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第13話 交渉
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テーブルの奥に座る初老の男性は、トビーとアルトを鋭く見つめた後、座る位置を指差して一言だけ発した。
「席に座れ」
2人は座り心地の良さそうな革張りの椅子に座った。アルトは部屋の重々しい雰囲気と男性の威圧感に完全に飲まれ、背筋を伸ばそうとしても体が強張り、ぎこちなく椅子に腰かけた。一方のトビーは、初老の男性に深すぎない、品のある一礼をしてから、堂々たる振る舞いで椅子に座る。初老の男性は終始アルトを眼中に収めることなく、トビーにだけ視線を向けた。
「品を出せ」
トビーは無言で胸ポケットから、ベルベットの布張りで仕立てられた高価そうな箱を取り出し、テーブルの上に静かに置いた。初老の男性は、トビーが慎重に開けた箱からペンダントを乱雑に指でつまみ取り、ろくに光にもかざさず、一瞥しただけで査定を終えた。
「銀貨1枚が妥当だな」
初老の男性は、吐き捨てるように言い放った。
銀貨1枚という予想外の金額を聞き、アルトは一瞬、「少しでも金になるなら」という思いから、嬉しそうな顔をする。しかし、トビーの表情は違った。トビーは静かに鼻で笑うと、テーブルに肘をつき、冷静に男性を見つめ返した。
「私を舐めてもらっては困ります。その品は、小金貨6枚、いえ、その出来栄えを鑑みれば小金貨7枚の価値があります」
トビーは初老の男性が何か言い返す前に、一気に畳みかけるようにペンダントの精巧な作りを淀みなく説明し始めた。
「そのペンダントは、純銀のチェーンが何重にも編み込まれた極めて精巧な作品で、並みの職人ではこれほど精巧に編み込むのは不可能でしょう。さらに目を引くのは、本体に施された『鷲』の彫刻でしょう。羽根の一枚一枚が、特殊な技法で幾層にも磨き上げられており、触れるたびに光を捉えます。そして、装飾として埋め込まれている小さなガラス玉。一見ただのガラスに見えますが、よく見てください。これは精密に計算してカットされており、光の角度によって輝き方が変化する特殊な技法が使われています。まさか、このレベルの技術にお気づきにならないとは驚きです」
トビーの圧倒的な専門知識と、まるでペンダントの製造過程を見ていたかのような詳細な説明に、初老の男性の顔色が変わった。男性は最初の傲慢な態度を引っ込め、再度鑑定をしようとテーブルに身を乗り出した。
男性は引き出しから宝石ルーペを取り出し、ペンダントの彫刻部分に目を凝らした。
「ふむ……確かに純銀の質は高い。彫刻も並の品ではない。だが、お前の言う特殊なガラスカットも、この店で扱う最上級品には及ばない」
男性は不機嫌そうにルーペを戻した。
「いや、これは小金貨3枚が妥当だ」
初老の男性は、トビーを最初に銀貨一枚でぼったくるつもりであったことを悟られまいと、渋い顔を見せる。だが、トビーは小金貨3枚という金額でも納得しなかった。
「話になりません。このペンダントは、単なる装飾品として値をつけられては困るのです。これは、かつて【白鷲の男爵家】が、代々受け継いできた品。この鷲の彫刻には、男爵家の誇りが込められており、金銭以上の由緒がある。【白鷲の男爵家】がやむを得ない事情で質に入れたものが流れてきたと聞いている。その背景を考慮していただきたい」
トビーは嘘だと知りながらも、ペンダントが男爵家という中堅貴族の歴史を持つ品であるという設定を、まるで実際にその経緯を知る人間であるかのように真実味を帯びた口調と振る舞いで語り、初老の男性を信じ込ませた。
トビーの説明に完全に押し切られた初老の男性は、深くため息をついた。
「わかった。その話が真実ならば、小金貨5枚を出そう。これが店の限界だ」
トビーはそこで初めて席を立ち上がった。
「わかりました。残念ながら、ここではお売りしません。ご縁がなかった」
初老の男性は慌ててトビーを呼び止めた。
「待て!わかった、わかった!仕方ない。特別だ。小金貨6枚出す!これ以上は絶対に無理だ!」
トビーは腕組みをして数秒間考えた。アルトはトビーと初老の男性の凄まじい臨場感あふれるやり取りに、自分の存在を消したいほどに恐怖し、一言も発さずに冷や汗をかいていた。
やがてトビーは静かに頷いた。
「承知いたしました。小金貨6枚。それで話をつけましょう」
「席に座れ」
2人は座り心地の良さそうな革張りの椅子に座った。アルトは部屋の重々しい雰囲気と男性の威圧感に完全に飲まれ、背筋を伸ばそうとしても体が強張り、ぎこちなく椅子に腰かけた。一方のトビーは、初老の男性に深すぎない、品のある一礼をしてから、堂々たる振る舞いで椅子に座る。初老の男性は終始アルトを眼中に収めることなく、トビーにだけ視線を向けた。
「品を出せ」
トビーは無言で胸ポケットから、ベルベットの布張りで仕立てられた高価そうな箱を取り出し、テーブルの上に静かに置いた。初老の男性は、トビーが慎重に開けた箱からペンダントを乱雑に指でつまみ取り、ろくに光にもかざさず、一瞥しただけで査定を終えた。
「銀貨1枚が妥当だな」
初老の男性は、吐き捨てるように言い放った。
銀貨1枚という予想外の金額を聞き、アルトは一瞬、「少しでも金になるなら」という思いから、嬉しそうな顔をする。しかし、トビーの表情は違った。トビーは静かに鼻で笑うと、テーブルに肘をつき、冷静に男性を見つめ返した。
「私を舐めてもらっては困ります。その品は、小金貨6枚、いえ、その出来栄えを鑑みれば小金貨7枚の価値があります」
トビーは初老の男性が何か言い返す前に、一気に畳みかけるようにペンダントの精巧な作りを淀みなく説明し始めた。
「そのペンダントは、純銀のチェーンが何重にも編み込まれた極めて精巧な作品で、並みの職人ではこれほど精巧に編み込むのは不可能でしょう。さらに目を引くのは、本体に施された『鷲』の彫刻でしょう。羽根の一枚一枚が、特殊な技法で幾層にも磨き上げられており、触れるたびに光を捉えます。そして、装飾として埋め込まれている小さなガラス玉。一見ただのガラスに見えますが、よく見てください。これは精密に計算してカットされており、光の角度によって輝き方が変化する特殊な技法が使われています。まさか、このレベルの技術にお気づきにならないとは驚きです」
トビーの圧倒的な専門知識と、まるでペンダントの製造過程を見ていたかのような詳細な説明に、初老の男性の顔色が変わった。男性は最初の傲慢な態度を引っ込め、再度鑑定をしようとテーブルに身を乗り出した。
男性は引き出しから宝石ルーペを取り出し、ペンダントの彫刻部分に目を凝らした。
「ふむ……確かに純銀の質は高い。彫刻も並の品ではない。だが、お前の言う特殊なガラスカットも、この店で扱う最上級品には及ばない」
男性は不機嫌そうにルーペを戻した。
「いや、これは小金貨3枚が妥当だ」
初老の男性は、トビーを最初に銀貨一枚でぼったくるつもりであったことを悟られまいと、渋い顔を見せる。だが、トビーは小金貨3枚という金額でも納得しなかった。
「話になりません。このペンダントは、単なる装飾品として値をつけられては困るのです。これは、かつて【白鷲の男爵家】が、代々受け継いできた品。この鷲の彫刻には、男爵家の誇りが込められており、金銭以上の由緒がある。【白鷲の男爵家】がやむを得ない事情で質に入れたものが流れてきたと聞いている。その背景を考慮していただきたい」
トビーは嘘だと知りながらも、ペンダントが男爵家という中堅貴族の歴史を持つ品であるという設定を、まるで実際にその経緯を知る人間であるかのように真実味を帯びた口調と振る舞いで語り、初老の男性を信じ込ませた。
トビーの説明に完全に押し切られた初老の男性は、深くため息をついた。
「わかった。その話が真実ならば、小金貨5枚を出そう。これが店の限界だ」
トビーはそこで初めて席を立ち上がった。
「わかりました。残念ながら、ここではお売りしません。ご縁がなかった」
初老の男性は慌ててトビーを呼び止めた。
「待て!わかった、わかった!仕方ない。特別だ。小金貨6枚出す!これ以上は絶対に無理だ!」
トビーは腕組みをして数秒間考えた。アルトはトビーと初老の男性の凄まじい臨場感あふれるやり取りに、自分の存在を消したいほどに恐怖し、一言も発さずに冷や汗をかいていた。
やがてトビーは静かに頷いた。
「承知いたしました。小金貨6枚。それで話をつけましょう」
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