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あなたは、幸せですか。
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「ありがとう。行ってみますね」
「うん」
弟から地図を受け取り、私達は風魔に乗り込もうとしました。
すると、兄が私のことを引き止めます。
「ラティアンカ! きっと、もうここには戻ってきたくないのかもしれないが……何か辛いことがあったら、頼ってくれ」
「! 姉さん! 何かあったら言ってね!」
優しくしてくれる2人は、本当に私のことを心配してくれているみたいで。
嬉しい反面、こう思うのです。
「しばらくそういう場面はないですよ。だって」
私には、旦那様がいますから。
◆ ◆ ◆
「ここだな。どうする? すぐに会うか?」
地図を元にしてたどり着いたのは、小さな一軒家でした。
そこに妹がいる。
「……いえ。妹は私のことを知りません。顔だけ、見て帰ります」
「そうか」
スゥ、と、息を吸い込んで、風魔を降ります。
私と同じ運命を辿ることになった妹。
今、どういう気持ちでそこにいるのでしょう。
そっと一軒家の窓から中を覗きます。
「………」
「見えたか?」
「っ、はい」
そこに、いました。
一目でわかりました。
妹は、美人さんでしたから。
「ラティアンカに似てるな」
「……あんなに綺麗じゃないですよ」
「ラティアンカは綺麗だ」
「ありがとうございます」
彼女は新しい家族と、幸せそうに笑っていました。
それを見ただけで酷くほっとしました。
よかった。
本当に、よかった。
「……あら?」
パチ、と、彼女と目が合いました。
慌ててその場から離れようとしましたが、彼女が家から出てきてしまいました。
「お客さん? ひょっとして、パンを買いに来たの?」
「パ、パン?」
「うち、パン屋なの。あれ? 違った?」
「……いえ、買いに来ました」
「そう! じゃあ来て」
妹に手招きされるまま家に入れば、そこには確かにたくさんのパンが並んでいました。
「どれがいい?」
「じゃあ、このパンと、このパンを」
「了解!」
元気よく返事をすると、妹がパンを紙袋に包んでくれました。
それを私に渡してくれます。
「ありがとうございます。ちなみに、お代は」
「あー、いいよ」
「え?」
「幸せそうなカップル見れたから。私、人の幸せが好きなの」
私達を見て、カラリと笑う彼女。
本当に真っ直ぐ育ってくれたようです。
「あなたはーー」
「ん?」
「あなたは、幸せですか」
「当たり前! とーっても幸せ!」
元気にそう言い放つと、彼女は首を傾げました。
「お姉さん、どこかで見たことあるんだよね……会ったことある?」
「……………いえ、気のせいですよ」
「そっか。ごめんね。また来てよ! 旦那さんもお姉さんも、美人さんだから!」
そのまま店を出ました。
旦那様が風魔に乗り込むと、私に尋ねました。
「よかったのか?」
「はい。あの子は幸せだと、笑っていましたから」
ずっと不安でした。
私に力がないと思っていた頃には、妹は力がある故に利用され、苦しんでいるのではないかと。
兄と弟がいるので乱暴な扱いを受けているわけではないと信じていましたが、それでも心配だったのです。
何も気負わず、ああして元気でいてくれた。
それだけでいいのです。
「……帰ろうか」
「そうしましょう」
私達の家に。
しばらく空けていたので、少し埃が積っていそうですね。
掃除で忙しくなりそうです。
◆ ◆ ◆
それから、何ヶ月かして。
アストロに再び顔を出すことになったのですが、旦那様が「あ」と声を上げました。
「忘れてた」
「何をですか?」
「……ビアンカ」
「ビアンカ?」
ビアンカ、といったら、幻想の花ではないですか。
そのビアンカがどうしたんでしょうか。
「ビアンカの花、花屋に任せっぱなしだった」
「え?」
◆ ◆ ◆
「あら~! アルじゃない! そちらのとっても可愛らしいお嬢さんは?」
「嫁だ」
「じゃあラティアンカちゃんってこの子!? キャア~! 可愛い!」
……この方が、ペティアさんですか。
最初に私が旦那様の恋人だと勘違いしたお方。
しかし、彼はまあ立派な男性でした。
確かに男性同士の恋愛もあるでしょうけど、ペティアさんと旦那様はそんな感じではないでしょうね。
「ごめんなさいね、ラティアンカちゃん。アタシのせいで誤解させちゃったんでしょ? 安心してね。アタシ、とっても可愛い奥さんいるから」
「そ、そうですか」
「ていうか、遅すぎよ~! ビアンカの花、枯れると思ってなかったの!?」
「……もう枯れてるよな」
ビアンカは、幻想の花です。
その名の通り枯れるのはとても早く、私がこの国を離れた時点でもう萎れていたのでしょう。
ところが。
「それがね、枯れてないの」
「え?」
「は?」
「あなたがとってきたの、本当にビアンカ?」
ペティアさんが見せたのは、淡い青をした豊かな花弁を持つ花。
それは確かに見事に咲いていました。
「………これ、ペルマナントじゃないですか」
「!?」
「図鑑で見たことあります」
ペルマナントは、ビアンカと違い、真反対の花だったはず。
確か永久の花といって、ビアンカより珍しいものです。
「アナタ、運いいわね……」
「とりあえず、もらう」
「はい、どーぞ」
ペティアさんから花を受け取り、微笑む旦那様。
旦那様と花って似合いますよね。
「……行こうか」
「はい」
◆ ◆ ◆
目的の地に降り立てば、見えたのは愛しい人達の背中。
彼らは何かに向かって座り込んでいました。
その何かは、分かりきっています。
「ロール」
「! ラティ様!」
「ラティアンカ嬢。アルも元気にしてた?」
「……まぁ」
「はは。上がりなよ」
ロールとエリクル様の家。
そこに向かう前に、ペルマナントの花をそこに置きます。
「美味しいお菓子が手に入ったんですよ~!」
「シャルロッテ。もうそろそろ制限しないと、太るよ」
「うぐっ!」
「太ってもロールは可愛いですよ」
「ラティ様~!」
「甘やかしちゃダメだよ」
「……お菓子ぐらい、いいんじゃないか?」
「アルも何言ってるの」
幸せってきっと、こういうことを言うんでしょうね。
何てないことで笑って、愛しい人と過ごす。
だって、自然と頬が緩むんですから。
私達が去った後。
その墓前には、ペルマナントの花が綺麗に備えられていました。
~完~
◆ ◆ ◆
ここまでお付き合いいただきありがとうございました!!
これにて本編を終了させていただきます。
番外編を置いてくので、よかったら見ていってください!!
本当にありがとうございました!!
「うん」
弟から地図を受け取り、私達は風魔に乗り込もうとしました。
すると、兄が私のことを引き止めます。
「ラティアンカ! きっと、もうここには戻ってきたくないのかもしれないが……何か辛いことがあったら、頼ってくれ」
「! 姉さん! 何かあったら言ってね!」
優しくしてくれる2人は、本当に私のことを心配してくれているみたいで。
嬉しい反面、こう思うのです。
「しばらくそういう場面はないですよ。だって」
私には、旦那様がいますから。
◆ ◆ ◆
「ここだな。どうする? すぐに会うか?」
地図を元にしてたどり着いたのは、小さな一軒家でした。
そこに妹がいる。
「……いえ。妹は私のことを知りません。顔だけ、見て帰ります」
「そうか」
スゥ、と、息を吸い込んで、風魔を降ります。
私と同じ運命を辿ることになった妹。
今、どういう気持ちでそこにいるのでしょう。
そっと一軒家の窓から中を覗きます。
「………」
「見えたか?」
「っ、はい」
そこに、いました。
一目でわかりました。
妹は、美人さんでしたから。
「ラティアンカに似てるな」
「……あんなに綺麗じゃないですよ」
「ラティアンカは綺麗だ」
「ありがとうございます」
彼女は新しい家族と、幸せそうに笑っていました。
それを見ただけで酷くほっとしました。
よかった。
本当に、よかった。
「……あら?」
パチ、と、彼女と目が合いました。
慌ててその場から離れようとしましたが、彼女が家から出てきてしまいました。
「お客さん? ひょっとして、パンを買いに来たの?」
「パ、パン?」
「うち、パン屋なの。あれ? 違った?」
「……いえ、買いに来ました」
「そう! じゃあ来て」
妹に手招きされるまま家に入れば、そこには確かにたくさんのパンが並んでいました。
「どれがいい?」
「じゃあ、このパンと、このパンを」
「了解!」
元気よく返事をすると、妹がパンを紙袋に包んでくれました。
それを私に渡してくれます。
「ありがとうございます。ちなみに、お代は」
「あー、いいよ」
「え?」
「幸せそうなカップル見れたから。私、人の幸せが好きなの」
私達を見て、カラリと笑う彼女。
本当に真っ直ぐ育ってくれたようです。
「あなたはーー」
「ん?」
「あなたは、幸せですか」
「当たり前! とーっても幸せ!」
元気にそう言い放つと、彼女は首を傾げました。
「お姉さん、どこかで見たことあるんだよね……会ったことある?」
「……………いえ、気のせいですよ」
「そっか。ごめんね。また来てよ! 旦那さんもお姉さんも、美人さんだから!」
そのまま店を出ました。
旦那様が風魔に乗り込むと、私に尋ねました。
「よかったのか?」
「はい。あの子は幸せだと、笑っていましたから」
ずっと不安でした。
私に力がないと思っていた頃には、妹は力がある故に利用され、苦しんでいるのではないかと。
兄と弟がいるので乱暴な扱いを受けているわけではないと信じていましたが、それでも心配だったのです。
何も気負わず、ああして元気でいてくれた。
それだけでいいのです。
「……帰ろうか」
「そうしましょう」
私達の家に。
しばらく空けていたので、少し埃が積っていそうですね。
掃除で忙しくなりそうです。
◆ ◆ ◆
それから、何ヶ月かして。
アストロに再び顔を出すことになったのですが、旦那様が「あ」と声を上げました。
「忘れてた」
「何をですか?」
「……ビアンカ」
「ビアンカ?」
ビアンカ、といったら、幻想の花ではないですか。
そのビアンカがどうしたんでしょうか。
「ビアンカの花、花屋に任せっぱなしだった」
「え?」
◆ ◆ ◆
「あら~! アルじゃない! そちらのとっても可愛らしいお嬢さんは?」
「嫁だ」
「じゃあラティアンカちゃんってこの子!? キャア~! 可愛い!」
……この方が、ペティアさんですか。
最初に私が旦那様の恋人だと勘違いしたお方。
しかし、彼はまあ立派な男性でした。
確かに男性同士の恋愛もあるでしょうけど、ペティアさんと旦那様はそんな感じではないでしょうね。
「ごめんなさいね、ラティアンカちゃん。アタシのせいで誤解させちゃったんでしょ? 安心してね。アタシ、とっても可愛い奥さんいるから」
「そ、そうですか」
「ていうか、遅すぎよ~! ビアンカの花、枯れると思ってなかったの!?」
「……もう枯れてるよな」
ビアンカは、幻想の花です。
その名の通り枯れるのはとても早く、私がこの国を離れた時点でもう萎れていたのでしょう。
ところが。
「それがね、枯れてないの」
「え?」
「は?」
「あなたがとってきたの、本当にビアンカ?」
ペティアさんが見せたのは、淡い青をした豊かな花弁を持つ花。
それは確かに見事に咲いていました。
「………これ、ペルマナントじゃないですか」
「!?」
「図鑑で見たことあります」
ペルマナントは、ビアンカと違い、真反対の花だったはず。
確か永久の花といって、ビアンカより珍しいものです。
「アナタ、運いいわね……」
「とりあえず、もらう」
「はい、どーぞ」
ペティアさんから花を受け取り、微笑む旦那様。
旦那様と花って似合いますよね。
「……行こうか」
「はい」
◆ ◆ ◆
目的の地に降り立てば、見えたのは愛しい人達の背中。
彼らは何かに向かって座り込んでいました。
その何かは、分かりきっています。
「ロール」
「! ラティ様!」
「ラティアンカ嬢。アルも元気にしてた?」
「……まぁ」
「はは。上がりなよ」
ロールとエリクル様の家。
そこに向かう前に、ペルマナントの花をそこに置きます。
「美味しいお菓子が手に入ったんですよ~!」
「シャルロッテ。もうそろそろ制限しないと、太るよ」
「うぐっ!」
「太ってもロールは可愛いですよ」
「ラティ様~!」
「甘やかしちゃダメだよ」
「……お菓子ぐらい、いいんじゃないか?」
「アルも何言ってるの」
幸せってきっと、こういうことを言うんでしょうね。
何てないことで笑って、愛しい人と過ごす。
だって、自然と頬が緩むんですから。
私達が去った後。
その墓前には、ペルマナントの花が綺麗に備えられていました。
~完~
◆ ◆ ◆
ここまでお付き合いいただきありがとうございました!!
これにて本編を終了させていただきます。
番外編を置いてくので、よかったら見ていってください!!
本当にありがとうございました!!
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