モブの私がなぜかヒロインを押し退けて王太子殿下に選ばれました

みゅー

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 恥じらうケイトを、カリールは愛おしそうに見つめると、前方に視線を戻し話を続ける。

「あのあと、話しかけてくるヒロイエンの娘を振り払い、私は君を追いかけようとしたのだが、彼女は私の手をつかみそれを邪魔した。そして突然『貴方はわたくしに興味があるはずですわ!』と、支離滅裂なことを言い出してね。それからの彼女は私に執着し、信じられないぐらいのつきまといが始まった。その執着はときに恐ろしく感じるほどだったが、ヒロイエンの手前、そう無下にもできずに困っていた。それに、彼女は私に近づく者には容赦なかった」

 カリールはつらそうな顔をしてため息をついた。

「私は彼女から君を守るため、君に近づくことすらできなかった。だが、そんなことは終わりにしなければと、ヒロイエンにすべてを話した。彼は納得し娘をなんとかしようとしたが、彼女の暴走は止まらなかった。ヒロイエンと話し合い今回のことを利用して別棟に呼び、毎日彼女に私から直接説得することにした。それで選定中に彼女が納得すればそこで終わるはずたったが、結果はあの通りだ」

 驚くことばかりで、ケイトが無言になっているとさらにカリールはもっと驚くようなことを言った。

「それと、彼女はすでに君への攻撃を始めていたよ。自分の侍女を使い、社交界に君のことを貶めるような噂話を流していた。彼女と一緒になって、君を侮辱した貴族たちは一斉に爵位を下げることにした。それに、彼らは大勢の前であんな失態をやらかした令嬢と一緒にいたのだから、今後社交界でもつまはじきになるだろうな。もちろん私も彼らには厳しく接することにしている」

「ヒロイエン公爵令嬢は今後どうなりますの?」

 カリールは優しく微笑んだ。

「君は優しいね。こんなことをされても彼女のことが気になるのか?」

「はい、少しは……」

「ヒロイエンも娘を見捨てた。私と少しでも接点のあった令嬢を暴漢に襲わせたり、貶めるようなこともしていたようだから、それは当然のことだろう。罪に問われたとき、なんの後ろ楯もない令嬢がどうなるか君ならわかるだろう? これから彼女は一生、日の光を見ることすら叶わないだろうな」

「そうですのね……」

「君の責任ではないのだから、落ち込んではいけないよ。彼女は自分自身で、しっかりその罪を償わなくてはいけない。それに、私は彼女のお陰で君と過ごすはずの時間を失った。今ではもっと早くに対策すればよかったと後悔している」

「でも殿下がわたくしを守ろうとしてくださったことは確かですわ」

 そこで、ケイトはずっと気にしていたことを質問した。

「ところで、わたくしの部屋にあるあのドアはどちらに続いておりますの? わたくしの荷物があそこから運び出されましたから、ずっと出口かと思っていたのですが、屋敷へ戻ったらわたくしの荷物がありませんでしたわ。どちらへ運ばれたのかご存知でしょうか?」

「あれか、あれは私たちが使うはずの部屋に繋がっている。その部屋の隣に護衛の部屋があってね、なにかあればすぐに駆けつけられるようになっていた。それにあの部屋は、今後君と私が結婚したときに君が一人になりたいときに使うよう、新しく改築して作らせたものなんだ。まぁ、一人になりたいなんて思わせるようなことは、絶対にないと思うが。それと、君の荷物は一足先に私たちの部屋へ運んである」

「そうなんですのね、ありがとうございます。殿下はそうやって長い間、ずっと影でわたくしを守ってくださっていましたのね?」

 ケイトがそう言うと、カリールは立ち止まり改めてケイトの方を向いて見つめた。

「もっとよい方法があったのかもしれない。だが、君を守るのに私も必死だったからね。そして、恋い焦がれた私は今回やっと君と話をすることができて、とても幸せだった。しかも、話してみればやはり思っていた通り、君は真面目で誠実でそしてとても優しい女性だった。あの二週間の間にどうやってでも君を振り向かせるために努力した。あの二週間は実は君が私を選んでくれるためのテスト期間でもあったんだよ」

 ケイトもカリールを見つめ返す。

わたくしは、ずっと自分は選ばれないと思っておりました。ですがここでの経験はとても楽しいものでしたし、それに毎日殿下と話すうちに心惹かれておりましたから、もう殿下とはこのように会えないのかと思ってつらかったですわ」

「まさか君がそんなふうに思っていたとは。君に本当のことを伝えずにいてすまなかった。これからは、君のそばにいてすべての苦しみや悲しみからも守ることを誓うよ。愛している」

 そう言うと、カリールは顔を近づけた。それを見てケイトはそっと瞼を閉じた。


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