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Three
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しおりを挟む「ねぇ、那央くん。どうして、好きになった人が自分を好きになってくれる可能性は、みんなに平等じゃないのかな」
「まだ平等の話を考えてたんだ」
「だって、どう考えても不公平だって思うから。その人を好きって思う気持ちには代わりがないはずなのに、両想いになれるのはひとりしかいなくて。それって宝くじに当たるみたいなラッキーで。それ以外の人はみんな、悲しい思いをするんだよ」
「だけど、恋愛なんてそういうもんじゃん」
「そういうもん、か」
那央くんがハハッと軽く笑って、砂浜にすとんとお尻をおろす。わたしは打ち寄せてくる波を見つめてしばらくジッと考えてから、ゆっくりと口を開いた。
「わたし、健吾くんのことが好きなんだ。父親としてではなく、恋愛感情で」
わたしの隣で、那央くんが息を飲みこむ。突然の告白を聞かされた彼は、困っているのか引いてしまったのか。何も言わない。
だけど、適当に躱されたり、冗談にして笑われたりするよりもずっと良かった。
仲の良い友達にすら打ち明けられなかった。健吾くん本人にすら、誤魔化してはぐらかされそうになったわたしの気持ち。
那央くんがそれを黙って受け止めてくれただけで、抱えていたものが少し軽くなった気がする。
「わたしのお母さんと健吾くんってね、実は実家が隣同士の幼なじみなの。健吾くんの両親は共働きだったから、健吾くんが小学生のときは、お母さんの実家で預かって、お母さんが勉強をみてあげたり、一緒にごはんを食べたりしてたみたい。健吾くんにとってのわたしのお母さんは、物心ついたときからそばにいる優しくて綺麗なお姉さんで……。憧れの人だったんだって」
左頬に、那央くんの視線を感じる。那央くんは何も言わなかったけれど、頬に感じる視線がわたしの話を待ってくれているような気がした。
「ふたりは年が十歳離れてて、初めて健吾くんに会ったときも、お母さんはわたしに『健吾くんは弟みたいなものなんだよ』って、紹介してくれた。わたしもそれを信じてた。だけど……、違った」
頭で考えるよりも先に言葉がぼとぼとと溢れ出してきて、止まらなくて。ずっと心の中に溜まっていた泥を落とす作業でもしてるみたいだ。
わたしが初めて健吾くんに会ったのは、実の父親が亡くなって少し経った頃だった。
夏休みで母方の祖母の家に行ったとき、母が社会人になったばかりの健吾くんとひさしぶりに再会したのだ。
母が夫を病気で亡くしたことを知った健吾くんは、わたし達親子のことを心配してとても気遣ってくれた。
当時小学生だったわたしにも優しくて、週末に勉強を教えてくれたり、車で遊びに連れて行ってくれたりもした。
大好きだった父がいなくなって哀しかったけど、健吾くんが会いに来てくれると明るく楽しい気持ちになれた。かっこよくて、優しくて、頼りになるお兄さん。そんな健吾くんのことをわたしが好きになったのは、ごく自然な流れだったと思う。
だけど、健吾くんが見ていたのはわたしではなくて母だった。
「お母さんも、最初は本当に弟みたいって思ってたのかもしれない。だけど、お父さんが亡くなって、健吾くんに支えてもらってるうちに好きになっちゃったのかな。わたしが気付かないあいだにふたりは恋人同士になってて。結婚まで決めちゃってた」
それなのに、わたしは何も知らずに健吾くんに恋してて。いつか健吾くんがわたしを好きにならないかなって思ってた。
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