死んでるはずの私が溺愛され、いつの間にか救国して、聖女をざまぁしてました。

みゅー

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第二十八話

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 カルに促されて図書室へ入ると、いつもの見知った図書室があった。ただひとつ違うのは天井の小さな窓から明るい日差しが差し込んでいることだけだろう。

 図書室の中央にはソファがそのまま置かれている。

「このソファ、そのままにしますの?」

 そう聞くと、カルは頷いていった。

「もちろん、たまには君と図書室でのお茶会をしたいからね」

 アザレアは、ここで初めてカルに出くわした時から不思議に思っていたことをカルにぶつけた。

「初めてここでお会いした日は、どうしてここにいたんですの?」

 カルは少し考えて答える。

「あの日、君からの婚約者候補辞退の話を聞いたんだよ、そして自分が間違っていたと知った」

 悲しげに笑うとカルはソファに座り、アザレアにも座るように促した。アザレアはそれにしたがい、カルの隣に座る。

「前にも話したと思うが、ショックを受けてね。君を責めてるわけじゃないよ? で、王宮内をうろうろ徘徊して、行き場がなくて……図書室でボケッとしているところに君が現れた」

 そう言ってカルはしばらく空を見つめていたが、ぱっとアザレアの方を見ると言った。

「本当に自分の欲望が生み出した幻覚かと思ったよ」

 カルはアザレアの左肩に額を乗せた。

「あの時現れてくれてありがとう」

 そう言うと、ゆっくり頭を起こした。

「あの時君にここで会えたから、昔に君との邂逅かいこうがあったから今の私がある」

 カルはアザレアの瞳を見つめた。その視線を瞳から鼻、口へと移す。そしてカルはアザレアの唇をそっとなぞる。

 そしてその指を自身の唇に当てた。すると突然立ち上がり、大きく息を吐くと

「さて、今このままここに二人きりで居ると、君の身が危険だ。次の案内に移ろう」

 と、笑いアザレアに手を差し述べた。


 図書室をでると、エントランスへ向かって廊下をまっすぐ歩いた。途中カルの執務室がある。

 エントランスから左回りにカルの執務室へ来る。このルートがいつも謁見の際に、アザレアが案内されていたルートだった。

 アザレアは質問した。

「コシヌルイ公爵令嬢から聞いたのですが、わたくしだけいつも他の方と違うルートでカルの執務室に案内されていたようなのですが、それはなぜですの?」

 カルは苦笑する。

「君には言いづらいな。他の令嬢や貴族と鉢合わせしないようにするためと、私にとって君は婚約者扱いだったから、王族の通るルートを通ってもらって、その、王妃になったときのために慣れてもらったと言うか。まぁ、あまり気にしないでくれ」


 カルはそう言うと顔を赤くして前方を向いてあるき始めた。そんなカルの様子になんだかアザレアも恥ずかしくなり、それ以上詳しく聞くことを避けた。


 そのまま執務室の前を通りすぎて真っ直ぐ行った突き当たりに、渡り廊下がある。その先の二階建ての別棟は、一階は会議室に使われており、二階は貴賓室として使われていた。

 正式には一階がペチュニアの間、二階がヘリクリサムの間と言う名がついている。だが、一階が赤を基調としているので赤の間、二階は青を基調としているので青の間と呼んでいるそうだ。

 その他廊下に並ぶ部屋は使用人の部屋、リネン庫などがあり、洗濯室は騒音がするため、野外に設置されている。

 二階には国王陛下の執務室等があるそうだ。

 基本的な部屋の位置を説明すると、カルは立ち止まりアザレアに言った。

「今日は父上が晩餐を共にしたいと仰っていたから、準備しておいて欲しい。ランチは僕と一緒に取ろう」

 ディナーを国王と共にすると聞かされ、アザレア身の引き締まる思いがした。カルとアザレアは、部屋の中間にある部屋で軽く昼食わ済ませた。

 カルはこれから用事が入っているとのことだったのでアザレアは部屋にもどり、晩餐に行くドレスをシラーとミレーヌにお願いした。

 そして、ふとここ数日忙し過ぎてフラワーホルダー作成の進捗をマユリに聞けていなかったことを思い出す。完成しているのなら、残しておいたあの不思議な色のスターチスを差して、今日の晩餐につけていきたいと思った。

 アザレアは急ぎ町に出るときのドレスに着替え、今度はカルにもらったイヤリングを付けて行ってみることにした。イヤリングを付けると、カルがこのイヤリングを着けてくれた時のことを思いだす。それは少しくすぐったく甘い記憶だった。

 まさか、いつもこうやって思い出させるために、アクセサリーを自ら着けてくれるのでは? と、邪推してしまう。


 シラーに行き先を告げ、マユリのお店に向かった。お店のドアを入ると、マユリがアザレアを見つめ一瞬不思議そうな顔をした。


「お嬢ちゃん、久しぶりじゃないか? んうん? なんか今日は雰囲気が違うな」

 そう言ってしばらく考える。

「目の色が違うな。それになんとなくこう」

 言い淀んでいるので、言葉を引き取り答える。

「地味に見えますか?」

 マユリは慌てた様子で、両手を自分の目の前で左右にブンブン振る。

「いやいや、お嬢ちゃんはべっぴんさんだよ、それは変わらない」

 あまりにも慌てているので可笑しくなって声を出して笑っていると、店内のソファに座っているご老人が振り向き会話に加わった。

「こんなに美しい女性を捕まえて、地味はないだろうマユリ」

 その老人はノクサと言う老人だ。ノクサは白髪にひげを蓄えた、そこはかとなく品のあるご老人で、グレーの瞳は全てを見透かしていそうな、そんな雰囲気をまとったご老人だった。マユリの所で数回会っており、顔見知りとなっていた。

「ノクサ爺さん、余計なこと言わんでくれ、俺だってお嬢ちゃんのことそんなふうに思ったこたぁないよ」

 とマユリが困っているので、ここでネタばらしをした。

「実は今日つけているイヤリングに目立たなくなるように魔法が付与されているんです」

 とイヤリングを指で揺らした。マユリは納得したような顔をした。

「そういうことか、道理で目の色も違って見えたわけだ」

 アザレアはこのイヤリングは目立たなくする効果の他に、目の色を変える効果もあるのだと、今更知ったのだった。

 マユリは思い出したように言った。

「そうそうお嬢ちゃんの言ってたブローチ、できたぞ!」

 良かった、これで今日から付けることができる。

「ありがとうございます。楽しみしてたから凄く嬉しいです」

 そう答えると、マユリはニンマリ笑う。

「今持ってくるからそこのソファで待ってな」

 そう言うと、カウンター奥に行ってしまった。アザレアはノクサのお向かいに座る。

「ブローチが完成したんじゃな、良かったなぁ」

 ノクサは蓄えた髭をなてつけながら言った。アザレアはそれに答える。

「はい、とても楽しみにしていたので、本当に嬉しいです」

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