33 / 43
32
しおりを挟む
「あらぁ、そのタイ。エメラルドピアリアドのつもり? そういえば、グランツ様もリボンを着けてらしたわね、あなたのリボンではありませんでしたけれど。嘘はもうばれてますのに、まだグランツ様の婚約者と偽るなんてあなたとても可哀想ね」
それを聞いて、オルヘルスはまだ公の場ではっきりと婚約していると言い返せないことをとても悔しく思った。
そうして怒りを抑えて黙っていると、図星を突かれて黙っていると勘違いしたアリネアは増長する。
「あら、それによく見たらそのイヤリング、エメラルドかしら? グランツ様から目をかけられていたときは、あんなに大きな石を身に着けていましたのに、ずいぶんささやかなサイズになりましたのねぇ」
オルヘルスの怒りが頂点に達し、文句を言い返そうとした瞬間、エファが口を開く。
「そうかしら? このエメラルドはリートフェルト家が叙爵したときに国王より賜ったとてもクラリティの高いものよ。それをそのように言うだなんて、見る目がありませんのねぇ」
そう言われ、アリネアはオルヘルスを睨む。
「なんですの? この態度。客をもてなすつもりがありませんの?」
オルヘルスは我慢できずに言い返す。
「招待していない客をもてなすほど私、お人好しではありませんのよ? 気にくわないならどうぞお帰りになったら? 誰も止めたりしませんわ」
するとアリネアは鬼の首を取ったようにニヤリと笑って周囲に向かって言った。
「みなさん信じられまして? 本当に昔からオリってば礼儀がなってませんわね。私があれだけ教育いたしましたのにまだこんな程度ですの? 私がっかりですわ」
そう言って大きくため息をついた。
すると、ずっと黙って話を聞いていたドリーセン伯爵夫人が静かに言った。
「あら、私たちとても楽しい時間を過ごしていたのに、その空気を台無しにしているのはどなたのほうかしら」
それを受けて、シャウテン公爵夫人が大きくうなずく。
「ほんとねぇ。あぁ、いやですわぁ。もしも自分の娘が外でこんなことをしていたらと思うと、私ぞっとしましてよ?」
ドリーセン伯爵夫人は微笑むと、シャウテン公爵夫人に返す。
「あら、でしたら娘の教育はリートフェルト男爵令嬢に任せればいいですわ。リートフェルト男爵令嬢は完璧ですもの。誰かと違って。ねぇ」
そう言ってその場にいる貴族たちににっこりと微笑みかけると全員がうなずいた。
それを見てアリネアは、オルヘルスに向かって言った。
「オリ、あなたがどうやってドリーセン伯爵夫人や、シャウテン公爵夫人を騙して見方に着けたかわかりませんけれど、こんなことをしてあとで後悔しますわよ」
オルヘルスはにっこりと微笑み返す。
「そう、楽しみにしていますわ」
オルヘルスがそう答えると、二人はしばらく対峙していたが、アリネアはこちらまでギリギリと音が聞こえてきそうなほど歯ぎしりすると、持っていた招待状を地面に叩きつけてその場を去っていった。
その後ろ姿を見ながら、エファはオルヘルスに耳打ちした。
「あんなに理不尽に挑発されたのに、王太子殿下との婚約の件を言わなかったのは偉かったわね」
「もちろんですわ。アリネア様に負けるわけにはいきませんもの」
そう話している横でディルクが素早くアリネアの投げた招待状を拾い上げると、中身をじっくり確認しオルヘルスに差し出した。
「これはよくできておりますが偽造の招待状のようです。じっくり細部まで見なければ偽物と本物の見分けがつかないでしょう」
オルヘルスがその招待状を受けとると、エファと一緒にそれを確認する。
なるほど、とてもよくできている。だが、流石にエファは相違点を即座に見つけた。
「私の筆跡に似せてるけれど、細かいところで違うわね」
そう言ってディルクにその招待状を返すと、ディルクはうなずいた。
「そのようです。とにかく早急に調べて対処いたします」
そう言って一礼すると部屋を出ていった。そのときシャウテン公爵夫人が口を開く。
「それにしても、オリ。あなたの対処は素晴らしかったわね。社交界ではあんな輩はいくらでもいますもの、あれぐらいでないと」
「ありがとうございます。ですが、できればあのようなかたとの関わりはあまり持ちたくないものですわ」
オルヘルスがそう答えると、ドリーセン伯爵夫人がうなずく。
「本当にそうねぇ。相手にすると品性が下がりますものねぇ。それにしても、コーニング伯爵令嬢はオリとは逆の意味で社交界で有名になられて、コーニング伯爵がお可哀想ですわ」
それに対してシャウテン公爵夫人が答える。
「あら、コーニング伯爵もそこまで迂闊ではありませんのよ? いざとなれば跡継ぎでもなんでもない娘なんてどうとでもなりますでしょう?」
ドリーセン伯爵夫人は微笑む。
「確かに、そうですわよねぇ」
そして二人揃って『ふふっ』と声を出し微笑み合った。
そんな二人を見てオルヘルスは、この二人は敵に回したくないと思った。
アリネアという珍客があったものの、なんとか無事にお茶会を終えることができて、オルヘルスは新たな人脈を作ることもできた。
それにとてもいい気晴らしにもなり、また明日から頑張ろうという気持ちになった。
こうしてリフレッシュをして、別荘へ戻りまたお妃教育と準備に終われる日々に戻った。
愛馬会のときのように王宮へ通うのが通例だったが、王宮側もオルヘルスの身の安全を優先し、講師たちが別荘に通いで来てくれていた。
そんなある日、朝早くにグランツが訪ねてきた。オルヘルスは久々に会えて嬉しくなり、笑顔でグランツを出迎えるとすぐに客間へ案内した。
そして振り向くと、後ろからついてくるイーファに向かって上目遣いで言った。
「お兄様、心配してくれる気持ちは本当に嬉しいですわ。でも、グランツ様と会うのは本当に久しぶりですの。少しのあいだですわ、二人だけにしてくださらないかしら」
「だが、しかし……」
「お願い」
イーファがオルヘルスのお願いに戸惑い、グランツを見つめるとグランツはうなずく。
「イーファ、私はオリを傷つけることは絶対にない。それは確かなことだ」
それを聞いて、オルヘルスはまだ公の場ではっきりと婚約していると言い返せないことをとても悔しく思った。
そうして怒りを抑えて黙っていると、図星を突かれて黙っていると勘違いしたアリネアは増長する。
「あら、それによく見たらそのイヤリング、エメラルドかしら? グランツ様から目をかけられていたときは、あんなに大きな石を身に着けていましたのに、ずいぶんささやかなサイズになりましたのねぇ」
オルヘルスの怒りが頂点に達し、文句を言い返そうとした瞬間、エファが口を開く。
「そうかしら? このエメラルドはリートフェルト家が叙爵したときに国王より賜ったとてもクラリティの高いものよ。それをそのように言うだなんて、見る目がありませんのねぇ」
そう言われ、アリネアはオルヘルスを睨む。
「なんですの? この態度。客をもてなすつもりがありませんの?」
オルヘルスは我慢できずに言い返す。
「招待していない客をもてなすほど私、お人好しではありませんのよ? 気にくわないならどうぞお帰りになったら? 誰も止めたりしませんわ」
するとアリネアは鬼の首を取ったようにニヤリと笑って周囲に向かって言った。
「みなさん信じられまして? 本当に昔からオリってば礼儀がなってませんわね。私があれだけ教育いたしましたのにまだこんな程度ですの? 私がっかりですわ」
そう言って大きくため息をついた。
すると、ずっと黙って話を聞いていたドリーセン伯爵夫人が静かに言った。
「あら、私たちとても楽しい時間を過ごしていたのに、その空気を台無しにしているのはどなたのほうかしら」
それを受けて、シャウテン公爵夫人が大きくうなずく。
「ほんとねぇ。あぁ、いやですわぁ。もしも自分の娘が外でこんなことをしていたらと思うと、私ぞっとしましてよ?」
ドリーセン伯爵夫人は微笑むと、シャウテン公爵夫人に返す。
「あら、でしたら娘の教育はリートフェルト男爵令嬢に任せればいいですわ。リートフェルト男爵令嬢は完璧ですもの。誰かと違って。ねぇ」
そう言ってその場にいる貴族たちににっこりと微笑みかけると全員がうなずいた。
それを見てアリネアは、オルヘルスに向かって言った。
「オリ、あなたがどうやってドリーセン伯爵夫人や、シャウテン公爵夫人を騙して見方に着けたかわかりませんけれど、こんなことをしてあとで後悔しますわよ」
オルヘルスはにっこりと微笑み返す。
「そう、楽しみにしていますわ」
オルヘルスがそう答えると、二人はしばらく対峙していたが、アリネアはこちらまでギリギリと音が聞こえてきそうなほど歯ぎしりすると、持っていた招待状を地面に叩きつけてその場を去っていった。
その後ろ姿を見ながら、エファはオルヘルスに耳打ちした。
「あんなに理不尽に挑発されたのに、王太子殿下との婚約の件を言わなかったのは偉かったわね」
「もちろんですわ。アリネア様に負けるわけにはいきませんもの」
そう話している横でディルクが素早くアリネアの投げた招待状を拾い上げると、中身をじっくり確認しオルヘルスに差し出した。
「これはよくできておりますが偽造の招待状のようです。じっくり細部まで見なければ偽物と本物の見分けがつかないでしょう」
オルヘルスがその招待状を受けとると、エファと一緒にそれを確認する。
なるほど、とてもよくできている。だが、流石にエファは相違点を即座に見つけた。
「私の筆跡に似せてるけれど、細かいところで違うわね」
そう言ってディルクにその招待状を返すと、ディルクはうなずいた。
「そのようです。とにかく早急に調べて対処いたします」
そう言って一礼すると部屋を出ていった。そのときシャウテン公爵夫人が口を開く。
「それにしても、オリ。あなたの対処は素晴らしかったわね。社交界ではあんな輩はいくらでもいますもの、あれぐらいでないと」
「ありがとうございます。ですが、できればあのようなかたとの関わりはあまり持ちたくないものですわ」
オルヘルスがそう答えると、ドリーセン伯爵夫人がうなずく。
「本当にそうねぇ。相手にすると品性が下がりますものねぇ。それにしても、コーニング伯爵令嬢はオリとは逆の意味で社交界で有名になられて、コーニング伯爵がお可哀想ですわ」
それに対してシャウテン公爵夫人が答える。
「あら、コーニング伯爵もそこまで迂闊ではありませんのよ? いざとなれば跡継ぎでもなんでもない娘なんてどうとでもなりますでしょう?」
ドリーセン伯爵夫人は微笑む。
「確かに、そうですわよねぇ」
そして二人揃って『ふふっ』と声を出し微笑み合った。
そんな二人を見てオルヘルスは、この二人は敵に回したくないと思った。
アリネアという珍客があったものの、なんとか無事にお茶会を終えることができて、オルヘルスは新たな人脈を作ることもできた。
それにとてもいい気晴らしにもなり、また明日から頑張ろうという気持ちになった。
こうしてリフレッシュをして、別荘へ戻りまたお妃教育と準備に終われる日々に戻った。
愛馬会のときのように王宮へ通うのが通例だったが、王宮側もオルヘルスの身の安全を優先し、講師たちが別荘に通いで来てくれていた。
そんなある日、朝早くにグランツが訪ねてきた。オルヘルスは久々に会えて嬉しくなり、笑顔でグランツを出迎えるとすぐに客間へ案内した。
そして振り向くと、後ろからついてくるイーファに向かって上目遣いで言った。
「お兄様、心配してくれる気持ちは本当に嬉しいですわ。でも、グランツ様と会うのは本当に久しぶりですの。少しのあいだですわ、二人だけにしてくださらないかしら」
「だが、しかし……」
「お願い」
イーファがオルヘルスのお願いに戸惑い、グランツを見つめるとグランツはうなずく。
「イーファ、私はオリを傷つけることは絶対にない。それは確かなことだ」
1,088
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢は結婚式当日に死んだ
白雲八鈴
恋愛
今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。
「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」
突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。
婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。
そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。
その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……
生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。
婚約者とその番という女性に
『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』
そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。
*タグ注意
*不快であれば閉じてください。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
婚約破棄に、承知いたしました。と返したら爆笑されました。
パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢カルルは、ある夜会で王太子ジェラールから婚約破棄を言い渡される。しかし、カルルは泣くどころか、これまで立て替えていた経費や労働対価の「莫大な請求書」をその場で叩きつけた。
悪役令息(冤罪)が婿に来た
花車莉咲
恋愛
前世の記憶を持つイヴァ・クレマー
結婚等そっちのけで仕事に明け暮れていると久しぶりに参加した王家主催のパーティーで王女が婚約破棄!?
王女が婚約破棄した相手は公爵令息?
王女と親しくしていた神の祝福を受けた平民に嫌がらせをした?
あれ?もしかして恋愛ゲームの悪役令嬢じゃなくて悪役令息って事!?しかも公爵家の元嫡男って…。
その時改めて婚約破棄されたヒューゴ・ガンダー令息を見た。
彼の顔を見た瞬間強い既視感を感じて前世の記憶を掘り起こし彼の事を思い出す。
そうオタク友達が話していた恋愛小説のキャラクターだった事を。
彼が嫌がらせしたなんて事実はないという事を。
その数日後王家から正式な手紙がくる。
ヒューゴ・ガンダー令息と婚約するようにと「こうなったらヒューゴ様は私が幸せする!!」
イヴァは彼を幸せにする為に奮闘する。
「君は…どうしてそこまでしてくれるんだ?」「貴方に幸せになってほしいからですわ!」
心に傷を負い悪役令息にされた男とそんな彼を幸せにしたい元オタク令嬢によるラブコメディ!
※ざまぁ要素はあると思います。
※何もかもファンタジーな世界観なのでふわっとしております。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる