DRAGGY!ードラギィ!ー【フラップ編(リライト)2/18連載開始!】

Sirocos(シロコス)

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〈フロン編〉

12『飛んで火に入る、夏の……』①

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 光の穴をぬけた先は、太陽のまぶしい場所でした。
草一本生えていない岩場にかこまれた、平らな地面の広がる場所で、
屋根一つない空の上から、容赦のない真夏のような陽光が降り注いでいます。
あとは、べたつくような潮の風が岩場を吹きさらしていくだけ。

 そう、ここは海に囲まれた、何もない小さな小さな無人島なのです。
岩場のすき間から見える、吸いこまれるような青い海。
人の声もなく、カモメの鳴き交わす声もありません。

「うさみ町の雨がウソのような晴れ模様だ。雲一つない」
 フレディが空を見上げながら、ポツリと言いました。

「ここは、そういう場所なんだよ」フラップが答えます。

「アタシとフラップは、前にレン君とここに来たことがあるノ。
ホント、なーんにもない場所なんだから」

 フリーナは、やれやれという具合に肩をすくめ、
ここがいかにつまらない場所なのかを伝えようとしました。

「ただ、ここならぼくの身体もすぐに乾きそう」

 フラップは空中で太陽の光に向かってあお向けになり、
ふわふわと浮かびながら、暑いくらいの日の光を一身に浴びました。

「フラップ、そんなことをしている時間はないぞ。
――さて、ここに黒金魚たちが潜んでいるはずだ。
あたりをくまなく探してみようじゃないか」

 フレディは気を引きしめるよう言いました。

「ただ気をつけてくれ……さっきから嫌な気配がするんだ。
だれかがぼくらを見張っているような、そんな気配が」

「見張ってる? まっさかそんな……フラップ、危なーい!!」

 ぷかぷかしていたフラップのもとへ、フリーナが飛び出します。
すると次の瞬間、オレンジ色の光線がフラップの身体をおそいました。
続いて、それに触れたフリーナも、同じ光をくらいました。
二匹は、強い衝撃が体の中をつらぬいたような感じがして、
くらくらと目を回してしまいます。

「おい、どうしたんだふたりとも!」

 フレディが二匹のもとへ駆けつけますが、時すでに遅し。
三匹の頭上に、どこからともなく黒い球体が飛んでやってきて、
その下から金色の奇妙な光を照射しました。
光は、三匹をたちまちせまい光のケージに閉じこめ、
ピラミッド型の不思議な形へとなしていきます。
黒い球体には、謎めいた猫の耳が生えているのが分かりました。

(こいつは、見覚えがあるぞ!)

 捕らわれの身となったドラギィたちのもとへ、
近くの岩陰から姿を現したのは、フレディが予想した通りの人物たちでした。


「よっしゃー! やったで、ヨシ! ついに作戦大成功や!」

「当然だね。ぼくが考えた作戦なんだから。
……また会えたねぇ、フレドリクサス」



 黒猫のルドルフと、ヨシそのひとでした。
ルドルフは、まんまとドラギィを捕まえた喜びのあまり小躍りし、
ヨシは勝ちほこったような顔でドラギィたちの姿をながめています。
ヨシの手には、何かを操作するための小さなリモコンがありました。

「まさかの三匹一度に捕獲や! こら夢みたいやな!
おまけに、ちょっと見ん間に妙な首輪までつけられて、
まるで飼いならされたペットみたいやな。気の毒やのう!」

「あれはただの首輪じゃない。分かってるだろ」
と、ヨシが警戒をうながしました。

 フレドリクサスは、すぐそばでまだ目を回している二匹を気にとめながら、
真実にたどり着いたような鋭い目をしてたずねました。

「ヨシくん……すべて、キミたちの図り事だったんだな……!」

「さすがだね。話の早いやつは大好きだよ」

 ヨシは、意地の悪い笑みを浮かべたまま、語りました。

「その通り。これはキミたちなんでも調査隊の舞台なんかじゃないんだ。
ぼくがキミたちに勝つっていう、文字通りのなんだよ」

「ぼくが、なんて言い方は水くさいやろ。ぼくらが、やろ?」

 ルドルフはそう言うと、後ろの岩陰にむかって合図を送りました。

「ほら、お前たち出てこいや。せっかくやから、正体見せたれ」

 すると、岩むこうから飛び越してくるように次々と、
あの黒金魚たちが登場してきました。
三匹の黒金魚は、フレドリクサスが見下ろす中、
ルドルフとヨシの前に横一列にならびます。

 さらに、その頭の横からそれぞれ切れ目が走り、
中から猫の手がにょきっと現れました。
猫の手は、それぞれ頭の下のほうをまさぐって、
その側面についたボタンのような何かをポチッと押すようなしぐさをしました。

 ボロボロの黒い尾がゆらめく不気味な金魚の形は、
一瞬にして影も形もなくはぎ取られました。
黒金魚の頭部にあたる部分から出てきたのは、
おもちゃみたいな小型の空中バイクに乗った、三匹の小さな猫たちでした。
黒金魚に化けていた意地の悪そうな猫たちは、
見事してやったりといった様子で、ドラギィたちの姿を見上げています。

「前回は、強引なやり方をしてしまったから、うまくいかなかったけれど」

 ヨシは語りました。

「今回は練りに練った、ドラギィおびき寄せ作戦。
まず町の中に、黒金魚に化けたゴマ(ルドルフ)の部下たちをウロチョロさせた。
その時間を夕方限定にしたのは、怪しさを強調するためさ。
そうすれば、いずれ町中で有名な怪奇現象として話題になって、
なんでも調査隊の耳にも入る……キミたちをここへおびきよせることができる」

「まあ、ちょいと有名になりすぎてしもたさかい」ルドルフが続きました。
「今日あたりでこの作戦もしまいにしとこ思うとったんや。
そこへきて、うさみ町がどしゃぶりの雨。
こら、出てきてもせいぜいフレドリクサス、お前しかおらんとふんどったのに、
まさか三匹仲ようやってくるとは、夢にも思わんかったで!」

「じゃあ……」フレドリクサスは口をわなわなさせながら聞きました。
「昨晩、レンくんに電話をかけて、わざと彼を怒らせ、
ぼくらを置き去りにするようにしむけたのも、
キミの言う作戦のうちなのか?」

「はぁ? 何のことだか」ヨシは、面白おかしそうに笑いました。
「見たとこ、今日は坂本君たちがついていないようだけど、
坂本君と何かあったのかな?」

「……別れたんだよ、つい昨日の晩。
ぼくらは、別々になった方がいいからって」

「なんやそれは! ケンカでもしてもうたんか」
 ルドルフは話がまったく見えなくて、あてずっぽうな聞き方をします。

「そういうわけじゃないさ! ただ、ただ……ぐすん」

「泣くことないじゃないか、フレドリクサス」

 これはいい機会だとばかりに、ヨシがにんまりしながら語りかけてきました。

「むしろ、ほっとしてるんだろ?
坂本君といっしょにいたら、ずっと迷惑をかけることになるから。
彼だって、そろそろキミたちのことを厄介者やっかいものに思いはじめていたから、
楽になりたくて、キミたちを家から追い出したんだと思うな、ぼくは。
まったく、薄情なやつだよ、あいつは。
でも、ぼくはキミたちを追いだしたりしないよ。ずっと愛してみせるさ。
ただ、そのためにも一つ教えてほしいんだ――」

 ヨシは一歩前に進み出ると、
打って変わってこちらを射すくめるような表情になり、こうたずねました。

「あの日、キミを閉じこめていたあの鳥かごから、
ものの見事にぬけ出してくれた、そのカラクリについてだよ。
いったいどうやってぬけ出したのかな? それとも、
だれかが鍵を開けてキミを助け出したのかな?
キミたちのバックにいる協力者しわざかもしれないな。
ぼくらはもう知ってるんだ。キミたちには、こいつと同じく、
普通では考えられないような天才発明家がついているのを。さあ、答えろよ」

 天才発明家というのは、もしかするとフレデリック博士のことなのか――
フレディは涙をぐっとこらえながら、思いをめぐらせました。

(彼じゃない。あの日、ぼくを鳥かごから出してくれたのは、だ。
ぼくらが昔からよく知っていて、とっても慕っている……。
先生は、どんなに難しい術も使いこなせる。
ぼくをあの鳥かごから出す事だって、造作もないことだったんだ。
ぼくは、あの日の先生のご厚意を、けっしてムダにしたくない)

「い、いやだ!」フレドリクサスはきっぱり返しました。
「キミには教えない。絶対に教えてやるもんか!」


「そう、その意気だよフレディ」


 いつの間にか、正気を取り戻したフラップが、
ゆっくりとフレディの横について言いました。

「ぼくたちは、何者にだって負けないドラギィなんだから。
立ちむかうのに必要なのは、勇気だけ。涙なんて、流すことないんだ」

「アタシたち、三匹そろえばムテキだもんネ!」

 フリーナもそばについて、励ますようにそう言いました。

「よかったぁ。ふたりとも、気がついたのか……ぐすっ」

「あのネ、アタシいいこと思いついちゃったんだ。
ふたりとも、ちょっと耳貸して」

「なんだよ、こんな時に、ぐすっ。
言いたくはないがね、今ぼくらは……その、ぐすん、ピンチなんだぞ?」

「いいから、いいから~。ほら、お耳、お耳……。
ハッタリになっちゃうかもだけど、ゴニョゴニョゴニョ……」

 フリーナの思いもよらない作戦に、
フラップとフレディは驚きを隠せませんでした。

「おいおい、キミの頭のどこからだ。そんな名案が飛び出すのは」

「でも、まさかこんなふうに役立てるとは、考えてもみなかったよ」

「ふたりとも、イゾンはなしってことでいいネ。じゃあ、アタシの言った通りに」

 三匹は、ピラミッドの檻の下をまっすぐにのぞみました。
何も知らずにこちらを見上げているヨシとくろさまの目が、
なんだか不思議と小さく見えてくるようでした。

「あのぉ」片手を上げて開口したのは、フラップでした。

「あなたはたしか、ヨシくんって言いましたよね?」

「……そうだけど?」

「ぼくはね、あ、たぶんフリーナもですけど、あなたに、
よくも親友をひどい目にあわせたなって、言いたいんです」

 フリーナが、うんうんと二度うなずきました。

「言っておきますけど、ぼくたちは捕まりませんよ。
じつはぼくたち、まだあなたたちの知らない能力があるんです。
瞬間移動できるんですよ。この檻の中から、まったく違う場所に。
今からみんなでお見せしますから、ようく見ていてくださいね。
……じゃあいくよ、いち、にの、さん!」


 フラップたちは、首に着けたチョーカーのスイッチを、ほぼ同時に押しました。
三匹の姿が、透明マントをかぶったようにたちまち消えてなくなり、
ピラミッドの檻の中からこつ然といなくなってしまったのです。
 
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