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第四章 ご利用は計画的に

07.レオンを馬鹿にしてるのは誰かなぁ?

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「ミリー、私の勘違いでなければ君はさっき私達の事を詐欺師だと言ったのかね?」

「ええ、正確には詐欺師か悪党と申し上げました。と言いますかほんの数分前に、ご自身でそう仰っておいでだったではありませんか」


『良い顔をして近付き最もらしい言葉で信用を勝ち取り、自分に都合の良い結果に向けて舵を切らせるのは詐欺師や悪党の常套手段なんだ。少し足りな⋯⋯成長の遅い子供を騙すなど造作もない事だからね』


「公爵閣下のお言葉ですけれど、思い出していただけたでしょうか? 皆様方がレオン様や私に対してなさった事は『まさにそれ!』でしたでしょう?」

 遊びにおいで、クッキーを、息子のお友達に⋯⋯。幼子が喜びそうな言葉を並べたてたのは『誰に頼まれたのか』を喋らせる為。

「確かに⋯⋯私達はやり方を間違っていたと認めよう。イリス様に対してもミリーに対しても失礼な言葉を発した事を心から詫びたい。ただ、今回は急を要す⋯⋯」

「自己保身にしかならない薄ら寒い言い訳は結構ですわ。黴びたパンよりも青くなったじゃがいもよりも役に立たない詫びや言い訳など、時間の無駄にしかなりませんもの。
保険制度の件⋯⋯どこの誰がレオン様に具申したのかは申せませんが、悪意どころか他意もない等価交換による情報提供でございます。この国ではまだ知られていない方法ですがとある国がギルド存続の為に発案・実行した方法で、その国では一応成功致しました。ですがこれは『手段』の一つに過ぎませんから、別の国で成功していたとしてもこの国で成功するのか不首尾に終わるのかはギルドやこの国の方々次第でございましょう。
この件について、レオン様は正式な契約書にて情報提供者に関する全てを秘匿するとお約束なされましたので、これ以上の個人情報をレオン様に求められるのはおやめになられた方がよろしいかと存じます。
お花畑が満開になる程にレオン様を溺愛されておられるのですから、子供扱いなどせずに真っ向勝負なされませ。それとも信じるに足る者ではない⋯⋯ご自分達が教え諭し導いてやらねばならぬほどの幼児だと内心では馬鹿にしておられるからこそ、溺愛をしておられるのでしょうか」

「いや、そんなつもりなどかけらもないが⋯⋯そこまでして情報提供者の事を公にしたくない理由があるという事か? そして、レオンはその方を信じたと」

「はい、俺はその方から話を聞いて自分なりに検討し、確信を持ったからこそ出資者の方々に提案しました。権力に固執し反発し合う時代を終わらせ、商人ギルドは同職ギルドとも手を取り合うべきだと考えています」



 長い時間、部屋の中に重苦しい空気が流れていった。

 公爵は眉間に皺を寄せて考え込み、公爵夫人は訝しげな顔でミリーを見つめてばかり。

「⋯⋯貴族主義・権力主義のこの国では難しいかもしれんが、権力に固執して今の状況になっているのは事実。私が王党派から離脱したのもそれが理由だったしな。
レオンの提案には一考の価値があると私達は考えている。だからこそ情報提供者を知りたいと思ったのだよ。
派手にやれば反発を喰らうだろうから、慎重に事を進めていきなさい。私に出来ることがあればいつでも連絡してくるといい」

 ミリーの話に納得したのかどうかは分からないが、公爵はレオンを信じると決めたらしい。



(溺愛が過ぎて盲目になっていたようだな。まだ19歳ではなく、もう19歳だと言うのに。しかし、ミリーと言う少女は⋯⋯)

 ミリーの突然の変化に理解が追いつかないまま話が進んでしまったが、冷静になると見た目と言動の落差に違和感が拭いされない。

「誠に失礼だとは思うが⋯⋯幼児語の似合う容姿からは想像できない言動に驚きしかないのだが、いったい⋯⋯」

「私は現在8歳で近々9歳になりますので、19歳のご子息の娘と考えるのは無理があります。私にのは身長と体重だけであって欲しいと心から願っております」

 ミリーからの痛烈な右ストレートが親熊のボディに決まった。

「先ほどは本当に申し訳なかった」

「私が言い出したのですから、謝罪しなければならないのは父上ではなく私です。大変申し訳ありませんでした。心から謝罪します」

 立ち上がってキッパリと頭を下げた長兄キースもやっぱり⋯⋯。

「座ってる時は分かんなかったけど、ちょっと小ぶりな熊⋯⋯そうか、二人とも父親似なんだ⋯⋯って事は次兄も熊さんかなぁ⋯⋯遺伝子って結構な働き者じゃん。あ、Y遺伝子はお昼寝中だったり?」

 つい脳内の言葉がうっかり漏れたミリーにすかさずツッコミが入った。

「私も熊って言われた⋯⋯」

 どさりとソファに座り込んだ長兄が肩を落とした。

「なぁ、そろそろ熊ってのやめねえか?」

「なんで? 熊は熊じゃん。種族を変えたいなら⋯⋯う~ん、息子は父親に似るって言うから無理なんじゃない?」


「ミレーネ、私も熊かな?」

「ええ、紛れもない熊ですわ。ねえミリー、わたくしに『いでんし』が何か教えてくださるかしら?」

 やっぱり女は目敏い。




(この席に参加するって決めたのは別の理由があったんだよね。って考えたら、私も公爵達と同類かも)

 王家を敵に回すと知りつつ王党派から議会派に転身したブランドール公爵に興味があったのは⋯⋯本物のミリーの為。

 実里が消えた後、本物のミリーがミッドランド侯爵家に対抗しなければならない時がくるかもしれない。

(ブランドール公爵がミリーの盾になってくれれば鬼に金棒。まあ、そんな時がこない事を祈ってるけどね)





 その頃レオンは⋯⋯。

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