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「移動している途中で寒くなったからな、炬燵に入りに来た」
それだけ?!
シーディは呆れつつ、ユン様らしいと内心苦笑しながら答える。
「でしたら、どうぞゆっくりしていってください」
そう言ってシーディが微笑むと、ユニシスも頬杖をついてシーディに微笑み返す。
「なに、せっかく私がここに来てやったのだ。お前が質問したいことがあるなら、今なら答えてやってもかまわない。なにか質問があるか?」
そう言われ、シーディは少し考えてから答えた。
「ありがとうございます。では、ひとつだけ。運命の乙女候補として集まった私たちは、どのような特徴から選ばれたのでしょうか」
すると、ユニシスは少し驚いた顔をした。
「なんだ、聞いていないのか。お前たちはサンタスが予言した場所で同じ年の同じ日に生まれた。それで集められたのだ。お前の生まれは藤の月の十五日だろう?」
それを聞いて、シーディは血の気が引く思いがした。なぜならシーディは藤の月の三十日生まれだったからだ。
「陛下、私は陛下に申し上げないといけないことがあります」
「どうした、顔色が悪いな」
「はい、あの、私の誕生日は藤の月の三十日なのです」
しばらくお互いに見つめ合うと、ユニシスが笑い出した。
「あの、陛下。私は追放でしょうか?」
「いや、かまわない。まさか馬鹿正直に本当のことを話すとは」
「ですが、嘘はつけません」
ユニシスはしばらくじっとシーディを見つめた。
「どうせ藤の月の十五日になるまで、たったの二ヶ月半だ。お前がここにいようがいまいが後宮にとっては大差ないことだ。他のものには言わずに黙って残るがいい」
そう言ったあと付け加える。
「それに、今日せっかく隠れて暖をとれる場所を見つけて確保したというのに、それがなくなるのは困る」
そう言うとユニシスはそのまま寝転がってこちらに背を向けた。
その姿を見ながら、これからユニシスは度々ここに炬燵に入りに来るのだと思いシーディは少し気が重くなった。
自分は運命の乙女でないことがわかったのだ、数ヶ月すれば村へ帰れるだろう。だが、このままではまた以前のように寵姫にされるのではないか? そして飽きたらまた捨てられてしまうのではないか?
そんなことを考え少し不安になりながら、ユニシスに気づかれぬようにため息をついた。
だが数日後、シーディはユニシスよりも頭を悩ませられる出来事に遭遇するのだった。
それは、カーリムの習い事で毎年後宮で行われる建国の祝い日の作法を学ぶために、特別な祝い膳のひとつひとつの意味や食べ方などを学ぶことになった時のことだった。
全員の前に祝い膳が並べられる。が、シーディのお膳だけ違うものが運ばれてきた。
他のお膳には綺麗に盛り付けされた、色とりどりの美しい料理が特別にあつらえたであろう器に盛り付けられ、品よく並んでいる。
だが、シーディのお膳の上には大皿に山盛りのコジ村の郷土料理が盛られていた。そして、例のごとくタイレルとスエインがクスクスと笑っている。
シーディは悔しいというより、習い事の席でシーディにこのお膳を配膳させるようどうやって手配したのかという疑問と、わざわざコジ村の郷土料理を調べたその努力に感心した。
しかもこの郷土料理にはコジ芋と呼ばれる、コジ村原産の芋が使われている。入手するだけで大変だったろう。
そんなことを考え、少し感動しながら料理を見つめているとそれに気づいたカーリムが低い声でそばにいる使用人に言った。
「この膳を運んだものを打ち首にせよ。それに直ちにこの膳を下げろ」
シーディは慌ててこれを仕組んだであろう他の候補たちを見るが、誰もが自分には関係ないといった感じでそっぽを向いている。
自分たちがやったことで、誰かの命が奪われるかもしれないというのによくも平気でいられるものだ。
そう思いながらシーディはカーリムに訴える。
「先生、私は今感動していたのです。この料理はコジ村の者しか知らない料理ですし、材料を集めるのにも大変苦労したはずです」
そう言うと、取り皿を手に大皿から煮物をよそうと口に運び大袈裟に頷く。
「うん、美味しい。味付けもちゃんと再現されています!!」
そして、コジ芋を箸で取りカーリムに見せる。
「それにこのコジ芋! これはコジ村でしか栽培されていないはずです! ですからわざわざ輸送するのは手間のかかることだったと思います。それにこの料理、私がとても好きな料理でこの膳を運んでくれた者にも、作ってくれた者にもお礼を言いたいぐらいです。それに……」
そこでカーリムはしゃべり続けるシーディを制した。
「わかった、わかったから。君の気持ちはわかったが、しかし……」
そこで、横から声がかかる。
「どうした、なんの騒ぎだ」
全員がその声の方を見るとユニシスが立っており、慌てて頭を下げる。
カーリムは頭を下げたまま答える。
「本日は祝日の膳について教養を深めていたところでございます」
「そうか、わかった。私は様子を見に来ただけだ。全員頭を上げよ」
全員が頭を上げユニシスを見つめると、ユニシスはシーディの膳に目を止めた。そしてシーディの膳の前まで行くとそこに腰をおろした。
「祝い膳にこのような料理があるとは、私も知らなかった」
そう言って微笑むと、シーディがよそった小皿に手を伸ばす。
「陛下、いけません。それは私が手をつけたものです」
それを聞いてユニシスは微笑む。
「では毒見がすんでいるということだな」
そう言って、そのままその取り皿の煮物を食べ始める。
「これはうまいな。この芋はなんという芋だ?」
「コジ芋にございます」
「そうか、気に入った。今後はこの料理を定期的に私の膳に出すように」
そう言って立ち上がると、カーリムに言った。
「カーリム、彼女らの不始末はお前の監督がなっていないからだ。気を引き締めよ」
「はい、申し訳ございませんでした」
カーリムはそう答えると頭を深々と下げた。
「まぁ、今回はいい」
そう言ってシーディを見つめる。
「お前の故郷の村は素晴らしい村だ」
そう言ってその場を去っていった。
それだけ?!
シーディは呆れつつ、ユン様らしいと内心苦笑しながら答える。
「でしたら、どうぞゆっくりしていってください」
そう言ってシーディが微笑むと、ユニシスも頬杖をついてシーディに微笑み返す。
「なに、せっかく私がここに来てやったのだ。お前が質問したいことがあるなら、今なら答えてやってもかまわない。なにか質問があるか?」
そう言われ、シーディは少し考えてから答えた。
「ありがとうございます。では、ひとつだけ。運命の乙女候補として集まった私たちは、どのような特徴から選ばれたのでしょうか」
すると、ユニシスは少し驚いた顔をした。
「なんだ、聞いていないのか。お前たちはサンタスが予言した場所で同じ年の同じ日に生まれた。それで集められたのだ。お前の生まれは藤の月の十五日だろう?」
それを聞いて、シーディは血の気が引く思いがした。なぜならシーディは藤の月の三十日生まれだったからだ。
「陛下、私は陛下に申し上げないといけないことがあります」
「どうした、顔色が悪いな」
「はい、あの、私の誕生日は藤の月の三十日なのです」
しばらくお互いに見つめ合うと、ユニシスが笑い出した。
「あの、陛下。私は追放でしょうか?」
「いや、かまわない。まさか馬鹿正直に本当のことを話すとは」
「ですが、嘘はつけません」
ユニシスはしばらくじっとシーディを見つめた。
「どうせ藤の月の十五日になるまで、たったの二ヶ月半だ。お前がここにいようがいまいが後宮にとっては大差ないことだ。他のものには言わずに黙って残るがいい」
そう言ったあと付け加える。
「それに、今日せっかく隠れて暖をとれる場所を見つけて確保したというのに、それがなくなるのは困る」
そう言うとユニシスはそのまま寝転がってこちらに背を向けた。
その姿を見ながら、これからユニシスは度々ここに炬燵に入りに来るのだと思いシーディは少し気が重くなった。
自分は運命の乙女でないことがわかったのだ、数ヶ月すれば村へ帰れるだろう。だが、このままではまた以前のように寵姫にされるのではないか? そして飽きたらまた捨てられてしまうのではないか?
そんなことを考え少し不安になりながら、ユニシスに気づかれぬようにため息をついた。
だが数日後、シーディはユニシスよりも頭を悩ませられる出来事に遭遇するのだった。
それは、カーリムの習い事で毎年後宮で行われる建国の祝い日の作法を学ぶために、特別な祝い膳のひとつひとつの意味や食べ方などを学ぶことになった時のことだった。
全員の前に祝い膳が並べられる。が、シーディのお膳だけ違うものが運ばれてきた。
他のお膳には綺麗に盛り付けされた、色とりどりの美しい料理が特別にあつらえたであろう器に盛り付けられ、品よく並んでいる。
だが、シーディのお膳の上には大皿に山盛りのコジ村の郷土料理が盛られていた。そして、例のごとくタイレルとスエインがクスクスと笑っている。
シーディは悔しいというより、習い事の席でシーディにこのお膳を配膳させるようどうやって手配したのかという疑問と、わざわざコジ村の郷土料理を調べたその努力に感心した。
しかもこの郷土料理にはコジ芋と呼ばれる、コジ村原産の芋が使われている。入手するだけで大変だったろう。
そんなことを考え、少し感動しながら料理を見つめているとそれに気づいたカーリムが低い声でそばにいる使用人に言った。
「この膳を運んだものを打ち首にせよ。それに直ちにこの膳を下げろ」
シーディは慌ててこれを仕組んだであろう他の候補たちを見るが、誰もが自分には関係ないといった感じでそっぽを向いている。
自分たちがやったことで、誰かの命が奪われるかもしれないというのによくも平気でいられるものだ。
そう思いながらシーディはカーリムに訴える。
「先生、私は今感動していたのです。この料理はコジ村の者しか知らない料理ですし、材料を集めるのにも大変苦労したはずです」
そう言うと、取り皿を手に大皿から煮物をよそうと口に運び大袈裟に頷く。
「うん、美味しい。味付けもちゃんと再現されています!!」
そして、コジ芋を箸で取りカーリムに見せる。
「それにこのコジ芋! これはコジ村でしか栽培されていないはずです! ですからわざわざ輸送するのは手間のかかることだったと思います。それにこの料理、私がとても好きな料理でこの膳を運んでくれた者にも、作ってくれた者にもお礼を言いたいぐらいです。それに……」
そこでカーリムはしゃべり続けるシーディを制した。
「わかった、わかったから。君の気持ちはわかったが、しかし……」
そこで、横から声がかかる。
「どうした、なんの騒ぎだ」
全員がその声の方を見るとユニシスが立っており、慌てて頭を下げる。
カーリムは頭を下げたまま答える。
「本日は祝日の膳について教養を深めていたところでございます」
「そうか、わかった。私は様子を見に来ただけだ。全員頭を上げよ」
全員が頭を上げユニシスを見つめると、ユニシスはシーディの膳に目を止めた。そしてシーディの膳の前まで行くとそこに腰をおろした。
「祝い膳にこのような料理があるとは、私も知らなかった」
そう言って微笑むと、シーディがよそった小皿に手を伸ばす。
「陛下、いけません。それは私が手をつけたものです」
それを聞いてユニシスは微笑む。
「では毒見がすんでいるということだな」
そう言って、そのままその取り皿の煮物を食べ始める。
「これはうまいな。この芋はなんという芋だ?」
「コジ芋にございます」
「そうか、気に入った。今後はこの料理を定期的に私の膳に出すように」
そう言って立ち上がると、カーリムに言った。
「カーリム、彼女らの不始末はお前の監督がなっていないからだ。気を引き締めよ」
「はい、申し訳ございませんでした」
カーリムはそう答えると頭を深々と下げた。
「まぁ、今回はいい」
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そう言ってその場を去っていった。
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