ハズレ職業【フリーター】を授かった少年は、王都で騙されて多額の借金を背負う。しかし、修復スキルでガラクタを修復して最下層の泥底から成り上がる

ninjin

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第4話 泥底の案内人

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 アルトが呆然と立ち尽くしていると、アルトと同じくらいの背丈の少年が声をかけて来た。その少年はアルトの故郷の村人よりもさらにボロボロの服を着ていた。しかし、その顔には、この薄暗い職業案内所には似つかわしくない、屈託のない明るい笑顔が浮かんでいる。

「お前、新入りだよな」

 少年は肘でアルトの背中を軽くつついた。アルトは親切な声かけに驚きながらも、「あぁ」と短く頷いた。すると少年は間髪入れずにしゃべり出した。

「お前もハズレ職業を押し付けられたのだな。ここに来る奴なんて、みんなそうだ」

 少年は身振り手振りで、受付カウンターの方向を指し示した。

「もう、ゴミ山の仕事しか残っていないぜ。あそこは臭くて汚くてキツいの3Kの仕事だ。あんな場所、俺らハズレ職業でもあそこだけは行きたくないぜ」

 少年は先ほど人々が口々に言っていた【あの仕事】の正体が、王都の廃棄場での仕事だと親切に教えてくれた。

「だからみんな帰ったんだ。明日ならもっとマシな仕事が出るはずだぜ。できれば朝から並んだ方が良いぜ。仕事の紹介は早い者勝ちだ。みんな朝早くから並んでいるんだ」

 少年はアルトがまだ知らない、この最下層の職業案内所での貴重な生き残り方の情報を教えてくれた。

「教えてくれてありがとう」

 アルトはこの冷たい王都の【泥底】で初めて受けた親切に心からの感謝を込めてお礼の言葉を述べた。

 すると少年はにっこりと笑って言った。

「なあ、今から時間があるか?この辺を案内してやるぜ」

 アルトは王都に来て初めて親切に声をかけてくれた少年の申し出に、胸が熱くなるのを感じた。この見知らぬ街で、孤独に押しつぶされそうだったアルトは、喜んでその誘いに乗る。

「あぁ、ぜひ頼む!」

 少年は再び屈託なく笑みを浮かべて、アルトと肩を並べて歩き出した。

「俺はトビー。お前は?」
「アルトだ」

「トビーか、いい名前だな。トビーはいくつなんだ?」
「俺は16歳だ。お前より1つ年上だな。んで、お前の職業は?」

 トビーの質問にアルトは躊躇したが、意を決して答えた。

「フリーターだ……」

 トビーは驚くどころか大声で笑った。

「ハハハ!やっぱりな!俺もフリーターだぜ。ゴミみたいなハズレ職業仲間ってわけだ!」

 同じ境遇、しかも同じ【ハズレ職業】を授かったことに、アルトは一気に親近感を覚えてトビーと意気投合した。

 トビーは陽気な口調で、この【泥底】の街並みを案内してくれた。薄汚れた路地の奥にある最も安い食堂、一晩鉄賃5枚(500円)で泊まれる宿屋(大部屋、20~30人が身を寄せ合って雑魚寝)、そして日用品を安く売る露店など、『泥底』で生き抜くための貴重な情報を、トビーは惜しみなく教えてくれた。


 すっかり日が傾き、アルトの腹の虫が鳴き始めた頃、トビーが立ち止まった。

「なあ、そろそろ腹減ったろ?この先に、この辺じゃ一番安くて美味い飯屋があるんだ。奢ってやるぜ」

 トビーが案内してくれた食堂は、油の匂いがこびりついた、狭いが活気のある店だった。二人は一番奥の席に座り粗末な煮込み料理を食べ始めた。トビーの明るさと親切さに、アルトはすっかり気を許した。アルトは王都へ来た理由、アルトのために父が借金をしてくれたこと、そして、父からもらったお金は絶対に無駄に使いたくないという強い意志を、全てトビーに打ち明けた。トビーは真剣な表情でアルトの話を聞き、深く頷いた。

「そうか、お前、すげえな。家族のためにこんな泥底にまで来るなんて。俺も、いつかこのクソみたいな生活から抜け出してやる。お互いに頑張ろうぜ!」

 トビーの励ましに、アルトは胸が熱くなった。王都に来て初めて、本当に信頼できる友達ができたと感じた。

 安堵した瞬間だったのだろうか。食事を終え、温かお茶を飲んでいるうちに、アルトは急に強烈な睡魔に襲われた。

 (おかしいな……こんなに疲れてたのか……)

 アルトは抗う間もなく、そのまま机に突っ伏して眠ってしまった。どれくらいの時間が経っただろうか。アルトは顔にかかる冷たい風で目を覚ました。店内はガランとして、もう客はほとんど残っていない。そして、トビーの姿はなかった。

 (トビー、先に帰ったのかな……)

 アルトはぼんやりとした頭で立ち上がろうとし、ふと、腰に提げていたはずの革のバッグに手を伸ばした。

 「ない……?」

 アルトは一瞬で酔いが覚めるほどの衝撃を受けた。父が持たせてくれた古びた革袋をしまった革のバッグがない。アルトはパニックになり、慌てて店員に詰め寄った。

「すいません!僕と一緒にいた、トビーっていう少年と、僕の革のバッグを見ませんでしたか!?」

 店員は汚れた布巾でテーブルを拭きながら、面倒くさそうに答える。

「さあねえ。お前の連れが先に帰ったのは見たが、バッグなんて知らねぇよ。お前、さっさと勘定して出てってくれ」

 アルトは全身から血の気が引いていくのを感じた。トビーはアルトが持っている全財産を奪うために親切な振りをしていたのだ。アルトは騙された悔しさと、大事なお金を失った絶望でその場に立ち尽くした。


トビーのイメージ画像

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