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緑の指を持つ娘 温泉湯けむり編
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ノエルが魔術で転移させた鉢植えの状態が気になって、ベスは次の日は朝早くからソワソワと落ち着きがない。
結局苦笑いのノエルに、随分朝早くだと言うのに、温室に連れて行ってもらう事にした。
宿から離宮は歩いてほんの少しなのだ。
「ほら、あれだよベス」
「まあノエル様、随分大きな温室なのですね!」
ベスはノエルが指差した方向を見た。
宿から離宮につながる一本道に入ったらすぐに、大きなガラス張りの建物が、離宮に隣接されているのが見えたのだ。
温室の形は、随分と魔術院のものと様子が違う。
ちょっとした教会くらいはある大きな建物で、温室にしては随分背の高い建築だ。
おそらく背が高い木を植えていたためなのだろう。
ノエルが魔術で鍵を開けると、温室の扉は、大きな錆びた音を立てて開いた。
しばらくは誰も使っていないのだろう。温室の中からは換気されていない空気の土っぽい香りがした。
温室の内部に入る。内部は相当広い。
赤茶けた土と、昔使われていたのだろう庭仕事の道具があちこちに散乱している。
どの道具も最高級のものばかりだ。枯れて捨て置かれている草は、薬草ばかりだ。
ここは王家の療養所の、薬草園として機能していたのだろう。
赤茶けた土の上に転移魔法の印石が置かれてあり、丁寧にひかれた転移魔法陣の内側には、夥しい数のベスの集めた植木鉢が、一つの欠けもなく、所狭しと並んでいた。
どうやらノエルの転移魔法はうまく作動したらしい。
(どの子も、元気だわ)
ベスは一つ一つの鉢を確認して、安堵した。
午後にはノエルのポーション作りに必要な薬草の苗や、種が届くという。
植物の世話に必要そうな道具やら肥料やらは一通り苗と一緒に色々注文してくれたので、ベスの仕事は午後から本格的に始まりそうだ。
正直ベスは森の散策ばかりで少々退屈していたので、仕事が与えられて嬉しい。
「離宮での仕事が終わったら、すぐに迎えに来るから。しばらくここで一人で仕事をしていて大丈夫か?」
「たくさん仕事がありそうですので頑張りますね!この温室であれば、この子たちみんな素晴らしい状態で育つと思いますから!」
「そうか。我が婚約者殿は実に頼もしいな。それでは俺は庭師の見習いになったつもりで、ベスの手伝いに専念するかな」
そう言って、ここの所すっかり過保護気味のノエルは、温室の温度を丁寧に魔術で調節しながら、天窓を魔術で開けたり、洗浄魔法をガラスにかけたりして、ベスの仕事がしやすいように場所を整えてやる。
ベスが仕事の途中で休めるように注文した、座り心地の良い椅子やら、宿から持ってきた膝掛けやら、本やらを次々に温室に魔術で運び込んで、一通り満足すると、ノエルは名残惜しそうに離宮へと去っていった。
鉢植えのほとんどは、森でベスが見つけてきた、多種多様な火山性の植物だ。
この近隣の人々にとっては当たり前に目にしている、いわば雑草の類いだが、ベスにとっては初めてみる気性の持ち主の植物ばかりで、ワクワクする。
ノエルを送ったベスは、宿の部屋からようやく良い環境に移してもらえた安心で、深く呼吸をしている鉢植えの一つ一つにゆっくりと語りかけながら、世話を始めた。
(まあ、あなたは熱いところでは、一緒に体を熱くする葉を持っているのね。あら、あなたは蒸気から、蒸気の中に含まれる栄養を摂るのね、なんて素晴らしい)
特にベスが気になって観察していたのは、黄色いサボテンのような小さな多肉植物だ。
宿の女将さんによると、温泉の源泉の真横によく生えているサボテンの仲間らしい。
このあたりでは珍しくもなく、植物には名前すらついていない。
(こんにちわ。私はベス。あなたは一体誰なの?)
名前すらないこの植物にベスはゆっくりと語りかけ、声なき植物の声に、ベスはじっと耳を傾ける。
何せ、時間はたっぷりあるのだ。
とても天気が良い。
今日のような静かな日は、ノエルが迎えに来るまでじっとこの植物の声を聞いて、温室を整えてみよう。
(今日からここでよろしくね、みんな)
たくさんの鉢植えたちは、嬉しそうにさざめいた。
これからベスの手によって、どれほど心地の良い空間が与えられるのか、まるで知っているかのように。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「フェリクス様。これが雷石です。この石が雷で満たされるまで、小型の雷を落とします」
離宮の内部では、フェリクスの魔術の鍛錬も始まっていた。
制御の難しい雷の魔力で、しかもフェリクスほどの魔力量の制御を訓練するのは並大抵ではない。
盲目の魔術師はラッカという名で、昨日王都から到着したばかりだ。
ラッカは、離宮に火山の麓によく落ちている雷石という石を大量に持ってきていた。
火山の噴火の際に内部から噴き上がってくる特別の石だ。
この石は、雷の魔力を空っぽの石の内部に貯めることができる。
だが魔石と違って放出はできないので、何の役に立たないクズ石だ。
フェリクスは一日中ラッカの指導をうけてこの雷石に小さな雷を落とすも、魔力の調節がうまくいかず大きすぎた雷は石を破壊し、小さすぎる雷はフェリクスの指から魔力として放出されずに指の内部を焼く。
焼かれた指はすぐにノエルにより治癒魔法が施され、フェリクスはまた雷石に立ち向かう。
永遠に続く地獄の拷問にいるような気分だ。
「ぐわあああ!!!!」
激しい痛みに耐えかねて悶絶するフェリクスに、ノエルは即座に治療魔法を施す。
(痛ましい)
ノエルは目の前で悶絶する哀れな男から、目を背けたくなる。
だが、フェリクスの治療法はこれしかない。
「まだ1日1個が限度ですな」
ラッカは白く濁った目を空に彷徨わせ、雷石の表面の手触りを確認して、言った。
「1日7個は私の魔力の限界です。フェリクス様の魔力量であれば45個ほどは放出が必要かと」
ラッカの提案により、雷石に1日に生成した魔力を全て放出させて、これ以上古い魔力が体に蓄積しないようにしているのと同時に、魔力の制御の訓練も行なっているのだ。
鍛錬が始まって一刻もするとフェリクスの体から汗が吹き出し、汗に反応した皮膚が熱を持つ。
痒みに耐えかねて、フェリクスは黒い薬湯へ走り、入浴を行い、嫌な香りのする貴重な軟膏を体に塗りつける。
ボロボロの皮膚からはジュクジュクとした体液が滲み出して、赤く黄色く腫れ上がる。
包帯を巻く。雷を錬成する。指を焼き、石を破壊し、フェリクスの皮膚は荒ぶる。
フェリクスの1日の皮膚の状態を観察して、ノエルが次の日のポーションの配合を決定する。
フェリクスにとって、地獄のような日々が、ひと月ほど続いていた。
結局苦笑いのノエルに、随分朝早くだと言うのに、温室に連れて行ってもらう事にした。
宿から離宮は歩いてほんの少しなのだ。
「ほら、あれだよベス」
「まあノエル様、随分大きな温室なのですね!」
ベスはノエルが指差した方向を見た。
宿から離宮につながる一本道に入ったらすぐに、大きなガラス張りの建物が、離宮に隣接されているのが見えたのだ。
温室の形は、随分と魔術院のものと様子が違う。
ちょっとした教会くらいはある大きな建物で、温室にしては随分背の高い建築だ。
おそらく背が高い木を植えていたためなのだろう。
ノエルが魔術で鍵を開けると、温室の扉は、大きな錆びた音を立てて開いた。
しばらくは誰も使っていないのだろう。温室の中からは換気されていない空気の土っぽい香りがした。
温室の内部に入る。内部は相当広い。
赤茶けた土と、昔使われていたのだろう庭仕事の道具があちこちに散乱している。
どの道具も最高級のものばかりだ。枯れて捨て置かれている草は、薬草ばかりだ。
ここは王家の療養所の、薬草園として機能していたのだろう。
赤茶けた土の上に転移魔法の印石が置かれてあり、丁寧にひかれた転移魔法陣の内側には、夥しい数のベスの集めた植木鉢が、一つの欠けもなく、所狭しと並んでいた。
どうやらノエルの転移魔法はうまく作動したらしい。
(どの子も、元気だわ)
ベスは一つ一つの鉢を確認して、安堵した。
午後にはノエルのポーション作りに必要な薬草の苗や、種が届くという。
植物の世話に必要そうな道具やら肥料やらは一通り苗と一緒に色々注文してくれたので、ベスの仕事は午後から本格的に始まりそうだ。
正直ベスは森の散策ばかりで少々退屈していたので、仕事が与えられて嬉しい。
「離宮での仕事が終わったら、すぐに迎えに来るから。しばらくここで一人で仕事をしていて大丈夫か?」
「たくさん仕事がありそうですので頑張りますね!この温室であれば、この子たちみんな素晴らしい状態で育つと思いますから!」
「そうか。我が婚約者殿は実に頼もしいな。それでは俺は庭師の見習いになったつもりで、ベスの手伝いに専念するかな」
そう言って、ここの所すっかり過保護気味のノエルは、温室の温度を丁寧に魔術で調節しながら、天窓を魔術で開けたり、洗浄魔法をガラスにかけたりして、ベスの仕事がしやすいように場所を整えてやる。
ベスが仕事の途中で休めるように注文した、座り心地の良い椅子やら、宿から持ってきた膝掛けやら、本やらを次々に温室に魔術で運び込んで、一通り満足すると、ノエルは名残惜しそうに離宮へと去っていった。
鉢植えのほとんどは、森でベスが見つけてきた、多種多様な火山性の植物だ。
この近隣の人々にとっては当たり前に目にしている、いわば雑草の類いだが、ベスにとっては初めてみる気性の持ち主の植物ばかりで、ワクワクする。
ノエルを送ったベスは、宿の部屋からようやく良い環境に移してもらえた安心で、深く呼吸をしている鉢植えの一つ一つにゆっくりと語りかけながら、世話を始めた。
(まあ、あなたは熱いところでは、一緒に体を熱くする葉を持っているのね。あら、あなたは蒸気から、蒸気の中に含まれる栄養を摂るのね、なんて素晴らしい)
特にベスが気になって観察していたのは、黄色いサボテンのような小さな多肉植物だ。
宿の女将さんによると、温泉の源泉の真横によく生えているサボテンの仲間らしい。
このあたりでは珍しくもなく、植物には名前すらついていない。
(こんにちわ。私はベス。あなたは一体誰なの?)
名前すらないこの植物にベスはゆっくりと語りかけ、声なき植物の声に、ベスはじっと耳を傾ける。
何せ、時間はたっぷりあるのだ。
とても天気が良い。
今日のような静かな日は、ノエルが迎えに来るまでじっとこの植物の声を聞いて、温室を整えてみよう。
(今日からここでよろしくね、みんな)
たくさんの鉢植えたちは、嬉しそうにさざめいた。
これからベスの手によって、どれほど心地の良い空間が与えられるのか、まるで知っているかのように。
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「フェリクス様。これが雷石です。この石が雷で満たされるまで、小型の雷を落とします」
離宮の内部では、フェリクスの魔術の鍛錬も始まっていた。
制御の難しい雷の魔力で、しかもフェリクスほどの魔力量の制御を訓練するのは並大抵ではない。
盲目の魔術師はラッカという名で、昨日王都から到着したばかりだ。
ラッカは、離宮に火山の麓によく落ちている雷石という石を大量に持ってきていた。
火山の噴火の際に内部から噴き上がってくる特別の石だ。
この石は、雷の魔力を空っぽの石の内部に貯めることができる。
だが魔石と違って放出はできないので、何の役に立たないクズ石だ。
フェリクスは一日中ラッカの指導をうけてこの雷石に小さな雷を落とすも、魔力の調節がうまくいかず大きすぎた雷は石を破壊し、小さすぎる雷はフェリクスの指から魔力として放出されずに指の内部を焼く。
焼かれた指はすぐにノエルにより治癒魔法が施され、フェリクスはまた雷石に立ち向かう。
永遠に続く地獄の拷問にいるような気分だ。
「ぐわあああ!!!!」
激しい痛みに耐えかねて悶絶するフェリクスに、ノエルは即座に治療魔法を施す。
(痛ましい)
ノエルは目の前で悶絶する哀れな男から、目を背けたくなる。
だが、フェリクスの治療法はこれしかない。
「まだ1日1個が限度ですな」
ラッカは白く濁った目を空に彷徨わせ、雷石の表面の手触りを確認して、言った。
「1日7個は私の魔力の限界です。フェリクス様の魔力量であれば45個ほどは放出が必要かと」
ラッカの提案により、雷石に1日に生成した魔力を全て放出させて、これ以上古い魔力が体に蓄積しないようにしているのと同時に、魔力の制御の訓練も行なっているのだ。
鍛錬が始まって一刻もするとフェリクスの体から汗が吹き出し、汗に反応した皮膚が熱を持つ。
痒みに耐えかねて、フェリクスは黒い薬湯へ走り、入浴を行い、嫌な香りのする貴重な軟膏を体に塗りつける。
ボロボロの皮膚からはジュクジュクとした体液が滲み出して、赤く黄色く腫れ上がる。
包帯を巻く。雷を錬成する。指を焼き、石を破壊し、フェリクスの皮膚は荒ぶる。
フェリクスの1日の皮膚の状態を観察して、ノエルが次の日のポーションの配合を決定する。
フェリクスにとって、地獄のような日々が、ひと月ほど続いていた。
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