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マルドゥアの話。
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先ほどの会話に、何度も出てきたマルドゥアという名前。
私はその方についてよく知りません。
しかしエリクル様の弟だという事実、それに旦那様の発言の様子から、その方が放っておけない存在だということがわかります。
「今すぐロマドに向かってなんとかしなくては、マルドゥアの命が危ない」
「……でもアル、動けないだろ」
全速力でアストロに戻ってきた旦那様は、だいぶ限界が迫っているようでした。
無理をさせることはできません。
どうするか決めかねていた時、レオン様が「なあ」と声を上げました。
「よくわかんねぇけどさ。協力してやろうか?」
「いいのかい?」
「まー、ハドルに事情があったってわかったし。暇だしやってやるよ」
サラリと言いますが、かなりこれで心強くなりました。
それにマオ様も続いてくれます。
「俺も協力しよう」
「マオ様」
「ラティアンカには、世話になった」
「は?」
私にマオ様が笑いかけたので、旦那様がドスの効いた声を出します。
そんなに警戒しないでほしいのですが。
「ラティアンカは俺のだぞ」
「物扱いは嫌われるぞ? 旦那とやら」
「仲良くしてください」
ここで揉めてはキリがないのでやめてほしいですね。
嗜めるようにそう言えば、2人は不満げでしたが口を閉じてくれました。
「まさかアルとマルドゥアが繋がっていたとは思わなかったよ」
「俺もだな。ルシフェルを連れて話したのに、マルドゥアはお前のことを知らないと言っていた。……まあ、ルシフェルの千里眼は全てを見るから、あいにく言えなかったんだろうがな」
旦那様はルシフェル様ーーアレン様のことを思い出したのか、少し苦い顔をしました。
「さあ、状況を整理しよう。……ロールちゃん、悪いけど離れてもらっていいかい?」
「あ、えっと、ごめんなさい」
パッとエリクル様から離れたロールは、恥ずかしげにうつむきました。
エリクル様とロールに何やら甘い空気が流れますが、それを流すようにレオン様が大きく咳払いをします。
「で、どうなんだ」
「マルドゥアは王の首を取るつもりだったんだ。多少強引だけど、国を変えるにはそれが一番の方法だからね。といっても王の首を取るという表現は比喩だ。ロマドの王族が勇者の末裔ってのは……今更だけど知ってるよね」
「当たり前だ」
「その王様はもちろん強くなきゃいけない。マルドゥアに負ければ、メンツを保ってられないんだよ。歴代の王達も、息子に打ち負かされて王位を譲ってきた。だけど王様はマルドゥアに王位を譲りたくない。ことごとく邪魔をされてきた。計画っていうのは、王の周りの者を協力者達で抑え込むこと。その間にマルドゥアが勝てば、王位は何の問題もなくマルドゥアのものだ」
「……だけど、捕まったのか?」
レオン様の指摘に、エリクル様の表情が曇ります。
「アル。本当に、マルドゥアは捕まったのかい?」
「間違いない。水晶で連絡をしていた時、取り押さえられていた」
「となると……計画が漏れたのかな」
「俺は裏切り者がいると踏んだんだが」
そう言う旦那様に、「まさか!」とエリクル様は言い張りました。
「協力者達はロマドに不満を抱いていたんだ。そんな可能性は消したほうがいいよ」
「……そこまで信用できるんだな」
「信用っていうか、裏切るメリットがないわけ」
「王は優秀な人間なのか」
「腹立つけど、まあそうだね。ただ僕のことを信じ切ってたりするところ、詰めの甘さは目立つけどさ。そこそこ優秀なほうだよ。だから気づいたのかもね」
「俺達のやるべきことを、単刀直入に言えば?」
「マルドゥアを地下牢から救出して、王と戦わせる。協力者達とも連携を取ろう。まあ今の王宮の状態がわからないから、動きづらいけどね」
エリクル様の発言に、はっとしました。
今の私なら、王宮の状況がわかるかもしれません。
未来の私なら王宮に行くでしょうから。
目を瞑り、必死になって未来を探ります。
旦那様と一緒にいるところが見えてきました。
協力者の方達でしょうか。
周りにたくさんの人がいます。
地下牢に行くと、小柄な少年が1人幽閉されていました。
それがマルドゥアさんでしょう。
地下牢を壊せば、突然地下牢にたくさんの兵士が押し寄せてきました。
旦那様の「待ち伏せか」という、億劫げな声と共にーー
「ラティ様!?」
私の限界が来ました。
思わずロールに寄りかかれば、ロールは慌てて私の肩を持ちました。
「おい、ラティアンカ。どうしーー」
「未来を見ました」
「は……」
「私、力があったみたいです」
それだけで察してくれたのでしょう。
旦那様は、何とも言いづらそうな顔をして、私のことを覗き込みました。
「あったのか。力が」
「はい」
「……そうか。無茶は、しないでくれ」
「大丈夫です。それに、王宮の中の様子が少しわかりました」
この能力が齎すのはほとんど災いでしょうが……今は好都合です。
存分に利用させていただきましょう。
私はその方についてよく知りません。
しかしエリクル様の弟だという事実、それに旦那様の発言の様子から、その方が放っておけない存在だということがわかります。
「今すぐロマドに向かってなんとかしなくては、マルドゥアの命が危ない」
「……でもアル、動けないだろ」
全速力でアストロに戻ってきた旦那様は、だいぶ限界が迫っているようでした。
無理をさせることはできません。
どうするか決めかねていた時、レオン様が「なあ」と声を上げました。
「よくわかんねぇけどさ。協力してやろうか?」
「いいのかい?」
「まー、ハドルに事情があったってわかったし。暇だしやってやるよ」
サラリと言いますが、かなりこれで心強くなりました。
それにマオ様も続いてくれます。
「俺も協力しよう」
「マオ様」
「ラティアンカには、世話になった」
「は?」
私にマオ様が笑いかけたので、旦那様がドスの効いた声を出します。
そんなに警戒しないでほしいのですが。
「ラティアンカは俺のだぞ」
「物扱いは嫌われるぞ? 旦那とやら」
「仲良くしてください」
ここで揉めてはキリがないのでやめてほしいですね。
嗜めるようにそう言えば、2人は不満げでしたが口を閉じてくれました。
「まさかアルとマルドゥアが繋がっていたとは思わなかったよ」
「俺もだな。ルシフェルを連れて話したのに、マルドゥアはお前のことを知らないと言っていた。……まあ、ルシフェルの千里眼は全てを見るから、あいにく言えなかったんだろうがな」
旦那様はルシフェル様ーーアレン様のことを思い出したのか、少し苦い顔をしました。
「さあ、状況を整理しよう。……ロールちゃん、悪いけど離れてもらっていいかい?」
「あ、えっと、ごめんなさい」
パッとエリクル様から離れたロールは、恥ずかしげにうつむきました。
エリクル様とロールに何やら甘い空気が流れますが、それを流すようにレオン様が大きく咳払いをします。
「で、どうなんだ」
「マルドゥアは王の首を取るつもりだったんだ。多少強引だけど、国を変えるにはそれが一番の方法だからね。といっても王の首を取るという表現は比喩だ。ロマドの王族が勇者の末裔ってのは……今更だけど知ってるよね」
「当たり前だ」
「その王様はもちろん強くなきゃいけない。マルドゥアに負ければ、メンツを保ってられないんだよ。歴代の王達も、息子に打ち負かされて王位を譲ってきた。だけど王様はマルドゥアに王位を譲りたくない。ことごとく邪魔をされてきた。計画っていうのは、王の周りの者を協力者達で抑え込むこと。その間にマルドゥアが勝てば、王位は何の問題もなくマルドゥアのものだ」
「……だけど、捕まったのか?」
レオン様の指摘に、エリクル様の表情が曇ります。
「アル。本当に、マルドゥアは捕まったのかい?」
「間違いない。水晶で連絡をしていた時、取り押さえられていた」
「となると……計画が漏れたのかな」
「俺は裏切り者がいると踏んだんだが」
そう言う旦那様に、「まさか!」とエリクル様は言い張りました。
「協力者達はロマドに不満を抱いていたんだ。そんな可能性は消したほうがいいよ」
「……そこまで信用できるんだな」
「信用っていうか、裏切るメリットがないわけ」
「王は優秀な人間なのか」
「腹立つけど、まあそうだね。ただ僕のことを信じ切ってたりするところ、詰めの甘さは目立つけどさ。そこそこ優秀なほうだよ。だから気づいたのかもね」
「俺達のやるべきことを、単刀直入に言えば?」
「マルドゥアを地下牢から救出して、王と戦わせる。協力者達とも連携を取ろう。まあ今の王宮の状態がわからないから、動きづらいけどね」
エリクル様の発言に、はっとしました。
今の私なら、王宮の状況がわかるかもしれません。
未来の私なら王宮に行くでしょうから。
目を瞑り、必死になって未来を探ります。
旦那様と一緒にいるところが見えてきました。
協力者の方達でしょうか。
周りにたくさんの人がいます。
地下牢に行くと、小柄な少年が1人幽閉されていました。
それがマルドゥアさんでしょう。
地下牢を壊せば、突然地下牢にたくさんの兵士が押し寄せてきました。
旦那様の「待ち伏せか」という、億劫げな声と共にーー
「ラティ様!?」
私の限界が来ました。
思わずロールに寄りかかれば、ロールは慌てて私の肩を持ちました。
「おい、ラティアンカ。どうしーー」
「未来を見ました」
「は……」
「私、力があったみたいです」
それだけで察してくれたのでしょう。
旦那様は、何とも言いづらそうな顔をして、私のことを覗き込みました。
「あったのか。力が」
「はい」
「……そうか。無茶は、しないでくれ」
「大丈夫です。それに、王宮の中の様子が少しわかりました」
この能力が齎すのはほとんど災いでしょうが……今は好都合です。
存分に利用させていただきましょう。
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