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〈フロン編〉
5『美しい生物には、美しい満月がよく似合う』②
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(また、これだぁ……!)
フラップは両腕で顔を隠す防御姿勢を取っていました。
だれの差し金かも分からない、白く発光しながら包囲してきたコウモリの軍勢。
しかし奇妙なことに、こちらがひるんでいる数秒の間に、
飛び回るコウモリたちの姿がだんだんと赤みをおびてくるように見えました。
(変色、してる?)
フラップをすっぽり囲んで飛び回るコウモリたちは、
今や燃えるような朱色の灯りを身体に灯していました。
これは、いったいなんのメッセージなのでしょう?
求愛、なんて考えるのは愚の骨頂。なら、何かの警告でしょうか?
(どうする? 追いはらった方がいいかな?
フリーナとフレディの様子も分からないから、心配だし)
フラップは、身体の中で休止させていた炉を叩き起こし、
ふつふつと煮えたぎるような力を練り上げていきました。
レッド種だけが持ちうる、炎の源となる秘密の器官です。
(いくぞ……それ、どうだーっ!)
フラップは、口から炎を放射しました。
まだ修行の途中なので、一瞬で途切れてしまうほどの情けない炎ですが。
メラメラと輝く炎の熱は、たった今当たった少数のコウモリたちを、
跡形もなく一瞬で消し飛ばしました。
その様子は、さながら手品師が使うフラッシュペーパーのようでした……。
(フレディは、こいつらが生き物じゃないって見抜いてた。
だったらこのまま全部、ぼくの炎で消してやる!)
フラップは、幾度にわたって火を吹きました。
息継ぎをはさみつつ、無我夢中に何度も、何度も。
普通のレッド種なら、こんなに時間をかけずとも済むでしょうに――。
「ん? あれ、もういないぞ」
残りわずかとなっていたコウモリたちが、こつ然と消え失せていました。
どういうことなのでしょう?
でもこれでようやく、フリーナとフレディの様子を確認できました。
(ああっ、ふたりもコウモリたちに囲まれて見えなくなってる!
でも、ぼくの時と違って、コウモリたちの光る色が違うな。
フリーナの包囲網は黄色で、フレディのほうは水色。――)
もしかして! フラップは直感の命ずるままに叫びました。
「フリーナ! フレディ!
こいつらは、色におうじた力をぶつけると、消える仕組みなのかもしれない!
フリーナはスパークで、フレディは水爆弾で攻撃してみてーっ!」
すると、ふたつの包囲網の中から声が返ってきました。
「なーるほド! なんだか分かんないケド、やってみるヨー!」
「ぼ、ぼぐもっ! 今そうじようどっ、思っでだどころだぁ! うわぁ~ん!」
二匹の行動は、五秒と待たずに現れました。
黄色く光るコウモリたちの中心から、まばゆい電気の光がほとばしります!
金色に輝く小さな花火のような稲妻を受けて、コウモリは一匹残らず消えました。
一方、水色に光るコウモリたちの中からは、大量の水が炸裂しました!
包囲していた無数のコウモリが、濡れた身体の重みに耐えられずに落ちていきます。
騒ぎは、すっかり落ち着いたように思えました。
フレディは開放されたそばから、濡れたコウモリたちの上にポトリと降りました。
それから、消えずに草地に転がったまま動かないそれらをながめながら、
彼はこう言ったのです。
「ぐすん、やっぱりだ。こいつらは……ただの紙だぞ」
「ホントだぁ~。ユカちゃんの家にあった折り紙に、ちょっと似てル~」
「でも、紙だって? ホントにそう言った?」
フラップとフリーナは、フレディのそばへ駆けつけました。
「ちょっと待ってよ――ぼく、
前にこれと似た術を、どこかで見たことがある」
「ああ、フラップの――ぐすっ……言う通りだよ」
フレディは、ほほを濡らす涙をふいて、こう言いました。
「これは……ドラギィの術だ。
それも、ぼくらのスクールで習うより、ずっと高度なものだよ。
これは……そうだ、『ユニバーシティ』のレベルの術だ。ということは――」
「「あっ!」」
三匹の周囲に転がっていたコウモリたちが、今になってかき消えました。
それから、すぐ近くから伝わってきた強い気配に、
三匹はそれぞれ引きつけられるように顔をむけます。
一本杉のすぐ近くに、羽の生えた一匹の生き物が浮いていました。
神々しいような満月の光を背にして。
コウモリでもなければ、鳥でもありません。
けれど頭には、二本の凛々しい角がありました。立派な雄ジカのような角が。
細長いしっぽの先についているのは毛の房。
全身がつやつやとした毛におおわれた、犬のような、竜のようなもの――。
ドラギィ、でした。
ただし、フラップたちよりも一回り大きくて、成熟したような体型でした。
フラップたちより大きい姿になっているのではありません。
彼こそは、れっきとした大人のドラギィでした。
背中は淡い夜空のような薄紫色で、お腹は若干青みがかった白色。
深い秘密を内側に閉じこめたような黒い瞳でこちらを見下ろし、
ミステリアスな微笑みを浮かべています。
「――先生であるこのわたしの術を、よく破ったね」
月下に現れたドラギィは、言いました。
※一日ずれての大幅遅れの更新となってしまい、申しわけありませんでした!
実は先日から怪我のため入院していた関係で自宅になかなか戻れず、
その他いろいろな都合で更新が遅くなってしまいました。
怪我の方はたいしたことはございませんので、どうぞご心配なく!
今回は大事なかったためほっとしておりますが、
私にとってはちょっと嫌なGWとなってしまいました💦
それでは、今後ともよろしくお願いいたします!
しろこ
フラップは両腕で顔を隠す防御姿勢を取っていました。
だれの差し金かも分からない、白く発光しながら包囲してきたコウモリの軍勢。
しかし奇妙なことに、こちらがひるんでいる数秒の間に、
飛び回るコウモリたちの姿がだんだんと赤みをおびてくるように見えました。
(変色、してる?)
フラップをすっぽり囲んで飛び回るコウモリたちは、
今や燃えるような朱色の灯りを身体に灯していました。
これは、いったいなんのメッセージなのでしょう?
求愛、なんて考えるのは愚の骨頂。なら、何かの警告でしょうか?
(どうする? 追いはらった方がいいかな?
フリーナとフレディの様子も分からないから、心配だし)
フラップは、身体の中で休止させていた炉を叩き起こし、
ふつふつと煮えたぎるような力を練り上げていきました。
レッド種だけが持ちうる、炎の源となる秘密の器官です。
(いくぞ……それ、どうだーっ!)
フラップは、口から炎を放射しました。
まだ修行の途中なので、一瞬で途切れてしまうほどの情けない炎ですが。
メラメラと輝く炎の熱は、たった今当たった少数のコウモリたちを、
跡形もなく一瞬で消し飛ばしました。
その様子は、さながら手品師が使うフラッシュペーパーのようでした……。
(フレディは、こいつらが生き物じゃないって見抜いてた。
だったらこのまま全部、ぼくの炎で消してやる!)
フラップは、幾度にわたって火を吹きました。
息継ぎをはさみつつ、無我夢中に何度も、何度も。
普通のレッド種なら、こんなに時間をかけずとも済むでしょうに――。
「ん? あれ、もういないぞ」
残りわずかとなっていたコウモリたちが、こつ然と消え失せていました。
どういうことなのでしょう?
でもこれでようやく、フリーナとフレディの様子を確認できました。
(ああっ、ふたりもコウモリたちに囲まれて見えなくなってる!
でも、ぼくの時と違って、コウモリたちの光る色が違うな。
フリーナの包囲網は黄色で、フレディのほうは水色。――)
もしかして! フラップは直感の命ずるままに叫びました。
「フリーナ! フレディ!
こいつらは、色におうじた力をぶつけると、消える仕組みなのかもしれない!
フリーナはスパークで、フレディは水爆弾で攻撃してみてーっ!」
すると、ふたつの包囲網の中から声が返ってきました。
「なーるほド! なんだか分かんないケド、やってみるヨー!」
「ぼ、ぼぐもっ! 今そうじようどっ、思っでだどころだぁ! うわぁ~ん!」
二匹の行動は、五秒と待たずに現れました。
黄色く光るコウモリたちの中心から、まばゆい電気の光がほとばしります!
金色に輝く小さな花火のような稲妻を受けて、コウモリは一匹残らず消えました。
一方、水色に光るコウモリたちの中からは、大量の水が炸裂しました!
包囲していた無数のコウモリが、濡れた身体の重みに耐えられずに落ちていきます。
騒ぎは、すっかり落ち着いたように思えました。
フレディは開放されたそばから、濡れたコウモリたちの上にポトリと降りました。
それから、消えずに草地に転がったまま動かないそれらをながめながら、
彼はこう言ったのです。
「ぐすん、やっぱりだ。こいつらは……ただの紙だぞ」
「ホントだぁ~。ユカちゃんの家にあった折り紙に、ちょっと似てル~」
「でも、紙だって? ホントにそう言った?」
フラップとフリーナは、フレディのそばへ駆けつけました。
「ちょっと待ってよ――ぼく、
前にこれと似た術を、どこかで見たことがある」
「ああ、フラップの――ぐすっ……言う通りだよ」
フレディは、ほほを濡らす涙をふいて、こう言いました。
「これは……ドラギィの術だ。
それも、ぼくらのスクールで習うより、ずっと高度なものだよ。
これは……そうだ、『ユニバーシティ』のレベルの術だ。ということは――」
「「あっ!」」
三匹の周囲に転がっていたコウモリたちが、今になってかき消えました。
それから、すぐ近くから伝わってきた強い気配に、
三匹はそれぞれ引きつけられるように顔をむけます。
一本杉のすぐ近くに、羽の生えた一匹の生き物が浮いていました。
神々しいような満月の光を背にして。
コウモリでもなければ、鳥でもありません。
けれど頭には、二本の凛々しい角がありました。立派な雄ジカのような角が。
細長いしっぽの先についているのは毛の房。
全身がつやつやとした毛におおわれた、犬のような、竜のようなもの――。
ドラギィ、でした。
ただし、フラップたちよりも一回り大きくて、成熟したような体型でした。
フラップたちより大きい姿になっているのではありません。
彼こそは、れっきとした大人のドラギィでした。
背中は淡い夜空のような薄紫色で、お腹は若干青みがかった白色。
深い秘密を内側に閉じこめたような黒い瞳でこちらを見下ろし、
ミステリアスな微笑みを浮かべています。
「――先生であるこのわたしの術を、よく破ったね」
月下に現れたドラギィは、言いました。
※一日ずれての大幅遅れの更新となってしまい、申しわけありませんでした!
実は先日から怪我のため入院していた関係で自宅になかなか戻れず、
その他いろいろな都合で更新が遅くなってしまいました。
怪我の方はたいしたことはございませんので、どうぞご心配なく!
今回は大事なかったためほっとしておりますが、
私にとってはちょっと嫌なGWとなってしまいました💦
それでは、今後ともよろしくお願いいたします!
しろこ
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