【完結】亡くなった婚約者の弟と婚約させられたけど⋯⋯【正しい婚約破棄計画】

との

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46.あの人はいりませんって、大団円?

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 ミリセントの実家シェルバーン伯爵家とキャラウェイ侯爵家が一番に出資したいと手を挙げ、それ以外にも貿易会社『Stare』の再建で奮闘していた時に知り合った投資家や国の高位貴族が続々と名を連ねた。

 王家からは王妃とターニャ王女が個人で投資してくれる事になった。

「陛下だけは断られたのですね」

「だって、あの日ムカついたんだもの」



 慌ただしく島への移住計画が進められ、ライラはミリセントの結婚式に出席したあと直ぐに引っ越すことに決めた。王都で行われた結婚式から屋敷に帰ったライラを待っていたのは、全ての荷物を運び終わって並び立つノア達だった。

 屋敷は既に買い手が決まっている。ライラは3人に挨拶を済ませたら出発する事にしていたが、彼等の引越しは来月の予定だった。

『お嬢様、文句は聞きませんから』

『母からお嬢様のお世話を代替わりした時から決めてましたから』

『面白そうな匂いがしてるのに置いてけぼりは酷いっすよ~』



 それからずっと4人で暮らしてきた。ノアは走り回るライラの護衛兼執事兼秘書役をこなし、デレクは新規に立ち上げた部署と工事の監督と警ら隊の統括。サラは今まで同様4人の面倒を見てくれた。

 それぞれには勿論手伝う人を何人もつけてはいたが、ライラが彼等3人のお陰で自由にやって来れたのは間違いない。



「畑が痩せてしまうから輪作しなくちゃなんだけど、島で消費できるものや必要とされるものを優先しましょう」


「サトウキビって『圧搾汁』と『バガス』ができるんだけどこのバガスって言うサトウキビの絞りかすを有効活用したいのよね」

「サトウキビの重量の25%位にもなるようですから、製糖工場がボイラーの燃料として使われることが多いみたいですね」

「そう、製糖工場で必要な電力を十分賄えるならいっそのこと工場を作るのもありかもって思ったり」


「濾過後に残ったものは発酵堆肥にしてサトウキビ畑に戻すことができるんですね」

「有効活用したいわよね『フィルターケーキ』かぁ」


「ローラーやシリンダーを縦に3つ重ねて、その間でサトウキビを粉砕する新しい構造の圧搾機があるんですって。見に行ってくるわね」

「サトウキビの汁を過飽和状態まで煮詰める大釜が開発されたんですって。すぐ購入の手続きをしましょう」




 労働者は皆一年契約で作業に従事する。

 繁忙期前には臨時の労働者が募集され過度の残業は禁止。契約中は食堂や大浴場が使え、アパートも建設された。

 契約更新のたびに給与が少しずつ上がる為、ほとんどの労働者は継続を希望する。

 労働者は少しずつ生活が向上し会社は作業ノウハウを持った労働力を保持できる、双方にとってよい流れが出来上がりつつあった。



 新しい技術にどんどん資金を注ぎ込むライラの経営方針は初めのうち周りの大農場から嘲笑されていたが、右肩上がりを続ける収益が農場経営者達の首を傾げさせた。

 彼等にしてみれば安く使い潰せる奴隷を使わない上に設備投資をして利益が出るのが不思議でならない。


 トンネルが開通し港ができるまでは小型船舶で沖合に泊まる大型船にピストン輸送したが、その頻度が上がっていくと近隣だけでなく遠方からも見学者がやってくるようになった。

「お嬢様、顔が怖いです」

「だってあの方達の顔を見た? ざまぁって言わなかったんだものいいでしょ?」

 来た時は皆横柄な態度をしているが、帰る頃には思案顔・困惑顔・悲壮感漂う顔になっている。ライラはそれを見るたびにニヤリと笑ってしまいノアに叱られるのを毎回繰り返してしまう。


『ようこそおいでくださいました。この島で取れた食材ばかりですがご自由にお召し上がりください。そして、ささやかな歓迎の気持ちでございます、ごゆるりとお楽しみくださいませ』

 社交界で培ったテクニックをフル稼働させライラとノアがもてなすと、荒くれ者が多い経営者達は途端におとなしくなった。

 山と荒地しかなかった島には整然と並んだ住宅や豊富な商品を扱う店が立ち並んでおり、サトウキビ畑の向こうには景観を損なわないよう配慮された工場が見える。

 娯楽のなかった島にカフェや食堂ができビリヤード場や酒場も出来ている。夜には地元の音楽が流れダンスする人も見かけられた。

 島のあちこちには、古代ローマで設置されていた警察『ウィギレス』と同じ役割を持つ警ら隊が常駐している。

 健康で安全な職場と最新の技術は、島の発展・安定した労働力・品質の良い製品を生み出し、従来通りの経営をしていた者達を慌てさせた。


「人を奴隷として扱うのは間違いだと気付く人が出てくるかしら?」

「出てきますとも、この島の成功を見た後でご自身の農場に帰られたら愕然とされるはずですから」

「そうね、少しずつコツコツと」




 島に来て激動の4年が経った頃、島の南端に馬の放牧場が出来上がった。ライラが個人の資産で作ると言い出した時、島の観光名所の一つにすればいいとノアが言い出したので新規事業の一つとして登録した。

『馬で遊んだり乗馬を楽しむ施設があっても良いと思います。デレク、新規事業として立ち上げます』

『げっ』


 やってきた馬達は調教前の仔馬から若駒、引退した競走馬と多岐に渡っている。

 文句を言いながらも嬉しそうなデレクは『毎日馬に乗れる』と喜び、放牧場近くに建てた家にサラと2人の子供とペットの犬と一緒に住む。

「サラ、今までありがとう。これからはお友達として遊びに来てくれたら嬉しいんだけど」

「勿論です! お嬢様は放っておくとすぐ食事を抜かれてしまわれるので心配ですわ。メイド達は通いの子ばかりですから、お嬢様が夕食を召し上がっておられなかった時は叱るとか⋯⋯監督もしなくてはなりませんからね」

 うちの子供達よりライラ様は手がかかると笑いながら手を振るサラと子供達。すっかり尻に敷かれているデレクは何故かノアに『頑張れよ~』とエールを送って蹴りを入れられていた。

 今まで4人で住んでいた領主館だがこれからはノアと2人きりになる。

(住み込みの使用人を雇った方がいいかしら? でないとノアの評判に関わるわよね。それともノアも別の⋯⋯)



(寂しくなっちゃったわ)






 ライラが砂糖産業に足を踏み入れてから8年目。漸くトンネルが開通し港に初めての大型船舶が停泊した。それに合わせて作られ保存されていた砂糖がどんどん積み込まれていく。

 お祝いに来てくれたミリセントの横には夫のイーサンと3人の子供達。未だ年齢を感じさせないミリアーナも並んでいる。

「とうとうここまで来たのね」


 奴隷を使わない砂糖プランテーションは他国にも知れ渡り、ほんの少しずつ世界が動きはじめている気がする。いつか大きな波を引き寄せてくれることを祈りたい。

「小さな棘を刺せたかな?」

「ええ、もう何本も刺せてると思うわよ。で、次はどうするの?」



「次? 次はコーヒーのプランテーションに勝負を仕掛けるわ」

「もう土地の目処は立ってるしな」

 前を真っ直ぐに見つめて走り続けるライラの隣には、いつもと同じ穏やかな笑顔のノアが立っている。

 ずっと変わらないノアの横でライラの笑顔が溢れた。




「あ! お手てつないでる~」

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