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5.パーティーに潜り込んだの
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「これか・・なんか凄いな。貴族のレディってこんなの着るわけ?」
シエナとクロエが、出来上がったドレスをトルソに着せかけるのを見ながら、ルカが呆れ顔で呟いた。
「あんた知らなかったの?」
「知るわけないじゃん。遠目でチラッと見るだけだし、それも大概が馬車に乗ってるかマントを羽織ってるかだし。シエナ達が知ってる方が意外だよ」
「そりゃ、あたし達だって女だもん。華やかなドレスとパーティーには興味津々よね、シエナ」
クロエが振り返ると、シエナはしゃがみ込んでドレスの裾の刺繍をチェックしていた。
「まあね、夜こっそり忍び込んだりしたもの」
「「はあ?」」
「どんなドレスが流行ってるのか知らないままじゃ作れないもの。迷子になった女中のフリしてパーティーに潜り込んだり」
「あんた、よく捕まんなかったわね。捕まってたら即牢屋行きじゃん」
ルカはかなり腹を立てているようで、こめかみをピクピクさせている。
「シエナ、今度馬鹿なことをやる時は先に教えてくれないか?」
シエナは二人の様子を気にも留めず、ストマッカーに縫い付けたリボンをチェックしている。
一番上の大きなリボンには模造ダイヤが縫い付けられ、下に行くに従ってリボンは小さくなっていく。
「何で?」
「ケツを引っ叩いて部屋に閉じ込める!」
「も、もうしない。ここまで来たら後は決行あるのみだからね」
握り拳を作って気合を入れているシエナを見て、ルカが溜め息を吐いた。
「反省してないじゃん」
「ねぇ、もし仮にこれが失敗してキャンベル伯爵にバレたらどうすんの?」
「うーん、考えてなかった。失敗するのは実力不足で仕方ないけど、伯爵にバレるのは不味いわね」
腕組みして悩み始めたシエナを見ながら、クロエが呆れたように首を横に振った。
「全く、無鉄砲にも程があるわ。ここまででシエナ無一文になったんでしょ?」
「ご飯くらいなら食べられるから大丈夫」
「先に力を貸してくれそうな顧客に相談したらどうだろう?ストレンジ公爵、ダートマス侯爵とウェリントン伯爵の三人なら話に乗ってくれると思う」
「女性の強い後押しが絶対に必要なの。皆さん同情はしてくれるかもしれないけど、それだけじゃ足りないの。だって、女から言い出す離婚を後押ししてくれるとは思えないから。
離婚を申し立てても、相手はウォーカー商会のお陰で肥え太った貴族よ。何を言い始めるか分かったものじゃないわ。
だから、新しい商会の為なら、離婚訴訟にも立ち会っても良いって思われる位にならなきゃ上手くいかないわ。
アーリントン公爵夫人がドレスに太鼓判を押してくれれば、新しい商会が成功する可能性は高まる。どう考えても彼女がキーマンよ」
「面会は明後日だ。ダートマス侯爵が二つ返事で仲介をしてくれた」
「あんた、侯爵に何て説明したの?」
「知り合いが、新しい刺繍のデザインをアーリントン公爵夫人に見て貰いたがってるって」
「えーっ、そんなんで上手く行ったの?」
「言ったろ? ダートマス侯爵は、うちの刺繍に目がないんだ。奥方からも、ウォーカー商会以外のコートは駄目だって言われてるってさ」
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