DRAGGY!ードラギィ!ー【フラップ編(リライト)2/18連載開始!】

Sirocos(シロコス)

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〈フレドリクサス編〉

エピローグ

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「――ふうむ。こういうハッピーな区切り方も、またいいなあ」

一人の若い男性が、デスクライトのみをつけた薄暗い部屋の中、
パソコンにむかって微笑みながら、そうつぶやいていました。

彼は、現役の小説家。
机のまわりには、作品のプロットが細かく書きこまれたプリントや、
登場人物たちの設定をまとめた備忘録などが、あちこちに貼られています。


「――ひとりの女の子のために、みんなで作った最高のプレゼント。
実際にそれを贈られる女の子がいたら、どんな顔で喜ぶんだろうな」


ふふっ……。
男性は、まるで少年時代に立ち返ったかのように、
恍惚こうこつの表情を浮かべながら、頬杖をついていました。
ゆるやかにセットした髪に、整然とした顔つき。そこに黒いサーモント眼鏡。
雑誌のモデルになりそうな、そこはかとなくセクシーな大人の男性――。


カラカラカラ……。


出窓の片方が、つと開いて、
しっとりとした涼しい夜風が、ふうっと部屋に流れこみました。

「――おかえり。どうだった?   彼らの様子は?」

男性は、ひとりでに開いた窓におびえることもなく、そちらをむきました。
おびえるどころか、こんなふうに勝手に開く自室の窓に、慣れている様子でした。



「……思いもかけない連中の襲撃を受けたようでしたが、
三匹とも、今回は事なきを得たようです」



出窓のそばから、姿の見えないが答えました。
渋く、そして少し魅力的な、男のような声が。

「なんか、紆余曲折うよきょくせつがあったみたいだね。くわしくは後で聞かせてよ。
とりあえずは今日、子どもたちの遊び活動に、その三匹は協力してあげたわけだ。
なんて言ったっけ?   んーと、なんでも調査隊?
まだ小学生なのに、すごいことやるよね」

男性は、パソコンの執筆画面を最小化して、
レンたちが立ち上げたなんでも調査隊のホームページを開きました。
四人の小学生が、楽しげに笑いながらポーズをとっているトップ画面。
まだ活動履歴もなく、今日の活動の内容すらも更新されていないようです。



「いえ、このところつぶさに観察してきたところ、
どうやらわたしの推測どおり、その人間の子どもたちは、
あの三匹のために、例の調査隊を立ち上げたようなのです」



「へえ、やっぱりそうか」男性は出窓の方に向き直ります。
「遊び目的じゃなくて、その三匹の修行ため。以前、キミがぼくに教えてくれた、
レン君という男の子たちの人物像を考慮に入れたら、
いずれこうなるんじゃないかなって、ぼくも思ってたんだ。
イイネ、イイネ。いいカンジに面白くなってきたじゃない。
まるでブレークの期待できる児童小説みたいでさ」

パチパチパチ。男性の活きのいい拍手の音が、部屋に小さくひびきました。



「………はあ」
反対に、出窓のそばの見えない何かは、面白くなさそうにため息をつきます。



「あれ?   浮かなそうだね?
あの三匹がこれからどうなるか、キミも心配だったんだろ?
キミの立場を考えたら、これって都合のいいことなんじゃないの」



「いや、ますます気が気ではありませんよ」



出窓のそばで話していた何者かが、すうっと姿を現しました。
さながら、姿をくらまし景色に溶けこむ魔法を解いたかのように、
翼を持った小さな生き物が、月明りを背に受けつつ、
部屋にぼんやりとした影を落としながら、おごそかなシルエットを見せたのです。




その黒いシルエットは、まさにドラギィでした。

しかし、これまでのどのドラギィよりもがっしりとした体つきで、
成長しきった成獣の雰囲気を物語るたたずまいでした。
頭には、枝分かれした勇ましいシカの角を思わせるそれが。



「一匹は、火をうまく吹けない、そそっかしいレッド種のフラップ。
一匹は、だれかれ構わずしびれさせかねない、能天気なイエロー種のフリーナ。
そして一匹は、スクールのエリート生でありながら、
ささいなことですぐに泣き出す、ブルー種のフレドリクサス。
そんな彼らが、いまだ慣れない世界で、お忍びの冒険を強いられているのです。
なんでも調査隊と称して、こちら側の世界で冒険を重ねることが、
果たして、それぞれの修行課題の達成に繋がるのかどうか……」



このドラギィの目は、真剣そのものでした。
厳しい監視者を思わせる瞳。

「お堅いねえ。ドラギィっていうのは、
もっと気楽にモノを考える生き物だって、ぼくは思ってたけどな」




「とくに、あのフレドリクサス。彼は、頭はいいが、だまされやすい。
小野寺ヨシ――あの少年に怪我を治療してもらい、その恩を着せられ、
まんまと狭いかごのとりこにされてしまった。
あの時、わたしが助け出してやらねば、今頃どうなっていたことか」




「そのフレドリクサスっていう子に、ずいぶん目をかけるなあ。
救出してあげた後、野良猫に捕まった彼に、
救いの雨を降らせてあげたのも、キミなんだろ?」




「あれは、わたしの別の仲間が、
われわれの故郷スカイランドに要請して降らせた〈チカラの雨〉。
すでにお伝えしたはずですが、わたしの他にも、
下界落としを食らった生徒を見守るドラギィが、何匹もいる。
そして、われわれ〈修行の観測役員〉は、
つねにスカイランドと繋がっているのです」




「ふーん、大変だねえ。スクールの修行生を影からサポートするのって。
校長さんにも、フレドリクサスたちの様子を、定期的に報告しなきゃなんでしょ。
あの三匹みたいに、こっちに落とされた生徒が、他に何匹もいるっていうのに」




「何をおっしゃることやら」

シルエットのドラギィは、怪しげに口角を上げるのでした。

「われわれの事情など、あなたは最初から、すべてご存じではありませんか。
むしろ、これから修行生たちの修行を、より本格的なものにするために、
われわれ観測役員を使って、ちょっかいを出していく腹積もりでは?



われらが《》―――古杉志朗こすぎ シロウ様」



そう呼ばれた男性は、座っていたデスクチェアからゆっくりと腰を上げると、
あごに指をそえながら、ふふふっと、悪戯な笑みを浮かべます。

そして、悠然とのばした手の指でキーボードを押し、
画面に表示させた一枚の写真に目をやって、



「……これから、会いに行くのが楽しみだよ。坂本レン君。
それから、かわいいドラギィの子どもたち」



写真に写っていたのは、
一本杉の前でレンのまわりを飛び回りながらたわむれていた、
フラップ、フリーナ、フレディの姿でした。

                                                                                      次章へつづく
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