死んでるはずの私が溺愛され、いつの間にか救国して、聖女をざまぁしてました。

みゅー

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第三十五話

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 お茶会の翌日は先生の都合で休講だった。ちょくちょく休講になることがあったが、考えてみればヒュー先生の本業は研究者であって、教師ではないのだから、仕方がないのだろう。

 今日は何をして過ごそうか考えぼんやりしていると、シラーが今日の予定を読み上げる。

「お嬢様、王宮から今日の午後は、ファニー様と衣装の話し合いの予定を言われております」

 予定が午後からなら午前中は休講のため時間がある。たまには図書室で本でも読もう、そう考えているところに、今度はシモーヌがやって来て報告した。

「王太子殿下より午前中お茶のお誘いがございました。どう致しますか?」

 カルとのお茶を断るわけがない。アザレアは二つ返事で応じた。

 身支度をし、案内されるまま王宮の庭に出る。すると庭に椅子とテーブルが用意されており、既にカルは来ていた。

 カルはアザレアに気づくと微笑む。

「来てくれてありがとう」

 そう言って椅子を引いてくれたので、アザレアも微笑んで一礼して返す。

「本日はお招きいただきありがとうございます」

 そして、カルの引いてくれている椅子に座った。カルはアザレアの向かいに座る。

「君がコシヌルイ公爵令嬢とお茶会をしたのに、僕とはしないなんて不公平だからね」

 そう言って笑うと紅茶の香りを楽しみ、一口飲んで話を続ける。

「それに、最近は授業の内容が実践に入ってきて、結構キツいだろう? 少しはこうしてお茶を楽しみ、ゆっくり息抜きをしなければね」

 確かに授業が実践に移り魔力をかなり消費するため、講義のある日はくたくたになることが多い。カルは気遣ってくれているのだろう。

 しばらく会話もなく、庭の鳥のさえずりと、紅茶の香りに包まれ、ぼんやりしていたがカルが口を開いた。

「以前、君は自分の思いでの場所につれていってくれたことがあっただろう? 今度は逆に僕が君と行きたい場所があるのだが、付き合ってもらえるかな?」

 アザレアは微笑み返し答える。

「是非連れて行ってください」

 その返事にカルは嬉しそうに微笑み、しばらく少し照れたように前方を見つめて言った。

「そうか、良かった。楽しみにしている」

 アザレアも照れながら言う。

「あの、わたくしもとても楽しみです」

 そうしてしばらくお互いに照れ臭くなり沈黙した。

 だが、そのあとカルが急になにかを思い出したように少し苦い顔をして言った。

「そういえば、ケルヘール公爵から聞いているとは思うんだが、聖女が召喚されたことは知っているね?」

 アザレアは頷き答える。

「はい、でもそれ以外のことはなにも」

 カルは苦笑した。

「アゲラタムは隠し事が上手いからね、私も詳しいことは聞いていないが、三ヶ月後に聖女の召喚発表と、御披露目パレードを行う予定なんだ。そこで君にもパレードに参列してもらうことになっている。国民に宮廷魔導師を御披露目する必要があるからね」

 アザレアは驚いた。まさかそこまでしなければならないのだろうか? そんなアザレアの顔を見てカルが話を続ける。

「緊張する必要はない。君は君のままで十分魅力的だからね、そんなにかまえなくていいよ。だが、ドレスは用意しなければね。それで、母上が君のドレスの依頼をしたらしいんだが」

 アザレアは一つ謎が解けた。今日のファニーとの話し合いの予定はそのことだったのだ。

「今日の午後話し合う予定ですわ」

 カルはアザレアを見つめて言った。

「君は美しいから何を着たって似合うだろうね」






 午後からファニーと衣装の打ち合わせをした。

「やぁ、ご令嬢お久しぶり~。元気かい?」

 ファニーは町で会おうと、王宮で会おうと全く態度にかわりはない。アザレアはファニーと王宮で合うのは変な感じだったが、ファニーの方は貴族の所に呼ばれてデザインの相談を受けたりしているようなので、王宮で会っても違和感はないのだろう。

「ファニーさん、こんにちわ」

アザレアは挨拶をすませると、すぐに本題に入った、

「ファニーさん、わたくしできればそんなに派手なドレスにしたくありませんの。主役は聖女様ですもの」

 アザレアがそう言うと、ファニーはさも愉快そうに笑った。

「ご令嬢はさぁ、聖女が主役とか難しく考えすぎじゃない? そんな配慮なんかは王宮とアゲラタムのやることだし」

 と無責任に言った。だが、アザレアはこの件に関してはファニーの言う通りかもしれないと思った。

 ドレスのデザインはファニーに任せておけば間違いはないので、ファニーに一任することにした。それでも細かい点で話し合わねばならなかった。

 そうしてドレスの話をしていて、誕生会のドレスのお礼を言ってないことに気づいた。

「そう言えば、この前の誕生会で大変素敵なドレスを作っていただいて、ありがとう御座いました」

 するとファニーは少し考え、思い出したように言った。

「あ~あのドレスね! いやいや、僕もブラックダイヤ使ってデザインするの始めてだったからさぁ、楽しかったし。お金も王宮からでたからラッキーだったよねぇ。それにさ、あれからブラックダイヤが大ブレイクして、僕のところもブラックダイヤを使ったドレスの注文が殺到したよ。ケルヘール家もブラックダイヤでだいぶ潤ったんじゃないの? 良かったねぇ。あはは!」

 と一気に捲し立て笑うと、姿勢を崩しソファに深く腰掛け足を組んだ。アザレアは答える。

「えぇ、本当に。ケルヘール家が潤ったかどうかはお父様に訊かないとわかりませんけれど、ブラックダイヤの知名度を上げることが目的でしたので、思惑通りいって良かったですわ」

 そしてアザレアは、ドレスの袖に手を通したときのことを思いだし伝えた。

「あと、サイズがピッタリで直しが全く必要なかったんですのよ? わたくし仮縫いにも伺っていないのに、ファニーさん流石ですわ」

 するとファニーは声を出して笑いだした。

「僕だって普通はあんなにはできないって。一応ご令嬢の採寸は僕の方でもやったけどさ。それよりも王宮側が用意していた、寸分違わぬご令嬢の人形ひとがたがだいぶ役にたったよね」

 アザレアは呆気にとられ、なぜそんなものが王宮に? と思ったが、あまり深く考えないことにして、その後はドレスの話に集中した。


 話し合いが終わり、自室に通じる王宮の長い廊下を歩いていると、足に少し痛みを感じた。

 恐らく先ほどの話し合いの時に、靴のデザインで靴の着脱を繰り返したので、足を痛めたのかもしれなかった。立ち止まり人に見られないよう、柱の影に隠れて少しドレスの裾を持ち上げた。そうして足を見ようとしたところにフランツが通りかかる。

「どうされたのですか?」

 大したことのないただの靴ずれなので、心配させないように答える。

「少し足が痛かったのですけど、大丈夫ですわ」

 フランツは心配したように言った。

「足が痛いのならちゃんと治療しないといけません、ちょっと見てみましょう」

 フランツはアザレアの前に跪いた。アザレアは慌てる。

「大丈夫ですわ、本当になんともありませんから」

 突然カルの声が響く。

「どうした、何をやっている」

 フランツは立ち上がり振り向くとカルに説明した。

「アザレア公爵令嬢のおみ足が……」

 カルはそれを遮り言った。

「お前は下がれフランツ。こういうときはまず私を呼べ、私が対処する」

 フランツは一瞬険しい表情を見せたが、すぐに表情を戻す。

「申し訳ありませんでした。では僕は失礼致します」

 そう言うと、アザレアに悲しげな笑顔を向けて去っていった。カルは心配そうな顔をした。

「話し合いが終わったと聞いて、迎えに来て良かった。アズ、すまないが少し我慢してくれ」

 そう言うと、アザレアを抱き上げた。

「カル、そんな、 私わたくしは大丈夫ですわ」

 カルは首を振る。

「怪我は甘くみない方がいいよ」

 そう言って、そのまま空いている部屋へアザレアを連れていき、椅子に座らせると素早くアザレアの前に跪いて訊いた。

「どちらの足だ?」

 アザレアは慌てて顔の前で両手をブンブン振る。随時、浄化魔法をかけているので汚くはないかもしれないが、それでもカルに足を見せるなんて、はしたないことはできない。それにとにかく恥ずかしい。

「本当に本当にもう大丈夫なのです、もう痛くも痒くもありません治りました!」

 そう言うが、カルはアザレアがどちらの足かを言うまで梃子でも動きそうにない。しばらくお互いに無言で見つめ合っていたが、アザレアは観念した。

「左足ですわ」

 カルはアザレアの左足をドレスの裾から出すと、靴を脱がし自身の右膝に乗せた。アザレアは恥ずかしさと、申し訳なさで再度訴える。

「カル、本当にもうなんともありませんわ」

 カルは微笑むとアザレアの足を両手で軽く持ち上げる。

「私は君を守ると言ったろう? こういったことも含め、君に起こったことは全て私に責任がある。いいから私に任せて」

 そう言うと、足の指先から踵まで指でなぞりながらまじまじ見ている。そして足のアキレス腱の辺りを軽く触る。

「ここが少し赤くなっているね」

 アザレアはなんとかカルを説得しようとする。

「あの、本当に、汚いですから。それにもう大丈夫ですわ」

 足を引っ込めようとするが、カルにつかまれ全く動かない。

「君に汚い場所なんて一つもないよ」

 そう言って足のつま先にキスをした。あまりの恥ずかしさに顔を押さえながら、アザレアは叫ぶ。

「恥ずかしいんですの!!」

 カルは顔を上げ微笑む。

「悪かった、ちょっと意地悪しすぎたね。今日はここまでにしようか」

 そう言ってアザレアの足に治癒魔法をかけると、靴を履かせた。そして立ち上がる。

「でも、これ以上君の足が赤くなってはいけないから、部屋まで送ろう」

 カルはそう言ってアザレアを抱き上げる。アザレアは大人しくカルの胸に体を預けた。顔を上げると、カルの顔が鼻先にあり、恥ずかしさにすぐに下を向いた。

 カルの吐息が前髪を揺らしていた。カルは部屋に入るとアザレアを椅子に座らせ頬にキスをした。

「では、ゆっくり休んで、無理をしないようにね」 

 そう言うと、部屋を出ていった。アザレアはカルに触れられたつま先が熱く熱を持ったように感じた。
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