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8.ライラには勝てません
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翌日から授業がはじまり、選択科目の時はミリセントと離れることがあるがその時はノアが一緒にいて、ライラはひとりにならずに済んでいた。
行き帰りはノアが必ず一緒にいて、昼休憩は3人かジェラルドを含んだ4人になる事も多い。
「一度も迎えに来てないんだって?」
通常学園の行き帰りは婚約者が令嬢を屋敷まで迎えにきて教室まで送り届け、帰りも特別な予定がない限り教室まで迎えにきて馬車で屋敷まで送り届ける。
「ビクトールは恋人の送り迎えをしているそうですし、うちへ来てくれなくてホッとしてるの」
ハーヴィーの時は頑として御者台に乗ると言い張るノアと3人で向かい、帰りは生徒会室に行くハーヴィーを見送ってからノアと二人で帰っていた。
勿論ノアは真冬でも御者の隣に座ったが⋯⋯。
(今でも雨の日以外は御者の隣に座ることが多いのよね。護衛だから平気だって言っても生真面目というか融通が利かないというか、無理矢理用事を作らなくては風邪をひいていても御者台に座るんだもの)
授業の後で週に3日生徒会室へ寄って仕事をして帰るが、その時もノアが付き従っている。
「やる事がある時は先に帰っても良いのよ」
「図書室で宿題をやっているので問題ありませんから」
「そこに差し入れを持った令嬢達がいそいそとやって来るって噂になってるわよ」
「出入り禁止になる前に別の場所を探しておきます」
(⋯⋯否定はしないんだ)
ビクトールはリリアと別れたのか今はCクラスのタバサ・ルーカン子爵令嬢と付き合っているらしい。ビクトールは二股だけはしないと公言しているのでリリアとは別れたのだと思うが、かつての恋人も新しい恋人候補も取り巻きとして連れ回るので褒める気にはなれない。
キャサリン・サルーン男爵令嬢の情報は上がってきたがターゲットとするには少し微妙だった。可愛らしい見た目をした真面目な令嬢で、冷たい言い方をすれば可もなく不可もない。
別の時ならとても好感が持てる令嬢だが、ビクトールの相手を探している今は⋯⋯。
「男爵は王宮で文官を務める法衣貴族でした。真面目な性格で評判はいいのですが文官の給料と夫人の内職だけなので、収入面ではかなり苦労しているようです。
長男が騎士団に入隊できるのを期待していたようですが今年度の試験に落ちてかなり荒れています」
「もう一人は弟だったかしら?」
「はい、3歳下の弟です。両親は学費の事を考えてキャサリン嬢をメイドに出したかったようですが丁度入れ替わりになりますし、高位貴族と知り合って侍女に雇ってもらうか王宮務めをすると言って入学を許されたそうです」
「真面目で前向きだなんて、ビクトールの毒牙にかからない事を祈るわ」
「⋯⋯ライラ様は、その」
「なに?」
「チャンスだとはお考えにならないのだなぁと思いまして」
当てにしていた長男の給料が入らず、荒れているなら練習不足で来年の試験も危ういだろう。学園で楽しそうにお茶会の話題をしている貴族令嬢を横目に、侍女として雇ってくれそうな人を探すか王宮勤めを狙って勉学に勤しむしかない自分。
単純に考えれば、ビクトールとの接点を作ってあげるだけで楽して学費が稼げるチャンスだと思う可能性はある。
「でもねぇ、もしそれで上手くいってもビクトールは絶対に最低の夫になるって分かってるから後々思い出して後悔しそうなんだもの」
「そこは俺も同意見ですが、人に親切にしている間に間に合わなくなっては本末転倒かも」
「⋯⋯シエナ様がダメだった時の保険にしましょう。第一キャサリン嬢はビクトールの好みとは大きくかけ離れているし」
「ビクトール様の歴代の恋人達は人数が多すぎて、好みというより手当たり次第な感じがしてますが⋯⋯シエナ・アントリム伯爵令嬢の報告に移りますね」
アントリム伯爵家は予想通りシエナの結婚相手を探していた。予想が外れたのは選り好みしているのがシエナだけではなかった事。
「資産家の高位貴族じゃなきゃダメなのね」
「はい、伯爵家のサロンは元々シエナ嬢の美しさに引き寄せられた阿保⋯⋯令息達が多かったので、シエナ嬢のイメージを壊すわけにはいかないと考えているようです。しかもサロン運営にかなり費用をかけていて内情は火の車のようです」
「サロンの為にはシエナ様の評判を下げず出資してくれる人に娘を売りたい。貴族らしい考え方だけど、その考えだとビクトールは対象外になりそうね」
「微妙なところですね。見た目と爵位と表向きの資産だけなら問題ありませんがビクトール様は庶子ですし社交界での評判は最低ですから」
ライラはビクトールの名前を口にする度に嫌そうな顔をするノアを見つめながら考えこんだ。
(諦めてしまうのは簡単だけど⋯⋯使えそうな気がしなくもないのよね。うーん)
コチコチと時計の音が響きノアが手に持っている報告書がカサカサと音を立てた。
「やっぱり勿体無いわ⋯⋯真実の愛によって放蕩者を改心させた女神のイメージはどうかしら?」
「え~、女神ですか? この内容からすると何でも思い通りにしないと気が済まないタチの悪い魔女って感じですけど?」
既に嫌そうな顔をしていたノアの眉間に皺が寄った。
「ふふっ、会った事もないのによく分かるのね。確かにシエナ様ってそんな人よ。とても自信家でプライドが高くて、周りの殿方達が自分以外の女性を見るたびに不快そうなお顔になられるの。
そういう女性だからこそビクトールのお相手にぴったりだと思うわ。だって、絶対に踏み付けにされたり泣き寝入りしたりしないと思うもの」
「確かに⋯⋯『全てのジャックには似合いのジルがいる』ってやつですね」
「牛は牛連れ、馬は馬連れとも言うらしいわ。じゃあ、ノアにひと仕事してもらおうかしら」
ニンマリと笑ったライラの顔を見たノアが顔を引き攣らせた。
「そのお顔をされた時って、ろくでもない事を考えておられる時ですよね。却下です! 全身全霊をかけてお断りします!!」
「ダメ? ノアは私があんな穀潰しの放蕩者に虐められて泣いてもいいんだ。そっか⋯⋯」
えーんえーんと嘘泣きをするライラ。
「あーもー、何をすれば良いんですか!?」
「ふふっ、やっぱりノアは優しいのね。では⋯⋯」
行き帰りはノアが必ず一緒にいて、昼休憩は3人かジェラルドを含んだ4人になる事も多い。
「一度も迎えに来てないんだって?」
通常学園の行き帰りは婚約者が令嬢を屋敷まで迎えにきて教室まで送り届け、帰りも特別な予定がない限り教室まで迎えにきて馬車で屋敷まで送り届ける。
「ビクトールは恋人の送り迎えをしているそうですし、うちへ来てくれなくてホッとしてるの」
ハーヴィーの時は頑として御者台に乗ると言い張るノアと3人で向かい、帰りは生徒会室に行くハーヴィーを見送ってからノアと二人で帰っていた。
勿論ノアは真冬でも御者の隣に座ったが⋯⋯。
(今でも雨の日以外は御者の隣に座ることが多いのよね。護衛だから平気だって言っても生真面目というか融通が利かないというか、無理矢理用事を作らなくては風邪をひいていても御者台に座るんだもの)
授業の後で週に3日生徒会室へ寄って仕事をして帰るが、その時もノアが付き従っている。
「やる事がある時は先に帰っても良いのよ」
「図書室で宿題をやっているので問題ありませんから」
「そこに差し入れを持った令嬢達がいそいそとやって来るって噂になってるわよ」
「出入り禁止になる前に別の場所を探しておきます」
(⋯⋯否定はしないんだ)
ビクトールはリリアと別れたのか今はCクラスのタバサ・ルーカン子爵令嬢と付き合っているらしい。ビクトールは二股だけはしないと公言しているのでリリアとは別れたのだと思うが、かつての恋人も新しい恋人候補も取り巻きとして連れ回るので褒める気にはなれない。
キャサリン・サルーン男爵令嬢の情報は上がってきたがターゲットとするには少し微妙だった。可愛らしい見た目をした真面目な令嬢で、冷たい言い方をすれば可もなく不可もない。
別の時ならとても好感が持てる令嬢だが、ビクトールの相手を探している今は⋯⋯。
「男爵は王宮で文官を務める法衣貴族でした。真面目な性格で評判はいいのですが文官の給料と夫人の内職だけなので、収入面ではかなり苦労しているようです。
長男が騎士団に入隊できるのを期待していたようですが今年度の試験に落ちてかなり荒れています」
「もう一人は弟だったかしら?」
「はい、3歳下の弟です。両親は学費の事を考えてキャサリン嬢をメイドに出したかったようですが丁度入れ替わりになりますし、高位貴族と知り合って侍女に雇ってもらうか王宮務めをすると言って入学を許されたそうです」
「真面目で前向きだなんて、ビクトールの毒牙にかからない事を祈るわ」
「⋯⋯ライラ様は、その」
「なに?」
「チャンスだとはお考えにならないのだなぁと思いまして」
当てにしていた長男の給料が入らず、荒れているなら練習不足で来年の試験も危ういだろう。学園で楽しそうにお茶会の話題をしている貴族令嬢を横目に、侍女として雇ってくれそうな人を探すか王宮勤めを狙って勉学に勤しむしかない自分。
単純に考えれば、ビクトールとの接点を作ってあげるだけで楽して学費が稼げるチャンスだと思う可能性はある。
「でもねぇ、もしそれで上手くいってもビクトールは絶対に最低の夫になるって分かってるから後々思い出して後悔しそうなんだもの」
「そこは俺も同意見ですが、人に親切にしている間に間に合わなくなっては本末転倒かも」
「⋯⋯シエナ様がダメだった時の保険にしましょう。第一キャサリン嬢はビクトールの好みとは大きくかけ離れているし」
「ビクトール様の歴代の恋人達は人数が多すぎて、好みというより手当たり次第な感じがしてますが⋯⋯シエナ・アントリム伯爵令嬢の報告に移りますね」
アントリム伯爵家は予想通りシエナの結婚相手を探していた。予想が外れたのは選り好みしているのがシエナだけではなかった事。
「資産家の高位貴族じゃなきゃダメなのね」
「はい、伯爵家のサロンは元々シエナ嬢の美しさに引き寄せられた阿保⋯⋯令息達が多かったので、シエナ嬢のイメージを壊すわけにはいかないと考えているようです。しかもサロン運営にかなり費用をかけていて内情は火の車のようです」
「サロンの為にはシエナ様の評判を下げず出資してくれる人に娘を売りたい。貴族らしい考え方だけど、その考えだとビクトールは対象外になりそうね」
「微妙なところですね。見た目と爵位と表向きの資産だけなら問題ありませんがビクトール様は庶子ですし社交界での評判は最低ですから」
ライラはビクトールの名前を口にする度に嫌そうな顔をするノアを見つめながら考えこんだ。
(諦めてしまうのは簡単だけど⋯⋯使えそうな気がしなくもないのよね。うーん)
コチコチと時計の音が響きノアが手に持っている報告書がカサカサと音を立てた。
「やっぱり勿体無いわ⋯⋯真実の愛によって放蕩者を改心させた女神のイメージはどうかしら?」
「え~、女神ですか? この内容からすると何でも思い通りにしないと気が済まないタチの悪い魔女って感じですけど?」
既に嫌そうな顔をしていたノアの眉間に皺が寄った。
「ふふっ、会った事もないのによく分かるのね。確かにシエナ様ってそんな人よ。とても自信家でプライドが高くて、周りの殿方達が自分以外の女性を見るたびに不快そうなお顔になられるの。
そういう女性だからこそビクトールのお相手にぴったりだと思うわ。だって、絶対に踏み付けにされたり泣き寝入りしたりしないと思うもの」
「確かに⋯⋯『全てのジャックには似合いのジルがいる』ってやつですね」
「牛は牛連れ、馬は馬連れとも言うらしいわ。じゃあ、ノアにひと仕事してもらおうかしら」
ニンマリと笑ったライラの顔を見たノアが顔を引き攣らせた。
「そのお顔をされた時って、ろくでもない事を考えておられる時ですよね。却下です! 全身全霊をかけてお断りします!!」
「ダメ? ノアは私があんな穀潰しの放蕩者に虐められて泣いてもいいんだ。そっか⋯⋯」
えーんえーんと嘘泣きをするライラ。
「あーもー、何をすれば良いんですか!?」
「ふふっ、やっぱりノアは優しいのね。では⋯⋯」
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