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緑の指を持つ娘 温泉湯けむり編
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「え、温泉旅行?ですか、ナーランダ様」
ベスの家のヒノキ風呂でひと風呂浴びてきたナーランダは、実に気持ちよさそうに絹の湯上がり用の衣装を纏って、ベスの出してくれたオレンジの果汁入りのミルクを飲んでいた。
「ああベス。本当に、君のお風呂は麻薬的だよ。昨日も入りにきたのに、また今日も入りにきてしまった」
ナーランダは少し恥ずかしそうに頬を染めた。
エロイースと違って、ナーランダには遠慮も常識も節度も備わっている。
だと言うのに、どうしてもベスの風呂の魅力に抗えずに、こうして足し繁く二人の家に通って風呂に入らせてもらっているのだ。
ナーランダも自宅にヒノキでできた風呂桶を導入してみたのだが、どうしてもベスの風呂ほど魅力的な風呂に、仕上がらないのだ。
風呂だけではなく、風呂の後にいつも丁度いい温度の、丁度その時飲みたかった飲み物をベスが出してくれるのがまたとても良い。
昨日ベスが出してくれたのは強い炭酸にしょうがのシロップを入れた飲み物で、その前は冷たいミント水。
ベスは魔法も使えないが、人の心と体に必要な小さなものを感じ取るのが得意だ。
ぷはー、とかなり貴人の行儀に反した音を立てて、ナーランダは満足そうに牛乳を飲み終えた。
「温泉旅行ではないよ。ベス。温泉のある国へ仕事に行くんだ。私はユージニア女王の名代で、隣国の王族との親睦の親善大使を仰せ使っているのだよ。先ほど正式に隣国への滞在が決定したのだけれども、ノエル様も連れて欲しいと、ユージニア様のご希望でね。君もよかったら一緒に来ないか?」
ナーランダは、末席ではあるが王族に籍を置いている。王族との親睦には、王族である必要がある。
ナーランダがいかに研究に没頭していたくとも、王族としての最低限の義務はやはり、発生する。
今回はそれだ。
「ノエル様も行くんですか?」
ノエルは同じく風呂上がりで、のんびりと、外の窓際のデッキに備え付けたブランコに体を投げて、こちらは冷たい白ワインを楽しんでいた。
ベスのおかげですっかり風呂にはまってしまったノエルは、風呂上がりに良い風を楽しみたいと、外のデッキ部分にわざわざ竹で編まれた、ブランコを設置したのだ。
おかげで風呂上がりには、デッキに出て、ブランコをゆらゆらとさせながら、外で最高に心地の良い魔術院の林からの緑の香りのする風に吹かれる。
デッキのブランコの足元にはベスの村から持ってきた、青竹を半分に割った足置きが置いてあり、座るのに飽きると良い香りのする青竹の上で足踏みしながらブランコを揺すったりできるのが、また心地よい。
ちなみにこの青竹は、ベスが田舎で暮らしていた頃から使っていた古いものだ。
つくりこそ贅沢なものの、内装は特に華やかなものに囲まれているわけでもないはずのこの館は、ベスの手によりこの国の貴人達にとってこの上もなく居心地の良いオアシスのような場所となっている。
ノエルは、ノエルを探しにトタトタと外のデッキまでやってきたベスをひょいと捕まえて、額に口づけを落とすと、膝の上に乗せて言った。
「ああ、ナーランダの親善大使についていくのは本当の事なんだけれど、先方は実は主に俺に用があるんだ。先方の王族に、病気の方がいてね」
「ご病気?あちらの国にもお医者様はおいででしょう?」
ベスは大人しくブランコに揺られながらキョトンとする。
ノエルは確かに治療魔法とポーションの作成においてはこの国で右に出るものはいないが、医師ではない。
「病気と言っても、いわゆる皮膚疾患で、命には別状はない。ただ、皮膚が爛れて実に痒くて、そして見目が良くない事から引きこもっておられる。どうやら魔力の生成器官に原因がある様子なんだが、原因がきちんとわからないから、対症療法ばかりで困っているとか」
「へえ、お気の毒ですね、私も一度体が痒くなる木を触ってしまって大変な目に遭いましたよ」
ベスはプルプルと頭を振って、その時の嫌な体験を思い出す。
洗っても洗っても痒さがとれず、結局おじいちゃんに街まで連れて行ってもらって湿布薬を貼ってなんとか治まったのだ。
「王族を診断できる立場の人間は限られているからね。あちらの国では外見の美というものの重さが相当重いらしく、お立場もあるので国内にあまり知られてくないとの事なんだ。そういう訳でこの国の王族のポーションを一手に引き受けているノエル様にお忍びで診察をしてもらって意見を求めたいとの事なんだよ」
確かに、親善大使のお付きの治癒魔術師が、親善のついでにその国の貴人に対して医療行為を行うのは、政治的にも大袈裟にならなくて良い方法だ。
「ええ、そうなんですね・・?」
どうも納得していない顔のベスを、ノエルは笑ってそして、愛おしそうに大事にその腕に抱え込むと、
「ベス、隣国には温泉があるんだ。一度お前を連れて行ってやりたいと思っていたんだが、国境を超えて隣国に行くには、かなりの手続きが必要だろう? ナーランダがベスを俺の助手として登録しても良いと許可を出してくれたんだ。どうだ、ベス。一緒に温泉に行かないか?」
偉そうにドヤ顔をするノエルは、目尻にたくさんシワを作って、ベスの一番大好きなクシャクシャの笑顔を見せてくれた。
怜悧な美貌で知られているノエルだが、このクシャクシャになったノエルの顔が一番美しいと、そう思う。
「ええ!!温泉って、地面からお湯が沸いてくるあれですよねノエル様!行きたいです!なんて素敵!ノエル様大好き!ナーランダ様ありがとう!」
友好国とはいえ、隣国との国境は厳しく管理されている。
手続きを踏めば観光旅行もいけない事はないのだが、手続きがややこしい上に許可が出るのに数年まちもザラなのだ。
ベスは筋金入りの田舎娘で、旅行などに行った事はない。よしよしとベスの頭を撫でてて、こちらは学会で何度も隣国に逗留した事のあるノエルは教えてやった。
「ベス、温泉も素晴らしいが、温泉町は本当に楽しいぞ、美味いものもたくさんある。くだらない土産屋を回るのも、ベスと一緒なら楽しいだろうな」
ベスは目をキラキラさせて大喜びだ。
「ノエル様、早くお仕事終わらせて、私と一緒に遊んでくださね!楽しみだわ!」
ベスの家のヒノキ風呂でひと風呂浴びてきたナーランダは、実に気持ちよさそうに絹の湯上がり用の衣装を纏って、ベスの出してくれたオレンジの果汁入りのミルクを飲んでいた。
「ああベス。本当に、君のお風呂は麻薬的だよ。昨日も入りにきたのに、また今日も入りにきてしまった」
ナーランダは少し恥ずかしそうに頬を染めた。
エロイースと違って、ナーランダには遠慮も常識も節度も備わっている。
だと言うのに、どうしてもベスの風呂の魅力に抗えずに、こうして足し繁く二人の家に通って風呂に入らせてもらっているのだ。
ナーランダも自宅にヒノキでできた風呂桶を導入してみたのだが、どうしてもベスの風呂ほど魅力的な風呂に、仕上がらないのだ。
風呂だけではなく、風呂の後にいつも丁度いい温度の、丁度その時飲みたかった飲み物をベスが出してくれるのがまたとても良い。
昨日ベスが出してくれたのは強い炭酸にしょうがのシロップを入れた飲み物で、その前は冷たいミント水。
ベスは魔法も使えないが、人の心と体に必要な小さなものを感じ取るのが得意だ。
ぷはー、とかなり貴人の行儀に反した音を立てて、ナーランダは満足そうに牛乳を飲み終えた。
「温泉旅行ではないよ。ベス。温泉のある国へ仕事に行くんだ。私はユージニア女王の名代で、隣国の王族との親睦の親善大使を仰せ使っているのだよ。先ほど正式に隣国への滞在が決定したのだけれども、ノエル様も連れて欲しいと、ユージニア様のご希望でね。君もよかったら一緒に来ないか?」
ナーランダは、末席ではあるが王族に籍を置いている。王族との親睦には、王族である必要がある。
ナーランダがいかに研究に没頭していたくとも、王族としての最低限の義務はやはり、発生する。
今回はそれだ。
「ノエル様も行くんですか?」
ノエルは同じく風呂上がりで、のんびりと、外の窓際のデッキに備え付けたブランコに体を投げて、こちらは冷たい白ワインを楽しんでいた。
ベスのおかげですっかり風呂にはまってしまったノエルは、風呂上がりに良い風を楽しみたいと、外のデッキ部分にわざわざ竹で編まれた、ブランコを設置したのだ。
おかげで風呂上がりには、デッキに出て、ブランコをゆらゆらとさせながら、外で最高に心地の良い魔術院の林からの緑の香りのする風に吹かれる。
デッキのブランコの足元にはベスの村から持ってきた、青竹を半分に割った足置きが置いてあり、座るのに飽きると良い香りのする青竹の上で足踏みしながらブランコを揺すったりできるのが、また心地よい。
ちなみにこの青竹は、ベスが田舎で暮らしていた頃から使っていた古いものだ。
つくりこそ贅沢なものの、内装は特に華やかなものに囲まれているわけでもないはずのこの館は、ベスの手によりこの国の貴人達にとってこの上もなく居心地の良いオアシスのような場所となっている。
ノエルは、ノエルを探しにトタトタと外のデッキまでやってきたベスをひょいと捕まえて、額に口づけを落とすと、膝の上に乗せて言った。
「ああ、ナーランダの親善大使についていくのは本当の事なんだけれど、先方は実は主に俺に用があるんだ。先方の王族に、病気の方がいてね」
「ご病気?あちらの国にもお医者様はおいででしょう?」
ベスは大人しくブランコに揺られながらキョトンとする。
ノエルは確かに治療魔法とポーションの作成においてはこの国で右に出るものはいないが、医師ではない。
「病気と言っても、いわゆる皮膚疾患で、命には別状はない。ただ、皮膚が爛れて実に痒くて、そして見目が良くない事から引きこもっておられる。どうやら魔力の生成器官に原因がある様子なんだが、原因がきちんとわからないから、対症療法ばかりで困っているとか」
「へえ、お気の毒ですね、私も一度体が痒くなる木を触ってしまって大変な目に遭いましたよ」
ベスはプルプルと頭を振って、その時の嫌な体験を思い出す。
洗っても洗っても痒さがとれず、結局おじいちゃんに街まで連れて行ってもらって湿布薬を貼ってなんとか治まったのだ。
「王族を診断できる立場の人間は限られているからね。あちらの国では外見の美というものの重さが相当重いらしく、お立場もあるので国内にあまり知られてくないとの事なんだ。そういう訳でこの国の王族のポーションを一手に引き受けているノエル様にお忍びで診察をしてもらって意見を求めたいとの事なんだよ」
確かに、親善大使のお付きの治癒魔術師が、親善のついでにその国の貴人に対して医療行為を行うのは、政治的にも大袈裟にならなくて良い方法だ。
「ええ、そうなんですね・・?」
どうも納得していない顔のベスを、ノエルは笑ってそして、愛おしそうに大事にその腕に抱え込むと、
「ベス、隣国には温泉があるんだ。一度お前を連れて行ってやりたいと思っていたんだが、国境を超えて隣国に行くには、かなりの手続きが必要だろう? ナーランダがベスを俺の助手として登録しても良いと許可を出してくれたんだ。どうだ、ベス。一緒に温泉に行かないか?」
偉そうにドヤ顔をするノエルは、目尻にたくさんシワを作って、ベスの一番大好きなクシャクシャの笑顔を見せてくれた。
怜悧な美貌で知られているノエルだが、このクシャクシャになったノエルの顔が一番美しいと、そう思う。
「ええ!!温泉って、地面からお湯が沸いてくるあれですよねノエル様!行きたいです!なんて素敵!ノエル様大好き!ナーランダ様ありがとう!」
友好国とはいえ、隣国との国境は厳しく管理されている。
手続きを踏めば観光旅行もいけない事はないのだが、手続きがややこしい上に許可が出るのに数年まちもザラなのだ。
ベスは筋金入りの田舎娘で、旅行などに行った事はない。よしよしとベスの頭を撫でてて、こちらは学会で何度も隣国に逗留した事のあるノエルは教えてやった。
「ベス、温泉も素晴らしいが、温泉町は本当に楽しいぞ、美味いものもたくさんある。くだらない土産屋を回るのも、ベスと一緒なら楽しいだろうな」
ベスは目をキラキラさせて大喜びだ。
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