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37.ミリーの恋人
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サイラスがやらかしたのはエリーとグランブリッジ子爵家嫡男との婚約話。
グランブリッジ子爵家は領地に大きな紡績工場を複数持っているかなりの資産家、嫡男のオーエンはエリーの兄フレディの悪友でミリーの恋人の1人。
ミリーは子爵位しか継げないオーエンと結婚するつもりなどさらさらなく単なる遊びだったがオーエンはすっかりその気になってしまった。
「いくらお金があっても子爵なんて絶対にいやなの。最低でも伯爵・・侯爵以上じゃなくちゃ絶対に結婚なんてしないもん。お父様ぁ、ミリーにそんな意地悪言わないで」
ミリーが可愛らしく首を傾げてサイラスに擦り寄るとミリーに甘いサイラスは鼻の下を伸ばして頭を撫でた。
「ミリーほど可愛ければいくらでも、それこそ王子でもと思っておったがなぁ」
「オーエン様とは親しくしているんでしょう? 是非ミリーをって仰ってるの。お金のない高位貴族より良いと思うのよ?」
「グランブリッジ子爵は我が家にかなりの額の援助金をとまで仰ってる。それほど望まれているのだから幸せになれるのは間違いないぞ。お前を進級させるために使った費用も戻ってくるしな」
王弟が王宮内部の不正を糾弾してから粛清が進んでいた改革はとうとう学園にその手を伸ばした。学園長と主だった職員が罷免され今学年末以降は寄付金を増額しても進級出来ないと言われている。
ミリーは学園の4年だが今までは毎年寄付金を払って進級してきた。
「次は寄付金を増額しても進級できないんだって。落第になるよりは結婚を理由に自主退学した方が世間体が良んじゃない?」
「お兄様はズルいわ。ご自分は卒業出来たのに私は自主退学して子爵なんかにお嫁に行けだなんて・・」
「フレディは運が良かった。後継ぎが学園を卒業していないなんてなってたら我が家は大恥をかくところだったからなあ」
進級出来ない娘のせいで恥をかく前になんとかしたいと思っていた所に子爵家から資金援助込みの縁談が舞い込みサイラスはすっかりその気になっていた。
「そうだわ! お父様、エリーにすれば良いじゃない。以前エリーは修道院に行くしかないって仰ってたでしょう? オーエンをエリーに譲ってあげて私は他国へ勉強に行くから学校やめますってことにすれば良いじゃない。それなら援助金はもらえるし貰い手のないエリーを片付けられるわ」
「エリーか? しかしなあ子爵はミリーとって言ってるし」
「大丈夫! 双子で顔は数年前までそっくりだったんだもの。そんなに変わってないと思うわ。今度私をエリーですって言って子爵家に連れて行って。私上手くエリーになりきるから、任せて! ね?」
援助金が手に入り将来落第した娘の親というレッテルを貼られないで済むならと、アリシアと交わした念書のことなどすっかり忘れているサイラスとエドナは子爵家にエリーの振りをしたミリーを連れて颯爽と出かけていった。
「ほらねー、ぜんっぜん問題なかったでしょ? エリーになり切るなんて私の頭脳を持ってすれば超簡単。ふふっ」
その後数回エリーに扮したミリーはオーエンとデートを重ね子爵家からミリーではなくエリーと婚約したいと言わせた。
愚かなサイラスはこの後アリシアに無断でエリーとオーエンの婚約を決め書類まで捺印してしまった。その時グランブリッジ子爵からエリーの学歴を聞かれたサイラスは慌ててエリーがどこの学校に通っていて今何年生なのかをリューゼルの屋敷に問いあわせてきた。
(サイラスはどこまで愚かなのかしら。エリーの親権が既にわたくしの所に移行したのを忘れているなんて親として情けない)
アリシアがサイラスを完全に見限った瞬間だった。アリシアはエリーの現状には一切触れず、既に親権を放棄したのに何故今更エリーの学歴が気になるのかを問う手紙をサイラスに送りつけた。
「エドナ、これを見てくれ!」
アリシアの手紙を読んだサイラスは青褪めエドナに手紙を見せた。
「そう言えば以前そんな書類にサインをしたような気が・・。しかし婚約は既に確定しているし援助金も殆ど使ってしまったのに」
「お義母様が今更騒いでもどうにもなりませんでしょう?」
「そうだな、もう後には引けないと言って母上に理解していただくしかあるまい。どうしても婚約破棄しろと言うなら母上に援助金と慰謝料を払って貰うのが筋だな」
「今までエリーを自由にさせていたのが間違っていたのだとそろそろ理解して頂かなくてはね」
「その通りだとも。夜会でエリーのことを聞かれるたびに私がどれほど居心地の悪い思いをしたかもわかって頂かなくてはいかん」
「お手紙や代理ではなくお義母様に直接意見された方が良いのではありません?」
「そうだな、フレディの件もあるし。面倒だがリューゼルに行ってくるとするか」
グランブリッジ子爵家は領地に大きな紡績工場を複数持っているかなりの資産家、嫡男のオーエンはエリーの兄フレディの悪友でミリーの恋人の1人。
ミリーは子爵位しか継げないオーエンと結婚するつもりなどさらさらなく単なる遊びだったがオーエンはすっかりその気になってしまった。
「いくらお金があっても子爵なんて絶対にいやなの。最低でも伯爵・・侯爵以上じゃなくちゃ絶対に結婚なんてしないもん。お父様ぁ、ミリーにそんな意地悪言わないで」
ミリーが可愛らしく首を傾げてサイラスに擦り寄るとミリーに甘いサイラスは鼻の下を伸ばして頭を撫でた。
「ミリーほど可愛ければいくらでも、それこそ王子でもと思っておったがなぁ」
「オーエン様とは親しくしているんでしょう? 是非ミリーをって仰ってるの。お金のない高位貴族より良いと思うのよ?」
「グランブリッジ子爵は我が家にかなりの額の援助金をとまで仰ってる。それほど望まれているのだから幸せになれるのは間違いないぞ。お前を進級させるために使った費用も戻ってくるしな」
王弟が王宮内部の不正を糾弾してから粛清が進んでいた改革はとうとう学園にその手を伸ばした。学園長と主だった職員が罷免され今学年末以降は寄付金を増額しても進級出来ないと言われている。
ミリーは学園の4年だが今までは毎年寄付金を払って進級してきた。
「次は寄付金を増額しても進級できないんだって。落第になるよりは結婚を理由に自主退学した方が世間体が良んじゃない?」
「お兄様はズルいわ。ご自分は卒業出来たのに私は自主退学して子爵なんかにお嫁に行けだなんて・・」
「フレディは運が良かった。後継ぎが学園を卒業していないなんてなってたら我が家は大恥をかくところだったからなあ」
進級出来ない娘のせいで恥をかく前になんとかしたいと思っていた所に子爵家から資金援助込みの縁談が舞い込みサイラスはすっかりその気になっていた。
「そうだわ! お父様、エリーにすれば良いじゃない。以前エリーは修道院に行くしかないって仰ってたでしょう? オーエンをエリーに譲ってあげて私は他国へ勉強に行くから学校やめますってことにすれば良いじゃない。それなら援助金はもらえるし貰い手のないエリーを片付けられるわ」
「エリーか? しかしなあ子爵はミリーとって言ってるし」
「大丈夫! 双子で顔は数年前までそっくりだったんだもの。そんなに変わってないと思うわ。今度私をエリーですって言って子爵家に連れて行って。私上手くエリーになりきるから、任せて! ね?」
援助金が手に入り将来落第した娘の親というレッテルを貼られないで済むならと、アリシアと交わした念書のことなどすっかり忘れているサイラスとエドナは子爵家にエリーの振りをしたミリーを連れて颯爽と出かけていった。
「ほらねー、ぜんっぜん問題なかったでしょ? エリーになり切るなんて私の頭脳を持ってすれば超簡単。ふふっ」
その後数回エリーに扮したミリーはオーエンとデートを重ね子爵家からミリーではなくエリーと婚約したいと言わせた。
愚かなサイラスはこの後アリシアに無断でエリーとオーエンの婚約を決め書類まで捺印してしまった。その時グランブリッジ子爵からエリーの学歴を聞かれたサイラスは慌ててエリーがどこの学校に通っていて今何年生なのかをリューゼルの屋敷に問いあわせてきた。
(サイラスはどこまで愚かなのかしら。エリーの親権が既にわたくしの所に移行したのを忘れているなんて親として情けない)
アリシアがサイラスを完全に見限った瞬間だった。アリシアはエリーの現状には一切触れず、既に親権を放棄したのに何故今更エリーの学歴が気になるのかを問う手紙をサイラスに送りつけた。
「エドナ、これを見てくれ!」
アリシアの手紙を読んだサイラスは青褪めエドナに手紙を見せた。
「そう言えば以前そんな書類にサインをしたような気が・・。しかし婚約は既に確定しているし援助金も殆ど使ってしまったのに」
「お義母様が今更騒いでもどうにもなりませんでしょう?」
「そうだな、もう後には引けないと言って母上に理解していただくしかあるまい。どうしても婚約破棄しろと言うなら母上に援助金と慰謝料を払って貰うのが筋だな」
「今までエリーを自由にさせていたのが間違っていたのだとそろそろ理解して頂かなくてはね」
「その通りだとも。夜会でエリーのことを聞かれるたびに私がどれほど居心地の悪い思いをしたかもわかって頂かなくてはいかん」
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