死んでるはずの私が溺愛され、いつの間にか救国して、聖女をざまぁしてました。

みゅー

文字の大きさ
50 / 66

第四十八話

しおりを挟む
「まず、ことの発端だが、アゲラタムのとある人物から『横領が行われているかもしれない』と言う密告を受けたことから始まった。これは以前君が王宮で倒れて寝込んでしまうよりずっと前の話だ」

 そう言うと、フランツに向かって言う。

「あの書類をここに」

 フランツは奥から二枚の書類を持ってくると、応接セットの机に並べて見せた。アザレアはその書類を覗き込んだ。

 書類は、教会に寄せられた市民からの寄付金と王宮からの助成金を、地方の孤児院へ送金する許可証だった。二枚とも同じ内容で王宮と教会の承認印、真ん中に割印があった。

 見た感じこの書類自体になんらおかしなところはなかった。アザレアは、書類から顔を上げる。

「この書類がどうしましたの?」

 カルは苦い顔をした。

「この書類はなんらおかしなところがない。それが問題でね。これが本物だとしたら、正規のルートで同じ孤児院へ何度も教会から助成金の許可が出ていることになる。もちろん、公平を期すためにそういったことがないよう、王宮で許可をだす前に、審査をしてから印を押す。たがらこんなことはあり得ないはずだ。だが、事実として送金の許可証が何度も発行されていた。密告してきた人物も、そこがおかしいと気づいて王宮にこの書類を持ち込んだ」

 アザレアは、驚いて訊いた。

「もしかして、王宮に共犯がいると言うことですの?」

 そう訊くと、カルは首を振る。

「徹底的に精査したが、アゲラタムと関わりのあるような人物は王宮にいなかった。それに王宮にいる使用人は、意図している訳ではないが世襲で代々仕えている者が多い。例えばシモーヌは筆頭執事のホルンストの孫だし、僕の乳母はホルンストの娘だ。君の侍女のシラーも、ホルンストの孫だよ。将来、王宮に君を迎え入れるにあたって、王宮から信頼できる人物を、ということで送ったんだ。あぁ、シラーの預かり知らぬところで勝手に王宮が行ったことだ、秘密にしていたと彼女を責めないでやってくれ」 

 そう一気に言うと、カルは一呼吸おいた。 

「そんな感じでね、王宮には疑いをかけられる人物の方が少ない。国庫担当部門もほとんど身元の明らかな人物ばかりでね。それにそこそこ地位の在るものばかりだからね、横領をしてもデメリットの方が大きい」

 アザレアは頷いて話の先を促した。

「では、王宮の関わり無しにこの書類はどうやって手にいれたのか? そう考えたとき、そんなことはどうやっても不可能だと判断した。そこでこの書類は偽造されたもの、と言う結論に至った。調べてみれば、この孤児院への送金許可証にサインをしているのは、毎回チューザレだった。彼が関わっているのは明白だろう。そこで彼を調べたがなかなか尻尾を出さない。やっとのことで、この巧妙に作られた承認印を偽造したと思われる職人に行き当たった」

 カルがそう言った瞬間、思わずアザレアは叫ぶ。

「マユリさんは違いますわよ!!」

 カルは笑った。

「確かに彼は違うね。逆にこういった物を作れる人物に心当たりがないか? と、尋ねて捜査に協力してもらってたぐらいだしね」

 それを聞いてアザレアはほっとした。あれだけの腕前があれば、マユリなら簡単に偽造印を作ることができてしまうだろう。疑いをかけられてもおかしくはない。ほっとしているアザレアを見てカルは言った。

「良かったね、君はあのジュエリー職人と仲良しだから、彼が犯人ならショックを受けるところだった」

 そして、微笑む。

「私も彼には随分お世話になっているから、彼が犯人だなんて考えたくもないな」

 アザレアは答える。

「ですわね、彼にはいつもお世話になりっぱなしですわ」

 しばらくお互いに微笑みあった。

「さて、本題に戻そう」

 カルは話しを続けた。

「マユリ達の協力もあって最近になってやっとそれらしき職人を見つけたんだが、話を聞く前に突然姿を消してしまった。それとチューザレを調べているうちに、怪しいと思われる行動が他にもあった」

 そう言うと、フランツに向かって言った。

「説明してくれ」

 フランツは一礼するとアザレアに向かって説明する。

「アザレア様が殿下の謁見に来て、僕の目の前で初めて瞬間移動したあの日、あの場にもう一人それを見ていた人間がいました」

 アザレアはそれを受けて驚く。

「まさか……」

 フランツは頷く。

「そう、チューザレです。彼はアザレア様の後方でそれを見ていた。アザレア様が僕の目の前から消えたとき、チューザレは真っ青な顔になり僕と目が合うと一礼して、慌てて帰って行きました。その数日後です『結界石に決定的な兆候が現れたので、聖女召喚の必要がある』とアゲラタムから報告があったのは。僕は不思議に思いました。神官には人の属性能力を読む力があります。更には目の前でその力を使ったアザレア様をを見たのですから、アザレア様が時空魔法を使えると分かったでしょう。ならばもう少し聖女の召喚を待つべきなのに、なぜそんなに聖女召喚の儀式を焦るのか」

 そう言われてアザレアは、一つおや?  と思うところがあったので質問した。

「時空魔法が使えるなら、聖女の召喚を待つと言うのはどういう理由からですの?」

 フランツはそれを受けて答える。

「これは部外秘なので、アザレア様が知らなくて当然なのですが、アゲラタムの教会に唯一残されている文献に、遥か昔に時空魔法を使える者が奈落を塞いだ。と言う記述が残っているのです。ですが、実際問題として奈落は塞がっていないのですから、信憑性は低いかもしれませんが」

 確かにそんな話は初耳だった。講義でも聞いたことがなく、おそらくヒュー先生も知らない事実なのだろう。アザレアが難しい顔をしたせいかフランツが慌てて言った。

「まだ、これに関しては本当になにも分かっていない段階ですので、アザレア様に話すのは差し控えていました。申し訳ありません」

 そう言って頭を下げた。

「フランツが頭を下げる必要はありませんわ。話を続けてくださって大丈夫です」

 そう言って、アザレアは微笑むと、それを見てフランツも微笑み話を続ける。

「奈落にしても、時空魔法にしても、現状なにも分かっていない状況なのですから、検証してから聖女を召喚しても問題はないはずなのです」

 それに次いでアザレアは言う。

「では、チューザレ大司教はどうしても聖女が必要な理由があって、召喚を急いだのではないか? と言うことですのね?」

 そう訊くと、フランツは頷く。

「そうです。明らかに怪しいチューザレの動きを、僕はずっと追っていました。すると、チューザレがケルヘール家のロングピークの屋敷に、自分の息のかかった者を何人か送り込んでいることがわかりました。僕はケルヘール公爵と密に連絡をとり、貴女が鉱山に行っている間に、そのチューザレ大司教の息のかかった者たちを排除しました」

 確かに、鉱山からロングピークに帰ってきたとき、随分使用人が減ったと感じたのを覚えている。フランツは続ける。

「おそらく横領のことと言い、貴女の暗殺の件と言い、裏で糸を引いているのはチューザレで間違いありません。それと、この前のミツカッチャ洞窟崩落事件も」

 それを聞いてアザレアは、背筋がゾッとした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

聖女の任期終了後、婚活を始めてみたら六歳の可愛い男児が立候補してきた!

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
23歳のメルリラは、聖女の任期を終えたばかり。結婚適齢期を少し過ぎた彼女は、幸せな結婚を夢見て婚活に励むが、なかなか相手が見つからない。原因は「元聖女」という肩書にあった。聖女を務めた女性は慣例として専属聖騎士と結婚することが多く、メルリラもまた、かつての専属聖騎士フェイビアンと結ばれるものと世間から思われているのだ。しかし、メルリラとフェイビアンは口げんかが絶えない関係で、恋愛感情など皆無。彼を結婚相手として考えたことなどなかった。それでも世間の誤解は解けず、婚活は難航する。そんなある日、聖女を辞めて半年が経った頃、メルリラの婚活を知った公爵子息ハリソン(6歳)がやって来て――。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~

卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」 絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。 だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。 ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。 なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!? 「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」 書き溜めがある内は、1日1~話更新します それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります *仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。 *ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。 *コメディ強めです。 *hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

処理中です...