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第5話 ぼったくり食堂
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アルトは盗まれたバッグ、そして裏切られた友情によって、その場に立ち尽くすことしかできなかった。父から託されたお金、そしてトビーに寄せていた信頼。その全てが、たった数時間で、この泥底の闇に飲み込まれてしまった。しかし、アルトには呆然と立ち尽くすことさえ許されなかった。
「おい、いつまで突っ立ってるんだ、ガキ」
汚れた布巾を握った店員が、アルトの前に立ち、睨みつける。
「もう店を閉める。さっさと飯代を払って出ていけ」
アルトは震える声で訴えた。
「その……一緒にいた男に、お金を全部取られてしまって……今、お金がありません」
店員は鼻で笑い、無関心を突きつける。
「そんなの俺に関係ねぇ。飯を食ったなら金を払え、それは社会のルールだ」
アルトは必死に頭を下げた。
「お願いします!お金がないので、ここで働いて食事代を支払います。皿洗いでも、掃除でも、何でもしますから!」
だが、店員はアルトの申し出を一蹴した。
「ふざけるな。ここは労働斡旋所じゃねぇ。いいか、金を払わないってことは窃盗罪だ。衛兵に突き出すぞ」
店員の顔が一気に険悪なものに変わる。
「そうなると、お前みたいなハズレ職業のガキは、王都から追放だ。二度とここには戻れなくなる。それでいいのか?」
「追放……」
アルトは故郷へ戻ることもできず、王都での再起も絶たれるという最悪の可能性を聞き、全身を恐怖が貫いた。アルトはガクガクと震えて店の床に崩れ落ちそうになる。店員はアルトが恐怖で怯える姿を見て、口元に汚い笑みを浮かべた。
「分かればいい。お前とさっき逃げた連れの2人分の食事代、合計で……小金貨5枚だ」
アルトは食事代を聞いて再び衝撃に襲われた。
「小金貨……5枚?」
アルトは頭の中で必死に貨幣の価値を計算した。
トビーから聞いていた話では、この店の食事代は1人鉄貨3枚(300円)で腹いっぱい食べられるはずだった。トビーの話が嘘で、実際の価格がその何倍だったとしても、2人分で小金貨5枚はあまりにも高すぎる。
この国の貨幣は、鉄貨、銅貨、銀貨、そして金貨が流通している。鉄貨が100円で最も安く、銅貨が1,000円。その上が銀貨で1万円、小金貨はなんと10万円に相当する。小金貨1枚あれば、この王都でも最上級の料理を腹いっぱい食べることができる。
「高すぎます!」
アルトが抗議の声を上げるが、店員はアルトの声をさらに上回る大声で「黙れ!」と一喝した。
店員は汚れた紙の伝票をアルトの目の前に叩きつけた。
伝票には信じられない文字が並んでいた。パン2つが銀貨4枚(4万円)、お茶4杯が銀貨8枚(8万円)、煮込み料理2人前が銀貨10枚(10万円)、そして席代が銀貨28枚(28万円)、合計はきっちり小金貨5枚に設定されていた。
ここは外から来た世間知らずの人間を騙して、有り金を全て巻き上げるぼったくり食堂だったのだ。そして、トビーがあえてこの店を選び、アルトに睡眠薬を盛るように食事を勧め、親切な振りをしていたのも、すべてが店員とグルだったからに違いない。
「こんなのぼったくりだ!」
アルトは力の限り叫んだが、店員は腕を組み、冷たい目で言い張った。
「何を驚いているんだ、坊や。馬鹿を言え。この食堂は見た目は汚いかもしれないが、発酵に時間をかけた上質なパン、高級茶葉を使用した香り高いお茶、貴重な素材を贅沢に使用した煮込み料理を提供しているのだ。それはちゃんとメニューに書かれているだろ!」
店員はテーブルを手で叩き、さらに威圧的に続けた。
「そして席代は店に入った時、きちんと説明しただろうが。お前はこの店の提示した価格とルールを全て了承して食事をしたのだろ!」
アルトは絶句した。トビーが話しかけてきた時の嬉しさで、テーブルに座ったときの説明など、全く聞いていなかった。それにオーダーは全てトビーに任せていた。
怒鳴りつけていた店員は、突然、表情を一変させた。その顔はまるで親身になってくれる優しい隣人のような顔になる。店員はアルトの肩を優しく叩いた。
「そう、気を落とすな。まあ、食い逃げするつもりじゃねぇのは分かったよ」
店員はそう言うと、周囲にいる僅かな客から見えないように、声をひそめた。
「だが、ここで王都を追放されるのは惜しいだろう。払えないのなら、金を貸してやる。今日は支払わなくていいから、働いて少しずつでもよいから返してくれたらいいぜ」
アルトは地獄の底にいたところを救いの手が差し伸べられたように感じた。
「あ、ありがとうございます……!」
アルトは、感謝の言葉を述べるのが精一杯だった。店員は、カウンターの下から薄汚れた革の借用書を取り出し、アルトにサインするよう促した。
「じゃあ、この借用書にサインしろ」
アルトは急かされるようにペンを受け取り、借用書に目を通す。そこには借金の総額と無期限の返済期限が書かれていた。
(これなら、日雇いで頑張ればいずれ返せる……)
アルトは安堵から深く確認することなく自分の名前を走り書きした。しかし、アルトは気付いていなかった。
アルトがサインしたその借用書の裏側には、小さな文字で法外な利息を定める、恐ろしい但し書きが記載されていることを。
「おい、いつまで突っ立ってるんだ、ガキ」
汚れた布巾を握った店員が、アルトの前に立ち、睨みつける。
「もう店を閉める。さっさと飯代を払って出ていけ」
アルトは震える声で訴えた。
「その……一緒にいた男に、お金を全部取られてしまって……今、お金がありません」
店員は鼻で笑い、無関心を突きつける。
「そんなの俺に関係ねぇ。飯を食ったなら金を払え、それは社会のルールだ」
アルトは必死に頭を下げた。
「お願いします!お金がないので、ここで働いて食事代を支払います。皿洗いでも、掃除でも、何でもしますから!」
だが、店員はアルトの申し出を一蹴した。
「ふざけるな。ここは労働斡旋所じゃねぇ。いいか、金を払わないってことは窃盗罪だ。衛兵に突き出すぞ」
店員の顔が一気に険悪なものに変わる。
「そうなると、お前みたいなハズレ職業のガキは、王都から追放だ。二度とここには戻れなくなる。それでいいのか?」
「追放……」
アルトは故郷へ戻ることもできず、王都での再起も絶たれるという最悪の可能性を聞き、全身を恐怖が貫いた。アルトはガクガクと震えて店の床に崩れ落ちそうになる。店員はアルトが恐怖で怯える姿を見て、口元に汚い笑みを浮かべた。
「分かればいい。お前とさっき逃げた連れの2人分の食事代、合計で……小金貨5枚だ」
アルトは食事代を聞いて再び衝撃に襲われた。
「小金貨……5枚?」
アルトは頭の中で必死に貨幣の価値を計算した。
トビーから聞いていた話では、この店の食事代は1人鉄貨3枚(300円)で腹いっぱい食べられるはずだった。トビーの話が嘘で、実際の価格がその何倍だったとしても、2人分で小金貨5枚はあまりにも高すぎる。
この国の貨幣は、鉄貨、銅貨、銀貨、そして金貨が流通している。鉄貨が100円で最も安く、銅貨が1,000円。その上が銀貨で1万円、小金貨はなんと10万円に相当する。小金貨1枚あれば、この王都でも最上級の料理を腹いっぱい食べることができる。
「高すぎます!」
アルトが抗議の声を上げるが、店員はアルトの声をさらに上回る大声で「黙れ!」と一喝した。
店員は汚れた紙の伝票をアルトの目の前に叩きつけた。
伝票には信じられない文字が並んでいた。パン2つが銀貨4枚(4万円)、お茶4杯が銀貨8枚(8万円)、煮込み料理2人前が銀貨10枚(10万円)、そして席代が銀貨28枚(28万円)、合計はきっちり小金貨5枚に設定されていた。
ここは外から来た世間知らずの人間を騙して、有り金を全て巻き上げるぼったくり食堂だったのだ。そして、トビーがあえてこの店を選び、アルトに睡眠薬を盛るように食事を勧め、親切な振りをしていたのも、すべてが店員とグルだったからに違いない。
「こんなのぼったくりだ!」
アルトは力の限り叫んだが、店員は腕を組み、冷たい目で言い張った。
「何を驚いているんだ、坊や。馬鹿を言え。この食堂は見た目は汚いかもしれないが、発酵に時間をかけた上質なパン、高級茶葉を使用した香り高いお茶、貴重な素材を贅沢に使用した煮込み料理を提供しているのだ。それはちゃんとメニューに書かれているだろ!」
店員はテーブルを手で叩き、さらに威圧的に続けた。
「そして席代は店に入った時、きちんと説明しただろうが。お前はこの店の提示した価格とルールを全て了承して食事をしたのだろ!」
アルトは絶句した。トビーが話しかけてきた時の嬉しさで、テーブルに座ったときの説明など、全く聞いていなかった。それにオーダーは全てトビーに任せていた。
怒鳴りつけていた店員は、突然、表情を一変させた。その顔はまるで親身になってくれる優しい隣人のような顔になる。店員はアルトの肩を優しく叩いた。
「そう、気を落とすな。まあ、食い逃げするつもりじゃねぇのは分かったよ」
店員はそう言うと、周囲にいる僅かな客から見えないように、声をひそめた。
「だが、ここで王都を追放されるのは惜しいだろう。払えないのなら、金を貸してやる。今日は支払わなくていいから、働いて少しずつでもよいから返してくれたらいいぜ」
アルトは地獄の底にいたところを救いの手が差し伸べられたように感じた。
「あ、ありがとうございます……!」
アルトは、感謝の言葉を述べるのが精一杯だった。店員は、カウンターの下から薄汚れた革の借用書を取り出し、アルトにサインするよう促した。
「じゃあ、この借用書にサインしろ」
アルトは急かされるようにペンを受け取り、借用書に目を通す。そこには借金の総額と無期限の返済期限が書かれていた。
(これなら、日雇いで頑張ればいずれ返せる……)
アルトは安堵から深く確認することなく自分の名前を走り書きした。しかし、アルトは気付いていなかった。
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