【完結】亡くなった婚約者の弟と婚約させられたけど⋯⋯【正しい婚約破棄計画】

との

文字の大きさ
7 / 49

7.懐かし⋯⋯くない思い出

しおりを挟む
「大きな利権が関わってるから何としてでも婚姻を成立させたいのよ」

 順調に業績を伸ばし巨額の資産を持った貿易会社は、船頭が二人いる船のような危うい状況が続いている。

 人脈のターンブリー侯爵派と資産プリンストン侯爵派の均衡が崩れかけている今、プリンストン侯爵は何としてでもライラをターンブリーに送り込みたい。

「ターンブリー侯爵の財政状態を正確には知らないお父様やプリンストン侯爵派の役員は自分達が劣勢だと考えてるから政略は必須だと思っている。それに、後継者がビクトールに変わったから益々ラッキーだと勢いづいているの」

「成績も素行も悪いビクトールがターンブリー侯爵家を継げばプリンストン優先は揺るがない」

「ノアの言う通りね」


 当面はプリンストンを排除できなくなった上にレベルの低い嫡男を役員にさえできないでいるターンブリーと、一発逆転のチャンスが来たと思っているプリンストン。

「ターンブリーとプリンストンが仲良く一つのパンを取り合ってるの。腐ったパンなのにね」

 短絡的なビクトールは後継になった事しか気付かず浮かれている。何もしなくても自分の将来は安泰な上に今まで以上に好き放題できると思い取り巻きを集めては豪遊しているらしい。

「ビクトール様が廃嫡される可能性はないんですか? もっと真面な方を後継にされると言うか」

「今のところターンブリーに別の庶子がいるとは聞いてないし、親戚から養子をもらう可能性はあるけど私の計画には支障がないと思うわ」

 ターンブリー侯爵家が養子をもらって後継を変更したとしても婚約者の変更は簡単にはいかない。ビクトールが大きな問題を起こして廃嫡されれば婚約者変更の打診は来るだろうが、そうならないようにビクトールを誘導しておけばいいだろう。

「様子次第では婚約破棄宣言の前に廃嫡になるのはダメよって教え込まなきゃね」


 学園内が出会いの機会は一番多いので、是非とも頑張って欲しい。

(キャサリン・サルーン男爵令嬢がリリアのような女性である事を願うのは『悪役』っぽいかしら?)



「もう一人はこのシエナ・アントリム伯爵令嬢ですか?」

「ええ、3歳上で学園はもう卒業されているけどお茶会では何度かお見かけしているの。私が聞いている噂が正しいなら間違いなく適任者だわ。この方が血縁者だとは思っていなかったから驚いてる」

 その美貌から社交界の華と言われるシエナ・アントリム伯爵令嬢は『自称詩人』で、婚約者を作らず母親のサロンに参加しては高位貴族達の間を彷徨っていた。

「特定の恋人はつくらないけれどいつも大勢の取り巻きを連れていて、時々行方不明になるって噂が少し前から広まってたの。
そのせいか最近はアントリム伯爵夫妻がシエナ様の婚約者を探しはじめたのだけど、理想が高くて中々話が進まないって聞いてるわ」

 ビクトールは見た目だけなら申し分ない。肩幅が広く高身長で濃いブロンドと碧眼は大勢の恋人を捕まえるのに役立ってきた。

「見た目に加えてターンブリー侯爵家の後継だと言えば話が進みそうですね」

「3歳くらいの歳の差なら問題にならないと思うし、お互いが恋多き方なら婚姻後も其々に自由を楽しめて良いと思うの」

(この2人が結びつくなら何の心配もいらないわ。それにシエナ様にはちょっぴり恨みがあるしね)




 ハーヴィーが知人からサロンに誘われたと言ってきた時嫌な予感がした。

『アントリム伯爵家のサロンには出来れば参加したくないんだけど、どうしてもってしつこくて。頼む!』

 両手を顔の前でパチンと合わせて頼み込むハーヴィーにライラは苦笑いを浮かべた。

 虫除けがわりとしてハーヴィーについて行ったライラは今回も来て良かったと心の底から思った。ハーヴィーをしつこく誘った令息は予想通りシエナの取り巻きの一人だった。

『シエナが新しい風が吹き込まないから感性が鈍ってきたって言ってたんだ。ライラ嬢には申し訳ないけどハーヴィーをシエナに紹介してくるから適当に過ごしていてくれ』

 想像通り、ハーヴィーを餌にシエナのご機嫌がとりたかったと言う事らしい。見目も良く資産家の侯爵家の跡取りで性格も穏やかなハーヴィーはこういった面倒によく巻き込まれる。

『あら、ご挨拶でしたらわたくしもご一緒させていただきたいわ。折角アントリム伯爵家のサロンに伺わせていただけたんですもの。こんな機会なんてかもしれませんもの。ねえ、ハーヴィー?』

『そうだね、機会なんだから、私もライラの事を皆さんに紹介できれば嬉しいよ』

 仮面を被ったライラ達がにこやかにゴリ押しすると無理矢理誘ってきた令息が溜息をついた。

『漸くハーヴィーを呼び出せたってのに⋯⋯はぁ、シエナの機嫌が悪くなりそうだよ』


 肩を落とした令息とその後ろにいるハーヴィーに気付いたシエナの嬉しそうな満面の笑みは、ライラに気付いた途端霧散した。

『あら、チャーリーの後ろにいらっしゃるのはハーヴィー・ターンブリー侯爵令息でしょう? 折角お会いできて喜んだと言うのに⋯⋯ 今日は嫌な風も吹いているみたいねぇ』

 チャーリーと呼ばれた令息がシエナのそばに走って行き必死で言い訳をしていたが、シエナはそっぽを向いたまま。

『ハーヴィーが折角会いにきてくださったのに、何だか今日は気が乗りませんの。次のサロンではゆっくりお話し致しましょうね』

 ライラを無視し勝手にファーストネームを呼び捨てにして部屋から出て行ったシエナ。その後ろ姿を見送る取り巻き達にライラが睨まれたのも予想通りの展開だった。



『ライラにはいつもと同じく、次のデートでシナモン入りの甘~いショコラトルをプレゼントするよ』

『あの取り巻き達の様子からするとハーヴィーにはとうもろこしの粉と唐辛子入りのスパイシーな方をプレゼントする事になりそうね。しかも、うんとスパイシーにしてあげる』

『げっ!』

 辛いものが苦手なハーヴィーにちょっぴり仕返ししたのも懐かしい。

 アントリム伯爵家のサロンには二度と行かなかった二人だが、ライラの予想通り暫くの間シエナの取り巻きから虐めを受けた。



(ハーヴィーを狙ったくらいだもの、ビクトールなら余裕で守備範囲内だと思うわ)

しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

差し出された毒杯

しろねこ。
恋愛
深い森の中。 一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。 「あなたのその表情が見たかった」 毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。 王妃は少女の美しさが妬ましかった。 そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。 スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。 お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。 か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。 ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。 同名キャラで複数の作品を書いています。 立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。 ところどころリンクもしています。 ※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!

とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵令嬢リリアーヌは、10歳で母が他界し、その後義母と義妹に虐げられ、 屋敷ではメイド仕事をして過ごす日々。 そんな中で、このままでは一生虐げられたままだと思い、一念発起。 母の遺言を受け、自分で自分を幸せにするために行動を起こすことに。 そんな中、偶然訳ありの男性を拾ってしまう。 しかし、その男性がリリアーヌの未来を作る救世主でーーーー。 メイド仕事の傍らで隠れて淑女教育を完璧に終了させ、語学、経営、経済を学び、 財産を築くために屋敷のメイド姿で見聞きした貴族社会のことを小説に書いて出版し、それが大ヒット御礼! 学んだことを生かし、商会を設立。 孤児院から人材を引き取り育成もスタート。 出版部門、観劇部門、版権部門、商品部門など次々と商いを展開。 そこに隣国の王子も参戦してきて?! 本作品は虐げられた環境の中でも懸命に前を向いて頑張る とある侯爵令嬢が幸せを掴むまでの溺愛×サクセスストーリーです♡ *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。

ラディ
恋愛
 一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。  家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。  劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。  一人の男が現れる。  彼女の人生は彼の登場により一変する。  この機を逃さぬよう、彼女は。  幸せになることに、決めた。 ■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です! ■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました! ■感想や御要望などお気軽にどうぞ! ■エールやいいねも励みになります! ■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。 ※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。

醜い私は妹の恋人に騙され恥をかかされたので、好きな人と旅立つことにしました

つばめ
恋愛
幼い頃に妹により火傷をおわされた私はとても醜い。だから両親は妹ばかりをかわいがってきた。伯爵家の長女だけれど、こんな私に婿は来てくれないと思い、領地運営を手伝っている。 けれど婚約者を見つけるデェビュタントに参加できるのは今年が最後。どうしようか迷っていると、公爵家の次男の男性と出会い、火傷痕なんて気にしないで参加しようと誘われる。思い切って参加すると、その男性はなんと妹をエスコートしてきて……どうやら妹の恋人だったらしく、周りからお前ごときが略奪できると思ったのかと責められる。 会場から逃げ出し失意のどん底の私は、当てもなく王都をさ迷った。ぼろぼろになり路地裏にうずくまっていると、小さい頃に虐げられていたのをかばってくれた、商家の男性が現れて……

捨てられた私は遠くで幸せになります

高坂ナツキ
恋愛
ペルヴィス子爵家の娘であるマリー・ド・ペルヴィスは来る日も来る日もポーションづくりに明け暮れている。 父親であるペルヴィス子爵はマリーの作ったポーションや美容品を王都の貴族に売りつけて大金を稼いでいるからだ。 そんな苦しい生活をしていたマリーは、義家族の企みによって家から追い出されることに。 本当に家から出られるの? だったら、この機会を逃すわけにはいかない! これは強制的にポーションを作らせられていた少女が、家族から逃げて幸せを探す物語。 8/9~11は7:00と17:00の2回投稿。8/12~26は毎日7:00に投稿。全21話予約投稿済みです。

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

処理中です...