竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです

みゅー

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 後宮にあがってから二ヶ月が過ぎた。花見の宵を迎え候補たちも正式にそれに参加することになっていた。この日は、今まで習ったことを発揮できる場でもあった。

 後宮には至るところに桜の木が植えられており、この時期になると桜が咲き乱れ、花びらが舞いとても美しい光景となる。

 それを楽しみながらシーディは、舞台のある場所へ向かう。

 この日は桜の花びらが舞う舞台で、芸妓が美しく舞うのをゆったりと鑑賞できるまたとない機会であり、シーディはこれをとても楽しみにしていた。

 ところが、会場に着くと直ぐに舞台の裏に連れていかれそうになった。

「あの、どうして舞台裏に連れて行くのですか?」

 そう宮女たちに問うと、宮女は不思議そうな顔で答える。

「スエイン様のお父上であらせられるシャリス様から、シーディ様が今日は舞を披露するとお聞きました」

 はめられた!! 

 シーディは怒りを覚えた。スエインはいくら舞を練習しても上達しないシーディを見て、恥をかかせようと父親に言って舞台の上に立たせようとしたのだろう。

 こうなったら完璧な舞を見せてやろうとシーディは気持ちを切り替えた。どうせならと、前世で一番得意だった永久の舞を披露することにした。

 準備を整え舞台袖に立つと、スエインが笑いをこらえているのが見えた。

 笑っているけれど、本気で私を怒らせたことを後悔させてあげる。

 そう思いながら、楽団の太鼓の音に合わせて一歩踏み出す。

 シーディの迫真の舞に、見物人が息を飲んでいるのがわかった。前世でもシーディの舞は定評があった。祝いの時にはよく舞うことをお願いされたものだった。

 舞いながらスエインを見ると、青ざめているのが見えた。

 驚いた? 残念だったわね。

 そう思いながら舞を終えると、拍手喝采が起こる。それに応えるようにお辞儀をするとシーディは舞台袖に戻った。

 だが、観客席の興奮は冷めることなくずっと拍手が続いたため、シーディはもう一度舞台へ戻る。すると更に拍手が大きくなった。

 シーディは苦笑しながらも、期待に応えもう一度舞うことにして楽団に月の舞を舞うことを伝えた。

 会場は静まりかえり、シーディの舞に集中している。

 舞いきると拍手喝采の中、シーディは舞台の上で優雅にお辞儀をし舞台袖へ下がり楽屋へ向かった。

 そこでは他の芸妓たちも慌ただしく準備していたが、シーディが戻ってくると次々にシーディを褒め称えた。

 そこへタイレルとスエインが入ってきた。本当は関係者以外は入れないはずだが、親のコネを使って入れてもらったのだろう。

 楽屋に入ると、ふたりは真っ直ぐにシーディの方へ歩いてきた。そして、シーディの目の前で立ち止まるとタイレルが言った。

「貴女、今まで嘘を言ってたのね。舞が苦手だなんて。すっかり騙されたわ」

 シーディは微笑み返す。

「いいえ、本当に昨日まではとても苦手だったんですよ? 今日舞うことができたのは大舞台で、いつもと違う力が発揮されたからかもしれないですね」

 スエインは眉根を寄せた。

「本当にそんなことがあるのかしら?」

 そう答えると、しばらく考えてから言いにくそうな顔で言った。

「貴女、もしかして呪術を使ったの? 後宮の舞台上は神に舞を捧げる神聖な場、呪術を使ったのなら大変なことよ」

 そこで、芸妓たちが口を挟んだ。

「舞台上は竜帝陛下の加護によって、聖なる結界が張られています。いかなる呪術も効きませんし、そのようなことがあれば呪術者もただではすまないことになります」

 それを聞くとスエインは悲しそうにため息をついた。

「なら、どんな方法を使ったの? シーディ、正直に話した方がいいと思うわ」

 あくまで、シーディが上手に舞えることを認めたくないようだ。だが、なにもずるをしていないことを証明するなんてできるはずがない。

「なにをしているのかな?」

 声のした方を見ると、楽屋の入口にカーリムが立っていた。カーリムは微笑みながらゆっくりとこちらに近づくと、シーディたちを見つめる。

「どうした、黙っていないでなにをしていたのか話してごらん」

 もう一度カーリムにそう言われ、スエインが悲しそうに答える。

「私たちはシーディに騙されていたのが悲しくて、それでなにか事情があったのか聞こうとしたんです」

「騙されたって、舞が上手に舞えたこと?」

「はい、そうです。せっかくお友達になれたんですもの、そういう隠し事はしないでほしかったです」

 そう答えると、スエインはぽろぽろと涙を流した。カーリムは穏やかに言う。

「じゃあシーディの意見を聞こう」

 そう言って、シーディの方へ向き直る。

「君はなぜ舞が得意なことを隠していたの?」

「自慢しているようで、恥ずかしかったからです。それに、なんでも出来てしまうとシーディは完璧と思われるのも嫌でした。それと、舞が上手かろうと下手だろうと、それを隠すことが騙すことに繋がるなんて思いもしませんでしたし。誰しも隠し事のひとつやふたつはあると思います」

 カーリムは大きく頷くとスエインに尋ねる。

「スエイン、納得した?」

「で、でも隠すなんて信用されてないってことですよね? そんなの酷いと思います」

 話が通じない。どんな理由を言っても難癖をつけてくるつもりなのだろう。それにカーリムが来る前に言ってたことと、今言っていることも違う。

 どうしたものか。

 シーディが泣くスエインを見て困っていると、カーリムが静かに言った。

「うん、スエイン? 君がそこまでシーディを責めるのなら、舞が苦手だと言っているシーディを舞台に立たせるよう父親に働きかけた理由を僕は聞きたいんだけど?」

 突然追求の矛先が自分に向いたことにスエインは慌てた様子を見せた。

「えっ? それは、シーディは舞が得意だと知ったからです」

「うん、いつ? どうやって? シーディ、君は舞が得意だと誰かに言ったことがあるの?」

 突然のその質問にドキッとした。どう答えれば良いか迷いながら答える。

「えっと、ひとりだけ知っている人物がいます。その人以外の人には一切話してません」

 それを聞くとスエインは目を輝かせた。

「その人物から話が漏れたんです。それで私の耳にも届いたんです」

 カーリムはそれを聞いて吹き出した。

 スエインは驚いてカーリムを見つめていたが、どういうことなのか察したらしく、苦虫を噛み潰したような顔をした。

「気づいた? そのシーディが話した相手は僕なんだ。もちろん僕は誰にも言ってない。ということは、このことは誰にも知られていないことになる。だから君がシーディが舞が本当は得意だってことは知りようがないんだよね」
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