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緑の指を持つ娘 温泉湯けむり編
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「ベス!お前に素晴らしい温室を見つけた。ここの鉢植えを全部温室に持っていっていいぞ!」
宿の玄関に出迎えてくれたベスを抱きしめて抱えると、宙にくるくると掲げて、回してはしゃぐノエル。
もうこの宿ではノエルの誰憚る事のない溺愛風景は有名で、今や誰も気にも留めない。
「きゃー! ノエル様本当?? ノエル様大好き!!どんな温室なんですか?」
この国の名物である繊細な作りの宝石を与えても、エロイースと揃いで仕立てた美しいドレスを与えても、ベスからは大した反応を得る事ができなかったというのに、ベスは温室と聞いて大喜びだ。
「ああ、魔術院の温室より随分天井が高くて、随分旧式の作りだが王宮式の良い作りだ。内部には魔術を施しても良いと許可を得ている。早速明日にでも見に行こう」
ベスを喜ばせて、大好きと言ってもらえる事に成功したノエルは、嬉しくなってしまってニヤニヤが止まらない。
「ベス、頼みがある。その温室で王太子のためにポーションの材料になる薬草を育ててほしいんだ。育成が難しい薬草でもないが、結構な量が必要になるんだ。必要な薬草を育てさえすれば、空いている場所は自由にしていいと許可を得た。だいぶ予定していた滞在期間よりここでの仕事が長くなるから、そのくらいはわがままを許して頂いても構わないだろう?」
「もちろんです。まあ、それではこの子たちは離宮の温室で育てていいのですね。楽しみだわ。王宮式の温室で育つと、植物はなんだか上品に育つ気がしますね!」
王宮式は、王族の直轄の温室でしか使われない格式の高い温室建築だ。
植物の育ちに、品がいいも悪いもないのだろうが、ベスの目で見える世界の世界観はノエルの心をいつもほんのり温めてくれる。
部屋に帰ると、ノエルは早速鉢植えを温室に移動させるための大きな転移陣を敷いた。
ベスは森をほっつき歩いている間に森の植物を集めに集め、その数は有に200は超えるだろう。それらを全て転移陣の上に配置するだけでも相当の手間だった。
人力でこの全部の鉢を温室に持っていくのは面倒だからと、高位魔術師の中でも相当の魔力を誇る魔術師でないと展開できない転移魔法を駆使して、横着を極めるのがベスと出会ってからのノエルだ。
そんな新しい自分が、ノエルは気に入っていたりも、する。
「少し下がっていてくれ、一気に運ぶ」
穏やかに笑っていたノエルの顔だが、魔術の発動となるとその優しい笑顔から急に真剣なものに変わり、ベスの心を一瞬で奪ってゆく。
怜悧な美貌で知られるノエルだ。
その銀の髪が魔力を帯びて宙を踊り、その濃紺の瞳の冷たい、真剣な眼差しは、銀の彫刻のごとく実に美しい。
そして魔力を発動させてノエルの全身が銀色に美しく輝く姿は、何度見ても、ベスを一人の恋する乙女に変えてしまう。
(いつ見ても、なんて美しいのかしら。まるでノエル様は月の妖精のよう)
折角だからそれを言葉にしてノエルに伝えてやれば、このどうしようもない男は有頂天に喜ぶというのに、言葉が少ないのがベスの長所で、そして短所だ。
大量の鉢植えを一気に運びおえたノエルは、ベスが己に見惚れていた事にも気づかずに、ベスの方を向いて、くしゃっとした笑顔を向けた。ベスの、一番好きなノエルの顔だ。
「さあ、全部終わった。明日からは一緒に離宮に行こう。俺が離宮で仕事をしている間なら、ベスが温室で作業をしてもいいと王太子の仰せなんだ」
「ではノエル様とこれからずっと一緒にいられるのですね。嬉しいな」
心から嬉しそうな地味な笑顔に、ノエルは床にばったりと倒れ込んで悶絶してしまう。
ベスは心で思った本当の事を、必要なだけしか口にしない。
そんなベスが、ノエルと共にいられる事を嬉しそうに笑顔で呟くのだ。
(てっきり、俺なんかいなくても一人で楽しく森で遊んでいるのかと思った)
ノエルには、マイペースで無口なベスが、時折不意打ちのように見せる愛情表現が本当に可愛いのだ。
床でベスの可愛らしさに悶絶しているノエルだが、ベスはノエルが魔力を使って疲れて、床に倒れ込んでいると勘違いしたらしい。
「ああノエル様、お疲れ様でした。お風呂今からすぐ用意しますからそこでそのまま待っててくださいね」
ベスはふわりと床に倒れ込んでいるノエルの体に掛物をかけて、そしてノエルのためにお風呂を用意しに、立ち去った。
今日は湯舟にモモの葉と、塩を入れてみるとかいっていた。
遠くから、うっすらと桃の甘くて上品な香りがする。
(ベスの風呂。それから、ベスの作ってくれる空間。ベス)
ノエルは、心地よい空間に身も心も包まれる多幸感で胸がいっぱいになって、酔っ払ったように何も考えられない。
明日からはその上、ベスが温室を世話してくれるのだ。ベスの温室を心に思い浮かべるだけで、体の全てが清浄な力で満たされていくような気分になる。
あの温室。この風呂。ベス。
かつて、この世の全てを呪っていたノエルは、今、己の幸運さに身悶えして、田舎の宿の床から立ち上がることも出来やしなかった。
宿の玄関に出迎えてくれたベスを抱きしめて抱えると、宙にくるくると掲げて、回してはしゃぐノエル。
もうこの宿ではノエルの誰憚る事のない溺愛風景は有名で、今や誰も気にも留めない。
「きゃー! ノエル様本当?? ノエル様大好き!!どんな温室なんですか?」
この国の名物である繊細な作りの宝石を与えても、エロイースと揃いで仕立てた美しいドレスを与えても、ベスからは大した反応を得る事ができなかったというのに、ベスは温室と聞いて大喜びだ。
「ああ、魔術院の温室より随分天井が高くて、随分旧式の作りだが王宮式の良い作りだ。内部には魔術を施しても良いと許可を得ている。早速明日にでも見に行こう」
ベスを喜ばせて、大好きと言ってもらえる事に成功したノエルは、嬉しくなってしまってニヤニヤが止まらない。
「ベス、頼みがある。その温室で王太子のためにポーションの材料になる薬草を育ててほしいんだ。育成が難しい薬草でもないが、結構な量が必要になるんだ。必要な薬草を育てさえすれば、空いている場所は自由にしていいと許可を得た。だいぶ予定していた滞在期間よりここでの仕事が長くなるから、そのくらいはわがままを許して頂いても構わないだろう?」
「もちろんです。まあ、それではこの子たちは離宮の温室で育てていいのですね。楽しみだわ。王宮式の温室で育つと、植物はなんだか上品に育つ気がしますね!」
王宮式は、王族の直轄の温室でしか使われない格式の高い温室建築だ。
植物の育ちに、品がいいも悪いもないのだろうが、ベスの目で見える世界の世界観はノエルの心をいつもほんのり温めてくれる。
部屋に帰ると、ノエルは早速鉢植えを温室に移動させるための大きな転移陣を敷いた。
ベスは森をほっつき歩いている間に森の植物を集めに集め、その数は有に200は超えるだろう。それらを全て転移陣の上に配置するだけでも相当の手間だった。
人力でこの全部の鉢を温室に持っていくのは面倒だからと、高位魔術師の中でも相当の魔力を誇る魔術師でないと展開できない転移魔法を駆使して、横着を極めるのがベスと出会ってからのノエルだ。
そんな新しい自分が、ノエルは気に入っていたりも、する。
「少し下がっていてくれ、一気に運ぶ」
穏やかに笑っていたノエルの顔だが、魔術の発動となるとその優しい笑顔から急に真剣なものに変わり、ベスの心を一瞬で奪ってゆく。
怜悧な美貌で知られるノエルだ。
その銀の髪が魔力を帯びて宙を踊り、その濃紺の瞳の冷たい、真剣な眼差しは、銀の彫刻のごとく実に美しい。
そして魔力を発動させてノエルの全身が銀色に美しく輝く姿は、何度見ても、ベスを一人の恋する乙女に変えてしまう。
(いつ見ても、なんて美しいのかしら。まるでノエル様は月の妖精のよう)
折角だからそれを言葉にしてノエルに伝えてやれば、このどうしようもない男は有頂天に喜ぶというのに、言葉が少ないのがベスの長所で、そして短所だ。
大量の鉢植えを一気に運びおえたノエルは、ベスが己に見惚れていた事にも気づかずに、ベスの方を向いて、くしゃっとした笑顔を向けた。ベスの、一番好きなノエルの顔だ。
「さあ、全部終わった。明日からは一緒に離宮に行こう。俺が離宮で仕事をしている間なら、ベスが温室で作業をしてもいいと王太子の仰せなんだ」
「ではノエル様とこれからずっと一緒にいられるのですね。嬉しいな」
心から嬉しそうな地味な笑顔に、ノエルは床にばったりと倒れ込んで悶絶してしまう。
ベスは心で思った本当の事を、必要なだけしか口にしない。
そんなベスが、ノエルと共にいられる事を嬉しそうに笑顔で呟くのだ。
(てっきり、俺なんかいなくても一人で楽しく森で遊んでいるのかと思った)
ノエルには、マイペースで無口なベスが、時折不意打ちのように見せる愛情表現が本当に可愛いのだ。
床でベスの可愛らしさに悶絶しているノエルだが、ベスはノエルが魔力を使って疲れて、床に倒れ込んでいると勘違いしたらしい。
「ああノエル様、お疲れ様でした。お風呂今からすぐ用意しますからそこでそのまま待っててくださいね」
ベスはふわりと床に倒れ込んでいるノエルの体に掛物をかけて、そしてノエルのためにお風呂を用意しに、立ち去った。
今日は湯舟にモモの葉と、塩を入れてみるとかいっていた。
遠くから、うっすらと桃の甘くて上品な香りがする。
(ベスの風呂。それから、ベスの作ってくれる空間。ベス)
ノエルは、心地よい空間に身も心も包まれる多幸感で胸がいっぱいになって、酔っ払ったように何も考えられない。
明日からはその上、ベスが温室を世話してくれるのだ。ベスの温室を心に思い浮かべるだけで、体の全てが清浄な力で満たされていくような気分になる。
あの温室。この風呂。ベス。
かつて、この世の全てを呪っていたノエルは、今、己の幸運さに身悶えして、田舎の宿の床から立ち上がることも出来やしなかった。
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