経験不足だと知っていた? 惚けた戯言を仰られるなんて⋯⋯恥というものをお持ちではありませんの?
後々になって『私はすでに知っていたんだよなぁ』な~んて戯言を宣う方以上の愚か者は他にはいないと思いますわ。皆様方はそうお思いになられませんの? あら、ごめんなさいませ。思われない方達だからこそ、偉そうな態度で口にできるんでしたわねぇ」

 無言で公爵達の暴走する様を見ていたミリーが突然立て板に水を流すような勢いで話し始めた。一応気を遣ってはいるようである程度敬語を使っているが、暴言の方が目立ちすぎ⋯⋯度肝を抜かれた公爵達は茫然自失になってしまった。

「それから、『イリス様がおられたのに』とご不満を述べられるほど、ギルド内でのイリス様の事をご存知なのでしょうか?
ギルドにどれほどの大金を出資しておられるのか存じませんし興味もございませんけれど、レオン様やイリス様を貶める言動はご自身の無知と無策を知らしめるだけ。お控えになられた方がよろしいかと存じます」

「ミリー⋯⋯君の話し方。それが素の話し方なら、何故⋯⋯」

「嘘つきな大人と真っ向勝負するのは愚の骨頂ですもの。相手が何も理解できない幼児だと思っておられたからこそ、本音がこんなにあっさりと引き出せた。そうではございませんか?」

「チビすけ⋯⋯お前、父上達が本心を隠してるって初めから分かってたのかよ!?」

「当然じゃん。熊ってさぁ、この国の筆頭公爵家の溺愛されまくってる坊やちゃんだって自覚ある? もし本気で熊に隠し子がいるかもって疑ってるなら、この間みたいにギルドの前に馬車を乗り付けての派手なパフォーマンスなんてしないって。
たとえ息子を溺愛し過ぎて脳内お花畑になってる超絶おバカな親や兄ちゃんでもやらないって分かりきってんじゃん」

 もし公爵家の末息子に隠し子がいたなら、公爵家にとってもレオンにとっても醜聞にしかならない。

「先ずは人の目を避けてこそ~っと確認をとって、家とか熊への被害を最小限に抑えようとするのが普通じゃん。あんな風に護衛をぞ~ろぞろ引き連れて、高級で~すって誰にでも分かるような馬車で乗り付けたら、誤魔化しようがないでしょ?」

「⋯⋯確かにそうだけどよぉ」

「腐っても⋯⋯いや、腐ってるのかどうか今の所はまだわかんないって事にしといたげるけど⋯⋯お貴族様の中のお貴族様、天下の筆頭公爵家の当主がさぁ、可愛い可愛いって絶賛溺愛中の坊やちゃんの醜聞に繋がる噂を広めちゃうような愚行に、なんで出たのかな~。なんか裏がありそうだな~、ぜ~ったいなんか企んでるよな~って考えるのが普通っしょ。イリスは気付いてたみたいだよ?」

「お前⋯⋯マジかよ。んじゃ、騙されたのは俺一人だけ?」

 ショックで呆然となったレオンを前にイリスが笑いを堪えていたのがその証拠で、溺愛している末息子の暴挙に慌てた親を演じていると気付いていたからこそ、傍観を決め込めたのだろう。

「熊を動揺させておけば『ギルド員の保険制度』の発案者やらの情報を吐かせやすいって計画したんだと思うよ。いや~、詐欺師と悪党だっけ⋯⋯ご自分達の事をそこまで的確に承知しておられるとはねぇ、驚きすぎて目が飛び出るかと思っちゃった」

 本当ならこっそり呼びつけて、開口一番『母親は誰だ? 身分は? 騙されてないのか?』と聞いたはず。それを聞かなかったのは本心を知られる前にミリーを目の前に引き摺り出したかったから。

「熊ってお利口な動物だったんじゃなかったっけ⋯⋯覚え間違いかなぁ。親熊も残念頭みたいだし」



「ミリー、私の勘違いでなければ君はさっき私達の事を詐欺師だと言ったのかね?」

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