DRAGGY!ードラギィ!ー【フラップ編(リライト)2/18連載開始!】

Sirocos(シロコス)

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〈フラップ編〉

第一話 2

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         「うううう。な、なんのつもりなの……?」
      「大丈夫だいじょうぶこわがることなんてないよ。ぼくがたすけるから」

**************************************

 まもりたい気持ちよりも、この奇妙きみょうな生き物への興味きょうみのほうがまさってしまった。

 レンは、おそるおそるではあったけれど、
このおどろくべき運命的うんめいてきな出会いを無駄むだにしないために、そっと声をかけた。

「お、お~い、竜くーん。あっ、それとも、犬なのかな?」

 どういう生き物なのかは、見ればわかる。竜であり、犬でもある生き物。
そして、レンよりも何倍なんばいも大きくて、見たところ狂暴きょうぼう、ではなさそう。


 パチッ!


 たおれていた不思議な生き物が、ふいに目をさました。


「うわっ!」レンは後ずさりした。


 不思議な生き物は、まるで人間とおなじようなうごきで、
両腕をついてむくっと上半身じょうはんしんをおこした。
右も左もわからないような顔をして、あたりをキョロキョロと見わたしている。

「こ、ここはいったい? あれっ? あれっ?」

 しゃべった。口をきいた!

 どうしよう? ここから、ぼくはどうなってしまうんだ?

 レンは、石みたいにかたまったままがえていた。
けれど、不思議な生き物はレンのすがたを見つけるなり、
ニワトリのごとくびあがってこうさけんだ。


「うわあああ! に、ニンゲンだあぁぁ!」


 不思議な生き物は、小型飛行機こがたひこうきほどもあろうコウモリのつばさをバタバタやって、
いきせききりながらレンの前からげだした。しかも、その直後ちょくごのこと。


 しゅるしゅるしゅる……ちょこんっ!


 不思議な生き物は、みるみる姿すがたをちぢめていき、
生まれたての仔犬こいぬのようなサイズになってしまったのだ。

(はぁ!?)

 いきなりのことで、頭の理解りかいが追いつかなかった。まさか、魔法まほう!?
この竜のような生き物は、呪文じゅもんをとなえるのだろうか?
でも、口では何ひとつみょうな言葉をとなえていなかった。

 不思議な生き物は、弾丸だんがんのようなはやさで近くのしげみへととびこみ、
そして、それから――物音ものおとひとつ立てなくなった。

(どうしたのかな?)

 相手あいては竜、かもしれない生き物。おそいはずがない。
あっという間に小道こみちをぬけて、すでに道路どうろへとぬけてしまっただろう。
足のおそい自分では、もうおいつけっこない。
でも、ひょっとするとまだ、すぐそこにいるかもしれない。

一瞬いっしゅんで小さくなれるなんて、すごいぞ……!)

 レンは、相手を刺激しげきしないようにしのび足をふみながら、
不思議な生き物がかくれた茂みにそうっと近づき、そのむこうをのぞきこんだ。


 いた! あの生き物がまだいた。
でも、様子ようすがおかしい。今度こんどは地べたにはらばいになってたおれている。
まるで、つかれはててちっとも飛べないかのようだ。


「くぅ~ん。ダメだぁ……ぼくは、ここで……人間に食べられちゃうんだ」


 えいるような、なんともか細い声でなげいている。雑草ざっそうに顔をうずめて。


 そんなばかな。レンはポカンとしてしまった。
くまのようにたくましそうだと思ったら、なぜか人間におびえてげだしたり、
体をちぢめたり、ああして未練みれんがましそうになげいていたり――
強そうなのに、たよりない。竜なのに、仔犬こいぬみたいなかよわさ。

 なのにレンは、だんだんこの生き物が、とてもいとおしく思えてきた。
竜に会ってみたいとは思っていたけれど、じつは、犬もってみたかったのだ。

「しょうがないなあ、ぼくがれてかえってあげるったら」

 レンは、できるだけゆっくりとそばへ歩みよると、
まだ空も飛べないヒナにたいしてそうするように、
両手でそっとその体をすくいあげて、胸の中にだきかかえた。

「うううう。な、なんのつもりなの……?」

 不思議な生き物が、ぶるぶるふるえながらたずねてきた。

大丈夫だいじょうぶこわがることなんてないよ。ぼくがたすけるから」

「ぼ、ぼくはステーキにはむかないよぅ……だってぼく、も、えにくいもの」

 この不思議な生き物の体には、たしかなぬくもりがやどっていた。
まるでお風呂ふろのおをつめたカイロのような、ほっとするあたたかさが。

(そういえば、火はふけるのかな、この生き物)

 このさい、スケッチの宿題しゅくだいはあきらめよう。
レンは、スケッチブックと筆記用具ひっきようぐ回収かいしゅうして、
もってきていた手さげバッグにそれらをしまってから、
さっさと林の小道をぬけて、自分の自転車じてんしゃのある道路どうろまでもどった。


 そこから、うちに帰る方向とはぎゃくのほうを見てみると、おどろいたことに、
そこには二十人以上いじょうの人だかりがあって、
一本杉いっぽんすぎのある丘の方向をこわごわと見ていた。中には、なんと警官けいかんまでいる。

(げげっ!)

 レンは、とっさに近くの木のうらかくれた。
あんなに大きな緑色のたまが、急に空からふってきたのだ。
まばゆい光もはなたれていたことだし、当然とうぜんといえば当然だ。
きっと、大勢おおぜいの人が目撃もくげきしていたにちがいない。

 ここでレンは、とっさに、いま自分がかかえているこの生き物を、
だれにも見られちゃいけないというかんがえがうかんだ。
どうしてかは分からない――まるで見えないだれかから脅迫きょうはくされたみたいに、
強烈きょうれつ信号しんごうほねのずいまで電気でんきのようにビビッとかけめぐったのだ。
まあ、見つかってもただのぬいぐるみだと思われるのがオチだろうけれど。
どのみち、ヒトの目にうつってしまうことだけは――。

(どうにかして、この子を隠さないと)

 そこでレンは、手さげバッグからスケッチブックだけを取りだし、
その中に不思議な生き物をそうっと入れてあげた。
それから、自転車の前かごにバッグごと入れて、スケッチブック
人だかりにあやしまれないうちにさっさと自転車をこいで家路いえじについた。

窮屈きゅうくつだろうけど、しばらくがまんして。キミをまもるためなんだ」

「………」

 返事へんじがない。どうやら眠ってしまったようだ。
ここまでいっさい抵抗ていこうしなかったのが、とてもみょうだ。
きっとなにかの事情じじょう体力たいりょくをうばわれてしまったにちがいない。

(まずは、部屋でゆっくり休ませないと。話はそれからだな)

 警官けいかんまでまきこんだけれど、あまり大事おおごとにはならないだろう。
だって、れい緑色みどりいろたまはもうどこにもなくて、
空からなにかが落下らっかしてきた痕跡こんせき見当みあたたらないはずなのだから。
たしかに、その中には一匹いっぴき不思議ふしぎな生き物が入っていた。
けれど、いまのところその生き物が仔犬こいぬみたいに小さくなって、
こうしてレンの自転車にはこばれていようとは、だれもゆめにすら思わない。
 
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