【完結】婚約者取り替えっこしてあげる。子爵令息より王太子の方がいいでしょ?

との

文字の大きさ
36 / 48

36.手厳しくて愛情深いアリシア

しおりを挟む
「途中で投げ出す事は許しません。それで良いのなら早急に準備を致しましょう」
「ありがとうございます。絶対に弱音を吐いたり逃げ出したりしないと約束します」

 その日からエリーは準備してもらった昼食を持ち午前中から図書館に行き夕食前にタウンハウスに帰ってくるというスケジュールで帝国の勉強をはじめた。歴史・文化・産業・宮中儀礼以外にも属国やその他の国との関わりについても覚えなくてはならず、夕食後も部屋に篭り本を読み続けた。
 必要と思われる本や資料がエリーの部屋に続々と運び込まれ既に本棚2つ分を超えてしまった。

 学園が始まる前に寮の部屋に新しく本棚を設置し全ての本を運び入れた。

「まずは言語や宮中儀礼などに詳しい家庭教師を雇います。持って帰る資料や本はその都度連絡を入れるので、お休みには必ずタウンハウスに戻って来なさい」

 しっかりと頷いたエリーはハナと共に馬車に乗り込んだ。

 走り去って行く馬車を見送りながらアリシアが呟いた。

「さて、わたくしも準備をはじめます。家庭教師との連携は任せましたよ」
「はい、お母様はエリーの養子縁組先ですか?」

「その通りよ。最低でもオーモンド公爵様やモブレー公爵様クラスの実力の持ち主で決して手のひらを返さない方。しかも帝国と友好関係を築いてる方でなくては・・わたくしにとっても今までで一番難しいお仕事になりそうだわ」

「パドラスに入学していて正解でしたね。今のままの成績をキープ出来れば婚約者の資格の一つとして有効ですもの」
「エリーの事だから成績が下がるような愚かな事はしないでしょう。わたくしは暫く留守にすることが増えると思うから、エリーが頑張りすぎて身体を壊さないように注意してね」

 エリーには学園在学中に最低でも皇太子妃としての勉強の基礎を終わらせる予定だが、皇太子からの連絡が来るタイミングによってはあまり時間がない可能性もある。

「覚えるのに時間がかかるものと最低限必要なものからはじめるようにしましょう。必要ならいくら費用がかかっても構わないから最高の家庭教師をつけてちょうだい。進捗状況によっては別の家庭教師を直ぐに手配してね」

 アリシアにはある程度の青写真が出来上がっているのかサイラスの動向に注意するよう言い置いてその日のうちに出発してしまった。
 1人残されたマイラは自室に戻り帝国の資料を読みはじめた。

(私が知らないままだと家庭教師の良し悪しは判断できないものね)




 学園の寮の前で馬車を降りたエリーとハナは管理室の前のノートに名前を記帳した後階段を登って行った。今までの部屋は2階だったがその部屋には追加の本棚を入れる余裕がないので3階の部屋に移動した。
 ドアを開けるとどの部屋も今までより広く高級な家具が置かれていた。厚みのある絨毯が足音を完全に吸収し至る所にランプが置かれている。

(遠慮なく夜遅くまで起きていられそう)


「近いうちにメイドが1人増えるの。ハナの仕事は今まで通りだから宜しくね」

 寮に連れてきて良いのはメイドか従者が2名までと決められている。それ以外の家庭教師などは基本禁止されているが今回は特例として語学の教師をメイドとして連れてくる許可を得ている。

「仲良くできるよう頑張ります」



 2年の学年末試験の結果によるクラス替えがあり新教室で授業がはじまったが、教室に入るとかなりの生徒が入れ替わり担任教諭も初めて見る人に変わっていた。授業内容も予想以上に高度になり辞書や参考書が欠かせなくなってきた。

 学園でのエリーはただひたすら勉強に明け暮れる単調な日々が続いた。授業の合間に予習や復習と課題を済ませ放課後は寮の部屋で帝国の勉強をする。家庭教師からは公用語以外で帝国で頻繁に使用されるランセル語を習っている。
 そんな中でも昼食を一緒にと声をかけてくれる友人達との交流に癒されつつ1年半の月日が流れていった。皇太子の婚約者候補は未だ決まらずマイケルからの手紙も届かない。


 長期休暇中にアリシアから手紙が届きそれに書かれていた帝国の内部情報をマイラが教えてくれた。

「公にはなっていない話・・少し前に婚約者候補が決まりかけたんだけど、その内の最有力だと言われていた方が事故で酷い怪我をされてしまって辞退されたらしいの」

 以前に比べるとオーモンド公爵の傘下が増えベルトラム侯爵達の派閥は縮小気味になってきた。ベルトラム侯爵家はロスアリアの第二王女を皇太子ではなく第二皇子の婚約者にしようと画策していたが上手くいかなかった為事故を画策したのではないかと言われているという。


(お馬鹿サイラスがやらかした話は秘密ね)

しおりを挟む
感想 75

あなたにおすすめの小説

「お姉さまみたいな地味な人を愛する殿方なんてこの世にいなくってよ!」それが妹の口癖でした、が……

四季
恋愛
「お姉さまみたいな地味な人を愛する殿方なんてこの世にいなくってよ!」 それが妹の口癖でした。

妹は謝らない

青葉めいこ
恋愛
物心つく頃から、わたくし、ウィスタリア・アーテル公爵令嬢の物を奪ってきた双子の妹エレクトラは、当然のように、わたくしの婚約者である第二王子さえも奪い取った。 手に入れた途端、興味を失くして放り出すのはいつもの事だが、妹の態度に怒った第二王子は口論の末、妹の首を絞めた。 気絶し、目覚めた妹は、今までの妹とは真逆な人間になっていた。 「彼女」曰く、自分は妹の前世の人格だというのだ。 わたくしが恋する義兄シオンにも前世の記憶があり、「彼女」とシオンは前世で因縁があるようで――。 「彼女」と会った時、シオンは、どうなるのだろう? 小説家になろうにも投稿しています。

醜い私は妹の恋人に騙され恥をかかされたので、好きな人と旅立つことにしました

つばめ
恋愛
幼い頃に妹により火傷をおわされた私はとても醜い。だから両親は妹ばかりをかわいがってきた。伯爵家の長女だけれど、こんな私に婿は来てくれないと思い、領地運営を手伝っている。 けれど婚約者を見つけるデェビュタントに参加できるのは今年が最後。どうしようか迷っていると、公爵家の次男の男性と出会い、火傷痕なんて気にしないで参加しようと誘われる。思い切って参加すると、その男性はなんと妹をエスコートしてきて……どうやら妹の恋人だったらしく、周りからお前ごときが略奪できると思ったのかと責められる。 会場から逃げ出し失意のどん底の私は、当てもなく王都をさ迷った。ぼろぼろになり路地裏にうずくまっていると、小さい頃に虐げられていたのをかばってくれた、商家の男性が現れて……

なんでも思い通りにしないと気が済まない妹から逃げ出したい

木崎優
恋愛
「君には大変申し訳なく思っている」 私の婚約者はそう言って、心苦しそうに顔を歪めた。「私が悪いの」と言いながら瞳を潤ませている、私の妹アニエスの肩を抱きながら。 アニエスはいつだって私の前に立ちはだかった。 これまで何ひとつとして、私の思い通りになったことはない。すべてアニエスが決めて、両親はアニエスが言うことならと頷いた。 だからきっと、この婚約者の入れ替えも両親は快諾するのだろう。アニエスが決めたのなら間違いないからと。 もういい加減、妹から離れたい。 そう思った私は、魔術師の弟子ノエルに結婚を前提としたお付き合いを申し込んだ。互いに利のある契約として。 だけど弟子だと思ってたその人は実は魔術師で、しかも私を好きだったらしい。

妹が私の婚約者と結婚しちゃったもんだから、懲らしめたいの。いいでしょ?

百谷シカ
恋愛
「すまない、シビル。お前が目覚めるとは思わなかったんだ」 あのあと私は、一命を取り留めてから3週間寝ていたらしいのよ。 で、起きたらびっくり。妹のマーシアが私の婚約者と結婚してたの。 そんな話ある? 「我がフォレット家はもう結婚しかないんだ。わかってくれ、シビル」 たしかにうちは没落間近の田舎貴族よ。 あなたもウェイン伯爵令嬢だって打ち明けたら微妙な顔したわよね? でも、だからって、国のために頑張った私を死んだ事にして結婚する? 「君の妹と、君の婚約者がね」 「そう。薄情でしょう?」 「ああ、由々しき事態だ。私になにをしてほしい?」 「ソーンダイク伯領を落として欲しいの」 イヴォン伯爵令息モーリス・ヨーク。 あのとき私が助けてあげたその命、ぜひ私のために燃やしてちょうだい。 ==================== (他「エブリスタ」様に投稿)

お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました

さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア 姉の婚約者は第三王子 お茶会をすると一緒に来てと言われる アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる ある日姉が父に言った。 アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね? バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た

幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。 そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。 たった一つボタンを掛け違えてしまったために、 最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。 主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?

【完結】義家族に婚約者も、家も奪われたけれど幸せになります〜義妹達は華麗に笑う

鏑木 うりこ
恋愛
お姉様、お姉様の婚約者、私にくださらない?地味なお姉様より私の方がお似合いですもの! お姉様、お姉様のお家。私にくださらない?お姉様に伯爵家の当主なんて務まらないわ  お母様が亡くなって喪も明けないうちにやってきた新しいお義母様には私より一つしか違わない双子の姉妹を連れて来られました。  とても美しい姉妹ですが、私はお義母様と義妹達に辛く当たられてしまうのです。  この話は特殊な形で進んで行きます。表(ベアトリス視点が多い)と裏(義母・義妹視点が多い)が入り乱れますので、混乱したら申し訳ないですが、書いていてとても楽しかったです。

処理中です...