DRAGGY!ードラギィ!ー【フラップ編(リライト)2/18連載開始!】

Sirocos(シロコス)

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〈フレデリック/しろさん編〉

第八話 5

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      『ブリーチが、それを見てふっとわらいをうかべていた。
       なぜだか、どことなくさびしげな笑いかたに見えた。』

**************************************
 
「おい、それホントかよ! 気づかなかったあ」

 ブリーチはあわててトリケラトプスの背中せなかからどいてやった。
それから、自分でのしたばかりの相手あいて胴体どうたいに手をやって、
立ち上がるのを手助てだすけしてやっていた。

「なんか、またまたごめんな。
たしか散歩さんぽ途中とちゅうだっただろ? でも、そろそろごはん時間じかんかな?
オレたちさ、子どもたちと会ったんだ。みんな心配しんぱいしてたぜ」

 トリケラトプスは、もともと我慢がまんづよい性格せいかくなのか、
いためつけられても機嫌きげんをそこねたわけでもなく、体もぴんぴんしていた。


 ――あとでレンに聞いた話だが、ブリーチたちは空から水辺みずべ墜落ついらくしたとき、
きしで三匹のトリケラトプスの子どもたちと再会さいかいしていたようだ。
そろいもそろって近くのがけからりてきたものだから、
そうとうおどろいたという。だが、それだけ三匹はパニックにおちいっていたのだ。

おそらく、一度いちどだけおやとふれあったドラギィたちに、助けをもとめにきたのだ。
そうとは知らないブリーチたちは、
親がどこにも見当みあたらないのを不審ふしんに思い、親のになにかがあったのだと推測すいそく
いそいでこのことをわしらに報告ほうこくしようと飛んだが、三匹をいてきてしまった。

だがその途中とちゅうで、ジャングルのほうにまばゆい光が発生はっせいするのを目撃もくげきしたため、
確認かくにんのために降下こうかしてみたら、わしとフリーナのにおいをかぎつけたのだ。
それで、この場所にわしらがいることを突き止めたのだった。

 それと、フレディの水で覆面ふくめんがすぐに取れたのは、
吸着機能きゅうちゃくきのうにつかわれている素材そざいが水によわかったため。
しかしフレディ自身じしんも、ニオイで覆面の弱点じゃくてん見当けんとうをつけていたようだ。
覆面から、レンが部屋へやでよく使つか接着剤せっちゃくざいとよくにたニオイがしたのだ。
それに、まちがって体についてしまった接着剤は、
水につけるととけてながちると、レンからおそわっていたようだ。
つまり、わしがおしえなくても覆面はすぐにはがせたわけだ。

「おもろない!」

 岩の上から事の次第を見ていたルドルフが、地団太をふんでさけんでいた。

「ぜんっぜん、おもろないわ! 今回も大敗北だいはいぼくかいな!
今回はビオラ博士はかせとナンボもさくを立てて、ちかまえとったっちゅうのに」

「まだまだ、ツメが甘かったみたいですわね」ビオラ博士も不機嫌ふきげんだった。
「しかし、こんなことではあきらめませんわよ、フレデリック博士。
次こそはかならず、三匹まとめてつかまえてごらんに入れますわ。
そして、あなたも――人間に変身へんしんできる珍生物ちんせいぶつ一種いっしゅとして、
きっとルドルフさまのコレクションのひとつになってもらいますわよ」

勝手かってにしてくれてかまわんがのう!」わしは両手をメガホンにして言った。
「このへんころがってる子分こぶんたちを、ちゃんとれてかえるんじゃぞ!」

心配無用しんぱいむようや! そいつらは、自分で表世界おもてせかいに帰ってこられる。
なんちゅうても、ワイらには異界穴いかいあなとおれる装置そうちがあるさかいなぁ!」

 ルドルフとビオラ博士は、
それぞれ片腕かたうでにつけていたリングをちゅうにかかげて、れいのキーワードをとなえた。

「「ネコンド、ネンドローン! ニャーオ!」」

 二匹の体が、粘土ねんどのようにグニャリと薄気味うすきみわるくゆがんだ。
そして、んでははずむミミズのような細長ほそなが軟体なんたいとなって、
あっという間にジャングルのおくへと姿すがたしてしまったのだった。

「あっさりといなくなるんだな、あいつら」

 フレディがあっけにとられながら言った。

「フラップのやつも言うだろうけどさ」ブリーチがふとつぶやいた。
「小さい動物どうぶつにつけねらわれるだけなら、ぜんぜんこわくないよな」

 *

 とりあえず、一件落着いっけんらくちゃくと見たわしらは、
解放かいほうしたトリケラトプスとともにジャングルのそとへむかっていた。
そのあいだ、わしはフレディの背に、レンはブリーチの背に乗っていた。
フリーナはもう大きくなれないので、レンの腕の中でじっとしていた。

レンは、本物ほんものみたいな恐竜きょうりゅう背中せなかに乗れないことを、残念ざんねんがっていた。
いくらドラギィに乗りなれているとはいえ、恐竜きょうりゅうの乗り心地ここちはまるでちがうだろう。
ゴツゴツとしつつ、温かみのある恐竜の表皮ひょうひは、なんともいえない感触かんしょくがある。
さながら、ゆるぎない大地だいちそのものにまたがるような気分きぶんになれるはずだ。

「まあ、くらも何もないあの背中は、人間が乗るにはちと都合つごうがあわないしのう」

 ここだけの話、わしは以前いぜん
別の世界で恐竜によくにた生物せいぶつの背に乗ったことがある。
その生物は、その世界に住む人間によくいならされていて、
背中には人間が乗りやすいようにちゃんと鞍がそなわっていたのだ。
あの感触かんしょくがなつかしい。今日のような大冒険だいぼうけん日々ひび謳歌おうかしたものだ。

「それにしても」ブリーチがわしを見て、ふと口をひらく。

「あんたがそんなすがたを隠してたなんて思わなかったぜ。
あの白いネズミが人間になるなんてな~。人間界って、やっぱり面白おもしろい」

「しかも、そこそこ強いときた」わしはにんまりした。
「じゃが、修行の相手にするのだけは勘弁かんべんしてくれよ。
こう見えて、わし本当は、あらっぽいのはきではないんじゃから」

「ワゥ! なんだソレ、り合いないなあ。――まあいいや。
でも、時どきでいいから相撲勝負すもうしょうぶくらいはさせてくれよ。
根拠こんきょなんてないけどオレたち、いい友達になれそうだしさ!」


 ジャングルを出ても、まだ上空はあいにくのくもり空だった。
まだゴロゴロと雷もなっていたし、ここには避雷針ひらいしんもないから、
もしも雷にうたれたらひとたまりもないだろう――フリーナはべつとして。

「見て、なにか走ってくる!」

 レンが草原そうげんのむこうをゆびさした。
小さな茶色ちゃいろかげが三つ、こちらにむかって全速力ぜんそくりょくでやってくる。
――トリケラトプスの子どもたちだ。

 なんと、親を心配しんぱいしてわざわざさがしに来たのだ。こんなことがあるだろうか?

 わしはブリーチの背中からりると、
彼らの親のかおのすぐそばまで近づき、ほほのあたりをポンとたたいた。

「ほれ、わが子たちのおむかえじゃ。たくましい子たちじゃのう。
こんなところまで走っていかけてきて」

 トリケラトプスの親子は、無事ぶじ再会さいかいをはたすことができた。
親の顔のそばにがってうれしそうにねる、三匹の子どもたち。
表情ひょうじょうにはあらわれないが、こうしてみると、みんな本当に嬉しそうに見えてくる。

「よかった、ぐすん――本当によかったな。ワゥゥ~」

「フレディはホントしょうがないな~」

 フレディがたちまち泣き出してしまったので、
レンはフレディの背中から降りるしかなかった。

「アォン。アタシたち、よく分かんないケド、イイコトしたんだよネ?」

 フリーナがふわっとうかびあがって、
フレディのほほに自分の体をこすりつけるような動きをした。

 ブリーチが、それを見てふっとわらいをうかべていた。
なぜだか、どことなくさびしげな笑い方に見えた。

 トリケラトプスの親子が、草原のむこうへ去っていくのを、
わしらは静かに手をふりながら見送みおくった。

「――あのさ」

 しばらくして、ブリーチが口をひらいた。

「フレディお前、さっきオレに何を言いかけたんだよ?」

 墜落ついらくした水辺みずべでさえぎられた、フレディの最後さいごのセリフのことだった。

「え? あ、あれかい?」フレディがどぎまぎした。

「いや、その……なんていうか、あれだ。
もしキミが、えてなくなってしまうのが怖いというなら、
ぼくが、あっいや――ぼくらが、まあ、むしろ力になるべきだよなって。
ほら、まががりなりにもぼくら、その――したしくなったわけだし」

「くぅ~ん、お前ェ……」

 ブリーチがすこしなみだぐんだ、その時だ。


「ねえねえ、見てあれ!」


 フリーナがとおくを指さした。ちょうど、異界穴いかいあながある方角ほうがくだ。
視界しかいの先に見えるジャングルの中から、
いま、三頭の小型恐竜こがたきょうりゅうがかけあしで飛び出してきたのが見えた。
パキケファロサウルスだ。ドームじょうになった頭骨ずこつ特徴とくちょう草食恐竜そうしょくきょうりゅうである。
その三頭の背中に、それぞれ小さな人間たちがしがみついている。
わしもまさかとは思ったが、どうみても見覚みおぼえのある服装ふくそうの三人だった。

 ユカと、ジュンと、タクではないか!

「なんであの三人が――」

 ここにいるのかと、レンが言おうとした時だ。
彼らが飛び出してきた木々のあいだから、
ものすごいいきいで追ってきたものを見て、わしらはたまげた。

 ドォ―――ン!

 ジャングルの木々をやぶって、草原に飛び出してきたのは、
きょうじんなおおあごに、大木たいぼくのような長いしっぽ、巨大きょだいなかぎづめのような形状けいじょう両脚りょうあし
おそるべき速さで獲物えものを追い、確実かくじつ捕食ほしょくする恐竜世界きょうりゅうせかい暴君ぼうくん――

 ティラノサウルスだった! 背中をのように真っ赤にそめた――
 
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