死んでるはずの私が溺愛され、いつの間にか救国して、聖女をざまぁしてました。

みゅー

文字の大きさ
51 / 66

第四十九話

しおりを挟む
「あれは事故ではありませんの?」

 フランツは頷く。

「実行犯だけは捕らえてあります。チューザレとの繋がりはまだ掴めていませんがね」

 アザレアはそれを受けて言った。

「でも、あの日ミツカッチャ洞窟にわたくしが行ったのは偶然でしてよ?」

 あの日、シモーヌにマユリのところに行くとは言ったが、ミツカッチャ洞窟にはたまたま祭事がやっているのに気づいて、気まぐれで出かけている。誰も知る由がない。今度はカルが答える。

「標的は君ではない。洞窟内にいたアングレカム大司教だ。アングレカムこそ、最初に横領疑惑に気づき、僕にこの話を持ってきた大司教だ。逆に君があそこに居たことは、チューザレにとっては大誤算だっただろうな。なんせ君の魔法のせいで素早くアングレカムが助けられてしまったのだからね」

 アザレアはそれを否定する。

「いいえ、洞窟内でアングレカム大司教は軽く怪我をされた程度でした。わたくしが居なくとも、洞窟の瓦礫を取り除ければアングレカム大司教は助かったと思います」

 カルは頷く。

「もちろん、あの崩落だけでは失敗もあり得る。だが、あの洞窟内部には暗殺者がいたんだ。その暗殺者が崩落事故に見せかけ暗殺する予定になっていたようだ」

 カルは大きくため息をつき言った。

「恐ろしいことにね、チューザレはアングレカム一人を暗殺するために、あの事件を起こしたらしい」

 アザレアは驚愕した。以前の話し合いでチューザレを見たときは、背中を丸め申し訳なさそうに座っており、そんな残忍な人物には見えなかったからだ。

 カルは話を続ける。

「崩落事件についてだが、君が寝込んでいる間に原因究明の調査をした。何年も崩れず、そんな兆候もなしに洞窟が突然崩れるのは、どう考えてもおかしかったからね。で、その過程で爆発を起こす魔石の欠片を発見した。やはりと思ったよ。そこから更に色々捜査して、魔石の入手先からなんとか実行犯にたどり着いた。そこからは、更にいもずる式に暗殺者まで捕らえることができた。前述した通り、チューザレとの繋がりは吐かなかったけどね」

 カルはそう言うと肩をすくめた。

「混乱を招かないように、公には事件だったと発表しないことにした。そんなときに国民が君に注目して、この事件について関心が離れたのも良かった」

 そう言ったあと

「目立つことの嫌いな君には、嫌な思いをさせてしまったね。申し訳なかった。だが、実際に国民が君を愛し、聖女様と慕う気持ちは本物だ。そこは受け入れて欲しい」

 そして頭を下げ、アザレアを心配そうに見つめた。

「話を続けても大丈夫か?」

 フランツも心配した様子でアザレアに声をかける。

「あまりにも、色々な情報が入ると人は混乱しショックを受けることがあります。色々なことをアザレア様に隠しておいたのはこちらなのに、こんなことを言うのはおかしいかもしれませんが、少し休まれてはどうでしょうか?」

 しかし、アザレアは今日こそしっかり話をすると決めていたので、カルをまっすぐ見据えて言った。

「いいえ、大丈夫です。話を続けてください」

 カルは頷く。

「わかった、君がそう言うなら話を続けるよ。こちらが横領に気づき、調べていることは向こうもとっくに気づいているだろう。結界石が限界に近付いている兆候が少しずつ出始め、近い将来聖女を召喚することになるのを分かっていたチューザレは、その聖女を利用してこの状況をなんとかしようとしていたようだ。だが、そこで問題が発生した。時空属性持ちの者が現れた。君だよ、彼にとってはこれは大誤算だったに違いない。このままでは聖女が召喚されなくなるかもしれない。焦ったチューザレは、君が時空属性持ちなのだと世間に知られる前に、急いで聖女を召喚することにしたのだろう。前倒しで決定的な限界の兆候があったと報告し、先に聖女を召喚したのではないだろうか。あとは自分の思い通りに聖女を操り、君を亡き者にしたのち、聖女を私にあてがい横領の件をうやむやにし、権力を握ろうと企んだのだろう」

 カルはそこまで言うと、一息ついた。とんでもない話である。事実なら国の載っとりを企てていると言っても過言ではないのだ。カルは続ける。

「だが、召喚された聖女があれではね。聖女も君と同様に未来のことが少しは分かるようだが、君と違って全くと言っていいほど、その知識を利用できていないしね」

 と、心底同情したように言った。

 話を聞き終わると、アザレアは大きく息を吐いて立ち上がった。

「少し外の空気を吸いに庭に出ます」

 そう言い残して、執務室を後にした。廊下から庭に出てしばらく歩いていると、後ろからカルに声をかけられた。

「追いかけようか迷ったが、こんな時に君を一人にはできない。それに、もう一度謝りたかった。色々隠していて本当にすまない」

 そう言って、カルはアザレアの手をとった。アザレアは首をゆるゆると横に振る。

「本当に大丈夫ですわ。それよりカルも大変でしたのね」

 カルはギュっとアザレアの手を握る。

「許してくれてありがとう」

 そう言って、アザレアの指にキスをし、アザレア見つめて言った。
  
「これからは君に隠し事は絶対にしないと約束する。それに、チューザレのやったことに対する証拠をつかむためにも、今後アズの時空魔法の力を借りるかもしれない。頼りにしている」

 アザレアは微笑むと答える。

「今日話してくださったからもういいですわ。それに、カルたちはずっとわたくしを守ってくださっていたのですのね。ありがとう」

 二人はお互いにしばらく見つめ合った。そして手を繋いだまま、無言で庭を歩きはじめる。辺りは静寂につつまれ、二人が落ち葉を踏みしめる音だけがした。

 そうして進んで行くと、レッドマジックリリーの花が咲き誇っている場所に出た。

「もうこの花が咲く時期ですのね」

 そう言って、花に近づいた。カルも一緒に花に近づく。すると、カルの着けているフラワーホルダーの魔石が青く光って反応した。カルは困惑する。

「アズ、この魔石にはなんの魔力付与がされているんだ?」

 アザレアはこんな風に、何かに反応するような魔力は付与していなかったし、何に反応しているかもわからず、困惑した。

「花が枯れないようにする魔力しか付与していませんわ」

 そう答えるしかなかった。とりあえず戻ることにして、二人で王宮に向かって歩き始めたところ、魔石の光が消えた。原因が分からず困惑していると、フランツがやってきた。

「しばらくは二人にして差し上げましたが、限界です。それにアザレア様、この気候の中でこれ以上外に居てはお体に障ります。殿下もアザレア様も、中にお戻りください」

 二人はブローチのことは後回しにして、部屋に戻ることにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!

屋月 トム伽
恋愛
私と婚約をすれば、真実の愛に出会える。 そのせいで、私はラッキージンクスの令嬢だと呼ばれていた。そんな噂のせいで、何度も婚約破棄をされた。 そして、9回目の婚約中に、私は夜会で襲われてふしだらな令嬢という二つ名までついてしまった。 ふしだらな令嬢に、もう婚約の申し込みなど来ないだろうと思っていれば、お父様が氷の伯爵様と有名なリクハルド・マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込み、邸を売って海外に行ってしまう。 突然の婚約の申し込みに断られるかと思えば、リクハルド様は婚約を受け入れてくれた。婚約初日から、マクシミリアン伯爵邸で住み始めることになるが、彼は未婚のままで子供がいた。 リクハルド様に似ても似つかない子供。 そうして、マクリミリアン伯爵家での生活が幕を開けた。

聖女の任期終了後、婚活を始めてみたら六歳の可愛い男児が立候補してきた!

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
23歳のメルリラは、聖女の任期を終えたばかり。結婚適齢期を少し過ぎた彼女は、幸せな結婚を夢見て婚活に励むが、なかなか相手が見つからない。原因は「元聖女」という肩書にあった。聖女を務めた女性は慣例として専属聖騎士と結婚することが多く、メルリラもまた、かつての専属聖騎士フェイビアンと結ばれるものと世間から思われているのだ。しかし、メルリラとフェイビアンは口げんかが絶えない関係で、恋愛感情など皆無。彼を結婚相手として考えたことなどなかった。それでも世間の誤解は解けず、婚活は難航する。そんなある日、聖女を辞めて半年が経った頃、メルリラの婚活を知った公爵子息ハリソン(6歳)がやって来て――。

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

【完結】偽物聖女は冷血騎士団長様と白い結婚をしたはずでした。

雨宮羽那
恋愛
 聖女補佐官であるレティノアは、補佐官であるにも関わらず、祈りをささげる日々を送っていた。  というのも、本来聖女であるはずの妹が、役目を放棄して遊び歩いていたからだ。  そんなある日、妹が「真実の愛に気づいたの」と言って恋人と駆け落ちしてしまう。  残されたのは、聖女の役目と――王命によって決められた聖騎士団長様との婚姻!?  レティノアは、妹の代わりとして聖女の立場と聖騎士団長との結婚を押し付けられることに。  相手のクラウスは、「血も涙もない冷血な悪魔」と噂される聖騎士団長。クラウスから「俺はあなたに触れるつもりはない」と言い放たれたレティノアは、「これは白い結婚なのだ」と理解する。  しかし、クラウスの態度は噂とは異なり、レティノアを愛しているようにしか思えなくて……?  これは、今まで妹の代わりの「偽物」として扱われてきた令嬢が「本物」として幸せをつかむ物語。 ◇◇◇◇ お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます! モチベになるので良ければ応援していただければ嬉しいです♪ ※いつも通りざまぁ要素は中盤以降。 ※完結まで執筆済み ※表紙はAIイラストです ※アルファポリス先行投稿(他投稿サイトにも掲載予定です)

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

処理中です...