【完結】亡くなった婚約者の弟と婚約させられたけど⋯⋯【正しい婚約破棄計画】

との

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32.このタイミングで登場?

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 ビクトールが俺様はなんでもありだと豪語してから2週間経ったが、今までと違うのはライラの顔を見ても馬鹿にしたように笑うだけで絡んでこない事くらい。


 生徒会の打ち合わせが急遽キャンセルになったがミリセントは既に別のクラスメイトと食事中だったので、ノアと2人でパンを買って中庭にやって来た。
 肌寒い風のせいでどのテーブルも空いていたが一番端を選んで座りパンと飲み物を並べた。


「一年生のあいだではそんなに有名になってるの?」

「ええ、かなり有名ですね。ビクトールに顔繋ぎしたい奴等がご注進に及んだようですが、未だにサロンに顔を出してシエナ様と楽しく過ごしています。ただ、新しい恋人も物色していますね」

 シエナの取り巻きの妹ロザンナがかなり積極的に広めているらしく、それに合わせて『我こそは次期ターンブリー侯爵夫人に!』と張り切った女性達がビクトールの周りに集結しよりどりみどりの状態になっているらしい。

「イライザさんがビクトールのそばにいますからシエナ様と別れたのは間違いないでしょう」

 ライラが『隙間家具のよう』だと批評したビクトールの幼馴染イライザがそばにいるなら、今は中休み⋯⋯恋人不在の時でほぼ間違いないだろう。

「先日のジェニーさんは? 最後にビクトールが絡んできた時、腕にぶら下がっていた女性は確かそんな名前じゃなかったかしら?」

「ジェシカだったと思います」

 ライラが何度も変わるビクトールの恋人の名前を覚えていないのに気付いてノアは笑いを堪えた。

(本当に興味がないんだな)

「そうだったかしら。まあ、物色中なら今日は別の方の可能性もあるしね」



「それから、ビクトールの実家の商会に張り付いている調査員の話ではまた経営がヤバくなってるそうです」

「それは拙いわね。ターンブリー侯爵家には援助する余裕もないし、拘う暇もないはずだもの。ビクトールに接触するようだったら注意が必要だわ」

「その旨伝えて何かあればすぐ連絡するよう言っておきます」

「あれはどうなったかしら。もんし⋯⋯」

「しっ! 人が」

 ライラが話しかけた言葉を遮ったノアが人差し指を口に当てた。



「あの⋯⋯ライラ・プリンストン様ですよね」

 おずおずとした様子で声をかけてきたのは見たことのない女性2人組だった。

(お会いした事はないはず、一年生かしら)

「あの、突然お声をおかけして申し訳ありません。ビクトール様の事でご相談があって、その」


「どんなお話かしら、わたくしでお役に立てるかはわかりませんけれど⋯⋯おかけになって」

 ノアが席を立ちテーブルの上を片付け、ライラが2人に席を勧めた。

「あの、ご挨拶が遅れて申し訳ありません。セシリア・ディステイトと申します。彼女は⋯⋯」

「私はセシリアのクラスメイトで、キャサリン・サルーンと申します」

(このタイミングで向こうからやって来るなんて驚いた)



 ビクトールの次の婚約者探しで浮上していたキャサリン・サルーン男爵令嬢。報告書によると大人しく真面目な性格だったのでビクトールと関わりを作るのは可哀想だからと対象から外していた。

「ライラ・プリンストンですわ。で、どのようなお話かお聞きしてもよろしいかしら?」

「私の父は王都でディステイト商会を経営しておりまして⋯⋯」

 ディステイト商会はライラも名前を聞いたことのある中堅どころの商会で、主に貴金属やアクセサリーを扱っている。幅広い価格帯の商品を扱い平民層から高位貴族まで取引があり、数年前には支店も出したはず。

(なんだかもう話が見えたわ)

「ビクトール様のような高位貴族の方にご利用いただけるのはとても嬉しいのですが、その⋯⋯支払いが」

(はぁ、やっぱりだわ)

 1ヶ月くらい前から取り巻きや恋人を連れて訪れるようになったビクトールは、自分と彼等のアクセサリーやカフスなどをツケで購入していくと言う。

「貴族の方のほとんどはそのようにされますからうちも同じようにサインだけいただいて、ターンブリー侯爵家に支払いのお願いに上がっていました」

 今まで取引がなかったので毎回請求書を作成して屋敷を訪れていたと言う。

「執事さんが対応して下さって、今まではお支払いいただけていたのですが今回断られてしまったんです。うちの商会で扱っているものの中でもかなり高価なネックレスとイヤリングのセットだったので、お支払い頂かないと困りますし。今後同じようなことがあっても低位貴族の商会では強くお断りすることも難しく。
このままではうちの商会は立ち行かなくなりそうなんです」

「ビクトールはそれを知っているのかしら?」

「どうでしょうか。よくわかりません」


「そのお話を態々わたくしに聞かせにこられたのはどうしてですの?」

 狙いは分かっているがライラは態と素知らぬふりで問いかけた。

「あの、このままでは本当に困るんです。立て替えをお願いするのは間違っているかもしれませんが、せめてビクトール様やターンブリー侯爵家にお話ししていただけませんでしょうか?」

「仰るとおり婚約者のわたくしが立て替えるというのはおかしな話ですものね」

 セシリアの顔が青褪めた横で心配そうに友達の顔色を窺っていたキャサリンサルーン男爵令嬢がライラをチラリと睨んできた。

(正義感かしら、それとも払うのが当然だと思ってる?)


「サルーン嬢はどう思われます?」

「え?」

 突然話を振られたキャサリンがセシリアの背から手を離して目を泳がせた。

「ディステイト嬢の状況はよくわかりましたし、本当に大変だと思います。ただ、どのような方法が一番良いのか悩んでしまいましたの。ですからご意見をお聞かせくださらないかしら?」

「わた、私の意見ですか?」

「ええ、ご友人の窮地をお聞きになってどうして欲しいと思われたのか教えていただけると助かりますわ」

(試すような行為はあまり褒められないけれど、さっき確実に睨んでいたのが気になるのよね。報告書通りの真面目な方なら公正な意見が出てくるはず)


「私は⋯⋯失礼を承知で申し上げるなら、立て替えとビクトール様やターンブリー侯爵家への抗議をお願いしたいと思います」

「それをわたくしが?」

「はい、婚約者ということはいずれご結婚なさるわけですし。ビクトール様の行動に意見してくださるのが当然だと思います」


「そう、そういう考えも確かにあるわね。ターンブリー侯爵家は何故支払いを拒否したのかしら。ディステイト嬢は聞いていらっしゃる?」

「いえ、何も⋯⋯次は売らないでくれと言われて困っていたことしか」

「そう言われてもお困りになられるだけよねえ」

 ライラがセシリアに同情的で自分の意見を重要視しているに違いないと思ったキャサリンは身を乗り出した。

「ライラ様ならあの程度の立て替えなど造作もないことだと思いますし、その間にビクトール様に今回の状況をお話いただいて支払いの確約をしていただけば問題はなくなると思います」

「そうねぇ⋯⋯」

「順調な経営をしている貿易会社の社長が商会の支払いを踏み倒したなんて外聞が悪すぎます。そんな事が公になれば会社の評価にも影響してしまうかもしれません」



「⋯⋯では、わたくしからひとつ提案させていただいても宜しいかしら?」

 セシリアとキャサリンの目が輝いた。

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