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アリエルはまだ婚約したわけではないと訂正したが、エルヴェは否定せず満足そうに微笑んで祝いの言葉を受け取っていた。
そんな中、オパールは数名の貴族の挨拶を無視した。
「お姉様、この人たちには挨拶を返す必要はありませんわ。舞踏会でドレスを汚されたお姉様を笑っていましたもの」
そう言って相手を睨みつけて言った。
「私が気づいていないとでも?」
するとその貴族たちは顔をひきつらせながら、すごすごと下がっていった。そんな貴族たちの後ろ姿をオパールは軽蔑の眼差しで見つめる。
「お姉様は優しすぎます。エルヴェが『大切な人』と勝手に発表してしまったからには、よろしくない人たちもお姉様に群がってきますわ。これからはもっと厳しくしなくては」
そう言うとアリエルを見つめる。
「でも大丈夫ですわ、私がお姉様をこれからも守って差し上げますわね」
エルヴェが横で咳払いをする。
「オパール、それは私の役目だ」
「あら、社交界では女の私でないとできない守り方もありますわ。エルヴェ、私のことは味方につけておいたほうがよくてよ?」
「それもそうかもしれないが……」
「そんなことよりお姉様、お茶会を楽しみましょう。向こうに席を用意してますわ行きましょう」
そう言ってオパールはアリエルの腕を引いて一番豪華なテーブルへ向かって歩いて行く。アリエルが振り向いてエルヴェを見るとエルヴェは微笑んで頷いたので、そのままオパールに腕を引かれるまま歩く。
と、向かっているテーブルにベルトラード・ド・モンフォール・アスチルべ王妃殿下が座っていることに気づく。
慌てるアリエルを気にせずついにオパールは王妃殿下の面前にアリエルを立たせた。
突然王妃殿下の前に連れてこられアリエルはとても緊張したが、子供の頃からエルヴェの横に立てるよう遊ぶ暇もなく様々な礼節やマナーを徹底的に学んできたのは、こういうときのためだったことを思い出し気持ちを切り替えると、立ち止まりゆっくりとカーテシーをした。
その横で無邪気にオパールが言った。
「王妃殿下! お久しぶりです」
「オパール、久しいわね。それにしても貴女はアリエル嬢がよほどお気に入りのようね」
「はい! お姉様とは親しくさせてもらってますわ!」
「そう。でもアリエル嬢に迷惑をかけないようになさい」
そう言って微笑むとエルヴェに向き直る。
「ところでエルヴェ、先ほどはとても騒がしかったけれど、問題は解決したのかしら?」
「はい、一応は。これからさらに追及せねばなりませんが……」
それを聞いてベルトラードは楽しそうに頷く。
「そう、やるならしっかりなさい」
そう言うとアリエルに目を止めた。
「噂には聞いていたけれど、可愛らしいお嬢さんね。貴女双子なのでしょう? でも、妹とは似ても似つかないわねぇ」
「そう仰るのは近しいものたちだけです」
アリエルは緊張しながらそう答えた。変なことを言ってしまったかもしれないと思いながら返事を待っていると、ベルトラードは一瞬驚いた顔したのちふっと笑った。
「面白い子ね。さぁ、隣に座りなさい」
エルヴェが椅子を引いて隣に座るように促したのでアリエルはそこへ座ると、おどおどせず恥じることのないよう堂々と振る舞うことにした。
隣に座ったアリエルにベルトラードは質問した。
「エルヴェに気に入られているようですけれど、それがどういう意味か貴女わかっていて?」
アリエルは微笑んで返す。
「王妃殿下、恐れながら申し上げます。そもそも気に入られたからと言ってそれがなんだと仰るのでしょうか。私如き存在は、言われたことにただただ翻弄されるばかりでございます」
「では貴女はただそれを受け入れると?」
「いいえ、王太子殿下が仰ったからと言ってそれが現実になるとは言い切れません」
そうハッキリ答えるアリエルを見つめ、ベルトラードは目を細めた。
「素晴らしいわね。貴女、見た目とは違って強い意思を持っている。私もオパール同様、貴女のことをとても気に入ったわ」
アリエルは微笑み返す。
「至極光栄に存じます」
その横からオパールが無邪気に答える。
「王妃殿下もですの?! 嬉しいですわ! 流石お姉様ですわ」
ベルトラートはそんなオパールに優しく微笑む。
「今日はとても楽しく過ごせそうね……」
そう言うと優雅にティーカップを持ち上げた。
このあと、アリエルは緊張して何を話したのか覚えていないほどだった。気がつくとエルヴェにエスコートされ馬車の前に立っていた。
「アリエル? 大丈夫か? 今日は疲れてしまったかな?」
我に返ったアリエルは慌てて返事をする。
「は、はい。大丈夫です」
「そうか、ならいいんだが。ところで、今日は私が君を愛していることがアラベルにも知られてしまっただろう?」
「えぇ、そうかもしれま……」
そこまで言ってエルヴェに愛していると言われたことに気づいたアリエルは顔を赤くして俯いた。
そんなアリエルを愛おしそうにエルヴェは見つめる。
「先ほど王妃殿下の前ではあんなにも堂々としていたというのに、本当に君という人は……」
そう言うとしばらく沈黙が続いた。アリエルがそっと顔を上げると、エルヴェはじっとアリエルを熱のこもった視線で見つめており、アリエルは恥ずかしさから慌ててもう一度俯くとなんとか消え入りそうな声で言った。
「あの、殿下。アラベルにそれが知られてしまったとして……なんでしょうか?」
エルヴェはハッとすると答える。
「そうだった、君がとにかく愛らしくて思わず見とれてしまっていた。そう、アラベルにそれが知られてしまった今、君をあの屋敷へ置いておくのはとても危険だと思う。だから君のことは今日から匿わせてもらう」
「殿下、どうしてそのような……」
アリエルが驚いてエルヴェの顔を見上げながらそう言うと、エルヴェはつらそうな顔をして答える。
「どうしてそんなことを私が言うのか? それはあの女の本質をよく知っているからだ。そして、これから起こりうることを私は知っている」
そう言って無理に作り笑顔をアリエルに向ける。
「殿下?」
アリエルはエルヴェが何を知っているのか、その瞳の奥を見つめ真意を探ろうとするが、そこからは何も読み取れなかった。
不安そうにしているアリエルをなだめるようにエルヴェは頬を優しく撫でた。
「君を怖がらせてしまったかな? だが安心するといい、君のことは必ず守るから」
そう言うと額にキスした。
アリエルは帰りの馬車の中でぼんやり今日あったことを考えた。お茶会でエルヴェがアリエルを大切な人と公表したことや、王妃殿下と話をしたりと、アリエルにとって怒涛の一日であった。
しかもアリエルは今日から屋敷ではなく違う場所で匿われることになったのだ。
「お嬢様? 大丈夫ですか? 今日はお疲れでしょうが、屋敷に戻られたらすぐに支度しなければなりませんよ?」
「アンナ、そうね。ぼんやりしている場合ではありませんでしたわね。それにしても、殿下が貴女を連れてくるように言ってくださったから私とても心強いわ」
「はい、私もお嬢様と一緒にいられてとても嬉しいです。それにしても王太子殿下が私のことをなぜかよくご存じで、とても褒めていただきましたから本当に驚きました」
そうなのだ、なぜかエルヴェはアンナのことをよく知っていた。
話を聞くとアリエルの侍女になった経緯まで知っているようで『信頼できる侍女だから連れてくるように』とあえて言ってきたほどだった。
アンナはアリエルに近しい存在なので、調べたのかもしれないとアリエルは思った。
そんな中、オパールは数名の貴族の挨拶を無視した。
「お姉様、この人たちには挨拶を返す必要はありませんわ。舞踏会でドレスを汚されたお姉様を笑っていましたもの」
そう言って相手を睨みつけて言った。
「私が気づいていないとでも?」
するとその貴族たちは顔をひきつらせながら、すごすごと下がっていった。そんな貴族たちの後ろ姿をオパールは軽蔑の眼差しで見つめる。
「お姉様は優しすぎます。エルヴェが『大切な人』と勝手に発表してしまったからには、よろしくない人たちもお姉様に群がってきますわ。これからはもっと厳しくしなくては」
そう言うとアリエルを見つめる。
「でも大丈夫ですわ、私がお姉様をこれからも守って差し上げますわね」
エルヴェが横で咳払いをする。
「オパール、それは私の役目だ」
「あら、社交界では女の私でないとできない守り方もありますわ。エルヴェ、私のことは味方につけておいたほうがよくてよ?」
「それもそうかもしれないが……」
「そんなことよりお姉様、お茶会を楽しみましょう。向こうに席を用意してますわ行きましょう」
そう言ってオパールはアリエルの腕を引いて一番豪華なテーブルへ向かって歩いて行く。アリエルが振り向いてエルヴェを見るとエルヴェは微笑んで頷いたので、そのままオパールに腕を引かれるまま歩く。
と、向かっているテーブルにベルトラード・ド・モンフォール・アスチルべ王妃殿下が座っていることに気づく。
慌てるアリエルを気にせずついにオパールは王妃殿下の面前にアリエルを立たせた。
突然王妃殿下の前に連れてこられアリエルはとても緊張したが、子供の頃からエルヴェの横に立てるよう遊ぶ暇もなく様々な礼節やマナーを徹底的に学んできたのは、こういうときのためだったことを思い出し気持ちを切り替えると、立ち止まりゆっくりとカーテシーをした。
その横で無邪気にオパールが言った。
「王妃殿下! お久しぶりです」
「オパール、久しいわね。それにしても貴女はアリエル嬢がよほどお気に入りのようね」
「はい! お姉様とは親しくさせてもらってますわ!」
「そう。でもアリエル嬢に迷惑をかけないようになさい」
そう言って微笑むとエルヴェに向き直る。
「ところでエルヴェ、先ほどはとても騒がしかったけれど、問題は解決したのかしら?」
「はい、一応は。これからさらに追及せねばなりませんが……」
それを聞いてベルトラードは楽しそうに頷く。
「そう、やるならしっかりなさい」
そう言うとアリエルに目を止めた。
「噂には聞いていたけれど、可愛らしいお嬢さんね。貴女双子なのでしょう? でも、妹とは似ても似つかないわねぇ」
「そう仰るのは近しいものたちだけです」
アリエルは緊張しながらそう答えた。変なことを言ってしまったかもしれないと思いながら返事を待っていると、ベルトラードは一瞬驚いた顔したのちふっと笑った。
「面白い子ね。さぁ、隣に座りなさい」
エルヴェが椅子を引いて隣に座るように促したのでアリエルはそこへ座ると、おどおどせず恥じることのないよう堂々と振る舞うことにした。
隣に座ったアリエルにベルトラードは質問した。
「エルヴェに気に入られているようですけれど、それがどういう意味か貴女わかっていて?」
アリエルは微笑んで返す。
「王妃殿下、恐れながら申し上げます。そもそも気に入られたからと言ってそれがなんだと仰るのでしょうか。私如き存在は、言われたことにただただ翻弄されるばかりでございます」
「では貴女はただそれを受け入れると?」
「いいえ、王太子殿下が仰ったからと言ってそれが現実になるとは言い切れません」
そうハッキリ答えるアリエルを見つめ、ベルトラードは目を細めた。
「素晴らしいわね。貴女、見た目とは違って強い意思を持っている。私もオパール同様、貴女のことをとても気に入ったわ」
アリエルは微笑み返す。
「至極光栄に存じます」
その横からオパールが無邪気に答える。
「王妃殿下もですの?! 嬉しいですわ! 流石お姉様ですわ」
ベルトラートはそんなオパールに優しく微笑む。
「今日はとても楽しく過ごせそうね……」
そう言うと優雅にティーカップを持ち上げた。
このあと、アリエルは緊張して何を話したのか覚えていないほどだった。気がつくとエルヴェにエスコートされ馬車の前に立っていた。
「アリエル? 大丈夫か? 今日は疲れてしまったかな?」
我に返ったアリエルは慌てて返事をする。
「は、はい。大丈夫です」
「そうか、ならいいんだが。ところで、今日は私が君を愛していることがアラベルにも知られてしまっただろう?」
「えぇ、そうかもしれま……」
そこまで言ってエルヴェに愛していると言われたことに気づいたアリエルは顔を赤くして俯いた。
そんなアリエルを愛おしそうにエルヴェは見つめる。
「先ほど王妃殿下の前ではあんなにも堂々としていたというのに、本当に君という人は……」
そう言うとしばらく沈黙が続いた。アリエルがそっと顔を上げると、エルヴェはじっとアリエルを熱のこもった視線で見つめており、アリエルは恥ずかしさから慌ててもう一度俯くとなんとか消え入りそうな声で言った。
「あの、殿下。アラベルにそれが知られてしまったとして……なんでしょうか?」
エルヴェはハッとすると答える。
「そうだった、君がとにかく愛らしくて思わず見とれてしまっていた。そう、アラベルにそれが知られてしまった今、君をあの屋敷へ置いておくのはとても危険だと思う。だから君のことは今日から匿わせてもらう」
「殿下、どうしてそのような……」
アリエルが驚いてエルヴェの顔を見上げながらそう言うと、エルヴェはつらそうな顔をして答える。
「どうしてそんなことを私が言うのか? それはあの女の本質をよく知っているからだ。そして、これから起こりうることを私は知っている」
そう言って無理に作り笑顔をアリエルに向ける。
「殿下?」
アリエルはエルヴェが何を知っているのか、その瞳の奥を見つめ真意を探ろうとするが、そこからは何も読み取れなかった。
不安そうにしているアリエルをなだめるようにエルヴェは頬を優しく撫でた。
「君を怖がらせてしまったかな? だが安心するといい、君のことは必ず守るから」
そう言うと額にキスした。
アリエルは帰りの馬車の中でぼんやり今日あったことを考えた。お茶会でエルヴェがアリエルを大切な人と公表したことや、王妃殿下と話をしたりと、アリエルにとって怒涛の一日であった。
しかもアリエルは今日から屋敷ではなく違う場所で匿われることになったのだ。
「お嬢様? 大丈夫ですか? 今日はお疲れでしょうが、屋敷に戻られたらすぐに支度しなければなりませんよ?」
「アンナ、そうね。ぼんやりしている場合ではありませんでしたわね。それにしても、殿下が貴女を連れてくるように言ってくださったから私とても心強いわ」
「はい、私もお嬢様と一緒にいられてとても嬉しいです。それにしても王太子殿下が私のことをなぜかよくご存じで、とても褒めていただきましたから本当に驚きました」
そうなのだ、なぜかエルヴェはアンナのことをよく知っていた。
話を聞くとアリエルの侍女になった経緯まで知っているようで『信頼できる侍女だから連れてくるように』とあえて言ってきたほどだった。
アンナはアリエルに近しい存在なので、調べたのかもしれないとアリエルは思った。
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