6 / 33
6.先ずはギルバートから
しおりを挟む
上客なら別室に案内するが、その必要はないと判断したジークはソファに案内することに決めた。
「なら、これとこれは必ず持ってきて。あとそこのネックレスとイヤリングのセットも」
「はい、ただいまご準備させていただきますので少々お待ち下さい」
ショーケースに並んでいる物は高級品と言っても中程度のものばかり。最上級の品は別室に案内された客の前にだけ出されると知らないイーサン達はご満悦のようで満面の笑みを浮かべていた。
ソファにどっかりと座ったイーサンとしなだれかかるアリーシャは上機嫌で店を見回した。
「やっぱりローゼン商会の本店は最高ね。店の雰囲気も置いてある物も一級品だし、店員までイケメンだもんね」
「女も結構美人揃いだな。さっきはあんな女いなかったけど、どうせならあの女に対応させるか?」
「えー、イーサンひどーい。アタシがいるのによそ見とかぁ、マジあり得なくない?」
「ちょっと揶揄っただけだって。お、ネックレスが届いたぞ」
「わぁ、やっぱり綺麗! ねえねえ、つけてみたい。いいんでしょ?」
「合わせるだけでございましたら問題ありません。フレッド、鏡をお持ちして下さい」
テーブルの上に鏡が置かれ、ネックレスやイヤリングを合わせて悦にいるアリーシャの横で、イーサンはさっきから気になっている女性⋯⋯サラをチラ見していた。
「どう? ねえ、イーサンってばぁ」
「おお、すっごく似合ってる。指輪と一緒にこれももらおう。指輪は⋯⋯これはどうだ?」
「うん、それにする。結婚指輪はお揃いだよね」
「当然だろ? おい、全部持って帰るから綺麗にラッピングしてくれ」
「畏まりました。お支払いは現金で宜しいでしょうか?」
フレッドが購入予定の商品を取り分け、残りを後ろの棚に置くのを確認したジークが穏やかな声で聞いた。
「いや、モーガン侯爵家につけておけ」
「失礼ですがお客様はモーガン侯爵家の方でいらっしゃいますか?」
「いや、買うのはサラ・モーガンのアクセサリーだからな。モーガン家が払うのが当然だろ?」
「⋯⋯お隣の方はサラ・モーガン侯爵令嬢様とは別人でいらっしゃるようですが?」
サラ本人がショーケースの近くに立っているのを知っているジークは問題の所在が分かった気がした。
「サラ様のことはよく存じておりますので」
「ここの商会員だから知ってるだろう。そいつの代わりに買いに来てやったんだから支払いはモーガン侯爵家⋯⋯サラに回せばいい。給料から払うはずだからな」
「申し訳ございません。当店では一見のお客様は現金取引のみとさせていただいております。2回目以降の取り引きに関しましては身分証明と支払を保証していただくための書類の作成等がお済みであれば手形や小切手やつけ払いもご利用可能となります」
「客にとやかく言うとか、何様のつもりだ!? 俺は次期ボクス公爵だ。こんな店なんか簡単に捻り潰せるんだぞ!!」
真っ赤な顔で立ち上がりジークを指差したイーサンが大声で怒鳴った。
入り口近くで待機していた店員が他の客を別のフロアに誘導し、護衛は少しずつイーサン達の後ろに近付いて行った。
「ボクス公爵家の方でございますか。ただ⋯⋯ボクス公爵家の方とのお取引もなかったように記憶しております」
「ねえ、侯爵家に連絡してさぁお金を持ってこさせたらいいじゃん。んで、手間かけさせたお詫びになんか買わせよう!」
「お取り置きでございますね。2日まででしたら出来る決まりとなっております」
「今後も長い付き合いになるんだぞ!? 少しぐらい融通を効かせるのが筋だろうが!」
(はーい、一つ目のギルティです)
サラがニパッと笑ったのを確認したギルバートが親指を立てた後、イーサン達の座るソファに近付いて行った。
「お話中失礼致します。ローゼン商会貴金属部門担当のギルバート・ホズウエルと申します。イーサン・ボクス様とお見受けいたしますが?」
「お、俺のことを知ってる⋯⋯のか?」
巨体をイーサンに向けずいっと顔を近付けたギルバートがニヤリと笑った。
「はい、学年は違っておりますが貴族学園でのお噂はかねがね⋯⋯。ところで、当店に特別な優遇措置をお望みだとお聞きしましたが?」
「ゆ、優遇というか⋯⋯知り合いなんだから信用を⋯⋯そのくらいは当然で」
「当店では如何なるお相手であっても信用を盾に優遇措置を求められた場合お引き取りいただいております」
「たがか商人のくせに偉そうに!! ボクス公爵家に楯突いてタダで済むと思うなよ!こんな店潰してやる!!」
「はあ? てめえ、ざけたこと言ってんじゃねえ!!」
「なら、これとこれは必ず持ってきて。あとそこのネックレスとイヤリングのセットも」
「はい、ただいまご準備させていただきますので少々お待ち下さい」
ショーケースに並んでいる物は高級品と言っても中程度のものばかり。最上級の品は別室に案内された客の前にだけ出されると知らないイーサン達はご満悦のようで満面の笑みを浮かべていた。
ソファにどっかりと座ったイーサンとしなだれかかるアリーシャは上機嫌で店を見回した。
「やっぱりローゼン商会の本店は最高ね。店の雰囲気も置いてある物も一級品だし、店員までイケメンだもんね」
「女も結構美人揃いだな。さっきはあんな女いなかったけど、どうせならあの女に対応させるか?」
「えー、イーサンひどーい。アタシがいるのによそ見とかぁ、マジあり得なくない?」
「ちょっと揶揄っただけだって。お、ネックレスが届いたぞ」
「わぁ、やっぱり綺麗! ねえねえ、つけてみたい。いいんでしょ?」
「合わせるだけでございましたら問題ありません。フレッド、鏡をお持ちして下さい」
テーブルの上に鏡が置かれ、ネックレスやイヤリングを合わせて悦にいるアリーシャの横で、イーサンはさっきから気になっている女性⋯⋯サラをチラ見していた。
「どう? ねえ、イーサンってばぁ」
「おお、すっごく似合ってる。指輪と一緒にこれももらおう。指輪は⋯⋯これはどうだ?」
「うん、それにする。結婚指輪はお揃いだよね」
「当然だろ? おい、全部持って帰るから綺麗にラッピングしてくれ」
「畏まりました。お支払いは現金で宜しいでしょうか?」
フレッドが購入予定の商品を取り分け、残りを後ろの棚に置くのを確認したジークが穏やかな声で聞いた。
「いや、モーガン侯爵家につけておけ」
「失礼ですがお客様はモーガン侯爵家の方でいらっしゃいますか?」
「いや、買うのはサラ・モーガンのアクセサリーだからな。モーガン家が払うのが当然だろ?」
「⋯⋯お隣の方はサラ・モーガン侯爵令嬢様とは別人でいらっしゃるようですが?」
サラ本人がショーケースの近くに立っているのを知っているジークは問題の所在が分かった気がした。
「サラ様のことはよく存じておりますので」
「ここの商会員だから知ってるだろう。そいつの代わりに買いに来てやったんだから支払いはモーガン侯爵家⋯⋯サラに回せばいい。給料から払うはずだからな」
「申し訳ございません。当店では一見のお客様は現金取引のみとさせていただいております。2回目以降の取り引きに関しましては身分証明と支払を保証していただくための書類の作成等がお済みであれば手形や小切手やつけ払いもご利用可能となります」
「客にとやかく言うとか、何様のつもりだ!? 俺は次期ボクス公爵だ。こんな店なんか簡単に捻り潰せるんだぞ!!」
真っ赤な顔で立ち上がりジークを指差したイーサンが大声で怒鳴った。
入り口近くで待機していた店員が他の客を別のフロアに誘導し、護衛は少しずつイーサン達の後ろに近付いて行った。
「ボクス公爵家の方でございますか。ただ⋯⋯ボクス公爵家の方とのお取引もなかったように記憶しております」
「ねえ、侯爵家に連絡してさぁお金を持ってこさせたらいいじゃん。んで、手間かけさせたお詫びになんか買わせよう!」
「お取り置きでございますね。2日まででしたら出来る決まりとなっております」
「今後も長い付き合いになるんだぞ!? 少しぐらい融通を効かせるのが筋だろうが!」
(はーい、一つ目のギルティです)
サラがニパッと笑ったのを確認したギルバートが親指を立てた後、イーサン達の座るソファに近付いて行った。
「お話中失礼致します。ローゼン商会貴金属部門担当のギルバート・ホズウエルと申します。イーサン・ボクス様とお見受けいたしますが?」
「お、俺のことを知ってる⋯⋯のか?」
巨体をイーサンに向けずいっと顔を近付けたギルバートがニヤリと笑った。
「はい、学年は違っておりますが貴族学園でのお噂はかねがね⋯⋯。ところで、当店に特別な優遇措置をお望みだとお聞きしましたが?」
「ゆ、優遇というか⋯⋯知り合いなんだから信用を⋯⋯そのくらいは当然で」
「当店では如何なるお相手であっても信用を盾に優遇措置を求められた場合お引き取りいただいております」
「たがか商人のくせに偉そうに!! ボクス公爵家に楯突いてタダで済むと思うなよ!こんな店潰してやる!!」
「はあ? てめえ、ざけたこと言ってんじゃねえ!!」
394
あなたにおすすめの小説
婚約破棄寸前だった令嬢が殺されかけて眠り姫となり意識を取り戻したら世界が変わっていた話
ひよこ麺
恋愛
シルビア・ベアトリス侯爵令嬢は何もかも完璧なご令嬢だった。婚約者であるリベリオンとの関係を除いては。
リベリオンは公爵家の嫡男で完璧だけれどとても冷たい人だった。それでも彼の幼馴染みで病弱な男爵令嬢のリリアにはとても優しくしていた。
婚約者のシルビアには笑顔ひとつ向けてくれないのに。
どんなに尽くしても努力しても完璧な立ち振る舞いをしても振り返らないリベリオンに疲れてしまったシルビア。その日も舞踏会でエスコートだけしてリリアと居なくなってしまったリベリオンを見ているのが悲しくなりテラスでひとり夜風に当たっていたところ、いきなり何者かに後ろから押されて転落してしまう。
死は免れたが、テラスから転落した際に頭を強く打ったシルビアはそのまま意識を失い、昏睡状態となってしまう。それから3年の月日が流れ、目覚めたシルビアを取り巻く世界は変っていて……
※正常な人があまりいない話です。
お父様、お母様、わたくしが妖精姫だとお忘れですか?
サイコちゃん
恋愛
リジューレ伯爵家のリリウムは養女を理由に家を追い出されることになった。姉リリウムの婚約者は妹ロサへ譲り、家督もロサが継ぐらしい。
「お父様も、お母様も、わたくしが妖精姫だとすっかりお忘れなのですね? 今まで莫大な幸運を与えてきたことに気づいていなかったのですね? それなら、もういいです。わたくしはわたくしで自由に生きますから」
リリウムは家を出て、新たな人生を歩む。一方、リジューレ伯爵家は幸運を失い、急速に傾いていった。
エメラインの結婚紋
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢エメラインと侯爵ブッチャーの婚儀にて結婚紋が光った。この国では結婚をすると重婚などを防ぐために結婚紋が刻まれるのだ。それが婚儀で光るということは重婚の証だと人々は騒ぐ。ブッチャーに夫は誰だと問われたエメラインは「夫は三十分後に来る」と言う。さら問い詰められて結婚の経緯を語るエメラインだったが、手を上げられそうになる。その時、駆けつけたのは一団を率いたこの国の第一王子ライオネスだった――
包帯妻の素顔は。
サイコちゃん
恋愛
顔を包帯でぐるぐる巻きにした妻アデラインは夫ベイジルから離縁を突きつける手紙を受け取る。手柄を立てた夫は戦地で出会った聖女見習いのミアと結婚したいらしく、妻の悪評をでっち上げて離縁を突きつけたのだ。一方、アデラインは離縁を受け入れて、包帯を取って見せた。
辺境伯聖女は城から追い出される~もう王子もこの国もどうでもいいわ~
サイコちゃん
恋愛
聖女エイリスは結界しか張れないため、辺境伯として国境沿いの城に住んでいた。しかし突如王子がやってきて、ある少女と勝負をしろという。その少女はエイリスとは違い、聖女の資質全てを備えていた。もし負けたら聖女の立場と爵位を剥奪すると言うが……あることが切欠で全力を発揮できるようになっていたエイリスはわざと負けることする。そして国は真の聖女を失う――
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
裁判を無効にせよ! 被告は平民ではなく公爵令嬢である!
サイコちゃん
恋愛
十二歳の少女が男を殴って犯した……その裁判が、平民用の裁判所で始まった。被告はハリオット伯爵家の女中クララ。幼い彼女は、自分がハリオット伯爵に陥れられたことを知らない。裁判は被告に証言が許されないまま進み、クララは絞首刑を言い渡される。彼女が恐怖のあまり泣き出したその時、裁判所に美しき紳士と美少年が飛び込んできた。
「裁判を無効にせよ! 被告クララは八年前に失踪した私の娘だ! 真の名前はクラリッサ・エーメナー・ユクル! クラリッサは紛れもないユクル公爵家の嫡女であり、王家の血を引く者である! 被告は平民ではなく公爵令嬢である!」
飛び込んできたのは、クラリッサの父であるユクル公爵と婚約者である第二王子サイラスであった。王家と公爵家を敵に回したハリオット伯爵家は、やがて破滅へ向かう――
※作中の裁判・法律・刑罰などは、歴史を参考にした架空のもの及び完全に架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる